ぼーにゅう部 トにかく着用

帝国城摂政 作
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 女性にとって一番大切なのかはなにかと言う質問に対して高校1年生の私、蜥蜴崎四里(とかげざきしさと)はこう答える。
 ――――大切なのは見た目、だと。

 しかし、私は自分の見た目がイケてる、つまりは美しいとは思った事は一度もない。
 野暮ったい黒縁眼鏡にぼさぼっさの野暮ったい髪、平均を大きく下回る身体に小学生時代から全く成長しない胸と尻……と言うか、私は小学生から成長していない、と言う意味合いなんだけれども。
 学校全体で「高校に迷い込んだ女子小学生」と思われて全く相手にされていない私だが、私自身はそんな事はない。むしろ同級生全ての女性、それどころか学校の生徒と職員など女である以上は全員をライバルとして見ている。

 それに……この学校には私の事を「女」として、「ライバル」として見ている女が2人居る。

 稀代の天才発明家、蝙蝠坂瑠璃(こうもりざかるり)。
 禁じられし黒魔術の後継者、黒猫沢明日夏(くろねこざわあすか)。

 私はこの2人と共に1つの部活を行っている。
 ――――そう、女の子の胸を大きくするための部活動……ぼーにゅう部を。

第菟話「トにかく着用」

 私立〇□高校の一階、普段は家庭科室として使用されているこの場所こそが、私達の活動場所である。

「では、今日は私の"着用"を試す番だけど、良いよね?」

 私がそう強い口調で宣言する。

 "大きくする時は皆で試す"。
 それが私達のポリシー。部の中心、と呼べるような物。
 正直、そうでもしないとお互いに歯止めが効かない、大変だからって決めた方法なんですがこれが非常にいい働きをしています。相手にされていない同校の女性陣からして私達の嫉妬の対象なのに、調べてみたら身長、体重、胸の大きさとお尻の大きさが一緒の私達がお互いを出しぬいたら血の雨が降る。いや、確実に。
 ……まっ、いつかは出し抜こうとは思ってるけど。

(その出し抜くのが今回、かな?)

 今日は土曜日。学校はお休みで、本来は合宿などない分家系の部活であるぼーにゅう部では、休日はお休みにしているのですが……今回は2人を出しぬくために1人で部室に居ます。そう、私は2人より美人になってみせます!

「そもそも、私のは1人専用だからね」

 私の膨乳計画、それはずばり皮モノである。皮モノといきなり言われても分からないと思うので簡単に説明するとなると、着ぐるみをイメージして貰えると分かりやすい。
 他の人間そっくりの毛皮を着てその人間そのものになりきるという事なのだが、私の場合は少し違う。

 この蜥蜴崎四里は自分の身体から皮を剥ぐ事が出来る。そしてその皮に入る事によって、その者になる事が出来るのだ。一度瑠璃に私が脱いだ皮に入って貰ったら、私そのものになった。
 身長や髪質だけではなく、指紋や毛穴の位置、それから土踏まずの所までなど細部に至るまで一緒であった。

 ……まぁ、その辺はその時はどうだって良かった。問題はその後の事。
 家に持ち帰った皮を本で、皮の左腕を押し潰してしまったのである。幸い破れこそしなかったが、これは大丈夫かなと思って確認のためにその皮の中に入って見た。すると驚いた事に、着てみると左腕が長くなっていたのである。つまりは皮を伸ばせば、その分着た際にその部分が長くなると言う事である。
 この理論を活かせばナイスバディになれる! そう思っていたんだけど……皮は破けやすかったみたいで、皮が破けてしまった……。
 これでは着れない! そう思って私は1つの装置を開発した。そう、物の材質を変える装置である。まぁ、本来これはもっと有効な使い方があるのかもしれないけど関係ない。私にとって、「胸が大きな美人女性になる事」、それが一番大事なのだから。

「さて、まずはどうしようかな?」

 まず私は自分の皮をどうするかを決める事にした。
 私は特製装置によって自分の皮をビニールのような素材へと変え、脚を長く伸ばして行く。そして確認のためにその皮の中に自分から入る。

「う、うわぁ……なんか変な感覚……」

 例えるならば竹馬の上に乗っているような、高すぎるハイヒールを履いているようなそんな複雑な感覚。身体は普通なのにも関わらず、脚だけ伸びていて変な感覚である。でもまぁ、しっかりと脚にも質感があるから大丈夫でしょう。
 私は皮を脱ぐと今度は腕も足のバランスに合わせて伸ばし、胸元を両腕でFカップくらいにまで巨大化させる。首元と腰をバンドで留めると、そしてその中に空気入れのホースを中に突っ込む。

「さーて、皮の性質もアドバルーンで良く見るソフトカバーにしたし、早速始めちゃおうか」

 そう言って空気を徐々に入れていく。
 1.5m、2m、3m……うん、まぁこのくらいかな。あまり大きすぎると男を引っ掛けられないし、女に嫉妬させられないから。

「うわっ、胸でっか……」

 自分の皮の胸元が空気によって膨らんで、Fカップからさらに大きな超乳サイズへと変わっていた。体格も変わっているから大きさもまた格別である。
 良くゲームとかで「140cm,Iカップ」や「160cm,Fカップ」となると前者の方が大きく描かれがちだが、サイズ感的にはどちらも同じくらいである。そう言う意味で言えば、今回は特に大きくなったと言える。なにせ、カップサイズも上がった上に身長は3倍近くになっているのだから。

「とりあえず合わせてみますか」

 そう言って私は皮の中に入り込む。もうこのサイズだと、着込むと言うよりかはそちらの表現の方が正しい。
 入り込むと共に私の身体が皮に合わせるようにその質感を取り戻す。

「うわぁ……胸がお、重い……」

 片方だけで何十キロあるだろう。しかも、それを軽々と持ち合わせる自分が正直ワクワクしている。

「うわっ、頭が天井につきそう……」

 身体が天井に着くなどと言う経験は、今までも2人の成果で経験したことがあるけれども1人でここまでの大きさになったのは初めて、かな?

「さて、最後の仕上げは……っと」

 私はそう言って皮を脱ぐと腕と脚に注射器を差す。皮の材質を変えた事によってこのくらいの穴ならば、皮の方で勝手に補って修復するでしょう。そして注射器を通して、私は脚と手に空気を送り込む。むくむくっと徐々に腕と脚が膨らむのを慎重に確認しつつ、私は空気を送り込む。

「……っと、これくらいかな?」

 私は自分で納得すると、そのまま着込む。先程と同じく、最初は皮の中に入っていると言う感じだったが、皮の方に身体が引っ張られるように身体が皮に合ったサイズへと成長を遂げる。

「うん、これで完成かな?」

 身長は約3mという、ビックサイズ!
 胸のサイズはおおよそ2m越えのはちきれんばかりのサイズ感!
 被りつきたくなるくらいのむちむちボディ!

 ……まぁ、まだ髪質とか肌のきめ細やかさとか言う部分に置いて納得出来ていない部分もあるけれども、こんなにむちむちのスーパーナイスバディなら男達の眼は私に釘付け!

「これで、私は最高の女性だぁ〜!」

 やったぁ、私こそ最高の


 ……うん、分かってた。
 2人を完全に出しぬけると言う事が出来ると思う方が間違いだって。

「あーんなに大きな身体に勝手になったんでしたら……」

「アタシらがこうした理由も分かるよね?」

 目を覚ますと、身体が縮んでいた。ううん、縮小していた。

 やり方自体はすっごく簡単。
 まず私を眠らせた後(あるいは気絶させるか)、私を皮から脱がせて皮自体を縮ませる。洗濯すると皮は素材によっては縮むし、それを応用したのかも。

(しかも、ご丁寧に背中にチャック、自分1人では脱げないタイプが縫い付けられているし……)

 こ、これは本気で怒らせちゃった?
 今の私のサイズって……人形と同じくらいの20cm弱、くらいかな? いつもの2人がすっごく巨大に、ううんと大きく見えるんだけれども。

「え、えっと2人とも……これ、戻してくれると嬉しいんですが……」

 そう言うと2人は笑顔でこう答える。

「人形って基本的にリカちゃん人形を初めとしてスタイルがよろしいですから、わたしとしたらそんな小さな身体でナイスバディも素敵だと思いますよ?」

「つーか、アタシらを出し抜こうとした時点でこうなるのは分かってるんじゃないの?」

「「ともかく……反省しなさい!」」

 ドンッと自室よりも大きくなったテーブルを、女の嫉妬と怒りに満ちた彼女達2人の拳が振り降ろされ、私はその場を飛ぶ。

 あぁ、やっぱり辞めとけばよかったと、今更ながら思った。

 しばらく私は2人の気が済むまで、部室の人形として飾られるのだがそれはまた別のお話である。