開放と終焉

tefnen 作
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英一が映子になってしまった騒動の後、拓也は佳奈に睨まれながら、絵美から、自分が惚れた相手がもともと男
だったこと、落ちた時の豊満な体型は呪いのせいだということを聞かされ大いに落胆した。
由里は佳奈と英一に負い目を感じたがふたりともそれほど気にしていない、というより後者はもとから英一
だった記憶が無いので怒る理由がなく、そこでわだかまりが起きることはなかった。
むしろそれからも、佳奈と映子となった英一は常に行動を共にし、前にもまして恋仲が深まっていくが、それは
また後のお話。

その日は由里は取り敢えず全員を家に返した。魔力が奪われ疲れがひどかった由里は、その次の日は寝たまま
過ごすことになり、気づいた時にはまたその次の日の朝になっていた。

由里は携帯電話に絵美からメールが来ているのに気づいた。

「なになにー?『英一先輩があんなことになっちゃったから、由里はもっと訓練しないといけないね!』…あんな
こと…?…あ、そういえばあんな事が…呪いの内容、忘れちゃった…」

フリードリヒが呪いのことについて話している間、由里は体力の衰えから集中力が続いていなかったようだ。

「あっ…拓也くんからもメール来てる。『この前見逃しちゃった映画、また明日見に行かない?』…」

一瞬間が開いて、ようやく、

「えーっ!やった!あ、でもどうしよう、これ、昨日送られてきてるから、今日行くってことだよね…
『うん、行くよ!』と…あ、送っちゃった!また変身しちゃうかもしれないのに…いや、今日は大丈夫だよね、
おとといは夜なのに体が元に戻ったんだから」

由里は、その理由が呪いの効果が弱められたのではなく、自分の魔力が吸い取られたからだということすら
忘れていた。

「とりあえず、朝ごはん食べて、支度しよっと!」

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そして、その日の夕方。

「結構映画長かったねー」
「そうだねーでも、素敵で、でも、切なかった…」
「僕も、一瞬涙が出ちゃったよ」

映画を見終わった二人が、待合室に戻る。すると、窓の外は赤くなっていた。拓也は途端に不安な表情になった。

「あ、由里ちゃん、体、大丈夫…?」
「うん、平気だよ!」

窓の外で日が地平線に沈んでいく。

「ほら、何も起きないよ!」
「本当だ。それじゃ、これからどうしようか?」
「パスタ屋さんに行かない?ちょっと、お腹空いちゃったし、家まで遠いから」
「分かったよ」
「えへっ、ありがと!」

由里の輝くような笑顔に、拓也は安心したようだ。

スパゲッティ屋に二人が到着した頃には、空は夕焼けを通り越し暗くなっていた。そのお店はその日オープン
したようで、かなり賑わっていた。二人は、それぞれの食事を頼むと、話し始めた。

「由里ちゃん、おとといの事は謝るよ」
「え、いいよー気にしてないから…」
「いや、僕が捕まらなかったら先輩はあんな事にならなかったんだ。呪いのことを聞いた時の先輩の表情を思い
出すと申し訳なくなっちゃって…」
「そうだね、先輩に大変な迷惑かけちゃった…」
「それに、僕が開放された時は、先輩だと気づかずに変なこと言っちゃったし…綺麗だとか…かわいいとか…」
「…そうなの?」
「え?」
「ごめんね、ちょっとおとといの事あまり覚えてないんだ」
「あ、そうなんだ…じゃあ…」
「でも、私だったら、かわいいって言ってもらえたら嬉しいな」
「…かわいいよ」
「えっ」
「…由里ちゃんも、かわいいよ」

由里の髪がバサッと伸びる。

「あ…あ…ちょっと変身しちゃった…」
「あ、ごめん!そんなつもりじゃ…」
「大丈夫だよ」

由里の髪は徐々に元に戻っていった。

「ありがと!」
「うん」

店員が料理を持って近づいてきた。

「お待たせしました〜!カルボナーラと、冷製トマトスパゲッティです」
「「ありがとうございますー」」
「お楽しみください」
「うわぁー美味しそう!レシピ教えてくれないかな!…あ、ごめん、食べよう、折角の外食だし、美味しくね!」
「うん、頂きます!」
「いただきまーす!」

由里が食べたトマトスパゲッティはこれまでにないほどの美味しさだった。

「うーん、美味しい!」
「本当?一口、いい?」
「うん…いいよ!」

拓也もとても美味しく思ったようで、

「美味しい!こんなに美味しいスパゲッティ屋さんができて、良かったね!」
「そうだね!」

そして、あっという間に二人の皿は空っぽになった。

「美味しかったー」
「うん!」
「それじゃ、もう夜になっちゃったし、帰ろうか…」
「もうちょっとお話したいけど、仕方ないね…もう夜7時みたいだし」

由里が店にかかっている鳩時計を見ていった。その時、鳩時計から小さな鳩の模型が出てきた。しかし、一向に
鳴かない。それどころか、人の声で賑やかだった店内が、静まり返っていく。由里が他の席の人を見ると、目が
虚ろになっている。

「あれ、どうしたの…っ!」

ドクンッ!

由里の体に、衝撃が走った。

(あれ…?どうしたの、私…ぐっ!…)

由里の胸の部分が盛り上がってくる。その先に、突起が由里の拳くらいの大きさまで出てくる。由里は思わず
両手で胸を隠す。

(なんで、こうなるの…?拓也くんが、見てる前で…あれ、拓也くん?)

拓也を見ると、周りの客と同じように目が虚ろになっていた。

(とりあえず、元に戻るように念じよう!)

由里が念じると、胸の盛り上がりは小さくなり始める。しかし、突起は一向に小さくならない。

(そんな…くっ!)

ドクンッ

とまた衝撃が走る。すると、由里のパンツがビリっと破れた音がし、由里の視線が若干上がった。尻が膨らんだようだった。

(もっと、もっと念じないと!)

その膨らみが、震えながら元に戻っていく。が、

ボンッ

そのもとに戻った分が移ったかのようにお腹が膨らんだ。

(なんで、なんで!)

由里は胸を抑えていた両手を離し、お腹をギュッと抑えると、

ムクムクッ…ビリッ

お腹が凹むと同時に抑えられていた胸が急に膨らみ始め、一杯になった服から嫌な音がした。

(ぐっ…)

今度は胸を抑える由里。すると胸がしぼんで尻が膨らみはじめ、その圧力で椅子がガタッっと動いた。

(もうーっ!)

と由里が感情を爆発させると、それが体に現れたかのように急に膨らんだ胸が服を破って前に飛び出した。
そして、トクントクンと揺れながらどんどん前に膨らみ、スパゲッティの皿を押していく。尻も爆発的に膨らん
だ。

(あれ、でも手足が…)

由里は、自分の体の全体というより、胸と尻だけが大きくなっていることに気づいた。

(おっぱいが大きくなるなら、全部大きくなってよ!バランス悪い!)

と由里が思わず考えると、手足も胴もバンッと伸び、同時にムチムチになった。服は吹っ飛んでしまった。由里
の乳房は机を半分くらい占める潰れた球になって横たわり、尻は椅子に食い込み、足の幅は椅子の幅を上回る
ほどになっていた。

(あーあ…みんな見てないからいいけど…また、あの人達の仕業なんだろうな…)
「その通りだぜ、お嬢ちゃん!」
「うわぁ!なんだ、カッツェさんか…」
「このパスタ屋には何の非も無ぇけどよ、俺達が乗っ取ってやったのさ。今日だけな!お嬢ちゃん、その格好
じゃ帰れねえだろ!」
「それは、そうだよ。裸で家まで帰れないもん…」
「だから、俺達のいうことを聞くしかねえってわけだ!」
「この前聞いたばっかりだよ…」
「そんなことは関係ねえ!今度も、呪いをかけてもらおう。今度は、この弱気な野郎にな!」
「えっ!?」
「あのエイイチみたいに、体型が変わるやつだよ、しかも触るだけじゃなく見るだけで、だ!」
「…」
「ほら、これが呪いの紋章だ!」
「…そんなに…」
「なんだ、さっさとしろよ!」
「…そんなに女の子の体を見たいなら…」
「お、おい…まさか…」
「…あんたがなればいいじゃない!」

由里がカッツェを鋭く睨みつける。すると、カッツェの体が吹き飛ばされ、壁にはりつけになったように固定
される。ローブと服は吹き飛び、下着だけになってしまった。その老いた、しかし筋肉質な体は、痩せこけて
肌が灰色だった。
由里は豊満な体で椅子から立ち上がり、カッツェに近づいていく。

「お前、また魔力が、暴走して…」
「黙って!」

カッツェの口は、魔法で縫い付けられたように固く閉ざされた。由里はカッツェの前を左右に往復しながら話し続ける。

「カッツェさん…散々いやらしい事しておいて、ここは小さいんだね…じゃあ、なくなってもいいよね!」
「むぅぅぅ!」

カッツェの下着の膨らみが消えていく。

「魔法があるなら、筋肉も要らないだろうし?」

筋肉が萎縮し、全体的にガリガリになってしまう。

「シワだらけで、汚い肌…きれいにしてあげるよ」

灰色だった肌から黒い粉のようなものが落ち、真っ白になる。シワは引き伸ばされ、きめ細かい肌になる。全身の毛は、跡形もなく消え去ってしまった。由里は床に落ちていた紙切れを拾うと言った。

「これが、呪いの紋章だったよね。良いよ、この呪い、掛けてあげる。カッツェさんにね!」

すると、カッツェの痩せこけた手の甲に紋章が刻まれ、同時に黒い光が発せられる。呪いが発動したようだ。
カッツェは、目をつぶった。

「なんだったっけ?見るだけで体型が変わるんだよね?じゃあ見てもらわないとね!」

由里がそう言うと、閉ざされた口とは反対に、カッツェのオッドアイが無理やり開かれる。

「もう、喋ってもいいよ?じゃあ、見てよ、私の体型!」
「ぎゃあああ!痛い!し、死ぬ!」

カッツェの全身の骨がゴキゴキ言い始める。骨盤がグキグキッと引っ張られるように広がり、まっすぐ伸びてい
た足が左足からグキッと内股になり、右足が続く。

「これが先輩が感じていた痛みだよ!思い知れ!」

手足の指がボキッという音とともに細くなり、肩は下に引っ張られるようになで肩になる。頭蓋骨が作り変えら
れ、無粋だった顔が端正になっていく。

「はぁ…痛かった…」喉仏も消え、高くなるカッツェの声。
「ガリガリで見てられないよ、カッツェさんの体…もうちょっと太くしたら?」

骨格は女性のものになったカッツェの乳首が、巨大化し始める。

「私の、もっと大きいよ!ほら!」

由里が自分の胸を見せつけると、乳首はさらに上に引っ張られるようにギュッと大きくなる。

「でもそれだけ大きくても、仕方ないよね!」

その巨大な乳首以外まっ平らだった胸板が、徐々に膨らみ始める。

「抵抗しちゃだめだよ、カッツェさん!」

由里が睨むと、膨らみ方はかなり早くなる。

「胸が、熱い!熱いーっ!」
「おっぱいだけ大きくしても、バランス悪いよ」

由里と同じくらいの大きさになっていた乳房の脂肪は、周りに潰れるように広がっていく。

「皮膚が、皮膚が剥がれる!」
「大丈夫、剥がれないよ。ただ、脂肪が通り抜けてくだけだよ…」

潰れた脂肪は、いきなり下に移動を開始する。

「―っっ!」

何かが剥がれるような音を出しながら、移動していく。そして、つま先まで移動すると、ふくらはぎにくっつい
た。
そしてまた、胸が膨らみ始める。今度は、由里の倍以上に膨らみ、張りもものすごい。

「胸が、破裂しそうだ!」
「わぁ、おっきいね!これくらいあれば、2,3回で足がいっぱいになるよ、でももう少し早くしようか」

すると、張りに張った乳房は縮み始め、その分の脂肪が足に溜まっていく。これが何回も繰り返されて、腰より
下は張り裂けそうなほど脂肪がついた。この頃には、カッツェはあまりの痛みに放心状態になっていた。

「あーあ、それじゃ、一気にやっちゃおうか」

乳房が更に倍近く大きくなり、その張りのせいで真球になっていた。そして、ぶるんと震えるとぎゅーっと
縮んで行く。脂肪は皮膚の下を波紋を作りながら移動していく。それは腰や手や顔に移動していくが、

「あれ、パンパンになっちゃってる」

その手は豚のようになり、顔はまんまると膨らんでいた。

「ちゃんとしないとー」

手からまたグキグキという音が聞こえ、更に腕が伸びる。顔は下から絞られるように変形していき、同時に髪が
伸びていった。

「よし、完成ー」

貼り付けにされたままのカッツェの体は、元々のものが想像できないほど変わっていた。そして、それは由里の
今の体とほぼ同じものだった。

「はぁ…疲れたー」

といって、由里も倒れてしまった。魔力を使い果たしたのか、体もシューッっともとに戻っていく。次の瞬間、
周りの客の意識が戻った。拓也も気がついたようで、床に倒れている由里を見つけると、すぐさまテーブル
クロスを引き抜いてかぶせた。隣に倒れている外国人風の全裸の女を見て、拓也は言った。

「ごめんなさい、誰かタクシー呼んでくれませんか!僕の友だちがこいつに襲われちゃったみたいで…由里ちゃん
…また変身しちゃったのかな…」

そして、拓也は寝ている由里を抱え、タクシーを使って由里を家まで送り届け、その夜は由里の世話を見ること
にした。

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場面は変わって、地下牢風の部屋の中でフリードリヒが由里を観察しながら、カッツェに説教をしていた。

「カッツェ、安易なことをしたものですね。あの子の魔力は、こちらに向けられると相当な痛手を負わされる
ということに、気付かなかったのですか?」
「…」
「はぁ、あなたには失望しましたよ。ただ、あなたの今の豊満な肢体は、いいものですが…まあ、せいぜい呪い
に負けてしまわないように、気をつけることですね」
「…」
「この呪いによる痛みは、そのような放心状態を生み出すほど強くはないはずですが…あの子は、痛覚の増強
のみならず、呪いに干渉して最大限の痛みをあなたに与えようとしたみたいですね」

カッツェは、虚ろなその視線の奥で、復讐の炎を燃やしていた。