恋をするって言うのは、きっと難しい事なんだと私、藤井美園(ふじいみその)は思う。私は今、恋をしている。彼の名前は緋色(ひいろ)君。七福緋色(ななふくひいろ)君。成績優秀でスポーツ万能、おまけにどんな人間だって助けを求められたら見捨てないと言う考えを持っている、まさしく完璧超人。それ故に、付いたあだ名が
「ヒーロー君……」
あぁ、と私は金髪のイケメン男性、緋色君の写真を見ながらうっとりと呟く。皆のヒーロー、緋色君。最初はただモテたいために噂だけ流しているのかと思っていた。けれども違った。去年の文化祭、私は1人で文化祭の準備を行っていた。強く言い出せない性格と、うちのクラスの部活動をしている人間が多いのが原因だと思う。「部活が忙しい」と言って多くの生徒が文化祭の準備をサボり、それに連れられるようにして多くの人がサボってしまい……残ったのは気が弱くて押し付けられた私だけ。1人寂しくやっていたら、緋色君が助けに来てくれて……。そのうち、私は恋に落ちていた。
「うぅ……けど、私なんかが告白してもきっとダメだよね……」
私はそう思いながら、自分についてもう1度確認する。成績は半分より上くらい、スポーツはどっちかと言えば苦手。まぁ、そんな事は本当はどうだって良い。一番大切なのは私の容姿がどれだけ魅力的か否かと言う事なんだから。
鏡の前で自身の容姿を確認する私。そしてもう一度溜息を吐く。
「こんな容姿じゃあ、きっと気に入って貰えない……」
ちぢれたわかめのような黒い髪、常に死んだ魚のような瞳。背も低くて胸も小さい、おおよそ女らしさと言う物を感じられないような幼児体型の自分が鏡に映っていた。まず最初に年齢詐称を疑われる少女。それが私、藤井美園である。
緋色君はさっき紹介した通りの人物だから、私が彼に抱いているような想いを持っている、彼に恋する彼女達は周りに多く存在して居て、皆が私以上の女らしさを持っている。
「うぅ……。このままですと私は……」
「初恋はだいたい叶わない物、なの。まぁ、個人的にですけれども今のままだとその七福緋色さんに気に入られるとは思いません、なの」
「そうそう……。……!」
私がそんな事を考えていると、後ろからそんな声が聞こえてきます。ここは私の自室で、私しか居ないはずなのにそんな声が聞こえてきました。そう思いながら私は、後ろを振り向く。
「私の名前は、恋愛悪魔の1人である上代ナノなの。とりあえず、さくさくとやらせていただきます。とりあえずは、【恋愛悪魔の香水】で、さくさくとやらせて貰いますなの」
現実味離れした桃色の髪と肌を持った、黒色の翼を持つ彼女は、胸にバックの紐を挟んだ所謂あれな状態の鞄から紫色の香水瓶を取り出す。
「まぁ、これでなんとか上手く行って欲しいなの。先輩と違って、私はそんなに仕事熱心ではないなの」
「だ、誰なんですか、あなたは……」
私が意味も分からず混乱している中、「良いから大人しくしていろなの」と言って彼女は香水の瓶から香水を一吹き、プシャっと私にかける。
「キャッ!? こ、香水!? ……な、なんだか身体が熱くなっているような……」
私がそう思いながら、幼児体型の胸に、いや心臓に触ろうとする。しかし、その時にムニュリとした確かな胸の感触が腕から感じられた。
(ええっ!? む、胸なんて私、ほとんど無いはずなのに……!)
そうこうしている間に、胸は私の腕を挟みこむくらい大きく、波打って成長し始める。無乳であったはずの私の胸が、最初は腕に触るくらいだったのが、腕を中に挟めるくらいにまで成長し、さらに腕を完全に見えなくするくらい大きく成長してしまっていた。そして、さらにどんどんと成長し始める。
「な、何なの……いったい……」
「ロリ巨乳よりかは、ロリ爆乳の方がインパクト的には強いと思うなの」
何を話しているのかさっぱりわからないが、私はあまりの熱さに意識がもうろうとしかかえていた。もう既に私のAAカップのブラが役目を終えて壊れた状態で私の胸の谷間の中からポロリと顔を出す。そして、服をギューっともう少しで引きちぎれそうだ。
「だ、ダメ……や、やめて……」
「大丈夫なの。この程度だと、服は破けないなの」
「あ、熱い……身体が……燃え尽きちゃう……。
あ、あああああああああああああああん!」
と、私は色っぽくない、声をあげてしまっていた。しかし、その声は途中から色気を含んだ声へと変化していた。
一体、私の身に何が起こっているの?
「さぁ、藤井美園。あなたの目的を果たせ、なの」
そんな事態を引き起こした桃色髪の少女は、こちらをじっと見つめていた。