開放と終焉

tefnen 作
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「で、一体これ、どうしてくれるの」
「まあ、夜が明けるまで待つしか無いでしょうねー。ですから、それまでここをシェルター代わりに使って
ください」
「チッ」

絵美とフリードリヒが話し合っている浜辺の前では、壮大な光景が繰り広げられていた。身長7mの巨人二人が、
海の中で海水浴に来たようにはしゃぎまわっていた。

「由里があんなにはしゃいでるの、初めて見たよ」
「それは、私があまりに落ち込んでいる由里さんの成長している途中の記憶をぱっと消して、新しい記憶で置き
換えたからですよ。由里さんの魔力が弱まっていたおかげで、素直に通りました」
「んなの、わかってるよ…」
「しかし、あなた方2人、相当頑固ですね。私の用意した料理を頑なに拒まれ、ココナッツなどという甘ったるい
ものを召し上がっている」
「はぁっ!?あんたの料理のせいで由里があんなことになったのに、食べるわけ無いでしょ!それに、これに
あんたの料理が叶うわけ無いじゃん!拓也も佳奈もそう思うでしょ!?」
「うん…」
「先輩…」
「だから、あんたの料理なんか金を払われても食べませんよーだ!」
「おやおや、そうですか」

そして、沈黙が流れる。といっても、巨大化した由里と映子がそこら中を駆けまわっているので、一歩ごとに
海岸がドカン、ドカンと揺れた。

「なんか、夢みたい」
「素晴らしい夢ですね」
「いや、確実に悪夢だし。そういえば、ここがどこか聞いてなかったよね」
「あー、ここは、私の「始末所」です。まだドイツにいた頃、何人もの女性を呪いを使って由里さんのように
素晴らしい体型にしてきたのですが、まあ、その体型では日常生活が送れないので、ここで彼女らを療養して
いたのです。中には、そうですね、東京タワーより大きくなって、そのまま1年間戻らない方も…」
「あんた、悪魔以外の何者でもないよね…」
「いえ、私より残酷な魔術師など、両手両足の指では足らないほどいます。今現在も、世界の何処かで由里さん
と同じ、巨乳で巨尻な体型に無理やり変身させられている人が10人はいるでしょうね。しかし、中には…」
「あ、もういいです」
「はい」
「あれ、どうしたの、佳奈?」
「私、先輩たちと、遊んでくる」
「え、大丈夫?」
「うーん…」

佳奈は目をつぶって考え込みながら変身を開始した。ゴゴゴゴと轟音を上げながら大きくなっていく佳奈。服は
変身前に脱ぎ捨ててあった。

「ちょ、ちょっと佳奈!目開けろ!」
「え…え!?」
「おお、久しぶりに20m超えですね!佳奈さんは効率よく魔法を使えるみたいですね。由里さんに続いて、
スカウト対象に…」
「黙れ!」

しかし、フリードリヒが言ったとおり、佳奈は身長24m程度の巨体になり、絵美たちどころか由里や映子までその
腰にも及ばなくなっていた。

「すごーい佳奈ちゃん!」
「あ、先輩!近づいちゃダメ!」
「あ、そうだったーでもでも…」
「ダメったらダメ!拓也くんや絵美を間違って踏み潰しちゃうよ!」

由里と映子はグラマラスな体を持ちながらも精神的には子供のようであった。

「ご心配なく、転送魔法で潰さないようにしますからー!」
「え、じゃぁ…あれ、佳奈ちゃん、同じくらいになっちゃった」

佳奈は、映子が佳奈に触れようとしたのを見て、身長を元に戻していたのだった。

「佳奈、ありがとう」
「どういたしまして。さあ、先輩、遊ぼ」
「うんっ!…うっ!」
「先輩、どうしたの…って私小さくなってる!」
「どうやら、時間のようですね」
「え、早くないっ!?」
「ああ、この世界の時間の流れは、かなり速いのですよ。私の呪いは、現実世界の時間にのっとって発動するものです」

それから1分も立たずに、由里は元の体に戻ったが、映子は成長、巨大化したときを逆にたどるように、またも
や痛々しい音を立てながら小さくなっていた。
しかし由里は、もっと重大なことに気づいた。自分の足が地につかないのだ。

「うそ…」

巨大化しているうちに遠浅な海岸の、浜辺から遠く離れたところに来てしまっていた。水深は2mくらいだろうか。

「いや、溺れちゃうっ!誰か助けて!」
「由里っ!」

佳奈が、由里が溺れそうなのに気づいた。そして、唐突に浜辺に向かって走りだす。

「きゃぁっ!」

由里はその余波に巻き込まれたがなんとか沈まずにすんだ。浜辺についた佳奈は、二本の木を力ずくで折って、
浮きとして由里と映子に届ける考えのようだ。

---

そして、浜辺。佳奈は手際よくココナツの木を根本からむしり取り、由里の方に戻っていった。

「いや、大変そうですね」
「あの3人が戻ってきたらとっとと帰してよね」
「最初からそのつもりですよ。ただし…2人に呪いをかけてからですがね!」
「あんたまだそんなこと…」
「「変態魔術師」、でしたっけ?その「魔術師」が、あなた方にシェルターを与えてなにもしないで帰すと
お思いでしたか?安直でしたね」
「ちょ、あんた!それに、アタシたちは解呪のキスをもうしたのよ!」
「「解呪のキス」?何のことですか?口と口をつけるだけの簡単な行為で、この呪いが解けるとでも?」
「それじゃあ、なんでアタシたちの呪いは解けたのよ!」
「それは…」

フリードリヒはフッと後ろを向く。すると、

「観念しなさい、フリードリヒ!」

貫禄のある女魔法使いの声が響き渡り、フリードリヒに雷撃が加えられた。絵美が攻撃が加えられた方向を見る
と、小さいローブ姿の少女が浮いていた。その声と姿のギャップはゲレンデに現れた、一人の魔法使いのものに
間違いなかった。

「あんた…ハンナ!?」
「待たせましたわね」
「遅い、遅すぎ!あれからこいつが何回呪いをかけたと思ってるの!?」
「申し訳ありませんわ…しかし、それも今日で終わらせて差し上げます。さあ、我が弟子よ、大人しく捕まり
なさい!」

ハンナは雷撃で倒れているフリードリヒを見て言った。しかし、

「残念ですね、それはただの囮です」
「むっ…」

もう一人のフリードリヒが、ココナツの林の奥から出てきた。フリードリヒだと思っていたものは、頭がココナツ
の実でできた木の人形だった。

「今度は、絶対に終わらせます!『気の精霊よ…』」
「そんな詠唱をいちいち行っているようでは、私に到底敵うはずが無いですよ」

フリードリヒはいつの間にか空中にいるハンナの直ぐ側に移動していた。得意の転移魔法であろう。そして、
詠唱に気を取られていたハンナを、肘の打撃でたたき落とした。

「ぐはっ…まだまだ…」

ハンナは地面に激突する前に足元に空気を集中させ、クッションにして打撃を和らげた。しかし、

ドォォン!

「ぐはぁっ…!」

ハンナの後からフリードリヒが重力に任せ落下し、そのままハンナの体を踏みつぶした。大量に血を吐き、
ぐったりと動かなくなってしまうハンナ。

「ハンナ!」
「この程度の戦闘能力で私を捕まえようなどと…管理局の人選ミスですね。マスターは優れた魔法使いという
だけで、戦闘には向いていないというのに」
「あんた、ハンナの弟子なの?」
「ええ、そうです。私に魔法を教え、私の魔力を引き出したのは彼女です。まあ、私といっても…いえ、それは
さておき。しかし、私も、彼女の得意分野である変身魔法の能力を最大限に引き出し、快楽を与えてきました。
このように小さな体では手に入らない快楽をです」
「ちょっと、それって…」
「彼女自身も私を受け入れ、自分自身の体を変えて、最終的には私の言いなりに、しもべになったのです。
そして、弟弟子であるカッツェと共に、父なる地で数々の素晴らしい魔法を…我々二人が追放された後は、
マスターは管理局に勾留されていたようですが。今回は、記憶を改ざんされている…そして、呪いを解いて
まわっていた。あなた達にユーモアでも効かせて、キスが呪いをとくなどとうそぶき、キスをしたのを確認して
解呪したのでしょう」
「それじゃあ、私達…」
「ええ、一般人が呪いを自分で解く方法など最初からありません。由里さんに呪いをかけられた映子さんに
至っては、魔法使いであろうとなかろうと無理でしょうがね」
「…」
「さあマスター、今記憶を元に戻して差し上げます」

フリードリヒがハンナの頭に手を置いて、ぶつぶつ言い出した。

「ううむ、さすが管理局。この記憶施錠の複雑さ…しかし、ふふ…近頃は人材不足なんでしょうか?…これ
ならば…」

解呪の方法がないとわかった絵美は、呆然としながら、隣にいる腰を抜かしている拓也と、遠くでこちらを心配
そうにチラチラと見ながら、由里と映子にぶつからないように慎重に木を降ろしている佳奈を見ていた。すると、
周辺が急に明るくなった。その明かりはハンナから発せられていた。

「さあ、マスター、お立ち上がりください」
「わが弟子よ…この貧相な体でいるのは、もうこりごりだ」

ハンナは、立ち上がった。ハンナのお嬢様口調は消し飛び、艶やかながらも大人しかった表情は、悪意に満ちた
恐ろしいものに変わっていた。

「今すぐに、お前にご褒美をくれてやる」
「有難き幸せ」

ハンナは、ローブを脱ぎ捨て、下着以外は全裸になった。すると、フリードリヒが踏みつぶした時に折れたので
あろう、肋骨が異様な形になっていた。

「む、この傷は…?」
「申し訳ありません、マスターをもとに戻すために多少荒い方法を取らざるを得なかったのです」
「ふむ…それでは仕方がないな」

ハンナがそう言うと、折れていた肋骨がパコンッと綺麗な形に戻った。

「300年前と変わらず素晴らしいお腕前です」
「うむ…それでは」

ハンナが目を閉じると、手足と体がギューッと伸び、ふっくらと肉がついた。髪の毛は長さを増し、ウェーブの
かかったロングヘアに変わった。そこでハンナは目を開けて言った。

「おっと、お前の好みの乳房の大きさを忘れてしまったわ」
「マスターの好きなだけ大きくなさってください」
「そうか…」

ハンナは何も付けていない胸に手を当てると、揉みはじめた。すると、胸はふっくらと盛り上がり始めた。

「あっ…あぁっ…」

揉むたびに快感を得ているのか喘ぎ声を上げるハンナ。その声はさきほどの荘厳さを失い、妖艶なものになって
いる。胸はムクーッと加速度的に膨らみを増し、ハンナは揉むのをやめて、撫で回し始めた。

「こんなに気持ちいいのは…ひさしぶりぃ…」
「相変わらず見事な形だ…」
「これくらいで…いいかなぁ…」

ハンナが撫でるのをやめると、胸は膨らむのをやめた。といってもその時点でハンナの頭のサイズくらいに
なっていた。ハンナが何かを念じると近くに落ちていた小さなローブが黒く染まり、ハンナの胸にまとわり
つき、下着となってその大きい乳房をグッと持ち上げた。

「はぁん…気持よかったぁ…」
「マスター、少しお頼みしたいことが…」
「…ふむ…」

フリードリヒは何かをハンナに耳打ちした。1分くらいして、

「…うふっ…いい考えねぇ…叶えてあげるわぁ…」

ハンナはこう言うと二人の方に向き直った。

「ねぇ、そこのお二人さぁん」

絵美は一瞬間を置いて、気を取り直したように言い返す。

「な、なによ!」
「あぁん、そんなに怒鳴らくてもぉ。あなた達を、いいカラダにしてあげるだけなんだからぁ」
「いいカラダって、おっぱいやお尻を大きくしてなにが嬉しいんだよ!」
「まぁ、いけない子ねぇ。折角あたしみたいな、ちょうどいいスタイルにしてあげようと思ったのにぃ。でも、
フリードリヒはあるコトをしたら大きくなってもらいたいみたいなの。そ、れ、はぁ…」ハンナは絵美に囁いた。
「えっ!?」
「ふふっ。それじゃ、存分に楽しんでねぇ!」

ハンナは絵美と拓也に同時に魔法をかけた。

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由里と映子は、佳奈の持ってきた木になんとか掴まり、その木を佳奈に動かしてもらって岸辺に向かっていた。

「ふうっ…よかったぁー」

由里が安堵の溜息を付いていると、

「由里、二人の様子、おかしい」

はるか上に視線がある佳奈が言った。

「え?」

由里が岸辺の方を見ると、絵美と拓也が空中に浮いている。しかも、何かに縛られたかのように手足は四方に
伸ばされている。しかも、二人とフリードリヒの他に、見たことのない女性が由里の方を向いていた。

「由里、ちゃんと掴まって。急ぐ」
「うん、分かった!」

由里が浜辺に着くと、フリードリヒが近づいてきていった。

「さあ、私と契約する時が来たのです」

由里は、迫るフリードリヒに、これまでにないような恐怖を感じた。