Let It Snow

帝国城摂政 作
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 雪が降っている。これはなかなか止まないだろうなと、駅の窓から見える粉雪を見て、そう思った。


 僕の名前は明智士郎。地方の高校に通う2年生である。駅と言う事から分かって貰えると思えるが、僕は電車通学である。いつも1時間近くかけて家と学校を行き帰りしている。最初の方は苦痛にも思えたけれども、流石に1年以上通うと慣れる物である。


「まぁ、雪で遅れそうだけれども……」


 僕が通う学校の電車は、地方の電車。こう言った雪が降ると電車が10分や20分ほど遅れる。そして今日も電車は遅れていた。


「早く帰りたかったが……。仕方ないか」


 幸いにも電車が止まる事は無いらしい。まぁ、その点だけはありがたいか。そう思いながら、僕は駅のホームの風を遮るようにして作られた暖房部屋に入る。


「……」


 そこには既に先客が居た。
 肩よりも長く伸ばした茶髪、小柄な身体。それに反比例するかのようにすいかなんかを越えるくらい育ち切ってしまっている胸を持った美少女。


「せ、先輩……。せ、先輩も待っていたんですか」


「ま、まぁな」


 彼女は青空白雪。僕の高校の後輩の1年生で、僕と同じ電車通学生である。
 とは言っても、彼女がどこの駅から乗っているのか、それと彼女の事で知っているのはこれくらいである。僕はそれ以上の事を知らない。


 同じ電車に乗っていて、同じ学校に通うかなり胸が大きい後輩。それが僕の知る限りの彼女の全てである。
 別に何となく気になってしまい、とりあえず名前だけ知り合いから聞いて置いただけである。
 僕としてもそれから何となく気になってしまい、それで相手の方も何か気になってしまったらしく、お互い今のような関係になってしまっていた。


(しかし、それにしても……)


 デ、デカい。女の人にこういうのは失礼だとは思う。けれども、デ、デカいな。これだったら男が放って置かないだろうな……。うん。


「「……」」


 か、会話が無い。まぁ、それも仕方ない。同じ電車に乗り降りする同学校の生徒。僕らの関係性はそんな感じだ。そんな関係しかない僕達が2人だと何も喋る事が無くなってしまう。


「せ、先輩。そ、そっち行っていいですか?」


「へっ……? ど、どうぞ?」


「ありがとうございます」


 そう言って、彼女はゆっくりと僕の方へとその身体を近づける。
 ……って、ちょっと近くないだろうか? 既に僕の身体にその豊満な胸が当たっているんだが……。そ、それにしても柔らかいな。柔らかいし良い匂いもするし、温かい。それに何だかか、か、彼女を押し倒したくなってしまう。彼女を犯したいと思ってしまう。


 し、しかしそれはいけない。彼女はこんな全然知らない僕なんかを一応、信頼してくれている。だからこそ、こんなにも身体を密着を許してくれているのだ。多分、そうに違いない。それに答えてあげるのも、先輩として大切な事だと思うのだ。


「先輩……。女の子がこんなに迫っているのに、顔色一つ変えないのは駄目だと思います」


「そ、そう言われても……」


 って、え? 今、こいつなんて言った?
 「女の子がこんなに迫っているのに」? も、もしかして……。


「これって意図的にやってる?」


「は、はい。言っておきますけど、先輩だからやるんですからね。他の人にもやるとか思わないでくださいよ? 私、そんな痴女じゃないですからね」


 そ、それって……。


「電車の中でいつも見てました。先輩は優しいです。お年寄りに席を譲ったり、電車内で酒を飲んだ乗客や携帯をする女子高生を注意する先輩の姿はカッコ良かったです。
 だ、だからですかね。わ、私も先輩の事を……」


 そう言って、その豊満な胸を僕の腕に思いっきり押し付ける彼女。柔らかい胸の感触がさっき以上に如実に僕の身体へと押し付けられていく。柔らかい、そんな胸が僕の腕をまるで生き物かのように、柔らかく。まるでマシュマロのごとく、僕の腕を包んで中へ中へと飲み込んでしまって行く。


「せ、先輩……。へ、返事は明日でも良いです。だ、だからせめて電車が来るまでこうしていて良いですか?」


「え、えっと……お構いなく?」


「……ありがとうございます。
 先輩、大好きです」


 そして彼女は顔を笑顔いっぱいに微笑まして、身体を弾ませながら身体いっぱいを使って僕の身体へと抱きしめていた。


 彼女の好意は嬉しい。けれども、そんないきなり言われても戸惑う。


 今は彼女の好意に甘えるとしよう。


 そのためにも電車が来ないようにするため、今は


 雪が降って、電車が来るのを送れるのを待つばかりである。


 Let It Snow. Let It Snow.
 雪よ、降れ触れ。もっと降れ。


 もっと降って、彼女との時間を楽しませてください。