猫の仇返し

tefnen 作
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次の日。目を覚ました由里は、またもや寝坊していることに気づいた。

「いけない、目覚ましかけるの忘れてた!昨日壊れたレンジもまだ使えないし、また魚肉ソーセージか…ん?そういえば、私、元に戻ってる?」

下を見ると昨日の昼までと同じような、山や丘すらない、平野が見えた。

「なーんだ、タダの夢だったのかな…ってそんなこと考えている場合じゃないって、私!」

独り言を終わらせ、制服に着替えて冷蔵庫からソーセージを出し、今日は雨なので傘を差し、家を飛び出していった。昨日と同じ路地裏を通り、学校にたどり着いたのは始業時間10分前。少しまだ余裕があった。

「おはよー!今日もノーブラ?」

挨拶も早々、いきなりセクハラ発言をしてくるのは由里の親友、絵美である。成績優秀、容姿端麗で、喋らなければ恋人が数人できてもおかしくないほどである。

「うるさい!はぁ…びしょ濡れだよ…」
「あははっ!チビ○子が2日連続で息上げて教室に入ってくるなんて、信じられないよ」
「うん、いろいろあってね」
「そういえば、昨日の岡崎の説教どうだった?」
「聞いてらんない。最初はちゃんと聞いてたけど、途中でうなずくだけになっちゃった」
「アタシだったら最初から話の内容なんか頭にはいんないよ」

と、会話を弾ませていると、教師が教室に入ってきて、それで授業が始まった。由里は授業を真面目に聞き、ノートを取っていく。一方絵美はただじーっと前を眺めている。これで絵里のほうが成績がいいのだから世の中は不平等である。ただ、絵美はいくら暇でも授業中に由里と駄弁ろうとはしない。絵美なりの思いやりであり、授業の外でも一緒に勉強して、というか由里にアドバイスをしてくれる。由里も由里で、一緒に勉強するときはとびきり美味しい夕食を振る舞い、これ以上ないほど仲がいい友達である。絵美が自分の意志かどうかは知らないが東方大を志望し、塾に通わされていなければもっと仲が良かっただろう。

放課後。

「はぁーっ。やーっと終わった!これで後は期末試験か」

授業から開放され、大きく背伸びをする絵美。大きい胸が強調されて少しいやらしい。それを見て由里は昨日のことについて、相談してみることにした。

「ねえ、絵美」
「ん?なにかな?恋の相談とか?私、一人も恋人なんて持ったこと無いから、頼りになんかならないよっ!」

授業のストレスからか悪い冗談をかましてくる絵美である。

「うふふっ、本当?じゃなくて。ちょっと話したいんだけど、気になることがあって」
「なに?」
「昨日の説教の後なんだけど、夢かもしれないんだけど、いきなり体が大きくなったの」
「え?」

おかしな話しであるが、由里の真剣な表情を見て冗談ではないと、絵美は悟ったようだ。

「ちょっとだけだけどね、手足が伸びて、胸が大きくなって。私、どうにかしちゃったのかな」
「…」

少しの間、黙りこむ二人。そして、

「あはっ!なーに由里ったらいくら体が小さいからって、そんな夢見たの?心配ないよ、由里はそのままで男子を惹きつける魅力ならあるんだから!」
「本当、そう思う?」
「ちょっとだけね。」
「もう!」
「まあ、気にすること無いんじゃない?きっと夢だよ、説教が長すぎて変なふうに見えちゃっただけだって!じゃあ、アタシ塾行かないといけないから、また明日!」
「うん!バイバイ!」

そう言って、勢い良く絵美は教室を飛び出していった。

「さあ、私も勉強頑張らなくちゃ!」

同じく意気込んで帰っていく由里。結局、その日は何も起こらなかった。由里も昨日のことは夢だったのだと考え、忘れることにした。しかし、彼女はすでにある重要なことを忘れていたのである。右手の甲にあるマークの事を。