ちちの剣

tefnen 作
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『きん断の洞くつから、ちちの剣をとり戻してほしい。報酬は500G』

依頼掲示板にはそう書かれていた。農民が書いたのだろう、字はたどたどしく
報酬もそこまで大きくない。――と言っても、農民にとっては全財産くらいの
額なのだが。

「うーん、禁断の洞窟であれば、いい経験値稼ぎになるわね……」

戦闘能力はそこまで高くないが、洞窟探検を得意とするイーラにとっては、この
仕事はもってこいだった。行くことになる洞窟も、名前は立派なものだが、近く
に住む猟師たちが、中に住む、狼よりは強いが低レベルのモンスターに太刀打ち
できず、中に入るのを止めるためにつけた名前だった。
それに、「父の剣」を取り戻すという目的は、イーラの正義を尊ぶ精神に響いた。
農民の家宝を持ち帰るというのはあまりいい稼ぎにはならないし、街の評判も
そこまで変わるわけではない。だからこそ、彼女自身がやらなければならないのだ。

イーラは、洞窟の中で野営することも考えて、食料や水を調達し、依頼のあった
洞窟に出かけていった。

---

「うーん、おかしいわ」

小柄で華奢な体を駆使し、暗がりに隠れてそこから敵の急所を狙い撃つのが彼女
の戦法だ。狭いところであれば吹き矢を使い、そうでなければ弓を使う。その矢
にはお手製の猛毒が塗ってある。ある程度までのレベルのモンスターなら、一撃
で倒せる。
モンスターも生き物である以上死体は残る。……はずなのだが、洞窟に入って
からというもの、全てのモンスターが倒すと塵と消えていく。まるで、誰かに
召喚された悪魔のように。

「これは、誰か黒幕がいるわね……」
召喚士が最奥にいるのだ。その準備も、一応ある。これまでの探検で拾っていた、
結界を一時的に無効化する魔法書だ。少しの魔力で効果を発動するそれは、
高価ではあったが、命に換えられるものは何もない。もしもの時に備えて、
取り出しやすい胸元に忍び込ませた。
「胸が小さくて正解だって、つくづく思うわ……」
小さいというよりは子供のようにぺったんこだが。とにかく、つかえるものが
なければ魔法書もスッと取り出せるものだ。

イーラは、これまで以上に注意しながら前へと進んでいく。

「アレが、例の剣……?」

洞窟の最奥部についた彼女は、もうおあつらえ向きと言っても過言ではないほど、
大きな円形の空間のど真ん中に突き立っている片手用の剣を見つけた。

農民の剣など、どこかしこに貯められている財宝の中に紛れ込んでいる程度の
はずのものだが、イーラはこれ以外にそれらしき剣を見つけることができて
いなかった。

「ま、まあいいわ……あまりここで時間を使っていても仕方ないし……」

いつ出てくるかわからない召喚士に気をつけながら、剣に恐る恐る近づいて
いく。その剣は持ち手の上に腕が入るくらいの輪が2つ、眼鏡のような形で
ついている。それに加えて、柄から切っ先にかけて直線が入っていて、そこで2つ
に分かれそうだった。

「片手剣に見せかけた双剣かしら……?」

だが、イーラが想像もしていなかったことが、あと剣まで数歩、というところで
起きた。いきなり剣が地面から飛び出し、イーラの目の前で光を放ちながら宙に
浮いたのだ。
「な、なに……!?この魔力の量!?」
これまで目にしてきたどんな魔法よりも、禍々しい力を感じるイーラ。身の毛も
よだつ、とはまさにこのことだろう。あまりの恐怖に、彼女は逃げることを
忘れてしまった。

「や、やめて……!殺さないで……」
剣なのだから、人を傷つけるものには違いない。だが、イーラが剣から感じた、
殺意だと思ったものはもっと別のものだった。人の欲望……更に言うならば……
性欲だ。彼女は、酒場の飲んだくれから感じるようないやらしいオーラを数十倍
に濃くしたものを、剣から向けられているのだった。

剣は、ふわふわと浮きながら、段々とイーラに近づいてきていた。そしてその
二つの輪は、ちょうどイーラの胸の上に覆いかぶさるコースで近づいてきた。
「ひゃんっ……!何、この感覚っ」
イーラは、自分の乳首が愛撫されるような刺激を感じた。剣が近づいてくるほど
に、その刺激は強くなっていく。胸に手を置くと、二つの突起がいつもより大きく
――勃っていた。剣は、もう手を伸ばせば届く距離まで近づいていた。
そして――

ジャキンッ!!

剣が、二つに割れ、二つの輪は手を押しのけて、イーラの胸にくっついてしまった。
と同時に、輪を通してイーラの胸に魔力が注ぎ込まれ始めた。
「ひゃううぅっ!!!」
本来母乳が通る道を、魔力が逆流していき、小さい乳腺を無理矢理成長させていく。
途端に服の中で胸が膨れ上がり、貧乳から巨乳への道を一気に駆け上がっていく。
「やだぁっ!!!」
イーラは必死になって輪を外そうとするが、吸盤のようにくっついた剣は外れず、
一瞬にしてできあがった乳房はさらにスピードを上げて膨張する。子供でも
着られるような服は十秒もしたところで胸で満杯になってしまい、ビリビリと
音を立てて破れ始めた。中からは、元の数倍までに大きくなった乳頭と、人の頭
よりも一回り大きくなった二つの肌色の球が現れた。

「まだ、まだ大きくなるの!!??」
これくらいの胸は、国中探しても一人や二人くらいしか持っていないものだろう。
だが、魔力を封入され続けるそれは、ぶるんぶるんと揺れながら膨れることを
やめない。イーラは、その谷間から、結界突破用の魔法書が見え隠れしているのに
気づいたが、それは徐々に胸の中に埋もれていっていた。

「もう、一か八かよっ!!」
イーラは、深くなり続ける谷間に手を突っ込み、魔法書に触れ、そして嫌という
ほど胸に溜まっている魔力の一部を使って、それを発動させた。
――だが、それが間違いだった。
光を放って発動した魔法書だったが、その中に込められていた魔力は本来の効果
を発揮する前に、剣を通ってイーラの胸に入り込み始めたのだ。
「な、なんでっ!!きゃあっ!!」
それまでとは比べ物にならない量の魔力によってイーラの胸は爆発的に成長し、
一気に体より大きくなってしまった。剣の輪一杯に大きくなった乳首は、その輪
に縛られて魔力の入り口を閉じたが、巨大な胸の中で魔力は暴走を続け、乳房の
巨大化は止まっていなかった。
「やっ、きゃっ」
周期的にボンッ、ボワンッと拡大するイーラの乳房は、ついに部屋全体を埋め
尽くすほどになった。と、そこで、剣の輪が胸から与えられる力に耐えきれなく
なり、パキンッと割れた。そこで、胸の成長も、魔力の暴走も収まった。だが、
部屋の中に鎮座する巨大な肌色に、縮む気配はない。

「こ、これじゃ、動けないっ」
自分の体に胸がついているというよりは、胸に自分の小さな体が付いている、
といったほうが正しい状況になってしまったイーラ。前に見えるのは自分の体の
一部であるはずだが、自身の動きを拘束している胸だけ。誰の助けも得られ
なければ、身動きができず朽ちていくだけとなった絶望的な状態のイーラに、
後ろから近づく足音があった。