50円分のお返し

帝国城摂政 作
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 昨日の出来事だった。まるで夢のような出来事だったが、僕はしっかりと覚えている。

 その日の僕は学校で少し嫌な事があって落ち込んでいた。テストで良い点取れなかったとか、高校で初めて出来た彼女と別れたとか……まぁ、これからの人生を想えば些細な事である。

 と、そんな僕は目の前に居る女性の事がほんの少し気になっていた。僕の目の前に居る、彼女は黒の大人らしい毛糸のカーディガンを着た、足がスラッと伸びている長身の女性。

 僕は僕の目の前で歩いているその子の事が気になっていた。
 何故かと言うと、その少女の胸が平均以上の(少なくとも100cmは下回らないだろうナイスなお胸)をした自分好みのとっても美しい美女だったのも事実だけれども、その子がとっても危うかったからである。

(うわ……危ないなぁ……)

 彼女のズボンのポケットからは財布がはみ出しており、そのはみ出した財布の小銭のチャックが少し開いていたからである。何かの拍子に、チャックの隙間から小銭が出ても可笑しくない状況だった。

(あっ……!)

 そうこうしている内に、恐れていた出来事が起きてしまった。
 彼女の大きくて豊満そうなお尻(かなりデカイがそれでも胸の方が一回り大きい)が歩いて揺れた拍子に、チャリン、と1枚の硬貨がはみ出て落ちる。
 集中して今か、今かと待ちかねていた僕はその硬貨をすぐさまキャッチする事が出来た。

「……50円」

 と、僕は自分の手でキャッチした50円硬貨を取る。そしてすぐさま走って、落とした美女の前に出る。

「あ、あの……!」
「……ッ! な、なんですか?」

 その人はまだ声変わりも迎えていないような可愛らしい高い声で、ギューっとその大きくて柔らかそうなメロンを押さえ付けながらこちらを見ていた。

「これ、落としました、よ!」
「50円……ッ!」

 僕が手から差し出した50円硬貨を見て、彼女は一瞬ビクッとしたけれども、その後慌ててポケットから財布を取り出して、ようやく自分の財布が緩んでいた事に気付いたらしい。

「あ、ありがとう……ござい、ます……」
「い、いえ……。男として当然の……」
「お、お返しをせねばなりませんねっ!」
「えっ……」

 ちょっと照れつつ立ち去ろうとした僕、その僕に顔を真っ赤にして眼を瞑りながら抱きついて来る彼女。

 その彼女の豊満で柔らかい胸が、僕の身体に当たって潰れながらも弾力で膨れる様を服越しの肌で感じながら、僕は眼福と思っていた。
 その柔らかい心地はまさに天使の揺り籠や、夢心地と言った物で、その日起こった全てが頭から消えていくほどの衝撃だった。

「……50円分のお返しです」

 そうやって小さく言う彼女の言葉が、とっても色っぽかった。