雨と執事

tefnen 作
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スキー合宿の後、絵美の、由里の呪いが復活して、また由里の成長した姿が見れる!という予想に反して、何事
も無く2ヶ月が流れ、6月に入っていた。

絵美は、雨の降る中を、下校していた。

「(あー、もうびしょ濡れだよ…これだから梅雨は嫌い…風のせいでもあるけど)」

絵美の服はびしょびしょで、下着が透けて見えている。

「(いくらスタイルが自慢でも、これは恥ずかしいよ…)」

絵美の体は、魔法に関わった所為か、成長が速まっているようだった。12月にFカップだった彼女のバストは、
たったの半年でHカップに育っている。身長も160cmから170cmに伸びていた。

「(あ…黒猫…?)」

絵美の歩いて行く先に、一匹の黒猫がいた。

「(こんなところで、濡れないのかな…)ほらほらー猫くん、どうしたのー?」

しかし、黒猫が絵美の方を振り向いた瞬間、絵美の体に悪寒が走った。

「な、なんなのこの猫…」

黒猫はオッドアイをしていたが、絵美が不気味がったのはその「表情」だ。口の両側が釣り上がり、ニヤけてい
るようにみえる。

「ま、まさか…あんた…」

バッ!っと黒猫が絵美に飛びかかる。とっさの動きに絵美は反応できなかった。

「右手を引っ掻いたってことは…こいつ、やっぱり…」
「ああ、そうだよ…カッツェさ…」
「!?…猫の姿のままで喋るとか、やめてよ」
「雨、嫌だよなー…だから、雨に当っていたくなるような呪いをかけてやったぜ、きっと、雨が恋しくなるぜ」
「え…?」
「まあ、その時のお楽しみって感じだな!俺らの新しい隠れ家を見つけられたら、呪いは解いてやるぜ!お嬢さ
んは元からいい体してっからな!うへへ…」
「はぁ?今すぐ解いてよ!」
「おいおい、呪いを作るのも大変なんだぜ?それはできねぇ相談だな。それじゃ、達者でな!」
「ま、待てー!」

絵美は追いかけようとしたが、カッツェは塀を飛び越え、軽い身のこなしで、すぐに身をくらませてしまった。

「してやられた!だけど、雨が恋しくなる呪い…?…まあ、あいつらのことだから、大体予測はつくけど…今は
、撤退するしか無いか」

絵美は、家の門の前に着き、呼び鈴を押すと、叫んだ。

「さーセバスチャン、さっさと出てきてよ!びしょ濡れだよ!」
「かしこまりましたお嬢様、5分ほど、お待ちください」
「5分!?3分で済ませなかったらクビ!」
「お嬢様にそのようなことを言われましても、必要な時間は変わりませんよ」
「もー!分かったからさっさと来てよ!」
「了解です」

「もう、パパがこんな複雑で広大な庭作って、地図も作らないせいで、GPSを持ってる執事にしか道がわからない
なんて…いつか車で突っ込んで直線ルート作ってやる」

文句を言っても時間は立たないので、携帯を見ながら時間を潰した。しばらくすると、中からガードマンが出て
きた。背は180cmあり、黒服に身を包んでいる体格の良い男性である。

「遅いっ!5分30秒だよ、30秒も遅れるなんて!」
「申し訳ありません、雨のせいで予測がずれてしまったようで…」
「いや、そこは冗談だと思ってよ」
「ふふっ、さあ行きましょうか」
「うん」

「しかし、こういう事態になるのも、お嬢様が自動車通学を拒むからですよ…とご主人様ならおっしゃるでしょ
うね」
「分かってるね、高校に自動車で通学、なんて…そんな由緒正しい高校ってわけでもないのに、目立って仕方な
いからね」
「はい…それに、私の手間も省けますし」
「お、パパに言っちゃうよ?」
「そんなことしたら、二度と稽古をサボらせたりはしませんよ」
「う…わかったよ…」
「さ、着きました。お嬢様も、この道を覚えればご自分だけで家に戻れるのですよ」
「前に試して、アタシがどうなったかはセバスチャンが一番良く知ってるでしょ?」
「ですから、私はセバスチャンではなく、高木です」
「あーはいはい、わかりましたよー、じゃーまたねー」
「はい、御用があればなんなりと申し付けを」

絵美は体を乾かした。すると、普通なら体が暖かくなるはずなのに、なぜか絵美は寒気を感じた。

「風邪でも引いたのかな…いや、あの呪いか…」

絵美が右手の甲を見ると、やはり魔法陣が描かれている。

「由里のとは確実に形が違うな…といっても、絵美のはナマ字架、アタシのは円形ってのが分かるだけだけど、
何が起こるのかは見当が…」

ここで絵美は、これまで自分が何回も大きくさせられたことを思い出した。

「てことは…今度は小さくさせられるのかも…でも、何も起こってない…はぁ、とりあえず塾の前に宿題片付け
ますかね!」

と言って勉強部屋に駆け込んでいく絵美。結局その日は、目に見えた変化は起きなかった。
翌朝。

「ふぁー!よくねたぁーえ?」

絵美が立ち上がると、昨日より確実に床が近くなっている。

「あーやっぱりアタシ、小さくなったのね」

気づけば、パジャマもブカブカで、袖から腕が出ていない。胸に手を当てても、何の盛り上がりもなく、ペター
んとしていた。

「それで、雨に当たればこれが治ると…っていう日に限って晴れなんだよなー」

窓の外からは夏に差し掛かった、普段なら気持ちよさそうな日差しが部屋に差し込んでいる。絵美は、洗面所に
向かった。家の中は静けさに包まれていて、小鳥のさえずりが外から聞こえてくる。

「ま、これはいつも通り…」

絵美の両親は、いつも出張か旅行をしていて、絵美はガードマンである高木に任せっぱなしである。絵美は、洗
面所につくと、鏡を覗いた。身長は135cm位になっていた。

「中1、くらいかなー?中2まではあまり背が伸びなかったんだよね…2日も雨に当たらなかったら、赤ちゃん
になっちゃいそう、さすがに受精卵までは戻らない、よね…」

絵美に寒気が走る。それを振り払おうと、絵美は顔を洗う。

「絵美、しっかりしなくちゃ…!早速、水道水じゃ戻らないみたいってのは分かった…はぁ…本当に?シャワー
でも浴びよう…」

絵美は服を脱ぎ、風呂場に入る。自分の小さな体が目に入り、絵美は動きを止めた。

「…こんなに体が小さくなってると、心細い…いけないいけない、気を取り直してっと、えいっ」

バシャー

蛇口をひねると、シャワーから冷水が出てきた。

「つべたっ!」

いつもなら離れて温水になるのを待つが、呪いへの不安から水を離れられない。それでも、体は元に戻らなかっ
た。

(はぁ…マジでか…)

体を洗い終わると、24時間給湯の浴槽に浸かろうとして、絵美はバシャーンと飛び込んだ。

(うわわっ!溺れる溺れる!…いつもと同じ勢いで行っちゃった。不便…でも、これだけじゃないんだろーな。)

中学生の頃に体の小ささのせいで大変だった事が、いろいろ思い出されてきて、不安はますます増していった。

風呂から出ると、絵美はあることを思い出した。

「服…無いじゃん…」

絵美の家では毎年要らないものは容赦なく捨てられていた。フリーマーケットに出すのでも、古着屋に売るので
もなく、焼却場に直行で。

「あーもう…あの変態の住処を見つければ呪いを解いてくれるって言ったけど、買いに行くしか無いのか…それ
とも」

絵美はインターホンに手を伸ばし、

「セバスチャン!居る!?」
「は、はい!ん…どなたでしょうか?」
「あー…絵美よ、絵美!声がいつもより高くて背が低いかもしれないけど!」
「確かに、声の特徴は似ていますが、念のためお姿を拝見させていただきます」
「えー!?今、服着てないのよ!」
「洗面所にある替えのタオルで体を巻いてください、それしか申し上げられません」
「わ、分かったよ…」
「では、5分後に伺います」
「お願いだから、3分で来て…あっ」

言い終わる前にインターホンは切れた。絵美は、タオルを体に巻きつけ、高木を待った。

「お待たせしました…ふむふむ…」
「あんた、何処見てるの…」
「あなたの、ほくろの位置です、一つは特徴的な位置にありますし…」
「こら、胸を覗き込むな!」

絵美が蹴り上げようとするが、当然のことのように受け止められる。

「その蹴りの型、確かに絵美お嬢様のようですね」
「はぁ?あんたそんなに空手得意だったっけ?」
「いえ、言ってみたかっただけです。それに、中1から空手をやっている少女、というのも珍しいですから、判
断材料になったのです」
「そう…」
「それで、なぜそんなに小さくなっているのですか?あの由里さんというお友達に関係が有ること…でしょうけど」
「その通り、同じ奴に呪いをかけられたの。雨水に当たらないと、体がどんどん小さくなっていくみたい。それ
で、今のところは服が欲しいんだけど…アタシだけじゃ出られないから…手伝って」
「お嬢様がおっしゃるなら。しかし、どのように?そのお姿では、外にでるのは不可能でしょうし…かといって、
私が選ぶ服では納得行かないでしょうから…」
「うん、だから私は付いて行くよ、ただし車の中で、あとはできるだけ外から商品が見えるお店を選ぶようにし
て、車の中からアタシが選ぶってことで」
「かしこまりました。それでは、車を用意して参ります」
「お願い」

絵美は、車を回して戻ってきた高木と街に出た。程なくして、通い慣れた店に到着し、すぐに白いスカート、キャ
ミソールとブラウスを買うことができた。車の中で、絵美は服を着て、高木に言った。

「ふぅ…サイズは少し小さめだけど、これからもっと小さくなることを考えれば、ちょうどいいくらいか。高木、
どこかでなにか食べよ!私のおごりで!」
「お嬢様、よろしいのですか?」
「いいよ!何がいい?」
「それでは…アイスクリームなどは、いかがですか?」
「え、そんなんでいいの?」
「アイスクリームはお嬢様の好物ではなかったですか?」
「う、うん」
「では、そういたしましょう、この辺りには駐車場がございませんから、アウトレットのフードコートにしましょ
うか」
「またそんな安いところで…大きい駅のデパートに行こう」
「かしこまりました」

二人は車を走らせ、隣町のデパートに向かった。ジェラート屋でアイスクリームを食べる二人。

「あんたの選んだの…ストロベリー味…って…」
「何かお気に召さないことでも?」
「いや、あんたって甘党なんだね」
「まあ、いいではありませんか。実は、控室にもとっておきのショートケーキがありましてね」
「うわぁ…じゃ、さっさと帰って楽しみたいわけだ」
「いえ!決してそういう訳では!」
「あんた、大声出しすぎると目立つよ?ただでさえ目立ってるのに…」

周りには若いカップルだけだが、絵美と高木は、少女を誘拐している大男と間違われても仕方ない風貌であった。
先程から視線がチラチラと飛んでくる。

「…はぁ…アイスクリーム屋と言われた時に悪い予感がしたけど、こんなになるとは…」
「お嬢様、残りは車の中で食べましょうか?」
「いや、食べるの遅くなってるから食べてる間にアイスが溶けて落としちゃいそう」
「それは、私の手間が増えますね、はは…」
「うん。まあ、10分もかからないし、大丈夫でしょ」

二人は、程なくしてアイスを食べ終わった。

「服、ちょうど良くなった…ってことは、小6くらい…起きてから、4時間経ったから…1日で6歳くらい小さ
くなっちゃうのか」
「おや、もうこんな時間ですか…家に戻って、昼食にしますか?」
「ううん、外食にしよ!その後、もう一回服買おうか、もっと小さくなった時の」
「かしこまりました。ファミリーレストランにしましょうか」
「うん、お子様ランチ程度でいいかな」
「では、まいりましょうか」

ファミレスでは、窓際の席に座った二人。

「懐かしいな、昔は、「わぁーおそとみえるー!」とかはしゃいでたなー」
「この頃は、ファミリーレストランにいらっしゃることが無かったようですね」
「うん!デパートに入ることすらあまり無かったし。アウトレットのほうがお店多いし、他にもお店がいっぱい
あるからね」
「そうですか」
「うん…」

(あれ、なんか変な気持ち…これって…いやいや、高木には無いでしょ…)

「そういえば、あんた独身だったっけ?」
「うっ…それは話題に出さないでください…」
「えー?」
「お願いですから」
「わかったよー」

そのとき、微かではあるが安堵のような感情が絵美に生まれた。

(マジかよ…)

二人は、その後は会話をすることなく、昼食を食べ終わった。

デパートを出た二人は、駐車場に向かう。高木のことについて考えている絵美は、空模様が怪しくなっているこ
とに気が付かなかった。駐車場もすぐそこというところで、絵美は言った。

「さー服屋さん行こうか!」
「あ!お嬢様!」
「え…何っ?…あっ…」

絵美の体に、水滴が当たった。絵美はその瞬間、体が熱くなったような気がした。

「や、ヤバっ…」

と絵美が言う間に、雨が降り始め、すぐに土砂降りになった。勿論二人はびしょ濡れになり…

ググッ…

絵美の呪いの効果が解け始めたようだ。絵美の背丈がぐっと伸びていき、スカートから足が伸びてくる。

「い、いちおう車まで、行こう」
「私がお運びいたします!」
「え、ま、まって…」

絵美の言葉を無視して、高木は絵美の背中と膝を持って抱きかかえて走る。

「セバスチャンにお嬢様抱っこされるなんてー」
「さあ、着きましたよ、中に入ってください」
「い、いや、ここで雨から逃げたらいつまた当たれるか…」
「そ、それはそうですが…」
「いたたっ…こ、腰が…」

ビリッ…という音を立てて、スカートが絵美からずり落ちた。キャミソールもかなり小さくなっていて、下着と靴だけが絵美の下半身を隠している。

「胸が、熱い…」
「お嬢様…っ?…」

キャミソールの胸の部分…というよりは、小さくなって胸だけを隠しているキャミソール全体が、膨らみだした。
だが、すでに伸びきっているキャミソールに押されて、膨らみは上下に逃げている。

「息が…できない…」
「お嬢様、いま、脱がせて…っ!…外れない!」

男の手でも、剥がれないほど服は圧迫されていた。

「くそ、こうなったら…えいっ!」

ビリッ!ボンッ!

高木が服を引きちぎると、絵美のHカップに戻った胸が飛び出すように出てきた。

「んはぁっ!…た、助かった…」
「さぁ、お嬢様、中へお入りください!」
「う、うん…」

絵美は今や伸びきった下着と、靴だけというあられもない姿になっていた。絵美が車に入ると、高木は毛布を絵
美にかぶせた。

「さあ、帰りましょう…」
「待って、確かに今の姿じゃ恥ずかしいけど、明日また小さくなって自分で外に出られないんじゃ今日の二の舞
いだから…また同じ服買ってくれる?」
「仰るとおりに、しかしお嬢様は家でお休みください」
「うん」

家に戻ると、高木は早速出て行った。部屋着を来た絵美は、考えた。

(今日みたいににわか雨が降るとあんなことになっちゃう…さっさとあいつらを探しだして呪いを解かないと…
でも、由里がいないと人払いの魔法で簡単に避けられてしまう、よし、明日は由里の家に行こう!)

(にしても、高木には…いろいろ手間かけさせたな…それに…あーもうっ!)

1時間後戻ってきた高木に、絵美は大事にためていたケーキ屋のポイントカードを褒美としてプレゼントした。