女性にとって一番大切なのかはなにかと言う質問に対して高校1年生のわたし、黒猫沢明日夏(くろねこざわあすか)はこう答える。
――――大切なのは見た目、だと。
しかし、わたしは自分の見た目がイケてる、つまりは美しいとは思った事は一度もない。
短いサバサバとしたショートヘアー、平均を大きく下回る身体に小学生時代から全く成長しない胸と尻……と言うか、わたしは小学生から成長していない、と言う意味合いなんだけれども。
学校全体で「高校に迷い込んだ女子小学生」と思われて全く相手にされていないわたしだが、わたし自身はそんな事はない。むしろ同級生全ての女性、それどころか学校の生徒と職員など女である以上は全員をライバルとして見ている。
それに……この学校にはわたしの事を「女」として、「ライバル」として見ている女が2人居る。
禁じられし黒魔術の後継者、蝙蝠坂瑠璃(こうもりざかるり)。
特殊で異常な体質の持ち主、蜥蜴崎四里(とかげざきしさと)。
わたしはこの2人と共に1つの部活を行っている。
――――そう、女の子の胸を大きくするための部活動……ぼーにゅう部を。
第狗話「クしくも化学」
私立〇□高校の一階、普段は家庭科室として使用されているこの場所こそが、わたしたちの活動場所である。
「今日はわたしの"化学"を試す番だけど、2人とも良いよね?」
わたしがそう言うと、2人ともコクリと頷く。
"大きくする時は皆で試す"。
それがわたしたちのポリシー。お互いの決意の証。
正直、そうでもしないとお互いに歯止めが効かないって言うか、大変だから決めましたがこれは非常に良い物。相手にされていない同校の女性陣からして私達の嫉妬の対象なのに、調べてみたら身長、体重、胸の大きさとお尻の大きさが一緒のわたしたちがお互いを出しぬいたら血の雨が降ります。いや、降らせます。
……まっ、いつかは出し抜こうとは思ってるけど。
「アタシは大丈夫だよ〜!」
「えぇ、どんなのか楽しみだわ」
わたしの同志、瑠璃と四里の2人はそう告げる。
けれどもこの2人の膨乳作戦はハッキリ言って、非合理で不条理な物だと言える。瑠璃の魔術は安定せず、四里に至っては先祖代々続く体質とそれを駆使するエセ科学……はっきり言ってこの部はわたしがしっかりしないと成り立たないでしょう。
オカルトやエセ科学などと言う物は、理論づけされていないため嫌いです。やはり全てがきちんと方程式として成り立つ化学こそ素晴らしい!
そのためにも、わたしだけはしっかりと効果を証明しませんと……。
「わたしは2人と違ってしっかりとした、科学的根拠と論理的な思考によって成り立つ方法によって、全世界の女性が待ち望む確立した胸の膨乳理論の解明を……」
「「御託は良いから! 早く早く!」」
「くっ……!」
相も変わらず、科学的な思考が出来ない方々で……まぁ、それはともかくとして確かに前置きが長くなっていますね。本題に入ると致しましょう。
「これをご覧ください」
と、わたしは1本の薬瓶を取り出した。その薬瓶の中にはこの間わたし自らが調合した特殊な成長促進剤を入れている。
――――アマゾンの密林にあるとされる特殊な花……見つけるのに非常に苦労致しましたよ。
「この薬は血による成長促進剤……分かりやすく言えば、成長が著しい人達の血を入れる事によって、私達自身も成長するって言う寸法なのです」
人間が成長するのは成長ホルモンと呼ばれる物質が影響しているのだが、この成長ホルモンには人によって程度差がある。この薬瓶にはわたし達3人が"成長著しいと思う人"の血液(どう採取したかは企業秘密)から、わたしが成長因子のみを抽出いたしました。
さらに成長性を高めるいくつかの薬品を用いた事により、血液の元となった本人以上の成長を保証する。
「この薬にはそれぞれ3人……わたし、四里、瑠璃の3人が成長著しいと思った人物から抽出した成長因子を濃縮して、効果を分けて出るようにしております」
「つまり、私達全員が同じ効果を3回、受けるって事?」
その通りです、と四里に返事を返す。
「まっ、アタシら3人が選んだんだから相当って事でしょ? なら、3回分の成長って事で楽しめば良いんじゃない?」
瑠璃の言う事は最もだ。これ以上、議論する必要はない。
飲めばわかる。わたしの計算は完璧なのだから。
「「「あぁん……♥」」」
ゴクゴクと、わたしが調合した薬を3人揃って飲む。すると快感が3人の身体を突き動かす。
痛みよりも快感の方が良いと思って作ったのだが、それは思いのほか良好な感覚を与えてくれたようだ。
わたし達3人それぞれの髪が今までのどこか手入れが難しそうな髪から、ゆったりとふわふわとした髪質に変わって行く。そして腕と脚も子供じみたものから大人のトップモデルを意識した物へと変わって、身長も180cm後半と高い身長へと変わって来る……。
そして胸もググッと膨らみ始め、まるで今まで忘れていた成長を取り戻すかのように膨らみ始めて、そしてKカップと言う両腕で抱えられるサイズとなって成長の第一段階が止まる。
「うわぁ……流石、お姉ちゃんだわぁ♪」
と、四里が言う。
この第1段階目の効果は四里が持ち込んだ血液……の成長ですか。彼女は自身のお姉ちゃんから血を取ってきたようだ。まぁ、彼女の姉、蜥蜴崎三星(とかげざきみほし)さんはスーパーモデルと言っても過言ではないくらいに高身長と大きな胸(バスト)を持つ彼女の成長を考えれば、この成長は当然の結果と言えるでしょう。最も本人はGカップで170cm台の身長と、本人越えをしっかり果たしているんですが。流石、わたし!
「四里はお姉ちゃんの血? 私は近所に住む叔母ちゃんの血にして貰ったよ〜。アタシの知り合いで一番大きいのは叔母ちゃんだったから」
「血液が誰の物かだなんて関係ないです。大切なのは、わたしの薬がしっかりとその役目を果たしていると言う、完璧なる事実のみ。これで後2階の成長を遂げれば……」
「ねぇ、アタシ思ったんだけど……」
と、わたしが自身の成果に感心している最中、瑠璃がそう言葉を遮る。
……もうこれからと言う時になにを。
「明日夏はアタシ達3人が手に入れた血から成長因子を取り出して、3回分成長するようにセッティングして〜、なおかつ本人よりも成長因子を強くしたんだよね?」
「それが……なにか問題でも?」
「いや〜、四里のお姉ちゃん分の成長で180cm後半・Kカップでしょ? じゃあ、後2回分の成長を、今回と同じ要領でやったらどうなると?」
えっと……1回の成長で身長はおおよそ60cmアップで、胸は11もサイズアップ……って……!?
「こ、こう言う成長が後2階!? しかもわたしが取った血って、四里さんのお姉さんよりも上の……!?」
そんな事を考えている内にぐぐっとわたし達の身体が大きく成長し始める。
「うっ……天井に頭が……!」
普通に座っていたはずなのに頭が天井についていた。そして胸はまるでアドバルーンを思わせるかのようにググイッと膨らみ始め、胸が床全体を圧迫し始め散る。
気分はまるで、兎の家1軒を1人で圧迫するかのように巨大化した不思議の国のアリス。違うのは同じように成長している女性が後2人居ると言う事くらいかな?
「「「う、うわぁ……!」」」
あまりの巨大さ加減に学校を突き破るわたし達。屋上の床を突き破り、わたし達3人はそのまま顔を床から突き破っていた。
えっと……確か、この学校の高さは3階建てで、屋上の高さを考えると……11か12mって所? 胸のサイズに至っては3〜4mって所でしょうか……。
さっきまで180cmくらいでビビッているのが馬鹿らしくなるくらいの巨大さである……。
(これって、わたしが採決した血のせい? わたくしはただ大きさだけを意識して選びましたから……)
わたしが選んだのは確か、2m級の巨大サイズ、アメリカンサイズの身長の人。海外に居るとされるその人から血を拝借し、その成長ホルモンを抽出したせいでここまでのビックサイズになってしまったのだと考えられる。まぁ、痛い失敗と言う奴である。
「でもまぁ、10mサイズならわたしの家に巨大化を戻す薬があります。身長のみを一般人、いわゆる大人サイズにする薬だったので、この巨体の魅力は損なわず、むしろ活かす方向性を……」
……って、あれ? どうして瑠璃の顔が暗い?
裸で巨大化したのが恥ずかしいくらいだったら、後でその時の記憶を消す薬品を使えば……って、あれ?
瑠璃?
薬品?
って、あっ!?
ま、まだ……瑠璃が持って来た成長の分が終わってない。
(でも確か、瑠璃は叔母さんって言ってたし……)
ぐぐっ……
(ただの叔母さんで、そんなに成長は……)
ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐっ……
(しないはず……)
ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐっ……
「……って、どんどん大きくなってるんですけど!?」
な、なにこれ!?
どんどん目線が高くなって、あっという間に学校があんなに小さく……
「いやー、ごめんね〜。
叔母さんって悪魔と契約したの。それで人間サイズを保つために1%以下の力を借りて、3mサイズで胸なんかメートル級! そんなすっごーい人の血だから御利益があると思って〜」
つまり……なにか?
1%以下で日本人、それどころかアメリカ人もびっくりなサイズの叔母さんの血液を採取して、それを100%の力を引き出した挙句、120%を引き出したと……。
2mサイズの長身外国人で、10mサイズ越えですよ?
そんな凄い血を使ったら……。
「そんな大事な事は……初めから伝えとけ〜!!」
やっぱりオカルトって、だいっきらい!
この後、めちゃくちゃ巨大化した。