「艦隊これくしょん」。これは戦艦を擬人化した少女達が提督の支持の元、深海戦艦や仲間の艦娘達を取り戻すと言うストーリーである。そんな世界の上層部が開発中のとある代物、【駆逐艦用高速修復剤】。これはそんな修復剤が届いてとある事件によって封印して隔離した後の、とある艦隊のお話である。
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とある鎮守府の、提督が管理する特別支給品保管倉庫。ここには失敗作の砲台や危険すぎて封印された物、開発不可能の設計図など門外不出とされている物などが厳重に、提督と秘書官の手によって管理されていた。
そんな部屋で、とある駆逐艦娘の少女が嬉しそうな、どこか誇らしげさえ感じるような笑みを浮かべていた。
「ふふーん! 遂に見つけ出す事が出来たんだよ!」
彼女の名前は清霜。夕雲型駆逐艦の19番艦であり、本来ならばまだ秘書艦に選ばれる順番でないはずの、駆逐艦娘である。
今回、無理を言って交代交代で回ってくるはずの担当の秘書艦を、初雪から変えて貰った清霜は、秘書艦権限でこの部屋に入れる機会を、今か今かと待ち望んでいたのだ。
予め言っておくが、清霜は別に秘書艦を担当する事は別に好きではない。秘書艦の仕事は事務処理、艦隊編成、作戦立案、そして提督のお世話と多岐に渡るが、総じて地味である。勿論、清霜だって提督のお世話は大好きであるが、事務処理や艦隊の編成はあまり好きではない。だから交代で回って来る秘書艦の時まで待っていても良かったのだが今回はそう言う訳にはいかなかったのだ。なにせ、清霜の目的の物がそこにはあるのだから。
「あった! 【駆逐艦用高速修復剤】!」
と、そう言って清霜は"それ"を、封じられたそれを取り出す。
【駆逐艦用高速修復剤】。それはとある過程で、偶然生まれてしまった、無用の長物である。
曰く、それを使うと駆逐艦は戦艦、あるいは空母並みの年齢まで成長してしまう。
曰く、それを使うと駆逐艦は皆胸が大きくなる。
曰く、それを使って効果があるのは駆逐艦だけである。
などなどと、とにかくそれの存在はこの前、別の鎮守府で騒ぎを起こしてしまい、たらいまわし的にこれの有効な使い道を見出すまではと言う事で保管する事になっていた。
そして、今日はその【駆逐艦用高速修復剤】が届く日であり、これからしばらくはこの修復剤は特別支給品保管庫に置かれる。
清霜はこれを狙っていたのだ。
「まぁ、大事なのはこれが私には有効だって、事だよね!」
と、清霜はふん! と粗末な、いえ駆逐艦らしい、小さな胸を張って答えていた。
とある筋からの情報で、「これを使えば駆逐艦から戦艦並みになる!」と言うとあるRJさんからの情報を手に入れていた清霜はこれを使って戦艦になろうとしているのである。
「さぁ、早く工廠まで持って行こう! そろそろ戦艦にしていきましょう!」
この場所でこれを使うのも良いが、それでは提督にバレてしまう。それに早く戦艦になりたかった清霜は、工廠で行う事にしたのだ。
清霜はそう言って、【駆逐艦用高速修復剤】が入ったドラム缶を動かそうとして、よいしょっ、とそのドラム缶を動かして、装備一式がある工廠へと向かおうとしていたが、
「うっ!」
やっぱり駆逐艦である清霜には重かったのか、修復剤が入ったドラム缶を持ち上げようとしてそのまま手を放して落としてしまった。そしてそのまま足元のものにつまづいてしまった清霜。
そしてそのまま、修復剤の液体は飛び上がり、清霜の身体にどろっとした液体が清霜にかかっていた。
その後、清霜の身体に変化が訪れる。
「あ、あぁぁぁぁ! か、身体が、熱いぃぃぃぃぃ!」
ただでさえ長い清霜の髪がどんどん長く伸びて行き、そのまま手足も大人並みに長く伸びて行き、顔も大人びたものになる。そして胸元が熱くなっていってそれは血液が全身発火して全身がぼぅっと熱くたぎり、むっちりとした肉を付けて膨れ上がり、そのままボインと言う擬音が聞こえるくらいにまで膨らみ揺れる両方の胸。
「お、おおっ!」
姿見を見て、嬉しそうな表情をする清霜。さっきよりも長くなった髪に触って嬉しそうにし、腕をもう片方の腕で触ってさらに嬉しそうになり、胸元の大きな乳房を両方の手で持ち上げるようにして感触を確かめていた。
「金剛お姉様や、扶桑お姉様、長門お姉様達と同じくらい……かな。これで戦艦の清霜、かんせーい! さぁ、後は戦艦の装備を整えれば、完全に戦艦のお姉様と並ぶぞー! さぁ、レッツゴー!」
そう言って、清霜は上機嫌で笑って工廠へ向かっていた。
「……ふふ、見ちゃったわ」
ロッカーから出て来た、ダルグレー色の髪のダウナー駆逐艦、早霜はそう言って小さく笑っていた。
「……まさか、工廠に着くまでに憲兵さんに捕まるとは、思ってなかったよー」
はぁー、と溜め息を吐く清霜。工廠に着くまでに憲兵に捕まってしまい、その後提督にバレてしまった清霜は元の駆逐艦姿に戻されてしまい、トボトボと自室へ帰っていた。ちなみに変わって貰ってサボっていた事が分かった初雪は、清霜よりもさらに怒られていたけれども。
「まぁ、帰って早霜ちゃんに慰めて貰おうっと……あっ」
そんな中、そのまま自室へと帰ろうとする清霜の前に、ダルグレー色の髪が綺麗な戦艦娘が歩いて来た。
巫女のような服装と艦橋を模したような髪飾り、髪は先を切り揃えられていて腰まで伸びている。右前髪が非常に長く、顔の右半分が隠れているが、その高い背丈やたゆんと歩く度に揺れる胸が戦艦娘としての魅力を非常に表していた。
「扶桑型のお姉様……? けど、見た事がないです……誰かなー?」
「……ふふっ、清霜ちゃん。私はこれから用事があるの。……それじゃあ、失礼するわ、ふふ」
そう言って彼女はそのまま提督の居る部屋へと向かっていた。それを見て、清霜は「あれ?」と首をかしげていた。
「……あの子、早霜ちゃんに似ていたような?」