《……あらすじです。さむいです》
爆乳ライダーの3人はゴーレム・マリーマリオネット・リベンジ――――いや、メンドゥーサGを退けた彼女達。しかし、視界を覆う超巨大女はまだどうにも出来ない。しかし、乳首だけでも惑星サイズの大きさを誇る超巨大星雲サイズの巨大娘がゆっくりと倒れていた。
――――事は数時間前に遡る。
ここは赤道上空高度約36,000km。人工衛星が浮遊するような空気もないような高さに、"それ"はあった。
超巨大戦艦であり、大陸サイズの鋼の塊。鋼の工場の上には永遠と回り続ける歯車がくるり、ひとくるり、またくるりと回っており、その下には紅の宮殿が用意されていた。紅の宮殿、またの名を《万魔殿》と呼ばれるその場所にて怪盗コンビは立っていた。いや、その表現はあまりにも無粋、というものである。
女怪盗アリエーヌ・ルパンは目を伏したまま、電池が切れた機械のようにただ立っていた。アリエーヌを慕っているニコラ・ツクルノラはカタカタとキーボードを打っていた。
「……! やめて、やめてくださいませぇ、ツクルノラ様!」
そう言って、ただただ嘆きの言葉を口にするのはグリーン・グレムリンD、もとい《優越感のグレムリン》である。グレムリンは全身を電線で巻きつけられており、電線を伝ってなにかが後ろの怪しげな装置へと吸い込まれている。全身がぎゅっと締めつけられているため、彼女のおっぱいが強調されてる事は言わなくても良いだろう。
「私は、ツクルノラ様のために尽くす、忠臣ですぅ! それなのに、何故、そんな私からエネルギーを奪ってるんですか!? この機械、あの超巨大娘をさらに巨大化させて、目的のサイズまで大きくする装置でしょう!? そんな装置のエネルギーを、どうして私から?!」
「……あなたが信じられないからですよ、《背徳感のグレムリン》」
ただ冷静に、冷酷に、何の感情も持たずにツクルノラはそう口にする。
「……《優越感のグレムリン》。あなたの優越感、それを得るために自分を良い者になろうとする意識の高さは評価しています。それに相手に対して自分よりも下の地位まで貶めようとする行為もまた、評価しておりますよ? 元々、そういう人物であるからこそわが組織へと招待して、幹部の1人としての力を与えたのですから」
「そっ、そこまで分かってくださっているなら、ど、どうして私を生贄に……。ほ、本来の生贄はメガイジンの中の役立たず、スライムNとかいう奴にする予定だったはずじゃ……」
「えぇ、それに関してはあなたの話した通りですよ。別にそこを否定するつもりはございませんよ。
私は、約束を守るタイプの女怪盗ですので」
と、ツクルノラはそう言いながらも、キーボードを叩く手は止まらなかった。その事に対してグレムリンはさらに口汚く罵る。
「こんな事あり得ない」、「どうしてそんな事をするの」、「ムカつく」……色々と言葉は尽きないが、ツクルノラは全ての言葉を無視する。難解なパソコンをこれまた意味不明に捜査すると、グレムリンの口が閉じる。言葉を話しているはずなのに、そこからは言葉が出なくなっていた。
「何故、言葉が出ない? そんな顔してますね、グレムリン。
その理由は単純ですよ、グレムリン。あなたを改造したのは他でもない、このわたくしなのですから」
グレムリンの能力、特性、身体の至る所まで。
幹部として戦うためにその身体の全ては、ニコラ・ツクルノラの手が加えられている。
故にその気になれば、グレムリンの口から言葉を出さないようにする事だって可能なのだから。
「……あなたの全てを許しましょう。けれども、1つだけ許せない事。それはアリエーヌ様をバカにした事です! それだけは、それをする事は許していませんでしたよね!
故にあなたを生贄にします。何故なら、私が敬愛するアリエーヌ様をバカにした! ……話はそれだけですよ」
そう言ってツクルノラはパソコンを、キーボードを叩く作業を続けていた。
グレムリンの顔は悲嘆に満ちていた。
☆
「中々に外道ですなの、ニコラ・ツクルノラさん」
と、ツクルノラにそう言って話しかける者が居た。
ナッノ……いや《背徳感のトコヤミ》である。彼女はベルトを身に纏い、さらにはメモリ2本を持っている所から見ても、戦う気満々と言った様子である。その様を見てツクルノラは顔を苦悩に満ちるが、気にせずに《背徳感のトコヤミ》は話しまくる。
「いやはや、今頃爆乳ライダーの3人はびっくりしている頃だろうね。なにせ、自分達の頭上にある太陽が、超巨大娘の乳首だなんてさぁ。めっちゃくちゃびっくりしているだろうね。あのサイズの乳首なら、手だけで巨大星雲レベルじゃないですか? もはや、この時点で今世記最大級の超絶巨大娘である事は確実でしょうねぇ。
……しっかし、一番びっくりしたのはあなたの、ニコラ・ツクルノラの"正体"だね」
「…………」
「いやはや、まさか怪盗コンビの片割れ――――ニコラ・ツクルノラの正体が完璧皇帝ネクロ・ノミコンデだっただなんて」
完璧皇帝ネクロ・ノミコンデ。それはタイラ博士が用意した幹部の1人。
完璧なる才能と性能を与えられたため、《従属》という特性を与えられ――――ただその才覚をタイラ博士のために使う事を求められた幹部。本来、ナッノがこの異世界に来た目的の相手である。
その後もツクルノラが止めないため、《背徳のトコヤミ》の話は続く。
――――ネクロ・ノミコンデは完璧だった。
タイラ様に命じられた完璧な身体を作るために頑張っていたネクロ・ノミコンデであったが、タイラ博士がギガレンジャーにやられた事によってその目的はとん挫する。裏切られないために《従属》の性質を与えられたネクロ・ノミコンデは、その従属すべき相手が居なくなったために自分がどうするべきか、精神的に困ってしまった。
それ故に考えた方法、それが自ら支配して貰う対象を作るという方法である。
自らの力を分け与え、同時に支配者らしい高飛車な性格をインプット。その上で自分はその事を忘れるように、自分自身を精神支配。普通ならあり得ない、異常な行動かと思うかもしれないが、それを成し遂げるほどの才能――――それを持つ者が完璧皇帝ネクロ・ノミコンデである。
「まぁ、そんな事とも知らずに怪盗コンビを倒しに向かった私が、いかに愚かだったという話になってしまいますなのが。全く持って、自らの事ながら痛々しい過去なの」
「……白々しいな、《背徳感のトコヤミ》」
と、そこで初めてキーボードを叩くのを止めて、《背徳感のトコヤミ》を見るツクルノラ。その頭の上には魔女が被るような帽子を被っており、よくよく見れば杖も持っている。
「――――そもそもエージェント・ナッノは、その身体は"既に死人でしょうが"」
☆
「いやぁ、そうでしたねぇ」
そう言いながらも、《背徳感のトコヤミ》は2本のメモリをベルトに差した。
「……ベルト式戦術、変身」
『オーケー! ヤミとジュウリョク、奇跡のインリョク!』
その言葉と共に《背徳感のトコヤミ》の姿が変わり、黒のセーターと黒の王冠が特徴の姿へと変わる。そして、引力の影響によって《背徳感のトコヤミ》の背後で重そうな機械達が浮かび上がっていた。
「……あなたは死すべきです。そして優越感を持って、あなたの計画はこの私が有効活用してやりましょう!」
「……傲岸不遜ですね」
溜め息を吐きながら、ツクルノラは杖を振る。杖を振るうと共に、サクッという乾いた音が響いていた。そして、ガタッと《背徳感のトコヤミ》は膝から崩れ落ちた。なにが起こったか分からない、そんな目をしていた。
「……エキドナ、魔女を意味するこのメモリを改造しました。これにより、重力と闇の引力を操るあなただろうと、一瞬でメモリを破壊できます。メモリを破壊すれば、あなた程度ならすぐに倒せますわ。
あぁ、やはり完璧なんてつまらないですね。ほんとーーーーうに、つまらない」
なにもかも退屈。
それが支配対象を失ってしまった、それが完璧皇帝ネクロ・ノミコンデの今の現状。それが故に怪盗助手のニコラ・ツクルノラと皮を被り、自らが作ったアリエーヌという怪人に使われる事に幸せを感じる。それが彼女の、歪んだ目的なのだから。
「そもそも、あなたの事は端から信頼なんてしていませんよ。
自らの科学の怖さを知って反逆の道を選んだエージェント・ナッノではなく、あなたの本性なんて所詮は――――」
そう言って再び、自分を支配してくれるアリエーヌ様を創造しようとするツクルノラ。
……しかし、そんなツクルノラの胸にナイフが突き刺さっていた。
「こっ、こんな事はあ、ありえーぬ……」
そのまま、ガタッと倒れるツクルノラ。
――――そして、《背徳感のトコヤミ》……いや、ナッノの身体を操る"なにか"は不敵に笑みをこぼす。
【ぷぷっ! 無様、滑稽、哀れだねぇ〜。
いやぁ、確かにメモリが破壊された時はびっくりしたよ。このせいで、もうニュートンメモリは使えないなぁ。でもさ、"トコヤミノスメラギメモリは壊せない、絶対に"】
ぎゅっと、黒い闇が出る『T』のメモリを握りしめる"なにか"。
【もうナッノの、意思も、魂も、誇りもない。死んだ者にそんなのは無意味だ。しかし、当初の"完璧皇帝ネクロ・ノミコンデを倒す"という目的は達成できたんだ。この身体も満足だろう。
だから、もうこの身体は"俺"のものだ】
そう言って、"なにか"は怪しげな機械を操作すると、目の前の巨大娘が苦しみ始める。
【苦しいだろう? 惨めだろう? こんなに、矮小な存在に殺される事が惨めでしかないだろう、名もなき巨大娘ちゃんよぉ〜。
だがな、所詮は作られた存在である俺達に、自由なんて物はないんだよぉ! それを自覚できてるもんが勝つ、それが自然の摂理さ! 安心しな、お前の身体は後で俺の計画の最終段階で、超絶的に有効活用してやるからよぉ〜。さて、お前も邪魔だな】
そう言って、"なにか"は必死になにかを訴え続けるグレムリンDにその牙を――――
【続く】
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メガイジンシリーズ第20弾;グレムリンD/優越感のグレムリン
神話モチーフ;ヨーロッパ系統グレムリン種
偉人モチーフ;チャールズ・ダーウィン
メイン位;メカニック/作る者
サブ位;プレイヤー/楽しむ者
身長;118cm
バストカップ;Iカップ
外見;から3本の銀の角を生やした金髪の女の子。身体に似合わないIカップがパットにしか見えないような幼女体型。そ首元に翡翠色のマフラーを巻きつけた、体躯に似合わない頑丈そうな鋼鉄の腕を両腕に着けている。
説明;『GTS作戦』の要の1つである《優越感》を司る幹部。怪人になる前は千伊佐稲荷という小柄な体躯がコンプレックスの女子高生であり、それが故に人々の身体に異常なまでの嫉妬を持っている。コードを用いて人間の身体を変質させる事ができ、また戦闘の際には自らが魔改造した凶悪な武器で戦う。
メガイジンシリーズ第21弾;怪盗助手ニコラ・ツクルノラ/完璧皇帝ネクロ・ノミコンデ
外見;黒縁眼鏡に白衣を着たOカップの美女。懐には万能リモコンをセットしており、また戦闘の際に使う万能ツールを手に装着している。
説明;怪盗助手としてアリエーヌ・ルパンの右腕的存在として動いていた幹部。メカイジンやメガイジンなどを多く作り上げ、また戦闘の際には必要な武器をその場で作り上げる、科学者な一面を持っていた。アリエーヌが死んでからは最終作戦である『GTS作戦』と並行して、新たなアリエーヌ・ルパンの作成に取り組む。
正体;その正体は、ナッノ博士が探していた完璧皇帝ネクロ・ノミコンデ。1人で宇宙法則を変えるほどの力と才覚を持つが、《誰かに従属してないと生きていけない》という生粋の奴隷体質なために、自分が仕える者を自らで生み出すという、矛盾したエラーを起こしていた。《背徳感のトコヤミ》の戦いに際して、特性のエキドナメモリで戦うも、相手の闇の力の前に屈する。最期は先に死んだアリエーヌ様の元に逝けることを望んでいた。
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