《前回までのあらすじとか》
なんと、エージェント・ナッノが裏切っちゃったぁ? えっ、作者よ。これからどうするの? と言う訳で、大幅なテコ入れとして新幹部登場するよ☆
「まさか、そんな事って」
「そうね、あり得ないわよ」
私が話した事について信じられないと、黒山渚と白雪このはは顔を真っ青にしていた。しかし私、雨洞優は頭の狐耳と9本の狐の尻尾をゆらゆらと揺らしながら「間違いないです」と主張を変えなかった。
「彼女、エージェント・ナッノは私のにい……いえ、兄が入った杖を持って私の前から帰って行きました。つまり彼女は、私達を裏切って敵側へと着いたんですよ」
別に可笑しなことでではない、はずであると雨洞優は答えていた。
なにせ、エージェント・ナッノは元々はタイラという女が生み出した、エージェント・パンクと同じ最高幹部の1人。雨洞優は確かにメカイジンの1人として2人と戦ったが、それとは別なのだ。洗脳された者と元から悪者とでは大きな違いがあるのだから。
「で、でも! もしかしたら誰かの洗脳を受けているとかは……」
「そ、そうですよ! その可能性もあるんじゃないでしょうか!」
一方、渚とこのはの2人は信じられない様子である。まぁ、彼女達からして見ればいきなり信じてた人が裏切ったとは言われても信じられないだろう。2人は前回の戦いではエージェント・ナッノから『アクセル』と『セキトバ』という新たな強化メモリを貰ったのだ。そう、私が裏切りの現場を目撃したその瞬間に渡していたのだ。それだからこそ、私はこうして念押ししたのだ。
次こそ、にい……兄代わりに慕っているあの人を救い出すために。
「あぁ、そうだな! ナッノ博士が本当に裏切ったのかどうか分からない。
……確かめるためにも合わなければな、ナッノ博士と」
渚さんがそう言う。まぁ、私としてもあんな優れた科学技術を持つ相手を敵に回したくはない。出来れば、なんらかの洗脳を受けていて欲しいと願いたいものである。
そんな中、ずっとスマートフォンを睨めつけていたこのはさんが驚いた顔をしていた。
「大変です、2人とも! どうやら怪盗コンビの配下らしき者が街で暴れているみたいです! 早速行きましょう!」
どうやらこのこのはさんの方も、エージェント・ナッノさんが裏切ったとは考えてはいないようである。そして怪盗コンビの配下に話を聞くつもりみたいである。
私としてもそれには特に違和感はなかったので、賛成してたんですが……。
にしても、ちょっとお尻がズボンに食い込んで痛い……。
お母さんのちょっと大きめのを借りて来たんだけれども、やっぱり前よりもムチムチになってる?
(これも『エレナ』メモリの効果? そもそも『エレナ』って誰なんだろう……教科書の偉人録にはなかったけど)
――――彼女はまだ知らない。彼女の身体が『エレナ』……突然変異によって生まれた天才魔術師にて19世紀の神智学者・オカルト研究家であるH・P・ブラヴァツキーことブラヴァツキー夫人のメモリが、メモリの副作用によって彼女の身体を変身時と同じくらいの魔術の使い手に変えようとしていたことなんて。
☆
街の中でもとりわけ人が多いショッピングモール街。普段ならば沢山の人が居てワイワイと楽しんでいるようなこの場所で、その怪人はニヤニヤと笑いながら1組の女を見ていた。いや、正確に言えば組となった女達である。
今、このショッピングモール街には2種類の人間が居る。その2種類は年齢や身長といった事ではない。ただの胸の大きさである。
片方はペッタンコな胸をした者達。全員が悲壮な顔をして悲しみの表情を浮かべている。もう片方は豊かな胸をした者達。全員が嬉しそうな表情で胸が真っ平らな奴らを見下していた。
それを見て、怪人は嬉しそうに手を叩く。
怪人は、小柄な女の子であった。120cmにも満たないような、着ている高校生の制服がコスプレにしか見えないような、頭から3本の銀の角を生やした金髪の女の子。身体に似合わないIカップがパットにしか見えないようなそんな幼女であった。そんな幼女は首元に翡翠色のマフラーを巻きつけた、体躯に似合わない頑丈そうな鋼鉄の腕を両腕に着けて、その両腕で嬉しそうに叩いていた。
――――彼女は元人間の怪人、人間の時の名前を千伊佐稲荷(ちいさいなり)。名前の通り小さな体躯が嫌で嫌で仕方がなくて、怪人になるべく自ら志願した女の子である。
「グレッグレッ、グレレレレッ! 良いね良いね良いね! やっぱり胸が小さな者に対して胸が大きい者に対して抱く、《優越感》! やっぱり良いわ良いわ最高だわぁ!」
少しうっとりした顔で彼女はそう言っていた。そんな彼女の前に1組の少女達が現れる。中学生くらいの少々胸が大きめの姉と幼稚園に通ったばかりくらいの妹。そんな2人に対して、特に中学生くらいの方にギロッとした怖い瞳を向ける稲荷。
「気に食わない気に食わない気に食わないわねぇ! そんなあなたは、こんな風に書き換えちゃうんだから!」
そうすると彼女の左腕からうねうねとしたコードが伸びて、姉と妹に突き刺さった。彼女がニヤリと笑うと共に、コードを通して姉と妹に"なにか"が入って行く。"なにか"については稲荷も詳しくは知らなかった。知っていることと言えば……
「ワンワンッ!「キャンキャン!」
「グレッグレグレッ! 良い感じにワンコに出来たわね、名前も知らない姉妹さん! グレッグレッ、やっぱり元が人間の犬を見下すのは《優越感》に浸れますなぁ、グレッグレッ!」
……使うと、とーっても面白いことが起きると言う点のみ。
姉妹が犬になったのを見て、嬉しそうに稲荷は笑い声をあげていた。
「いやー、使えば使うほどこの能力は素晴らしい! あはぁ、女怪盗様のためにさらに仕事に勤しみましょう! グレッグレグレッ!」
さーて、と稲荷は次の獲物へと目を向ける。そこには18歳くらいの、Dカップという胸を持つ高校生くらいの女の子が稲荷に怯えた目を向けていた。それに対して稲荷は先程と同じくコードを伸ばして、彼女へと目を向けていた。
「さて、どうすれば良いだろうねぇ。優越感を持って見る役が良いか、それとも見下される役が良いか? あるいは動物に変えて私が見下すか。
……なんにせよ、私が一番上なのは変わりません。そう、私こそが優越感を持って見下す者なり!」
稲荷はそう言ってコードをゆっくりと、Dカップ女子高校生へと突き刺そうと――――
「――――来る?!」
なにかが来るのを察して、稲荷はコードをすっと引き戻す。すると女子高生を守るようにして、銃弾が地面に当たって銃弾の壁を作り出していた。
「見つけたわよ、メガイジン!」
「あなた達、彼女達に何をしたの!?」
「――――そんな事は良いからにい……兄を返さないですこん」
稲荷を止めに現れたのは、3人の少女。その3人の少女はそれぞれ自分のメモリを手に持っていた。
『ロード!』『アクセル!』
「世界のため、あなたを倒します!
闇駆ける悪魔の刃! 超絶・プラス大変身!」
『レジェンド!』
「なにか危ない事をしてるなら、止めましょう。
光差す正義の剣! 超越・大変身!」
『エレナ!』
「にい……兄を返して貰います。
愛あるオカルト! 第77戦術、なのですこん!」
そして、3人の姿が変身時の姿へと変わる。
黒い八部丈のフードがくるりと回転すると共に、そのまま渚の上へと被さって羽織られる。そしてLカップというメートルサイズの胸の前に赤い鎧が付けられており、両腕と両脚には青い魔力のオーラが纏われている。タイヤはそれぞれの靴、エンジンと排気口は背中に取り付けられて黒いライダースーツでエロさMAXなギガロード。
白い長袖のワンピースを着込んでおり、頭には黄金の冠が被される。そして右腕に赤い長刀、左腕に青い長刀を構えており、そして背中には大きな盾が構えられていた。赤い馬のような足でケンタウロスのような形となり、白いワンピースの胸元のボタンを弾き飛ばして胸の谷間が見えるほど大きくなった胸を誇るギガレジェンド。
頭が黒と金の2色のツインテールとなり、頭の周りで200以上にも及ぶ石球がくるくると回っている4m近い身長の高身長女子。両腕には特徴的な変な模様が描かれており、右手には五芒星の描かれた黒い本を持っていた。
「悪意駆動する銀車の魔王! ギガロード・アクセル、ここに降臨!」
「正義の走る赤馬の勇者! ギガレジェンド・セキトバ! ここに参上!」
「……ギガエンプレス・アナザー、参ります」
変身、そして登場台詞を放つ3人に、その自分よりもたゆんっと大きく揺れる胸に苛立ちを覚える稲荷。そう言ってイライラとした表情と声で、言い放つ。
「――――我が名は千伊佐稲荷、またの名をグリーン・グレムリンD。
女怪盗コンビアリエーヌ&ツクルノラをボスとして、最終作戦『GTS作戦』の要の1つを担う《優越感のグレムリン》なりぃ!」
【続く】