猫の仇返し

tefnen 作
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絵美は、翌日の昼やっと目を覚ました。

「やっと目が覚めた、心配したんだよ(だけどあんまり疲れてたから途中で寝ちゃったのは内緒にしとこう)」
「あ、アタシ…今まで何を…確かいきなりデブになって…あ!戻ってる」

自分の体を確認する絵美。二回目の呪文の前にもう気を失っていたようだ。

「あいつら良くもやってくれた!仕返ししに行かなきゃ!」
「え…ま、待って!私達じゃどうにもできないよ、それに助けてくれるって言ってたし」

しかし絵美の耳には入らなかったようで、ドタバタと出て行ってしまった。由里も仕方なく、追いかけていった。

「今日も晴れてるから、あまり外に出たくないんだけどなぁ…」

愚痴りながら追いかけ続けると、やがて例の路地裏に到着した。

「よし、またあのマンホールに触れば…って、無くなってる!」
「本当だ…ねぇもう帰ろう、戻っていろいろ整理しようよ…」

といっても整理するのはほとんど絵美だが。

「仕方ないなぁ…あいつら、次に見つけたらぶん殴ってやる!あれ?何だろうこの石」

そこには昨日のマンホールと同じ、緑の透き通った石が落ちていた。

「きれいだなぁー」
「あいつら、自分が落し物をしたことに気づかなかったみたい!あんなに調子こいてたもんね!手がかりになるかもしれないから持っておこう!」
「分かったから、早く戻ろうよ…私、またあんなに大きくなるのは嫌だよ、痛いし」
「はいはい分かった。あぁもう、嫌になっちゃうなあ!」

そんなこんなで家に戻ってきた二人。

「で、あのフリー何とかは本当に助けてくれるって言ったわけね」
「人の名前は、ちゃんと呼ばないと失礼だよ…フリードリヒさんでしょ」
「そして猫野郎は呪いをかけたのは認めたけど、自分では解けないと」
「だから、カッシャさんだって…あと、フリードリヒさんが言ってたの、呪いが複雑だから解くのに1年はかかるって」
「(いや、カッツェって言ってたけど…)なんか臭いけど…」
「そんなことないよ、あんな優しそうな人が嘘つくわけないもん。でも、成長を繰り返せば分かることもあるよって言ってた。それは嫌だなぁと思ったけど。」
「それは、そいつの言う通りだね。むしろ大賛成」
「え、そこは反対してくれないの!?」
「だから、実験が大切なんだよ、いつもどんな事でも!いやぁあの魔法使い、変態の割に良い事言うな〜」
「あぁもう、先が思いやられるよ…」
「ま、毎日大きくしようってわけじゃないからさ、これからも頑張ってくれたまえ!」
「むーっ」

ふてくされる由里だった。

(ピロロロッ)

「あ、電話だ。はーいもしもし、あ、拓也くん!この前はカバンとコート、どうもありがとう!」

拓也からの電話のようだ。

「え、うん。どういたしまして」
「トイレ入ってたら鍵が開かなくなっちゃって、本当に困ったよ」
「大変だったんだね。他の人が図書館を出て行ったのを勘違いしちゃってさ。コート無しで寒くなかった?」
「ううん、大丈夫!ほら私、暑がりだから。図書館で半袖になってたでしょ?」
「なら良かった、でも、由里ちゃんにお姉さんがいるなんて知らなかったよ。とても大人っぽい声の人だったし」
「え、お姉さん?何の…あっ、うん、そう、姉がね、海外で働いているんだけど、その日だけ日本で仕事があってね」
「お姉さんも大変なんだね」
「うん、そうなの」

話が盛り上がっている横では絵美がジーっと由里を見ている。

「で、今度帰省する日が1日までって分かったから、その後由里ちゃんちに行ってもいいかな?」
「いいよ、いつでも大歓迎だよ!でも、戻ってくるの早いね」
「うん、今年はちょっと事情があってね。じゃあ2日で」
「分かった」
「またね」
「はーい!」

ガチャッ!

「よしっ!」
ニコニコしている由里を、何故か絵美が悲しそうな顔をしている。由里でなければ作っていると分かるような表情だが。

「ひどいよ、私の話を放り出して男とイチャイチャするなんて!」
「お、男って!拓也くんなら絵美も知ってるでしょ!だから勘違いしないで、泣かないで!」
「これからも大きくなるなら勘弁してあげる」
「あーもう、わかった…いや、それはおかしい」
「ニヒヒ」
「と、とりあえず嫌だからね、私は…んっ」

ドクンッ

「お、来た来た。でも今回はそんなに大きくならないと思うけどね。ん?」

絵美の言うとおり、由里の体は数センチ伸びた程度で収まった。しかし、絵美の様子がおかしい。

「ふぅ。」
「いや、なんか、体が熱い…いやぁっ!」

その途端、絵美が爆発した。かのように見えた。絵美の体がいきなり大きくなり、背は10cm以上伸び、体型もいつもよりボンキュッボンという感じになっていた。服は昨日のようにはじけ飛んでしまった。

「え、何で…」
「わ、分からない…あ、絵美ちゃんの腰のあたり、光ってる」
「え?」

よく見ると、絵美の太くなった腰の脇に、先ほど拾った石がくっついて緑に光っている。

「ま、まさかあいつ、これを狙って…もう頭にきた!こんなもん剥がして…ひゃん!」

絵美の手が石に触れた瞬間、絵美の体中に電撃が走った。

「なに…これ…取れない」
「え、じゃあ私が取ってあげる!」
「お願い!」
「それ!あれ?取れない!」
「え?あっ…ひぅ…!」
「どうしたの?え、絵美の体、大きくなってる?」

由里が言うとおり、絵美の体はさらに長さを増し、乳房も腰も、その太さをどんどん増している。

「い…いやっ…」
「な、なんで…あ、眩しい!」

緑の石の光が、先程よりも明るくなっていく。

「まさか、私の魔力が?」
「ま…りょくぅ…?」

ガシャンッ!

由里の発言に驚いたのか、絵美が手を動かすとテーブルが吹っ飛び、天井にぶつかって壊れてしまった。今や絵美の身長は230cmくらいになり、胸もZカップを超えている。

「このままじゃ家が壊れちゃう!あれ、手が石から取れない!」

由里の手は石に、ひいては絵美の腰にくっついたままで、由里の手は最初よりも柔らかい感触に包まれている。

ゴツンッ!

「痛っ!」

絵美の伸ばしていた足が勢い良く壁にぶつかった。また、乳房の大きさは部屋の幅に至り、真球だったのがだんだん縦に潰れていき、壁はミシミシと音を発てている。身長は3mを超えているだろうか。

「どうしよう!止まって!」

足も曲げているが、尻にもものすごい肉がついていて、膝が天井に付きそうである。2分前まで華奢であった絵美の体は、今や部屋全体を埋め尽くそうとしている。

(止まれ止まれ止まれ!)

由里が必死に祈っていると、

パリンッ!

と音がした。その瞬間由里の手は石から離れた。そして、さっきの音は石が砕けた音のようだった。石の破片は絵美の豊満な臀部を転がり、床に落ちた。

「やった!」

同時に、プシューッと音がして絵美の体が縮んでいく。元に戻るまでの時間は10秒となかった。

「ふ、ふぅ…」
「エミエミ、大丈夫?」

由里が聞くと、途端に絵美の顔は真っ赤になった。

「あの変態野郎…由里!」
「え!何っ!?」
「あいつらなんかに頼っちゃダメだよ!またいつこんな事になるか分からないし!私達だけで呪いを解こう!」
「じゃ、じゃあ私は大きくならなくていいの?」
「え?それとこれとは別だよ!大きくなっても仕方ない私が変身するのはムカつくけど、由里の場合は呪いを解くために必要なことなんだから!」
「え、えーっ?」
「まあ、できるだけ少ない回数で済ますからさ…これから頑張ろう!」
「納得行かないなあ…」

絵美の無理矢理な励ましに、由里は折れるしか無かった。