801式軍事実験の効果

帝国城摂政 作
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 男足るもの強くあれ。それが大日本帝国軍事部門の命題であり、絶対条件だった。そのために大日本の軍事実験では、そう言った強さを求める軍事実験がほとんどだった。
 獣や虫と言った生物の強さを研究してその強さを組み込んだり、猛毒を身体の中に入れ込んだり、そう言った人体実験を様々行う事で、人間と言う生き物を理解して、効率良く強くなるための方法を探って行った。
 多くの犠牲があった。多くの金銭が動いた。だがそれも―――――――強くなるために必要な事だった。

 だから、801式軍事実験に選ばれた春日一郎多少尉は光栄にこそ思っており、その上官である俺、九頭竜勇次郎中佐は一郎多少尉の帰りを待っていた。

「まぁ、あいつが行うとされている801式軍事実験は俺が受けた576式よりも遥かに優秀らしいからな」

 俺と一郎多は士官学校の同期である。しかし、俺は彼よりも先に軍事実験、576式軍事実験を受けたから階級が上なのである。この日本軍は強さこそが階級の証明。年功序列など関係ない。故に俺は実験によって電子レンジのように自由に振動を与えるようになったため、一郎多よりも上に居るのだ。
 一郎多が受ける今回の801式軍事実験。それは今までに類を見ない、未知の部分の方が多い軍事実験だと軍内ではかなりの噂になっている。『身体全体が根本的な部分より変わる』と言われており、そんな軍実験を受けたら、振動だけの俺よりも遥かに高い地位に、一郎多は着くだろう。

「あいつを上官として扱わないとな」

 今日、そんな彼が会おうと言ってきた。軍の実験の成果を見せるとか何とか言っていたが、詳しい事は良く分からない。しかし、それならば見ておこうと思っていた。

 ピンポーンとチャイムが鳴り、あいつが、一郎多が扉を開けて俺の部屋に入って来る。

「おぅ、勇次郎。終わったから来たぞ」

「早かったんだな」

 俺はそう答えて、彼の身体を見て愕然とした。ただでさえ筋肉の量で劣っていた俺だが、彼の身体は実験を受ける前よりも遥かに量が増しており、そして1つ1つが光り輝いている。身長だって同じくらいだったのが、彼の方が明らかに20cmくらい高くなっている。801式軍事実験は、かなりの大成功だったと言えるのではないか?

「どうだ、驚いたか?」

 彼の質問に俺は頭を振りながら肯く。

「驚いたもなにも、別人のようにデカくなってないか? 身長も伸びたし、筋肉も増えてるし。これなら俺の超高速振動による城破壊伝説なんて、その身体で粉砕されるだろうな」

「お前の伝説は凄いと思うが、確かに今の俺のこの筋肉さえあればお前が壊したくらいの城なんて物の数じゃあるまい。しかし、驚くなよ、勇次郎」

「これ以上、何を驚くと言うんだ、一郎多」

 と、俺は軽く返していたが、内心ではドキドキした。
 801式軍事実験は身体を根本的から変える実験との噂だった。しかし、身長と筋肉が変わっただけでは、それは過去の実験の強化版と言うだけだ。噂になるほどのような事ではない。つまり……彼にはさらに俺を圧倒するような力が実験によって組み込まれたと考えるべきだ。

「どんな能力かは聞いてないし、それを使うと俺は俺で無くなってしまうらしい。つまり、それだけ強くなるって事だろう」

「おいおい……。今までの実験で、理性を失う実験の末路がどう言う物か、お前も知っているだろう? それなのに、そんなのをこんな場所で披露して良いのか?」

「お前の前で見せるのと、軍の実験紹介と言うパフォーマンスショーで見せるのは同じ事だ。それに、早めに行うべきだと実験を担当した博士が言っていた。
 【面白い事は手早く】と言いながらな」

 「見てろよ、勇次郎。俺はお前を越えて見せる!」。彼はそう言ったまま、空気を大きく吸い込み、そのまま力を入れた。すると、一郎多の身体が光り輝く。

「これが……801式軍事実験の力……なのか」

 俺がそう思っていると、彼の身体に変化が起きる。――――――――しかしそれは、俺や一郎多が考えていたような変化ではなかった。

 彼の身体にあった男を象徴させる力瘤はゆっくりと消えて行き、傷だらけの身体は傷が消えて肌も綺麗になって行く。割れていた腹筋もまた徐々に消えて行き、代わりに透き通るような白い女の肌が現れる。坊主頭の髪からさらっさらの綺麗な黒髪がまるで生き物のように出て来て、それがまるで芸術品かのように艶が出て来る。俺よりも20cmくらい高かった身長は徐々に縮み始めて行き、俺の身長と同じくらいになったかと思うと、そのまま俺の身長よりも縮んでしまっていた。男らしく凛々しい顔立ちが、まるで整形手術を早回しで見ているかのように目はパッチリと大きな二重、鼻は透き通っていて高く、そして唇は艶やかな色っぽい唇になっていた。
 さっきまで軍の大きいサイズの服さえも着られないほど大柄な筋肉たっぷりの男性だったはずなのに、今では服に着られている印象を与える可愛らしい、守ってあげたい少女の姿に変わっていた。

「こ、これは一体……」

「うっ……」

 と、少女が悩ましげな声をあげる。すると、彼女の胸部からぐぐっと双丘が盛り上がって来る。それはまるで意思があるかのようにどんどんと、そうどんどんと大きく盛り上がって来る。

「あぁん……♪ あぁ、ああああああああああああん!」

 彼女が苦しげな声と共に身体を動かすと、彼女の胸はそれよりも大きく、そして激しく揺れた。そしてどんどんと大きくなった胸は、軍の服を飛び出して、さらに加速度的に巨大化していく。

「アぁ……こ、壊れる。壊れちゃうううううううううう!」

 そして彼女の胸はどれだけ頑張っても服が着れなくなるほどに巨大化した所で、巨大化を止めた。その胸は、まるで我らが守る日本の富士山のように大きくそびえ立っていた。

「な、なんなんだ。これは……」

 その時、俺は1つのある、とりとめのない事を思い出していた。
 軍事部の受付担当係に1人空きが出ていた事に。

 ―――――――――つまり今回の801式軍事実験は、新しい軍事部の受付担当係を作るための実験だと言う事を、俺はすぐさま悟った。

「うぅ……。胸が出ちゃって、恥ずかしいよう……」

 彼女の悩ましげな声を聞きながら、俺はそんな事を考えていた。