ぼーにゅう部 コれは愛の呪い

帝国城摂政 作
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 魔術師一族の中には自覚なき、無自覚の魔術師というものが存在する。
 自分ではごく普通の人間だと思っていたのに、実は魔術という呪いを発動できる特殊な能力を持った人間だということもある。
 
 これはそんな特殊な人間の、ちょっとした呪いという名の恋の物語。

第子話「コれは愛の呪い」

 恋人が奇病にかかった。
 恋人の名前は蝙蝠坂汐音(こうもりざかしおね)、かかった奇病の名前は「不明病」。原因不明でどこが感染源かも分からないような、5年くらいで死ぬかもしれないという難病。
 彼女は半年前くらいから病院で寝たきりとなって、どんどん手足が動かなくなっていった。

「大丈夫かい、汐音?」

 僕がそう聞くと、汐音はニコリと笑っていた。

「……うん、だいじょうぶ。太郎くんもいつもありがとう、しばらくはうちの家族も来てくれないから太郎くんがいつも来てくれて嬉しいよ」

 と、汐音は笑っていた。でもその笑顔は決して本音ではないことは恋人の俺だけが知っている。
 もう既に余命が少なくなっていって、病気のせいで手足を動かすと言う簡単な事ですらつらいはずなのに……それを隠して笑っているのだ。恋人ととしては……気付かずに笑い掛けるのが筋という事だろう。

「大丈夫だって。俺は……汐音のためなら、何だって出来る」

「太郎くん……その言葉だけで十分すぎるくらい嬉しいよ」

 そう言いつつも、彼女はどこか憂いに満ちた目で窓の外を見る。窓の外には数枚の葉っぱを残した、今にも枯れそうな木があった。

「多分、あの葉っぱが全部落ちる頃には……私の命が終わる頃だろうね」

 そのような不吉な言葉を最後に、汐音との面会は終了してしまった。
 ――――だから俺は、出来るならば夢を見て欲しいと、子供ながらの好奇心でとある行動をしてしまったのだ。葉っぱと枝を離さないように、紐でぐるぐる巻きにして、葉っぱを落ちないように。
 こんな事で病気が無くなるとは思っていないし、命が伸びるとも思ってはいない。ただ彼女の、ささやかな希望に成れば良い。そう思っての行動だった。

 ――――そう、ただそれだけの行動だったのだ。

【葉っぱの大きさ…6.3cm】
【蝙蝠坂汐音の身長…160.02cm】

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 数日後。再び汐音の病室を訪れると、汐音はこの前見た時よりも元気そうで、手を何度も握ったり離したりしていた。前に来た時は完全に手が動かなくなってしまっていたから、これは嬉しい変化である。

「あっ、太郎くん。ほら、手が動くようになったの。ほらほらっ!」

「あっ……あぁ、そうだな! 手が動くようになった回復に近付いているって事じゃないか?」

「う、うん……足も少しだけど、動くようになって……ほらっ」

 そう言いながら足の指をほんの少し動かす汐音。医者から、完全に動かなくなったという事は聞いていたのに、これは嬉しいというか、驚くべき事だ。

「……あれ、汐音? なんだか大きくなってないか?」

「そう、かな? 気のせいじゃない?」

 なんだか身体が若干大きくなった気もするんだけれども、彼女がそう言うのなら気のせいか。でもまぁ、病気が和らいでいるのは良い傾向である。

【葉っぱの大きさ…6.5cm】
【蝙蝠坂汐音の身長…165.1cm】

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 彼女に異変が起きているとはっきり判明したのは2週間後のお見舞いの時。彼女は"もう2度と歩けない脚"によって、病院の中庭に現れた際である。

「……汐音、やっぱり背が伸びてないかい?」

「うーん……成長期、なのかな? 病状が良くなってたら、急に背が……」

 汐音の身長は160cmくらいだ。胸だって左程大きくはなく、むしろ可愛いという表現が似合う女性だった。それなのに……今の汐音は180cmの俺よりも明らかに頭1つ分くらい大きくなってる。

「2m3cm……だって。病気が良くなるのは嬉しいけれども、いきなりこんなに大きくなると困惑するよ」

 わずか数日で2m代に。これは明らかな異常事態である。

「……まぁ、でもその代わりにこうやって――――」

 そう言いながら汐音はゆっくりと俺に近付くと、そのまま2m代になって急に大きさを増した胸……そんなEカップの胸で俺を包み込む。

「――――こうやって太郎くんを包み込めるのは、恋人として嬉しい限りよ」

「汐音……♥ う、うれしいが恥ずかしいな」

 病院のバッカプルと言われてしまったが、今はなんでも良かった。余命いくばくかの彼女と歩いて過ごせるのだ。これ以上の幸運はないだろう。

【葉っぱの大きさ…8.0cm】
【蝙蝠坂汐音の身長…203.2cm】

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 彼女の成長はそれからも著しかった。2mを越えた翌日には3mを越えていて、もう既に今日は5mを越えてしまっている。明らかに異常事態である。それに八頭身のモデル体型となり、その上で胸も今日でKカップという大きさになっていた。メートルサイズの爆乳美女である。
 彼女は嬉しがっているが、彼氏である俺としたら不安でしかない。だから病院にも調査と解析をお願いしたんですけれども、身体には何の問題もないようだ。それとは別に、彼女がどうしてこんなに軽やかに動けるようになったかが分かった。それは身体の巨体化が理由だったのだ。

 彼女の病気は血液中に不純物が現れる病気なのだが、彼女の身体は細胞自体が巨大化しており、その代わり病気の原因となるウイルスの方はそのままだ。彼女の身体が徐々にその大きさを増すが、その代わり病気の方は相対的にどんどん小さくなっていく。故に病状が弱まっているように見えた……それが理由だったみたいである。

(しかし……どうして急に大きく……)

 そんな中、帰る途中にあの時彼女を剥げますためにぐるぐる巻きにした葉っぱを見つけた。こちらも若干前に見た時よりも大きかったが、まさか、これが原因か?

(彼女はこの葉っぱが落ちる頃には自分の命は無くなっている、と後ろ向きな事を言っていた。だからそうならないようにするために、ロープで巻いておいたのだが……この葉っぱの大きさと彼女の急成長がリンクしている? まさか……そんなバカな)

 あり得ない、と全てを否定したかった。けれども彼女に起こった変化は普通ではあり得ない、だからこういうのもありかもしれぬ。

「……うぅーん、どう言う事なんだ」

 そうやって俺が唸っている間でも、うっすらと葉っぱは大きさを増していたのであった。

【葉っぱの大きさ…20.6cm】
【蝙蝠坂瑠璃の汐音の身長…523.4cm】

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 彼女の大きさは大きくなるばかりであった。治癒不能の病気が治ったのは嬉しいが、それとは別に問題が発生したようにも思える。

「うふふ……た・ろ・う・く・ん♥」

 汐音はそう言いながら頬をうっすらと紅色に染めて、ちょんちょんと俺を小指で突いていた。彼女は自分の身長よりも大きくなった胸の上に俺を乗せて、とても嬉しそうに微笑んでいた。
 彼女の身長は既に東京タワーや、スカイツリーを優に超え、5kmの身長を余裕で越えていた。病気の方は完全に鳴りを潜めていて、その代わり彼女は大胆になっていた。前までは素肌を見せる事が恥ずかしいとさえ言っていたのにも、今では素肌で過ごしても何も問題はない。むしろ、自分の自慢の身体に誇りを持っているかのようだ。

「汐音……お前の家族は……」

「うーん♪ もう良いの♪
 私には、太郎くんさえ居れば良いの♥」

 るんるん、と朗らかな顔で笑う汐音。そして、あの時縛った木からなったリンゴを一口かじっていた。
 彼女の運命を変えたと言っても過言ではないリンゴの木の実を食べて。

【葉っぱの大きさ…211.81m】
【蝙蝠坂汐音の身長…5380m】



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【その後のお話】
【葉っぱの大きさが地球と同じだった場合】

「ウフフ……ちっちゃーい♥」

 チョンチョン、と私は手のひらサイズまで縮んだ地球を触っていた。水の星と言われていた地球は、私の命を模した樹木によって覆われてしまっていた。それによって地球は樹の星となっており、葉っぱは地球と同じサイズになってしまった。

「あぁ……私、あんな小さい星に居たんだね」

 今にして思えばどうやって、あんなに小さな星に居たのかが不思議に思えてくる。私は笑みを浮かべながら、愛おしそうに大きく膨らんでいる身体よりも大きくなった胸を撫でていた。
 胸元には私が唯一この宇宙で愛していると言っても過言ではない、太郎くんが乗っている。目には見えないほど小さくなってしまったけど、私にはわかる。どこに居るのかが、手に取るように分かる。

「本当に大きくなった……」

 地球が手のひらサイズになるほど、大きく成長した私だけれども、私としてはここで終わるつもりはない。もっと……もっと大きく……私は、もっと大きくなる!

「うふふ♥ 地球を越えた私が次に目指すは、これ……よね?」

 ゆっくりと私は、地球に巻き付いた木々の樹木の根っこを取り、それを私の身体に刺す。私の身体に刺さった木々はそのまま小さく、いえ私の身体に入って行く。
 葉っぱの大きさが私の身長になるのなら、私の身体を媒体としたらどうなるのかな? どんなに、大きくなるのか楽しみである。

「――――ねぇ、太郎くん?」

【地球の大きさ…12742km】
【蝙蝠坂汐音の身長…323Mm】

【葉っぱの大きさ…蝙蝠坂汐音の身体】
【蝙蝠坂汐音の身長…??】