「こ、これが、私……なんですか?」
と私、藤井美園が目を覚ますと目の前の鏡に映っていたのは、自分とは思えないような美人さんが映っていた。手や足、それに背はスラッとしていて高かったり長かったりして、胸はスイカのように大きく、艶やかな黒髪は腰まで伸びていています。自分とは思えないほどの美人さんで、私は鏡の中で何度も腕や足を触りながら自分の身体を確認していた。
「こ、これが私……?」
私が鏡の前でしつこく確認していると、後ろから恋愛悪魔の上代ナノが現れました。
「【恋愛悪魔のパウダー】によって腕や足、それに身長や胸に関しても女性として最適化しましたなの。それに、【恋愛悪魔のトリートメント】と【恋愛悪魔の櫛】で艶やかな黒髪にしておきましたなの」
「へ、へぇ……」
私は触った艶やかな髪の柔らかさを確かめつつ、上代さんの姿を見ていた。
「良い感じに進んでいるなの。これなら声と共に性格の変わる【恋愛悪魔の色眼鏡】や、指を細くする【恋愛悪魔の指輪】を使って、意中の彼である七福緋色君好みの女にさせるなの」
……それだと既に私とは違っていますし、それでヒーロー君に告白してOKして貰ったとしても
(なんだか複雑なんですが……)
私はそんな事を思いつつ、上代さんの恋愛悪魔シリーズのグッズにて美しくなった身体を見つつ、そう思った。
「け、けどこれで、ヒーロー君の周りの人達に対しても、互角に戦えます。……こんな姿に慣れたのも、上代さんのおかげです。ありがとございます」
ヒーロー君の周りに居る人達は魅力的な人物ばっかりです。けれども、上代さんの力によって私はなんとか戦えるようになった。
「これも全て、上代さんのおかげで……」
「何か勘違いしているようなの」
へっ……? そんなまぬけな声を出す前に、上代さんはゆっくりと近付いて来る。
「相手が健康的な人物が好きだったら、【恋愛悪魔の日焼け止めクリーム】を使ってなんとかしようと考えていたなの。それにまだあなたには、【恋愛悪魔の香水】を付ける予定があったなの。
……前に言ったはずなの。恋愛悪魔の上代ナノの名の下に、決めた時は決めた時なりにやらせていただきますなの。生半可な美しさだったら、私の方から願い下げとさせていただきますなの」
そ、それってもしかして……。
「こ、これ以上、するって事……なんですか……?」
「まるでライトノベルみたいなの。イケメンで正義感の強い主人公に対して、可愛い子や美しい子が彼に対して惹かれまくってハーレム状態。そんな中、主人公の目はかなり肥えてしまっているなの。普通だったら、今の状態でも十分に落とせるとは思いますが、彼の状態を考えるにもっとやるなの」
そう言って、彼女は手に持っていた香水の瓶のボタンをシューっと私に向かって、吹きかける。
すると、スイカサイズだった私の胸が、まるで空気を入れたボールのようにむくむくと大きく膨らんでいく。慌てて両手で押さえようとしたけれども、その時にはもう既に後の祭り。私の両腕で勢いを抑えようとしたけれども、私の腕を飲み込むほど大きく膨らんで、そして止まった。
「【恋愛悪魔の香水】。前みたいに、メイク状態ならば雨ごときでは落ちないなの。それに、恋愛悪魔シリーズのグッズは、この先一生落ちないなの」
「い、一生!?」
も、もしかして、私……。
(大変な悪魔さんに、眼を付けられてしまったの……?)
「さぁ、始めるなの。恋愛悪魔の名がつく化粧品は、星の数くらい多いなの。何せ、恋愛悪魔は恋を叶える悪魔。そんな恋と関係する者の中で、化粧品の数が多くなるのは自然な流れなの」
そう言いながら、大きな化粧品箱を持ちつつ、上代さんは私に迫っていた。
―――――――――この後の事を、私は良く覚えていない。
重要なのは、
「またそんな昔のビデオを見て、どうしたんだい? 美園?」
「なんでもないよ、緋色君」
今の私が、上代さんのおかげで幸せだと言う事だけ。
【恋愛悪魔の化粧品】、fin
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