ここ、総計(そうけい)市には6つの名家が存在する。
一宮(いちのみや)家、十条(とじょう)家、百城(ひゃくじょう)家、千街(せんがい)家、万門(よろずもん)家、そして億階堂(おくかいどう)家。この6つの名家はその名前に全部数字が付いている事から、通称『桁上がりの六名家』と言われている。そしてこの六名家にはおっぱいが大きくて美しくて可愛らしい、女らしい姫様が居る。その6人合わせて『聖六姫(せいろっき)』と言う。
僕、赤城凌(あかぎりょう)はそんな6人を許せない。
「じゃあな、日和(ひより)。また来るよ」
僕の前には1人の少女が横たわっている。黒髪の小柄な少女は目を閉じてゆっくりと眠っている。かれこれ1か月この少女、僕の妹の赤城日和は眠り続けたままだ。6人の少女のせいで彼女はこんな目になり、彼女たちは今も楽しそうに生きている。僕はそれが許せない。だからこそ僕は彼女たちに復讐したい。けれどもどうすれば良いか分からない。
そんな毎日の中、僕は家に帰る。この行き場のない怒りをどうすれば良いと悩みながら。
「その行き場のない怒りを妹を助けるのと共に解消出来るとしたらどうだい?」
「誰ですか、あなたは?」
家に帰ると見た事のない女性が僕の家に入ってリビングでコーヒーを飲んでいた。その女性は白衣を羽織っている小柄な女性だった。だけれども胸はけた外れに大きい。恐らくH、いやIはありそうかと言わんばかりのはちきれんばかりの巨乳である。でも明らかに人間ではありえない藍色のロングヘアーをした女性が居た。眼鏡をかけたその女性は僕を見て、こう言った。
「初めまして、凌くん。私の名前はゲーム・H・ラブリー。遊戯と恋愛をこよなく愛する恋愛悪魔だよ」
「れんあい……あくま……?」
悪魔って、願いを叶えてくれる代わりに魂を奪う、あの悪魔? そんな悪魔がどうしてここに?
と言うか、それよりも!
「さっき、あいつらに復讐して、なおかつ妹を助けられると言ったよな」
「あぁ、言ったよ。あと、私は恋愛悪魔だから別に願いを叶える代わりに魂をよこせとかは……」
「それは本当か!? 本当なのか!?」
僕はそう言ってゲームさんに詰め寄る。そんな願ったりかなったり話だったら是非とも……
「ああん♪」
「……?」
えっ? 「ああん♪」? 何故か出てくる冷や汗。恐る恐る下を向くと、そこには彼女の豊満で、果物で例えると熟したスイカのようなおっぱいに僕の手が……。
「うんうん。大胆なのは良いけど……初めてはや・さ・し・く・ね?」
「うわー!? ごめんなさい! ごめんなさーい!」
と僕は慌てて手を放して平謝り、いやもう土下座に移行している。女の子のおっぱいを触るなんて生まれて初めての僕におっぱいを揉んで「うむうむ、良い乳だ」なんて言えるほど僕は度胸がないんだ! そうだ、僕はヘタレだ! 『聖六姫』の6人に復讐を考えながらも女の子を襲うなんてそんな大それたことが出来ないヘタレなんだー! わー、ごめんなさい! ごめんなさい!
「おいおい、そんなに謝らなくて良いよ。
……困ったね。妹のために頑張るシスコン属性はともかくとして、このヘタレはどうにかしないとゲームに差支えが―――――――あっ、そうだ。あの手があった」
「ごめんなさい! ごめんなさい! もうしませんから許してくださーい!」
「あぁ、もうしつこいな。私は気にしてないんだからもうとっとと顔を上げたまえ。折角、わりと良い顔、してるんだから」
そう言って僕の身体を揺するゲームさん。そのたびにむにゅむにゅとした感触が僕の背中に――――――あぁ、また!
「ともかく顔をあげてくれないかな。色々と説明したいし」
「……はい」
そう言って、顔を上げる僕。ゲームさんは本当に何とも思っていないらしく、平然とした様子でポケットを探っていた。
「――――――確かこの辺に……あぁ、あった。はい、これ」
そう言ってゲームさんが差し出したのは、瓶だった。正確に言えば薬瓶。白いカプセル状の薬が数個入っているだけのただの薬瓶。
「なんですか、これは? 瓶?」
「まぁ、このくらいならば許されるだろう。と言う訳で1つ、グビッと飲んでくれ」
「は、はぁ……」
何だかよく分からないけれども、とりあえず言われた通りに薬を飲む僕。水は必要ないらしく、自然に薬は喉を通って行った。
――――――次の瞬間、僕の身体が灼熱に飲まれた。
「――――――あぁ!」
熱い! 全身が燃えるように熱い! まるで身体の中で何かが燃えているように熱い! 意識がだんだんとボーっとしてくる。現実と夢があやふやになっていく。
熱いと思っていると、突然身体が中から空気が入ったかのように成長していく。160pくらいの僕の身体はぐんぐんと大きくなっていく。それと同時に胸のあたりが突然重たくなっていく。見るとまるでそこだけ異質なように腹や足は細くなったりしているのにそこだけ大きく脂肪がついていく。おっぱいだ、僕の身体におっぱいがつきはじめた。しかもそれは急激に大きくなっていき、それと同時にお尻の方も重くなっていく。
何だか良く分からない変化に意識が飛びそうな中、耐えているとそれは終わった。
僕はどうなってしまったのだろうか?
「はい、鏡をどうぞ」
ゲームさんはすかさず僕の前に姿鏡を置く。その鏡には見た事のないような美女が居た。
背は190pあるかと言わんばかりの長身、胸は巨乳を超えた爆乳と言っても言わんばかりのサイズがあり、お尻もたゆんたゆんに膨らんでいる。髪はさらさらで、肌はもちもち。一度会ったら忘れないばかりか、告白する人達大暴走と言わんばかりの、強烈な存在感を発揮する美女。
――――――そしてその女性は
「――――――僕?」
鏡に映っている以上、そうとしか限らない。僕はいったいどうなってしまったんだ?
「ダメダメ。『僕』ではなく、『私』ね。“綾(あや)”ちゃん♪」
「わ……たし? あや?」
なんだろう。このすっと馴染んでいく感じ。まるで最初からそうだったかのように。そう、私。私の名前は綾、赤城綾……。
「……! 危ない、危ない! 僕は赤城凌! 赤城凌!」
「そう、すっとは納得出来ないよね。まぁ、納得してもらわないといけないんだけど」
「げ、ゲームさん!? これはいったい……」
「『恋愛悪魔のシンデレラ』。飲んだ人間を美女に変える特効薬さ。まぁ、とは言っても男性の場合は30分しか持たないんだけどね。けれどもその薬を飲んでいるときは赤城リョウではなく、赤城アヤね。分かった?」
「――――――うっ、分かりました」
何かは分からないけど、悪魔の持ってくる物なんだからなんでもありなんでしょう。にしてもこの女性、本当に綺麗だ。私だと知らなかったらうっかり告白しちゃったり――――――――って、いつの間にか私になってる!?
「まぁ、それはおいおい慣れてもらおう。今は『聖六姫』への事が大事だろう?」
……! そ、そうだった! あの憎き女どもを叩きのめすのが先決―――――――。
「その姿になっている間は、ヘタレじゃなくなるからね。そしてその姿なら、報復を恐れずに君も自由に復讐出来るだろう?」
「……! た、確かに! い、今ならやれそうな気がします!」
「よしよし。それで良い」
「そ、それで? この姿で私は何を……」
いくら気が多少は大きくなっているとはいえ、やっぱり殺人とかはやりたくないよな。妹も居るし、それに相手は女の子なんだし……。
「なーに。人を殺す必要はないよ。そもそも殺人享受なんて私の柄ではないし」
「じゃあ、私は何を?」
「ふふふ。それはね」
「それは?」
い、いったい何をすると言うのでしょう?
私が身構えていると、ゲームさんは白衣から6本のアンプと、今度は『恋愛悪魔のホルスタイン』とかかれた薬瓶を取り出して―――――――
「――――――――彼女達6人の母乳をこのアンプの中に入れてくないかな?」
満面の笑みでそう言ってきた。