「わーい、外国に行くの楽しみ!」
「おねえちゃん、はしゃぎ過ぎだよ」
二人の子供が空港のベンチに座っていた。中学生くらいの男の子と小学生高学年
くらいの女の子だ。だが、会話からして、女の子のほうが年上で、姉のようだ。
父親と母親はそのとなりで旅行ガイドを読むのに熱中している。その本の名前
からして、イタリアに行くようだった。
「あらあら、ここに行くのも良さそうじゃない?」
「え、ここはホテルから2日かからないと行けないところだぞ?」
「あらあら」
あまりにも間の抜けた妻の発言に呆れて、子どもたちの方に向く父親。
「お前たちも、まだ中学生なんだから、勝手にどこか言っちゃダメだぞ」
「は〜い!」
「分かってるよ」
体の小さい姉のほうがかなりはしゃいでいて、逆に弟は若干反抗的ではある
が、おとなしい。父親は、少し不安な表情を見せる。
――あぁ、蒼空(そら)は全然成長してないな…背は明青(あお)に追い
ぬかれて久しいし、性格的にも小学生のままだ。
成長が止まっている自分の娘が、何かの病気にかかっているのではないかと
いう懸念は、これまでずっと積もりに積もっていたのだ。
――しかし、今気にしても仕方ないか。
家族は、飛行機の中に入っていった。
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「わあ!結構大きい音が出るんだねー!」
「当たり前だろ、こんな大きい物が動くんだから」
姉弟の会話を聞きながら、自分も初めての飛行機に不安がる父親。だが、画面
に表示された経路図らしきものに気がついて、左隣にいる妻に尋ねる。
「なあ、なんであんなに北を回っていくんだ?途中で避けていきたいものが
あるのか?」
「さあ?」
経路を示す線は、大きく弧を描いている。日本とイタリアの緯度はあまり
変わらないのだが、ロシアの北部に差し掛かるほど北を行くのだ。これは地球
が丸いのを、無理に四角に伸ばした地図が経路図に使われているせいなのだが、
父親はそれに気づかなかった。
そうこうしているうちに、飛行機は滑走路から離陸態勢に入った。ここで、
父親の脳裏に、ニュースになったある事件が頭をよぎった。離陸した途端、
ある少女が急成長して、父親を窒息死させかけた、奇妙な事件。それと、
「メタモルフォーゼ症候群」という病気。これの症例として、成長が止まると
いうものがあったのだ。事件の少女は、この病気に羅患していたらしく、速度
に合わせて体の大きさが変わる代わりに、それがないと、自然成長を含めて
体型の変化をしないらしい。
――もしかして、蒼空が「メタモルフォーゼ症候群」に……?
その思考は、椅子から急にかかった力で、遮られてしまった。飛行機が急加速
を始めたのだった。しかし、娘の体は変化している様子はなく、父親は安心
して、力に身を任せた。
――心配のし過ぎかな?それよりも……
加速による慣性力が強すぎるせいか、母親が父親の左手を信じられない力で
握っていたのだった。それによる痛みが、自分自身の恐怖心を和らげていた
が、痛いことには痛い。
「お、おい……大丈夫だから、そんなに強く握らないでくれよ……」
「あ……ごめんなさい」
幾分握る力が弱まり、痛みから開放される。そしてそのことで、娘のことは頭
から離れていった。離陸が完了し、高度が落ち着くと、父親は前の画面を
コントローラで操作して、映画を見ることにした。外国の航空会社でも、日本
語の映画が何本か記録されていて、少し前の有名な映画を見ることができるのだ。
すぐにアクション物の映画を見つけて、再生し始めた。機内の通路の上の画面
には、地図が表示され、飛行機が北北西に向かって進路をとっていることが
示されている。
子どもたちはその横で、機内モードにしたスマホを使って、遊び始めていた。
父親は周りの迷惑にならないように、数分ごとにチラと横を見る。
……だが、そうするごとに、何かがおかしく見えてくる。最初は、その違和感
は何によるものか分からなかった。なにか、娘の向こうにいる息子が小さく
見えるのだ。父親は凝視したが、実際には先ほどと大きさは変わっていない。
だが、飛行機がユーラシア大陸の上空に差し掛かった時、気づいた。
――蒼空、大きくなってないか……?明青に背が近づいて、いや、同じに
なってるぞ?
父親は目の錯覚と思い、目を擦ってもう一度見る。しかし、今気づいたことは
否定されるどころか、確定してしまう。20cmくらい差のあった娘と息子の
背が、ほぼ同じになっている。いや、それだけではない。段々娘が大きく
なっている。服はサイズが合わず、胸も少し膨らみが見えている。
しかし、本人は気づく様子もなくゲームを続けている。この頃の大人にかぎらず
子供も、画面に食い入るような感じで遊び続ける。いつもはその行為に、なに
か暗いものを感じていたが、今はそれどころではない。
そのうち、娘の背は、遠目に見ても、息子の背を超えているのが分かるように
なった。胸の出っ張りも、Bカップほどの中学生の年齢相応のものになっている。
――やっぱり、メタモルフォーゼ症候群だったか……
父親は、何とかしなければと思いつつも、これまで成長のなかった娘の体が
どうなるのか、その好奇心に理性が負けて、その様子をじっと、時間が過ぎる
のを忘れて見続けていた。
段々、体に対して胸の成長スピードが異常に速くなっていく。服はゆっくり
と、縦に横にと裂け、目に見えている肌色の領域が、大きくなる。高校生
くらいの背になった娘の体からは、その頭と同じくらい、いやその一回り上の
の大きさの脂肪の塊が2つ、重力に負けずに、前にポンっと飛び出していた。
だがそこで突然、娘の使っていたスマホの電源が切れた。
「あぁっ……」
そして出た声も、搭乗した時の幼いものではない。むしろ、その体に見合わ
ないほど、色気を漂わせた淫靡なものだ。娘は顔を父親に向けた。
「お父さぁん」
「ハッ!?」
観察することに夢中になっていた父親。だが、声をかけられた瞬間、我に返った。
「どうしたのぉ……?」
その一言一言が、魅惑的な響きを含んでいる。そんな娘の声に、興奮してしまう
父親だが、なんとか返した。
「い、いや、なんでもないよ」
「そぉ?ふふっ、それなら、いいんだけど」
ゆっくりと発せられる声は、元々の娘の性格と全く対極な、卑猥なものに満ちて
いた。同時に浮かべる笑みも、父親を誘っているかのようだ。その美しさと、
恐ろしさに圧倒されつつも、声を絞り出す。
「そ、そうだ。で、なんだ?」
「充電器、かして?」
ほっと胸を撫で下ろす。当然のことだ。電池が切れたのなら、充電すればまた
動くようになる。
――何だ……俺としたことが、何を考えていたんだ。しかし、ん?
ここで別のことが懸念されてきた。父親の方を向いている娘の目は、結構充血
していることに気づいたのだ。飛行機の揺れの中、小さい液晶の画面にずっと
集中していたせいで、目が疲れているのだ。
「そろそろゲームで遊ぶのは、やめておきなさい」
いつものセリフだ。家でも何回もこれを言って、ゲーム機を取り上げたことが
ある。だが、父親は寒気がした。取り上げる度に、娘はうるさく喚いていた。
飛行機の中でそれをされるのは、かなり面倒なことになる。そう思った父親は
前言を撤回しようとした。しかし、その前に遮られた。
「あ〜っ、そう!……そうなんだ」
少しの大声を出し、多少不満そうな顔をした後、ニヤリと口元を緩ませる娘。
父親の寒気はまた別のものに変わった。
――今の蒼空は、何をするかわからない……
娘は、その表情のまま、シートベルトを外した。そして、すっくと立ち上がる。
その行為にまず口を出したのは息子だった。
「おねえちゃん、飛行機の中で立っちゃ……」
そこまで言って、やっと息子は自分の姉が普段とは比較できないほど違う姿に
なっていることに気づいた。
「お、おねえ……」
「うるさい……」
その怒った声は、心に突き刺さるような深い声だったが、息子の方を見ている
せいで父親から見えない娘の顔は、もっと恐ろしいものであったはずだ。息子
の表情は凍りつき、手に持っていたスマホが、膝の上にポトッと落ちたのだ。
「静かに、しててね……?」
「は、はいっ」
「じゃあ」
娘は父親の方に振り向いて、体を左に動かし、父親の膝の上に座った。父親は
その体の重さだけでなくそのムチッとした太腿の柔らかさを、足に感じた。
「な、なにを……」
「なにって……」
娘は父親の手を、自分の胸に当てた。その時、言いようのない感覚、いや快感
が、父親を襲った。
「や、やめなさい……」
「えぇ?やめて欲しければ、充電器かしてよぉ」
父親は、妻に助けを請おうと、左を向いた。しかし、先程までの怖がりっぷり
はどこへやら、ぐっすりと寝ている。
「わ、分かった……すこしそこをどいて……」
「ふふっ、でも気が変わったわ……一緒に、あそんでよぉ」
娘は父親のいうことを聞くどころか、手を胸に押し付けた。乳房はその力で形
を変えて、手を包み込むようになった。
「んっ……」
そして、娘の方も、快感を感じたのか、色気たっぷりのため息を出した。父親
の頭の中で、何かが切れた。
――もう、耐えられない……娘にこんなこと……いや、蒼空だからこそ……
娘の今の状態と、前の状態を比べてしまうことで、父親の中で、今自分の膝に
乗っている女体の魅力が、何倍にも大きく感じられていたのだ。そして、暴力
的に胸を弄び始めた。
「あっ……いきなり激しくぅ……!」
その張りで美しい形だった乳房は、手からの力でいくらでも歪んだ。縦に、横
に、上に、下に。まるで、柔らかいマシュマロのように。
「あんっ……もっとぉ……!」
時間がたつごとに、その大きさも増してくる。父親の膝の上で、娘は成長を
続けていたのだ。ついに乳房が前の座席を押し始めた。それにとどまらず、
娘と座席に潰されて形を歪め始め、その反動で父親に、娘の体が押し付けられ
ていく。むっちりと脂肪が付いた脚は、父親のものよりも太くなり、それを
覆っていく。尻の柔らかい感触の中で、父親は自分のイチモツも怒張している
のを感じていた。ついに意識が切れた頃には、胸は前の席を乗り越え、娘の顔
すら覆うほどの大きさになっていた。
それはまるで、2つの座席の間に、肌色の何かがつめ込まれているようだった。
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『皆様、当機は最終着陸態勢に入りました』
そのアナウンスで目覚めた父親は、膝の上に娘が寝ているのに気づいた。
元通りの、小学生くらいの娘だ。
――なんだ、夢か……
しかし、その周りには破れた娘の服が散乱している。そして、自分のズボンも
精子を出したあとのようにかなり臭い。
「え?てことは……」
「ん……」
父親が声を出すと、娘が目を覚ました。
「あ、お父さん、さっきは楽しかったね!」
その瞬間、飛行機の中に、ジェットエンジンの音よりも大きい男の叫び声が
響き渡った。