環境呼応症候群 高度の子

tefnen 作
Copyright 2014 by tefnen All rights reserved.

ここは、我々が住んでいる世界とは別の、しかし我々とよく似た環境の、言わばパラレルワールドと呼ばれる所。

この世界では、100万人に1人の確率で、特異体質が発現する人物が現れる。発現、と言ったのは、
その体質は生まれつきではなく、思春期から、青年期にかけての数年間だけ、限定された人々にのみ
現れるからだ。その現象は、女性に限られ、その性徴や、身体全体が一定の指標にしたがって変化
するという症状が共通していた。

一応の命名がなされ、「メタモルフォーゼ症候群」と安直な名前が付けられたり、「今日のメタモル
さん」などというテレビのコーナーが出来たりした(ただしこれは取材許可を下ろした人数が少なすぎて
すぐに潰れた)が、多くの若い女性は、自分にこの症状が出ることは、あり得ないと思っていた。

---

私は、藤嶺高音(ふじみね たかね)。体は小さいけど、高い所に登るのが大好きなの。でも、
「メタモルフォーゼ症候群」に掛かって、あんなことになるなんて、思っても見なかったわ。初めては、
こんな感じだったの…

私は、ある日、突然耳鳴りを感じた。すごく大きくて、頭が痛くなっちゃったくらい。でも、お医者さんに
行っても健康体だと言われて、安心してたわ。
それで、その次の週の日曜日、友達と東京スカイツリーの展望台に行こうとしたの。私はそれがとても
楽しみで、毎日胸を高鳴らせていたわ。

「ついに、私があの高さまで登る時が来たのね!」
「ふじちゃんは本当に高いところ好きだねー」

ふじちゃんっていうのは、私のあだ名ね。その時行った子は、天真爛漫で、まさに風の子と言った感じ
で、でも、カラダの方はオトナで、クラス中から羨ましがられてたわ。そして、私達はタワーの
エレベーターに乗り込んだ。

「わぁっきれいなエレベーターね!」
「そうだねー」

ドアが閉まると、私はディスプレーに表示されてるエレベーターの速度に気がついたわ。それはギュー
ッっと上がっていって、そしたら、足にかかる重さが重くなっていったの。

「すごいカラダが重く感じるね」
「ね、このエレベーターものすごく速いよ」

だけど、すぐに私は異変に気がついた。その重さが、エレベーターの速さが変わらないのに、どんどん
重くなっていくの。なんだか、服もキツイような気がしたわ。だけどエレベーターの中が暗くて、何がどう
なっているのか分からなかったのよ。でも…

「あれ、ふじちゃん、背高くなってない?」
「えっあれっ?」

友だちに言われて気がついた。最初はその子のほうが目線が高かったのに、その時は、私の目線の
ほうが高くなっていた。その子だって結構背が高いのに!でも、それだけじゃなかった。エレベーター
のドアが開いて、明るくなった瞬間、私は信じられないものをみたのよ。ぺったんこだった自分の胸の
部分に大きな膨らみがくっついて、服はぱつんぱつんになってた。しかも、おへそは出てるし、
おしりも、信じられないほどパンツを押し上げていた。その上からお肉がちょっとはみ出るくらいにね。
今だから笑えるけど、そのときの混乱ったらすごかったわ。

「えっ!わ、私!」
「落ち着いて、ふじちゃん!」
「落ち着いてなんかられないわよ!私のカラダ、どうしちゃったのよ!」
「分からないけど、どうする?第二展望台は諦める?」
「あっ…でも、これ逃したら、多分、もう来れないよね…」
「え、行くの?」
「えぇ…」

あの時の私は倒錯していたとしか思えないわ。だって、私は「メタモルフォーゼ症候群」の事は知って
いたし、それが、あの高さに関係していることは容易に想像できたはずだもの。だけど、私は2つ目の
エレベーターに乗り込んでしまった。それが運の尽きね。

「ドキドキするわー!」

私は、現実逃避も相まって、高いところからの風景の期待に胸をふくらませていたわ。実際に、私の
おっぱいは膨らんでいたんだけどね。そしたら、ビリッという音がして、いきなり胸への圧迫感が
消えた。服が破れちゃったのね。あの時の絶望感と言ったら、それは凄まじかった。全身から血の気
が引いていった。だけど、とっさに破れた服を帯状にして、胸に巻きつけた。結構胸が変形してくれた
おかげで、大切な部分は隠せたわ。でも、第二展望台に付いた時には、エレベーターの扉の枠に頭を
ぶつけそうになったし、私は私の頭くらい大きくなったおっぱいをさらけ出した半裸の状態で、すぐに
警備員さんに保護されちゃって。本当に恥ずかしかった。

でもそれからは、登山するときなんかは特別大きな防寒具を持って行って、対処してるわ。それでも、
おっぱいが服の下からはみでちゃったり、ズボンの股が裂けちゃったり、背の高さが3mくらいになっ
ちゃうのはどうしようもないけれどね。