恋愛悪魔のシンデレラ 第2前夜

帝国城摂政 作
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 総計市には6つの名家が存在する。通称、『桁上がりの六名家』。
 お菓子産業で財を成した大手お菓子工業、一宮家。
 海外にまで手を広げる大手車メーカー、十条家。
 数多の薬で特許を取った大手の病院などを経営する、百城家。
 警察関係者が多数居る大手防警備会社、万門家。
 政財界にまで手が回っている街の管理者、億階堂家。
 この6つの名家にはそれぞれ歳の近い娘が居て、6人合わせて『聖六姫』と言う名前で有名だ。


 とある休日、6人は車で出かけて、1人の少女を轢いてしまった。その少女こそ、赤城日和。轢いたと言っても、軽傷でそんなに大した事も無いほどの怪我だが、ここで1つの問題があった。
 その轢いた車を運転していたのが、なんとこの時出掛けていた6人だったのだ。6人はお遊び感覚で運転免許もなしに乗り回し、その際6人でハンドルを取り合っている際に日和を轢いたのだ。
 日和を轢いた車に、運転免許を持った子供しかいないと言う事が世間にばれれば6つの名家は責任を取られる。
 そこで6人は協力して、この事件をなかった事にした。


 一宮家の娘はその少女に救急の電話をかけている間に、十条家の娘はその車を内々的に処分した。百条家の娘は自分の家が経営する病院へと運んでこの娘をただの転落怪我として処理するよう言い渡した。万門家の娘は両親に頼んで警察関係者にこの事件を隠ぺいする事を依頼した。億階堂家の娘は僕にそれを黙るように金で口封じをした。
 こうして、ただの転落事故として処理された目覚めない妹と、その口封じをされた兄、無罪放免を言い渡された6人の娘と言う構図が出来上がった。


「罪はないとは言い切れないけれども、こんな事で晴れるくらいの罪とは我ながら軽い物だな」


 と、ゲームさんから渡されたアンプと、『恋愛悪魔のホルスタイン』と書かれた薬瓶を見てそう思った。

『いやー、実はね、その6人の乳から出る母乳がちょっとした役に立つからさ。そのアンプに1人1本くらい、採取してくれない? いや、妊娠してなくても大丈夫。その『恋愛悪魔のホルスタイン』の中の薬をちょこっと飲ませれば、もう出るわ出るわだから。
 あっ。――――――ちゃんと揉まないと出ないよ? そこだけは忘れないでね、凌君? いや、綾ちゃんと言った方が良いかな?』


 今ではもう僕の家に居候として馴染みまくっている恋愛悪魔、ゲームさんはそう言っている。こんな事で罪を償えるとは思ってないけれども、けれども何かの慰めにはなるだろう。
 こうして、『聖六姫』の母乳採取と言う復讐劇は幕を上げた。
 ――――――――いや、十分変だけど仕方がない。


「じゃあ、またね。海月(くらげ)」


「あー、うん! またねー♪」


 おっ、ターゲットのお出ましだ。と、妹の日和が通っていた学校、総計市の名門中学校の電卓女子学園から1人の美少女が門から現れる。


 さらさらの黒い髪、幼さとあどけなさが残る顔立ち。150p位と中学2年生、現在14歳の身にしては小さすぎる背丈と、それに反比例するかのごとくこんもりと盛り上がったGカップの胸。
 彼女の名前は、一宮海月。妹のクラスメイトにして友達で、『聖六姫』の1人だ。『聖六姫』の中でも妹とクラスメイトで仲が良い事からそれなりに知り合いではある。『聖六姫』の中では一番接しており、そして一番恨みが少ない人物だとも言える。
 けれども恨みが全くないと言う事はない。実はあの事件、事の発端は彼女のせいだったのだ。彼女が提案して、彼女が道を決めた。そう言う意味で言えば、恨みが募るばかりだ。
それからもう1つ怒ってる部分がある。彼女は妹の友達として妹の部屋に来た時、僕を見てニコリと笑ったのだ。
それが許せない。あんたたちのせいでこうなったのにも関わらず、笑顔で未だ意識を覚まさない日和の兄を見る姿はまさに下種の極みだ。


「よし、やるぞ!」


 僕はすぐさま『恋愛悪魔のシンデレラ』の薬を飲む。勿論、ばれないように路地裏で人に見られないようにしてだ。


「うっ……!」


 あの感覚。胸が張り千切れそうで、そして身体が引き伸ばされる、身体の中から熱くなる感覚。
 痛みが治まった時には私はあの190pはあるHカップの美女、赤城綾になっていた。


「さて、一宮。初めのターゲットはあなたよ」