恋愛悪魔のアパート 第6話「最強のマッサージ師」

帝国城摂政 作
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 アパート、『愛詩荘(アイシソウ)』。1階4部屋の2階建て、月給4万円で3LDKの間取りのちょっとした古ぼけた賃貸アパートなのだけれども、このアパートにはちょっとしたジンクス的な物がある。それは恋愛が生まれやすいと言う事である。しかもその恋愛がちょっと普通の人間的な物とは違っていて……。
 そして今この場でも、愛詩荘の一部屋でも恋が生まれようとしていた。

第6話・「最強のマッサージ師」
 この世で最も無意味な試験は何だろう? と言う質問に対して、あなたならばどう言う答えを返すだろう? 答えは簡単だ、こう言った質問の答えと言うのは本人がどう言った人間なのかがこの質問の答えが変わって来る。
 例えば歴史に何の意味を見出さない人ならば歴史の試験など全く意味がないと言うだろうし、車よりも自転車と言う人にとって運転免許のための試験は必要かと思ってしまう。

 では、この私、マッサージ師の大川波蔵(おおかわなみぞう)にとって最も意味がないものは何かと言わせて貰えれば、誰もが運動能力テストで受けた事がある『握力テスト』である。

「あぁぁぁぁぁぁぁ〜」
「い、逝くぅぅぅぅぅぅ!」
「も、もっとぉぉぉぉぉぉ!」

 自分の勤務する、とは言ってもほとんど自分が経営しているようなマッサージ店にて、大川波蔵は頭を悩ませていた。ベッドに横たわって倒れている3人の美女を見ながら、波蔵は自分の手をゴキゴキと鳴らしていた。

 波蔵がマッサージ師の道を志したのは8歳、『ホークトのゲン』と言う漫画で武道家にしてマッサージ師であるホークト・ゲンゴロウと言う男の話を知ってからである。ホークト・ゲンゴロウは他人の身体のツボを一瞬にして把握して、相手の身体のツボを正確に押して敵を倒すその姿に感動し、以降彼は的確に体内のツボを見極める力を鍛え、さらには筋力と力を相手に伝える波動も鍛えた。
 一般的なヒーローで憧れる男の子と言う物は大抵の場合、どれだけ憧れていようともどこかで現実と見切りをつけるんだけれども、彼は無骨に努力を続けていたのだが……

「その結果がこれか……」

 あまりにも強すぎる力、それを相手に100%以上で伝える波動の力、さらにはそれを快感と伝える技術を10年の修行によって手に入れた波蔵の今の姿――――――それは1%以下の力でお客さんを快感の虜にさせてしまう状態である。
 彼の憧れていたヒーローは、これもきちんと威力を制御していたのにも関わらず、自分はきちんと制御出来ていないと言う事実が波蔵の気持ちをさらに落ち込ませていた。

「あらー……波蔵ちゃん!? またやっちゃったの?」
「……すいません、店主。これでも十分、手加減をしているつもりなのだが」
「分かってるわよー♪ 波蔵ちゃんの力が強すぎちゃうから、仕方ないわよ〜。けれども、波蔵ちゃんは身体もがっちりしてるし、顔もイケてるし、何よりもリピーターがあるし、今のままでも十分に良いんだけどね〜」
「……でも、俺としても頑張ってみます。今日は失礼します」

 そう言って、店長に対して波蔵はそう言って頭を下げて謝った後、トボトボと自分の家である『愛詩荘』の202号室へと帰っていた。

「力をどうにかして制御して、普通にマッサージを楽しんで貰わないようにしないとな……。収入は十分に得ているが、これでは仕事も十分に出来ませんし」

 はぁ〜、と溜め息を吐きながら、自室の鍵を取り出して開けようとして、

「少しよろしいですか、大川波蔵さん、と私は事情を心配致します」
「おっ、波蔵さんじゃん! お疲れ―!」

 同じアパートの住人、読者モデルの明坂佐奈と明坂佑奈の2人と出会う。佐奈はいつものようにスクール水着で扇情的に、佑奈はブルマ姿で健康的な美しさを出していた。2人とも十分過ぎるくらいに胸が大きく、波蔵はそんな2人の姿にちょっとばかりどきまぎしていた。しかし、いつもこれ以上に扇情的な姿を見ている波蔵にとっては、これはあくまでも同じアパートの住人としてちょっとどうかなと思うくらいにしか思っていなかった。

「おっ、お二人も今帰った所? なら、お疲れ様だな」
「まぁ、なー。酷い親父達のいやらしい目線に耐えつつ、仕事をするのも大変だぜ。なっ、佐奈?」
「えぇ、それでもお仕事させていただく以上は、感謝させていただいております、と私はお世辞を使います」
「相変わらずだな、本当に……。で、なんだ? 前みたいにマッサージして欲しいと言う事か?」

 と、波蔵が軽い気持ちで2人に聞くと、「「是非に!」」と2人が大きな声で言う。

「あのマッサージは何回でも受けてぇくらいだぜ。母星にもあそこまでの快楽を与えてくれる施設はないぜ。それに、何より終わった後、前よりも綺麗になってる気がするからよ」

 と、佑奈はそう言いながらたゆんと大きな胸を張る。体操服の生地を押しのけるほどに豊満なその豊かな胸が、これからの事を嬉しそうにするかのように待っていた。

「私も同意見です。あまりにも凄すぎて、私にとってはこれ以上の刺激などないと断言します、と私はあなたの行動に対して最大限の祝福を告げます」

 と、佑奈はそう言いながら両腕で胸を強調するかのようにしており、それによってただでさえ限界を迎えている彼女のビキニがさらに薄くなり、そして両方の肩ひもの部分がパチンと切れて、慌てて佑奈はそれを手で押さえていた。

「はぁ……はいはい。してやるから、入りな。お前さん達のマッサージは、人目に付くからな。さっさと終わらせないと」

 そう言って扉を紳士的に開けた波蔵、その扉の中に2人のモデルは中へと入っていた。


 明坂佐奈と明坂佑奈は実は普通の人間ではない。地球外生命体、所謂宇宙人が彼女達の正体である。姿こそ地球の人間と何ら変わらない彼女達ではあるが、佐奈は星の95%が海と言うシー星人であり、佑奈は星の95%が大陸と言うランド星人である。その生態は実は地球人と大きく違う点がある。

「じゃあ、まずは佑奈さんから行きますよ? 良いですよね、佑奈さん?」
「異論はありません、と私は唇を噛みしめます」
「じゃあ、佑奈さん。まずは横になって、リラックスしてください」
「お、おぅ。分かってる」

 そう言いながらゆっくりとその体操服とブルマを脱いでいき、そして可愛らしい白色の下着が現れる。そして一瞬ためらいの表情を見せた佑奈だったが、そのまま思い切って下着を外していた。と思ったのだが、いきなり彼女の身体に突風が巻き起こると、彼女の身体は一瞬にしてゴツゴツとした岩で大事な部分をガードされていた。

「……よ、よろしく頼む」

 これが佑奈、いやランド星人の特徴である。ランド星人は元々星の95%が大陸と言う星であり、その星では弱肉強食が当たり前。故に彼らは地面と密接な関係にあり、いかなる時であろうとも地面を武器として、また鎧として武装する。そう、例えリラックスする状態であろうとも。
 故に、下着を捨てて無防備となった佑奈の身体に、種としての本能が地面で身体を守ろうとするのはいつもの事。身体に岩を纏った彼女をマッサージ出来る者など、同じ岩を操るランド星人の他には居ない。
 そう、普通ならば。

「では、行くぞ」

 そう言って、波蔵は優しく、そういつもやっているように手を触れる。

「あぁん、そ、そこぉ」

 と、岩の上からマッサージしているのにも関わらず、佑奈は嬉しそうな声をあげる。
 波蔵のマッサージの真髄はその強すぎる力ではなく、その技術。どんなに硬いものがあろうとも、例え服の上だろうが、岩の上だろうが、的確に相手に力を伝える技術こそが彼の凄い所である。
 故に波蔵にとってはランド星人である佑奈だろうと、こんなふうに簡単にマッサージ出来ちゃうのだ。

「そ、そこぉ……良いわぁ……」

 とは言え、その姿は本当に扇情的な物だ。下着が岩に変わっているだけでそのエロティックさは全く損なわれておらず、なおかつ岩がまるで肌と一体化しているがごとく、彼女のその豊満で、良い匂いが漂う胸と一緒に揺れるのだ。目に毒、と言う言葉が相応しい光景を30分間、ただの仕事として割り切る波蔵の精神力も凄い所だろう。

「では、今度は私をお願いします、と私は催促します」
「あぁ、はいはい。こっちは終わったし、良いだろう」

 床で本当に満足そうな表情で横たわる佑奈を尻目に、波蔵は佐奈のマッサージへと取り掛かる。もう既に彼女は着ていた水着を脱いでいて、そのまま敷いていたタオルに倒れていた。あたかも、海でサンオイルを待つ女性のごとく。
 そして彼女の身体はヌルヌルとしたローションがかかったように、ぬめりを帯びていた。これもまた、佐奈と同じく、佑奈のシー星人としての特徴。
 5%の大陸しか持たないシー星では、陸で裸になる際は身体から地球のローションのような物を出して、乾燥から身を守っているのである。

「あーあ、またこんなに濡らして。後で拭いてくださいよ」
「分かっています、ですが先にマッサージをお願いします、と私は期待を込めて言います」
「あー、はいはい」

 普通のマッサージ師ならば、こんなにもぬめりを帯びている身体に的確にマッサージを施すのは難しいだろう。しかし、波蔵ならば多少ぬめりで狙いがズレようとも、その波動によるマッサージ作業で普通にマッサージを行う事が出来る。

「あぁー、本当に良いわぁぁぁぁぁ。最高、だわぁぁぁぁ、と私は嬉しい声をあげますぅぅぅぅ」
「あぁ、嬉しそうで何よりだよ」

 波蔵としては彼女のマッサージも我慢の連続であった。何せ、彼女が動く度にそのたゆんたゆんと揺れる胸から垂れる飛沫が、彼女の胸にかかっていた飛沫が彼の顔に付き、さらにはぬめっている彼女の身体は滑りやすく、ついうっかりと彼女のその豊満で柔らかい胸に手を伸ばしてしまう事もある。
 波蔵は驚き慌てていたが、彼のスーパーテクニックに翻弄されている客はほとんどその事実を知らない。

「ちょっと、気を付けてください。これでもモデルの大事な胸なのですよ、と私は警告します」
「すまん……」

 とはいえ、クスクスと笑いながら注意されている時点で、彼の行動は丸わかりだったのだが。


 その後、しっかりと2人の客をもてなした波蔵。

「あー、良いマッサージだよなぁ。明日も受けたいくらいだぜ」
「少ない金額でこんなにも、私達を綺麗にするためのマッサージを行って貰えているのです。感謝すべきではあってもやりすぎはダメです、と私は勧告します」

 佐奈と佑奈の2人はそう言いながら、5万円を置いて自分達の部屋へと帰って行った。そして初めてゆっくり出来るな、と想いながら波蔵は椅子に座って、テレビを付ける。
 しかし、いつものテレビではすぐになんらかの番組の映像が映るのだが、そこに映るのはザーザーと言う白と黒の砂嵐のような映像だけだった。

「あれ? 可笑しいな、アンテナ壊れたか?」
『フフフ……』

 と、そんな事を考えているとテレビの中から声がする。いや、砂嵐だと思っていたテレビに1人の少女の顔が映っている。
 美しく映る長い金髪のロングヘアー、そして瞳も顔立ちも美しく、人目で誰もが好きになってしまいそうな美貌をしており、正直波蔵もいっぱいいっぱいであった。それでもなんとか理性を保てたのはテレビに現れると言う現象が普通ではなく、なおかつ彼女に額に3つ目の瞳があった事が理由だろう。

「だ、誰だ。お前は!?」
『クフフ……神に選ばれし力を持ちし咎人よ。我が名を所望するならば、その身に刻み付けろ! 我が名はチューナ=スカイ。地面と決別し、世界から舞い降りた国を背負いし火の巫女なりけり』
「な、何言ってんだ?」

 と、波蔵は頭を悩ませるのであった。

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202号室;大川波蔵(おおかわなみぞう)、マッサージ師。24歳。
がっしりとした筋肉の細マッチョ体型。顔も美形であるが、少々無骨な印象がある。
昔読んだ漫画に憧れて修行をして、地球人ではありえない力と波動の技術を身に着けた、一流マッサージ師。その力をどう活かすかを現在思案中。