乳タント 無色

帝国城摂政 作
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 『576プロダクション』はアイドル界の中ではそれなりに名の知れたプロダクションではあるが、それでも妥協は許されてはいない。『576プロダクション』は乳タントや乳メイタントを中心とした女性アイドルの宝庫としては有名である。けれでも男性アイドルが多く所属している『801プロダクション』などの他のアイドルプロダクションや、シュレース星人などのアイドルに引けを取らない可愛さや美しさを持つ宇宙人など、『576プロダクション』のアイドル達の存在を脅かす存在が多い。
 だから『576プロダクション』は新しいアイドル、つまりはアイドル候補生を求めていた。
 今日もまた俺、木崎優斗は『576プロダクション』に申し込んだ人達のプロフィールを見ていた。

「葛城帆夏(かつらぎほのか)、16歳。身長、体重共に特出すべきものは無し。スリーサイズは尻が大きめで、乳タントとしての特徴はっと……あぁ、またこいつも乳タントか」

 俺はそうぼやきながら、送って来たプロフィールを見てそう呟いた。今日だけで乳タントの希望者は6人目、どうもうちの事務所は乳タントや乳メイタントで回っていると思われがちみたいである。比率的に言えば、普通:乳タント:乳メイタントのアイドルの比率は4:1:1とうちの事務所はそう言ったアイドル構成になっているはずなのにも関わらず、応募してくるのを見ると乳タントや乳メイタントからの応募が多い。恐らく赤嶺比叡や悠木紫苑と言ったトップアイドルや服飾関係で有名な白銀彩雲など、印象力が強いアイドルが多いのが理由の1つだと考えられるが。

「それにしたって、売り込むのが弱いんだよな。最近のアイドル応募生は」

 一応、こちらもプロである。本人が気付かない所を売りに出すと言う事も出来る。しかし、最近の応募者達は……はっきり言ってインパクトが薄い。

 『笑いに比例して乳が大きくなる』。
 『触った場所の感触を胸の柔らかさにする事が出来る』。
 『谷間からお湯を作る事が出来る』。
 その他、エトセトラ……。

 俺達が求めているのはアイドルであって、決してびっくり人間でないと言うのに。

「とりあえず、『触った場所の感触を胸の柔らかさにする事が出来る』と言う宮本鉋(みやもとかんな)さんくらいは面接をしても良いかな、と」

「完全にあんたの趣味じゃない」

 『面接』と書かれた印鑑を宮本鉋さんのプロフィールに押している俺の頭が物凄い勢いで叩かれた。頭の痛みを押さえつつ、振り返るとそこにはスリッパを持った赤嶺比叡の姿があった。どうやら撮影からの帰りらしい。分厚いコートに身を包んで、こっちを睨みつけている。

「どうやって『触った場所の感覚を胸の柔らかさにする事が出来る』と言うのが取り柄のアイドルを売り出すつもりよ。興味本位で一時期話題になって止めるのがオチじゃない」

「そこは……ほら、踊りや歌を覚えさせて……」

「踊りや歌でカバーできる範囲を超えているわ。そんなのがうちのアイドル事務所に所属したら、多分間違いなく数か月以内に辞めると思うわ。だから、夢を見させない方が良いに決まっているのよ!」

「ざっくりだな……。どうしてそこまでこの会った事のない宮本鉋さんに拘るんだよ」

「そ、それは……決して握手するたびに胸の感触を優斗に覚えさせようとするんじゃないかと言う事を危惧して居る訳じゃあないんだけれども……」

 そんな事をする訳ないだろうに。いや、能力的には可能だろうけれども。しかし、いつもの赤嶺比叡だったら指摘しないはずなのに……。もしやまたくしゃみによって、歳が若返っているとか?
 ……だったら、あり得るな。多分、あのコートで見えない彼女の身体を大人に見せる大きな胸部にはいつものように『-○』と書かれたお決まりの文字が浮かんでいて、その分精神年齢が若返ってこんな心配をしているのだろう。そうだよな、そうに違いない。

「分かった。こちらからしても、辞める理由が大きそうなアイドルを雇っても得じゃない。今回は機会が無かった事にしておいて……あぁ、でも『面接』の印鑑を押してしまったしな。どうするか」

「面接だけでもしてあげたら? 満足して帰るかもしれないし」

「年齢も17歳って書いてあるしな。記念受験ならぬ記念応募の可能性が高いな。よし、それで行くか」

 とりあえずそう思いつつ、俺は宮本鉋のプロフィールを机の中にしまう。けれどもこの宮本鉋も十分に思慮して選んだつもりであり、ぶっちゃけ今応募してくる奴らはここまで考えなければ採用出来ないほどに押しが無い。
 そう考えて、次の人を選んでいる時だった。赤嶺比叡が彼女のプロフィールを発見したのは。

「優斗、この子は?」

「……ん? どれどれ?」

 俺の肩に無理やりねじ込むようにして見ているので俺は彼女のダイレクトな胸の感触を受けつつ、俺はその胸の柔らかさに負けないようにしながらそのプロフィールを見る。そこには、なんともまぁ、地味な少女がプロフィールに載っていた。クラスに1人は居る地味だけれどもどこか可愛い女の子。正直、今のままではどうかと思う少女だったのだが、比叡が指さす場所を見て考えを改めた。
 そこには良い項目が記載されていた。


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 乳タントアイドルNo.8(不合格)
 名前;宮本鉋(みやもとかんな)
 年齢;17歳
 身長;147cm
 3サイズ;90(G)、57、84
 乳タントの特徴;触った場所の感覚を胸の柔らかさにする事が出来る。
 イメージカラー;無色
 売り;特に見つからず
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