エイプリルフール

帝国城摂政 作
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 俺、七瀬匠には恋人が居る。天宮雅と言う名の彼女である。感情豊かな表情がとっても可愛くて、それでいてとっても優しい彼女で、俺なんかと一緒に居てくれる事に本当に嬉しいと思っている。今日は4月1日、エイプリルフール。俺はそんな彼女にちょっと嘘をついて困らせてみようと思った。

 4月1日、午前10時。今日はそんな雅とのデートの日である。駅前の時計台の前までやって来ると、

(あっ、居た)

 すぐさま彼女の姿が発見できた。金色の流れるような髪、気が弱そうな瞳にほんのりふっくらとした顔立ち。そして特に人の目を惹くのは、彼女の背丈と胸である。2m近い身長と、その身長からしても大きすぎる1.5mはあろうかと思うくらい大きい胸を持った美少女が、白いワンピースを着てしきりに腕時計を見ていた。あれが俺の彼女、天宮雅である。
 俺は気付いていない風を装いつつ、ゆっくりと近づいて行った。

「やぁ、雅」

「つ、司君……。こ、来ないから心配したよー」

 そう言いながら、流れるような動作で顔を涙目にして、俺を持ち上げてその大きすぎる胸に押し付ける雅。その豊満な胸は柔らかく、まるでマシュマロのような柔らかさで、しかも押し付けられていると女の子らしいさわやかな香りが俺の鼻から香って来る。あぁ、いつ嗅いでも良い匂いだ。まるで極楽なのだが、このままだと当初の目的である嘘を吐くと言う行為を忘れてしまいそうなので、慌てて雅に降ろすように要求する。

「雅、人の目が恥ずかしいから降ろしてくれない?」

「う、うん。ご、ごめんね、司君。私、司君が来ないか心配で……。だって、だって、私って本当に化け物みたいでしょ? そんな化け物みたいな私を、司君はずっっっと付き合ってくれていて、本当に嬉しいの。だから、嬉しくて嬉しくて……」

「そうか、そうか」

 なんだろう。愛が重いと言うのは、こういう事を言うのだろうか? とても愛が重い……。まぁ、それだけ信頼してくれていると言う事は嬉しいのだが。
「実は……雅に1つ知らせていなかったことがあるんだ」

「な、何かな?」

 ワクワク半分、ドキドキ半分と言った感じで雅は俺の言葉を待つ。そして俺は1つの嘘をつく。まぁ、軽い嘘だ。

「実は……俺、もっと身体も胸も大きい娘が好みなんだ」

「えっ!?」

 まぁ、軽い嘘だ。身長も胸もダイナミックサイズの彼女以上に大きい女性なんて俺は見た事がないし、俺は雅の事が大好きだ。――――――――だからその時の俺は、あくまでも冗談、エイプリルフールの許される嘘だった。しかし、どうも彼女はそれを正しく受け取らなかったみたいで

「そ、そんなぁ……」

 と、悲しげな瞳でこちらを見ていた。

「私、これでも身長とむ、むむ……む、胸の大きさには自信があったのに、司君はこれ以上を望んじゃうの!? そ、そんなの、嫌だよー!」

 そう言って、俺の冗談だよと言う言葉も聞かないまま、走り去ってしまった。どうやら、冗談とは受け入れられなかったみたいだ。まぁ、今度会う時に伝えれば良いだろう。そう楽観視していた。

 1週間後、彼女がさらに身長を10cm、胸を20cm伸ばして「ど、どうかな、司君?」と恐る恐る聞いてきて、倒れる事になるとはその時の俺は思っても見なかったが。