恋愛悪魔のシンデレラ 第7夜

帝国城摂政 作
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 億階堂土岐(おくかいどうとき)、億階堂家の長女にして一人娘の18歳。
彼女は今まで人に怒られる事を経験してこなかった典型的な甘やかされて育てられた美少女である。
 億階堂家は桁上がりの六名家の中でも街の市長や市議会議員などの重要的な役職に就いており、他の5つの名家よりも色々と融通が利く。さらに彼女自身もまた身長が180cmくらいとかなり高めで、それにKカップと言う事もあり容姿も素晴らしいと言える。
 彼女への復讐は彼女の19歳への誕生日記念に開かれたパーティーで行った。彼女は日和の事件を揉み消し、あまつさえ妹が死ねば妹が居たと言う事をなしにしようとした。さらにはあの事件、妹を車で轢いた事件の時、唯一車の免許を取っていた彼女が免停になるかもと思ったら、それを無かった事にして次の日には普通に車を運転していたのだから許せない。と言う訳で、自身の誕生日記念に開かれたパーティーで、沢山の他の金持ち連中から見守られつつ母乳を流す彼女に絶望を与えると言う計画を立てたのだが、それは図らずもうまく行かなかった。いや、彼女のグラスに『恋愛悪魔のホルスタイン』を混ぜて飲ませる事には成功したし、それに僕もちゃんと彼女から母乳を放つことは出来た。問題はそこだ。
 彼女のフェロモン、つまり人を発情させる香りは異常だったのだ。そう、強い恨みを抱いている僕や、周りに居たお金持ち連中達ですら発情させるくらいに。結局、彼女自身の外面や、周りの人たちのメンツ、そして僕が赤城凌(あかぎりょう)じゃなくて赤城綾(あかぎあや)になっていた事からこの事は内密に処理されることになった。僕からしても嬉しい限りだ。何故ならこれで日和を助けられるのだから。


「いやー、これにて桁上がりの六名家はコンプリートだね。後は日和ちゃんをなんとかすれば済むね」


 と、彼女、ゲーム・H・ラブリーはニコヤカに笑いながら言う。何も言わずに頭を下げたままの一宮海月。


「うんうん。じゃあ、それを貸してください。私の方で加工処理をしまして、今日の夜には出来ると思いますので」


「い、急いでくれよ」


「はい。私は重度のコンプリート体質で、こうやって『一』、『十』、『百』、『千』、『万』、『億』の6つの数字を介する6人のシリーズを揃える事が出来て満足です。あなたもコンプリート出来て満足でしょ?」


 何を言っているんだ? まぁ、それよりも!


「それよりも日和だ! 日和はまだ目覚めないんだから!」


「はいはい。焦らずともちゃんとしますから。そうしないと、コンプリート出来ませんので」


 彼女はそう言って「先に病室に行っていてください」と言った。言われなくてもそうするつもりだった。


「あ、あの……」


靴を履いて出ようとすると、海月が止めて来た。


「こ、この件が終わっても凌お兄ちゃんの家に来て良い? も、もう悪い事はしない、良い子になるし」


「あぁ、良いよ」


「そ、それじゃあ……」


「あぁ」


 僕はそう言って、彼女に振り返る。


「今度は、”妹の友達”として来てくれ」


「……!」


 僕のニコヤカな笑顔に彼女は一瞬押されたかと思うと、すぐに「う、うん」と力なく返事した。僕は気付かないふりをして扉から外に出た。だってそう言うしかなかったんだから。
 僕は彼女の気持ちに気付いていないふりをして、外に出た。





「はぁ……」


 と、私、一宮海月は溜息を吐いた。今までは日和ちゃんがいないからこうやって堂々と赤城凌お兄ちゃんの所に遊びに来れたが、これが日和ちゃんが帰ってからも続けられるとは思っていない。日和ちゃんとは今までのような関係が続けられるとは思っていないし、下手したらお兄ちゃんと会えなくなるかも知れない。


「それに、胸も……」


 そう言いながら私は自身の胸を揉む。Gカップ、多分世間的に見れば巨乳かも知れないけれども、私の好きなお兄ちゃんは私よりも大きな胸を揉んで来ている。土岐さんは、六名家の中でも一番大きいKカップだし、私なんかの胸だともう感じなくなってしまっているのかも知れない……。


「はぁ……早く大きくなりたいなー」


 そう思っていると、この家の電話が鳴り響いていた。私は急いで電話を取る。


「え、えっと……赤城です!」


『その声は……一宮海月さんですね? どうして赤城凌君じゃなくて、なんで一宮海月さんが居るんですか?』


「えっと……その……」


『あぁ、それよりも赤城君、知りませんか? 大変なことが分かりまして』


 ……? 大変な事?


「大事な事って……」


『私の方で調べてみた所、あの母乳には色々と秘密がある事が分かったんです』


「秘密……?」


 いったい、なんだと言うのでしょうか?


『あの母乳を遠心分離機で分離してみた所、フェノクロ溶液のようがフェノール層とエタノール層に二層に分かれてるみたいに、上層と下層で色が違うので成分分析を行ってみたんですけれども……』


 遠心分離機? フェノクロ溶液? 二層に分かれてる? 成分分析?
 私、文系なので良く分かりません……。


『上層は確かに薬の材料になります。恐らく6種くらい別の人間から採った上層のサンプルを混ぜる事が出来れば、日和ちゃんを救う事が出来るでしょう。けれども、下層のサンプルを成分分析をしてみた所、女性の身体の女性ホルモンを整える効果がある事が判明しました。さらに6種のサンプルを混合すれば、赤城君が女性体になったみたいに、肉体変化を促す事が出来ると思われます』


「ん……?」


 6種を混ぜ合わせれば、薬を作る事が出来るけれども、同時に肉体改造も可能?


 ……あれ? なんか気になりますね? そう言えば、彼女は重度のコンプリート体質だと言っていたような……。


 ……! そう言えば、私達の名前って……!


「水穂ちゃん、今すぐ水穂ちゃん家の病院に行かせて!」

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 一宮海”月”
 十城”火”花
 百城”水”穂
 千街莉”木”
 万門美”金”
 億階堂”土”岐
 そして、赤城凌の妹の名前は……。