恋愛悪魔の化粧品 2メイク

帝国城摂政 作
Copyright 2014 by Teikokujosessyo All rights reserved.

「全く……最悪な厄日なの。今日は仏滅だったか、なの? はぁー……なの」

上代ナノは頭を抱えていた。何故かと言うと、

「うぅ……。まさか雨が降るだなんて……」

 と、涙を流してうな垂れている私、藤井美園が居た。
上代ナノが使ったとされている【恋愛悪魔の香水】。かけたら胸が膨乳されるがこの香水の効果ではなのだけれども、これは香水である。香水と言うのは雨で流される物である。どうも愛しの彼である七福緋色君を追っているうちに、雨で香水が流れてしまったのである。

「そして残ったのが、無駄に胸部の部分だけ伸びきってしまっている服を着た貧乳少女だけなの。それで慌てて帰って来た……と言う訳なのね」

「はい……」

 と私が答えていると、ナノさんは頭を抱えてしまっていた。そしてぶつくさと小さな声で呟いていた。「まさかこれが、ダラケテネ姉さんやホシスギルちゃん、ミーラブさんの求めていた展開なの。けれども仕方ない、なの。最初は香水だけでなんとかなるかと思ったなのが、こうなったら……」とぶつくさと何か呟いていた。
 ダラケテネ? ホシスギル? ミーラブ? なんだかどこぞのハピネスをチャージしているプリティキュアな女性の敵幹部の名前に似ているんですけれども……。

「こうなったら仕方ない、なの」

 そう言って、上代ナノは本当に諦めた表情でこちらを見ていた。

「―――――私の信条は、『やらなくて良い事ならばやらない、やらなければならない事は徹底的にやる』なの」

「す、すごくどこぞのアニメっぽい気が……」

「気にしないでください、なの。とにかく1つ1つずつ、やらせていただきますなの。確かに【恋愛悪魔の香水】は雨で流れてしまう程度の物なの。でもね、それは素の状態であった場合なの。恋愛悪魔のメイクを装備している状態ならば、絶対に落ちたりはしない物なの」

「そ、そうなのですか……?」

「そう、そして――――――私は凝り症なの!」

 そう言って、彼女はパウダー、そう肌を良くするためのパウダーを取り出して、私の身体に塗って行く。

「な、なにを……」

「じっとしてろなの。そもそも女の欲望と言うのは昔から深い物、なの。どれくらい欲深いかを語るにふさわしい話があるから、紹介してやるなの。少し前、反日運動が起きた中国では、中国の製品よりも遥かに性能が良い日本製の商品の売り上げががくっと落ちたなの。けれども、そんな反日運動の中国で売り上げが落ちなかった商品。それがおむつ、空気清浄器、そして―――――――――化粧品、なの!」

 そう言って、ゆっくりと私の身体にパウダーを塗って行くナノさんに身体を預けていた私だったが、身体に違和感を覚えた。

(あ、あれ? 視界が右に傾いている?)

 急に頭が右斜めに傾いた。どうなっているのと思っていると、すぐに視線が元に戻った。

「一体、何が……」

 そう思い、ゆっくりと先程までナノさんが塗っていた私の足を見て、驚く。

「えっ……!?」

 そこには外人さんも真っ青な、超長い足があった。しかも、まるで鏡があるかのような透き通った肌。そこには1本の産毛もなかった。少なくとも、幼児体型だと噂されるような自分の足とはまるで違う姿になった

「ね、ねぇ、ナノさん。これってどう言う……」

 そう言いながら、私がナノさんの方、つまり右腕を見るとそこには先程と同じように、自分の物とは思えない綺麗すぎる長い腕があった。そしてナノさんはその右腕にパウダーを塗り付けていた。

「え、ええええ! な、なんなの、これ!?」

「【恋愛悪魔のパウダー】、なの。これを付ける事で、身体年齢を上げる事が出来るなの。しかも美形の状態で、なの」

 そこで私はさっきの事で嫌な事を思いついてしまった。さっき、いきなり右に傾いた頭。あれって、もしかして《そのパウダーで左足を長くした》から傾いたのでは……。

「さぁ、これで腕は終わりなの」

 彼女の言葉に我を取り戻した私は両腕が、綺麗で長い腕になっている事に気付く。い、いつの間に左腕もやっていたの!?

「まぁ、手足は外人よりも長く、それは完了したなの。後は……」

 そう言いながら、彼女はパウダーを両手につける。その表情はとっても怖かった、般若のような、いやいたずらを楽しみにしている悪がきの表情だった。そして揉み揉みと動かして、その視線の先にあるのは……私の胴体。

「胴体もやらないと、いけないなのー!」

「い、嫌―――――――!」

 私はあまりの怖さに逃げようとしたが、その前にナノさんが私の身体を触っていた。

「さぁ、楽になれ、なの」

「い、いや、こ、怖い」

 私の身体が得体のしれない物で変わって行く。くびれすらなかった私の腰がきゅっと引き締まった腰になり、そしてその手は上に伸びて行き、がっしと身体に似あわない小さな胸を掴まれる。

「ひっ……!?」

「覚悟は良いか、なの?」

「で、出来てません……」

「強制執行なの―――――!」

 そして彼女は丹念に私の胸を揉み始める。そして膨らんで行く私の胸。しかし、今までのようにいつの間にかそうなっているんじゃなくて、

(か、身体が、い、痛い……!)

 私の身体が痛みをあげていた。引っ張られるような激しい痛みを感じるのだ。

「私のマッサージは一級品。受けられるだけ感謝しろ、なの」

 その言葉通り、彼女のマッサージは癒される極上品。身体の疲れが一切合切抜けて行っている。けれども、それと同じくらい痛みも私の身体を襲う。

「うっ……!?」

 マッサージによる癒し。それに伴う痛み。そして確かな実感として膨らんでいく胸。ぎゅぎゅっ、と癒しと痛みが襲ったと思ったら、むくむくと胸が1回り大きくなる。

「ハァハァ……」

「まだまだやるなの。美の道は激しいなの」

(あ、ああああああああああああああああ!)

 その日、私は気を失うまでそれを行われ続けた。
 世界三大美女の小野小町、クレオパトラ、そして楊貴妃の美を生み出したとされる恋愛悪魔、上代ナノの手によって。