朝起きて食卓に行くと、テーブルの上に回覧板とメモが1枚。
『今日はうちが担当みたいだけど、忙しいから代わりにやって置いて。母より』
今年17、高校2年生になる私に対してあまりにもぶっきらぼうな態度じゃないかと思いつつ、回覧板を見てはぁー、今日かと憂鬱になる。
私の住む町、過負荷町には多くの変身ヒロイン、変身ヒーローが住んでいる。多分、この街に居る全員がそれに当たる。この前、引っ越してきた三丁目の鏡さんも変身一家(要するに変身ヒーロー、変身ヒロインの一家と言う意味)らしいし、どうもこの町には多くの変身系正義の味方が集まるらしい。
この町に居る私達、変身系正義の味方は町全体が変身系正義の味方(もう、ややこしいからへんぎで良いや)の数は多すぎる。具体的に言うとアン○ンマンのキャラクターの数と同じかそれ以上に多い。こんなにへんぎはいらない。そう言うわけで、私達が取った行動。それがこの『回覧板』だ。
『回覧板』を回して、回って来た家がその日のへんぎ当番。遠くの街とかに現れる悪役を倒す役目をして、終わったら次の人に渡すのだ。この仕組みは変身をするのが嫌な人達に多くの同意を得た。その中には私も居る。変身をするのが嬉しいと言う人は、この『回覧板』を貰って喜び勇んで敵を探しに行くのだろうけれども、私はそう言う気分になれない。
その日、憂鬱なまま、冷めたトーストとリンゴを朝食としていただいた。
学校はこれを葬儀のようなもの、つまり高欠と認めてくれるので、私はその日学校に行かずに空を飛んで敵を探していた。堂々と学校をサボれるのは嬉しい人は嬉しいが、私にとってはあまりどうでも良い事だったので無視した。
……空を飛ぶ? こんなのは変身しなくても出来る、ただの行為にすぎない。これで事件が解決した事なんて一切ないし、やっぱり変身しないと敵を成敗出来ないんだろうなと思っていると憂鬱になる。
そうこうしているうちに、目的となるターゲット、つまり悪役を発見した。
「おい! なに、5分ごとにこっちの状況を知るためのメールを出さなきゃいけないんだよ! すげー、迷惑なんだけどー!」
そう言って、怒鳴り散らす携帯電話のような怪人。どうやら【彼女のメールが5分ごとに来て返すのがうざくなった】と言う、くだらない悩みが彼を怪人に変えたのだろう。まぁ、そんなの私にはどうでも良いけれども。
「よっと、そこまでです」
「誰だ! 貴様は! ……って、子供かよ! 大人になってから出直してきな!」
うるさいですよ。確かに17には見えない幼児体型(身長、140cm、バストサイズは安定のAカップ)ですが、あなたなんかに、ただの携帯怪人なんかに言われたくないです。
「大人しくしてください。威張り散らしても何も問題は解決しませんよ?」
「うるせー! 子供なんかに大人の悩みが分かる物か!」
うわ、カッチーン。折角、こっちが下手に出て、優しくお願いしているのに。こんな彼の行動を5分おきに知りたいだなんて、メールを送っている彼女さんはストーカー、もしくは彼が犯罪者にならないか心配している一市民くらいでしょう。相当、彼自身は辟易しているみたいですから、多分彼女さんは前者でしょうけれども。
「あぁ、もう。仕方ないですね」
私はそう言って、回覧板を開く。そこには『僕と契約して変身ヒロインになってよ!』と言うどこぞの悪魔のセリフが。ちなみにその下には『俺と契約して変身ヒーローになれ!』と言う男版のセリフがあるが、それは置いといて。
「はい、私、二見みえりは契約して変身ヒロインになります、っと」
『Yes, My Master』
そんな声と共に私の身体は光に包まれる。そして服が消え、私の幼児体型はどんどんと大人びた体格になっていき、遂には2mにはなろうかと言う大きさへと成長。そして続いてAカップだった胸がまるで空気を入れたかのように一気に成長して爆乳へと変貌を遂げる。Hカップ、いつもながら重いです。そして露出度を強調するような服装とピンク色のフリフリ。いつも思うんですが、これだと見えたりしないんでしょうか、心配です。
「変身ヒロイン、二見みえり! 愛と正義とかが、回って来たので、あなたを成敗します!」
と、決めポーズ。あぁ、愛と正義は別の人がやってくれると思うので、私はどうとも思いませんが。
「い、いきなり目の前の幼女が長身爆乳魔法少女に変身した件について!」
「いや、変身ヒロインなんですが」
私はそう言って、杖を構える。さっさと終わらせましょう。早く帰りたいですし。
「えっと、まず相手を操る―」
杖を振うと、いきなり目に見えて携帯怪人の動きが悪くなる。これぞ、科学の力、洗脳です。どう言う理論かは知りませんが。
「そしてー、操りー。こっち、来―い」
「か、身体が……勝手に……」
そうして携帯怪人を目の前にやって来て、そのままわざとらしく私のその爆乳に触れさせた。揉み揉みと私のたわわに実った爆乳を揉む携帯怪人……って、そこまでは指示してないんですが。もしかして変態のなせる技?
「気持ち悪いんで、さっさと終わらせましょう。吸引」
そう言うと共に、携帯怪人が悲鳴を上げる。そして私の中に入って来る《あれ》。
「あぁ……うん♪」
《あれ》とは、怪人の元。即ち、憎悪とか憎しみとか言った負の感情。これが一定以上になると怪人へと変貌してしまうのだ。そして、それをどうにか出来るのが私達過負荷町の住民、へんぎ。
「あぁ……気持ちいい♪」
入って来ると共に、私の身体の中が熱くなっていき、また目線と胸が一回り大きくなる。どうやら私は変身すると相手のエネルギーを吸って成長してしまうらしく、その成長の元が彼ら怪人の負の感情らしい。私は吸い取ると身長が10cm、胸のサイズが1カップ大きくなってしまうのだ。現実は変わらないけれども。
「2m10cmで、Iカップ……か」
始めた当初は150cmのBカップになって嬉しく思っていたのに、190cmを超えたあたりからもうどうでも良くなった。流石に2mを超えると迫力はあるわ。達成感はないけど。
「まぁ、これで任務完了。明日は隣の郷田さんの担当だし、回覧板を届けておこう」
私はそう思い、回覧板で元の姿に戻ろうとして
「……いや、郷田くんにこの姿を見せたいし、このままで良いか」
と私は隣に住む鈍感で女心を知らない幼馴染の彼の顔を思いつつ、空を飛んで帰って行ったのだった。
翌日。郷田君が倒した怪人は携帯怪人で、【5分置きに彼にメールを出してたのに……】と言っていたが、まさか昨日の彼のストーカーさんかなと思う私だった。
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二見みえり。
主人公。正義とか愛とかに興味がない高校2年生。変身ヒロインとしての特徴は【成長】。怪人の負のエネルギーを吸い取って、成長(ただし、変身した状態のみ)する。負のエネルギーを1つ吸うと身長が10cm、バストサイズが1カップ大きくなる。只今、身長2m10cmでバストサイズはIカップ。
郷田君。
主人公の幼馴染。正義、大好き。鈍感。
携帯怪人(男)。
【彼女のメールがしつこい!】と言う負の感情で怪人化。巨乳好きのため、主人公の爆乳を揉み揉み……!
携帯怪人(女)。
【彼から返信が来ない!】と言う負の感情で怪人化。携帯怪人(男)の彼女。ちなみにDカップの巨乳さん。
回覧板。
変身させます。男も女も。
過負荷町。
変身ヒロイン、変身ヒーロー達が住まう街。『変身』の作者、カフカより名前が付けられた。