混乱の中(番外)

tefnen 作
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翌日、映子の要望で佳奈は昨日の映子と同じくらいの身長170cm、バストは
Oカップまで大きくなった。

「じゃあ、先輩…」
「うんっ…あれ、今日はそんなに痛く…」

成長する映子の体からは何も音は聞こえてこず、全体が均等に成長していく。
だが、

「あれ、服が、伸びな…くるし…たすけ…」

よく伸びるはずの服が伸びない。逆に、ギュギュッと映子の体に食い込んで
いく。

「先輩っ!今破って…あれっ…なんで!」

佳奈が服を引きちぎろうとするが、鋼鉄の鎧のようにびくともしない。行き
場を失った胸が上に逃げ襟をビリッと破くまで、映子は息をすることができ
なかった。

「良かった…」
「うん…あれ…なんだか…」
「先輩、っ…」

映子の顔には淫らな笑みが浮かんでいた。

「気持ちいい…」
「え!?…もしかして、これも…」

佳奈の脳裏にフリードリヒの一言がよぎった。

『変身後に精神力を少し回復してくれるという設計にしてあります…』
「(精神力を回復って、これじゃ麻薬みたいじゃない!)先輩!しっかり
して!」
「あ…佳奈ちゃん…ごめん、なんだかぼうっとしちゃって」
「先輩、毎日、私みたいに、いくらでも大きくなるような体に触れるのは、
よくない」
「えぇー?…おっきくなるの、気持いいのに…それに、もうお外で大きくなる
のは、やだよっ」
「このままだと、きっと、際限がなくなる。明日は、もっと大きくなって、
とか言う」
「あっ…」
「(あれ、気づいてなかったっ!?わ、私としたことが、先輩になんてことを
吹き込んじゃったの)」
「大丈夫だよ…多分…」

---

「ね、ちょっとだけでいいから、もうちょっと大きくなってーっ!」

翌日、映子は変身する前に佳奈に懇願した。

「先輩っ!…仕方ない、少しだけ」

佳奈は昨日と比べてさらに身長を5cm伸ばしたが、バストとヒップは変えな
かった。

「おっぱいはー?おしりはー?」
「今日はこれだけ!」
「明日は大きくしてね!」

映子は佳奈の手に触れた。すぐにムクムクと胸が盛り上がりだした。

「はぁ…」
「今日はお服脱いであるから、大丈夫…あれ、おっぱいどこまで大きくなる
のっ…」

水風船のように垂れながら大きくなっていく乳房は、地面すれすれまで伸び、
乳首が地面に触れると、そこで垂れるのをやめて張っていった。

「おっぱい重くて、取れちゃいそう…それに痛い、爆発しちゃう!」

一方で映子の体は大きくならず、乳房はその先っぽを支えにして、とうとう
体の大きさに追いついてしまった。

「おっぱいがチクチクしてしびれちゃいそう…うっ」

さらに倍くらいまで大きくなり、完全に乳房が地面に横たわるくらいになる
と、全身の輪郭が波打ち始めた。

「おっぱい…私の…中に…」

映子の体が乳房をゴクン、ゴクンと飲み込むように吸収し、大きくなって
いく。

「入って…きてるっ」

手足は長くなり、体全体がふっくらとしていく。変身が落ち着くと、ウエスト
がきゅっと締まった。

「はぁ…はぁ…」
「先輩…っ…!」

長くなった髪で見えなかった顔を、小さくなった佳奈が覗きこむと、上気して
いるのがわかった。

「はぁ…はぁ…あはっ…」
「先輩、明日は、もうちょっと小さく…」
「だめっ!」

いきなり姿勢を直した映子の乳房はブルンっと揺れ、すぐ近くまで近づいて
いた佳奈を突き飛ばしてしまった。佳奈はなんとか姿勢を保ったが、その衝撃
は大きかった。

「せ、先輩ぃ…っ…」
「…はぁ…!ご、ごめん…佳奈ちゃん…」

我に返った映子が謝った。

「いいの、でも、私は、先輩が心配」
「でも、どうしても大きくなりたくって…」

プルルルルル…

そのとき、電話の音が部屋に鳴り響いた。

「だ、誰から?」
「絵美、みたい」
「絵美ちゃん、って佳奈ちゃんのお友達だったっけ。あの時は挨拶もでき
なかったんだよね」
「そう…とりあえず、電話に出る」

ガチャッ

『もしもし佳奈〜?アタシ、絵美だよ、元気―?』
「まあ、なんとか。絵美も、元気?」
『最高!ところでさ、今由里の家にいるんだけど!』
「うん」
『今度、ISJに行かないっ?英一…映子ちゃんも一緒に!』
「え…ISJ?」
『そーそ!由里、かなり気負いしちゃってて、気分転換にってさ』
「ちょっと待ってて…」

「せんぱ…うわっ!」

受話器を保留にして映子の方に向き直った佳奈の目の前に、目をキラキラ
光らせた映子の顔があった。

「ISJ、行きたいよっ!佳奈ちゃんっ!」
「先輩…(もしかしたら、これを目標に「毎朝変身」を撤回できるかもしれ
ない…)条件が一つ」
「なになに?」
「毎朝、今の先輩みたいな、おっきなお姉さんになるの、やめられる?」
「え?」
「先輩は、体、小さいから、少しも変身するな、なんて言わない。けど、
こんなに大きくなる必要はない」
「う、うーん」映子は体を見ようとして乳房で視界が遮られ、前に足を
伸ばしてもつま先が見えないのに気づいた。「わかったよー」
「約束。はい、小指出して」
「うん」
「指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲〜ます、」
「「指切った!」」

佳奈は、受話器を取り直していった。

「絵美?」
『結果は?』
「オーケー。ただし、先輩に条件だしたから、絵美にも出す」
『なんだい?』
「電車は、ダメ」
『元からその気はないよ。うちの車…』
「も、ダメ」
『えっ?』
「忘れたの、絵美の体型も、いろいろ大きい」
『だから、触れられる範囲にできるだけ入れたくないと』
「うん」
『厳しいねぇ、佳奈さんは!』
「ごめん…」
『いや、気にしないで。できるだけ空いているバスでも予約するよ』
「分かった。ありがとう」
『じゃあ、細かいこと決まったらまた連絡するからね!』
「うん」
『また!』
「またね」

ガチャッ

「やったぁ!」

映子が裸のまま抱きついてきた。佳奈は顔どころか頭が胸の間にスポッと
入ってしまった。

「…」
「ごめんっ!」

スポッ!プルンッ!

「先輩、そろそろ支度」

佳奈はたじろぎもせずに言った。

「分かったよっ」

そして、支度をした映子は、大学に向かっていった。

---

その日の夕方。佳奈は、映子の帰りを待っていた。

「先輩、大丈夫かな…」

ガチャッ

「ただいまーっ!」
「「お邪魔しまーす」」

「っ!?」

佳奈はいきなりの来訪者に気が動転してしまった。

「せ、せせせ、先輩っ!ど、どど、どちら、さまっ!?」
「佳奈ちゃん、落ち着いて!」
「だ、誰のせいで!じ、事前に、れんれ、連絡してよっ!」
「ごめんね!」
「あ、佳奈ちゃん、お邪魔します」
「この子が佳奈ちゃん?映ちゃんと同じくらい可愛いね!」

佳奈は来客の一人が2日前に映子の部室で会った、夏菜、通称「ナカ」である
ことに気づいた。

「あ、ナカさん…と、そちらは?」
「あ、この人がさーや先輩だよ!」
「はじめまして、沙耶香です!この前はごめんね、悪気はなかったんだけど
つい可愛くって、なでちゃった…」
「あ、いえ…映子先輩からかねがねお話は伺っております」
「そんなに固くならなくてもいいわよ」
「そうそうっ!」
「映ちゃんは何か言える立場かっ」
「あ、ごめんなさいっ」

最年長の二人は笑い出した。佳奈も釣られて笑ってしまったが、映子は顔に
疑問符が出ていた。

「佳奈ちゃんは、自分で考えるだけで大きくなるんだってね!それも痛みなし
で」
「私も、映子ちゃんは成長痛か何かで痛がってるのかと思ってたわ」
「あの…それは…」
「でも、本当に痛いんだよっ、全身がバラバラになっちゃいそうになったり、
溶けてなくな…」
「うわー!やめてー!」夏菜が耳を塞いで叫んだ。
「ナカちゃんったら、そういう話弱いよね!」
「仕方ないでしょー?ところで、佳奈ちゃん、何か言いたそうだったけど?」
「いえ、何でも…それと、お夕飯の食材が2人分しかなくて…」
「あ、それなら。ジャーン!」

沙耶香が持っていたビニール袋を机の上に載せた。

「あ、お寿司…いいんですか!?」
「今日は大盤振る舞いなのだ!」
「え…」

夏菜が佳奈に近づいて耳打ちをした。

「さーや、今日はいわゆる徹夜テンションで…」
「あー」
「どうしたの!?」
「いえ、今お吸い物のお湯沸かしてきますね」
「佳奈ちゃんありがとっ!」
「先輩も手伝って」
「あ、うん」

---

「「「「ごちそうさまでした」」」」

「後片付けは、私がやっておくわ」
「あ、私も!ナカちゃんだけにやらせるなんて私の本能が許さないんだから!
後輩と高校生君は休んでて!」
「お世話になります」「ありがとっ!」

夕食を済ませた後、キッチンで先輩2人は片付けを始めた。佳奈は思いがけ
ない状況ながらも、良い人に出会えたと内心喜んでいた。
沙耶香は悪ノリという感じで佳奈に質問した。

「佳奈ちゃんってさ、どのくらい大きくなれるの?」
「え?いえ、試したことは無いんですが、少なくとも身長2mくらいには」
「おっぱいは?」
「えっ?」
「ごめんなさい佳奈ちゃん、徹夜した後のさーやって変なの。いつもはもっと
大人しいんだけど…付き合ってあげて」
「は、はぁ…一応、今の先輩の体くらいには…」
「えっ?映ちゃんの…体…?」

今の映子の体は身長175cmで、それなりに肉付きが良い体型をしていた。

「それ、どんなシチュよ?」
「えっ!?」
「ごめんなさい…」
「それは…実は私には恋人がいて…今はいなくなっちゃったんですけど…その
人を喜ばせようと思って…」
「佳奈ちゃん?もしかして、泣いてる?」
「さーや、ダメなところ突いちゃったわね…ごめんね、この子には悪気は…」
「いえ…その人は、今も私のすぐ側に…いてくれますから…心のなかで…」
「佳奈ちゃん…ギュッ」映子がおもむろに佳奈に抱きついた。
「先輩っ!?……せん…ぱいっ!…」

佳奈は映子の大きな胸の中で泣いた。積もりに積もっていた英一がいない
寂しさと、映子の温もりに、涙のダムが決壊したようだった。泣き止んだ頃に
は、最年長二人は片付けを済ませていた。

「私達、ここにいていいのかな…」沙耶香が切り出した。
「ご、ごめん…なさい…大丈夫…です…」佳奈は先輩二人にバツの悪い思いを
させていたことに気づいた。
「そうだよ、それに、ナカちゃん先輩とさーや先輩は私が呼んだんだからっ」
「で、でもさ…」
「いいの、私、こんなに大きくなって…気持ちよくなってからすぐに戻るのは
無理そうだから、ナカちゃん先輩の体に一回だけなるって決めたの」
「えっ!じゃあ今日はお泊りですか?」
「あれっ!言ってなかったっけ…?」
「ここには、寝袋とかもないですけど…」
「私はソファ、さーやは座布団があれば大丈夫よ。最悪じゅうたんでも
オッケー」
「ひどいよナカちゃん!」

結局夏菜が言った通り、彼女自身はソファ、沙耶香は絨毯の上で寝ることに
なった。