電乳戦士サイバープリキュア 第2話「すっごぉ〜い! キュアフレンズ登場!」

帝国城摂政 作
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 入学式の次の日と言うと、大抵の人にとっては希望に満ち溢れている。
 新しい季節にて心機一転、アリスト学園に通っている中学生の彼女達にとってはまだまだ世界が希望に満ちているようであった。しかして、やはり個人差と言うものは大きくある。
 年がら年中明るい人が特に明るいように、年がら年中暗い人は季節に関係なく暗い。それとまぁ、そんな暗い人であろうとも、春の温かい陽気に誘われて少しは明るくなるものだ。

 ――――そんな中、学園へと続く道すがら、1人の女生徒がトボトボと頭を深々と下げたまま、校舎へと歩いていた。心なしか、彼女の周りの空気も黒く淀んでいるようであった。
 その件の人物である江ノ島クラスタはと言うと、心なしか昨日よりもスマホを操作する指先が遅いような気がした。

「大丈夫ですか、姫様?」

 スマホの中から妖精であるナノピコが話しかけて来て、「……ナノピコのせいですから、です」とぼそりっと小さく声を出す。

「……ナノピコがあーーーーんな人前なんかで話しかけて来るから、あのうざったらしくて馴れ馴れしい香椎イスカなんかに話しかけられたんです。本当に大変だったん、ですから」

 昨日、あのサエスディとの対決の際。クラスタはナノピコを連れてさっさと逃げた。
 しかし、イスカはあの後もしつこく食い下がって来る。

『ねぇっ! ねえっ! 今さっきプリキュアって言ってなかった!?』
『プリキュアってなにっ!?』
『教えて! 教えて! 教えてーっ!』

 とりあえず、本当に邪魔だなぁと思いながらあの日は帰ったのだが――――

「あっ! クラスタちゃーーーーんっ!」

 と、後ろから春、どころか猛暑の夏に近い暑苦しさの香椎イスカが大きな胸を許しながらこちらに迫って来るのを見て、クラスタは溜め息をつきながら近くの木々へと飛び移っていたのであった。

「まーってよっ、一緒に行こうよっ、クラスタちゃーーーーーんっ!」


第2話《すっごぉ〜い! キュアフレンズ登場!》

 クラスタがクラスに入るとほぼ同時、イスカが勢い良く教室の扉を開けて入って来る。

「クラスタちゃん! クラスタちゃん! クラスタちゃーーーーんっ!」

 入って来ると同時に、座ったクラスタに対してイスカが詰め寄って来る。クラスタはただ無視するばかりで、淡々とスマホを扱うばかりである。

「……クラスタちゃん? おーい! おーい! おーーーーいっ、てばぁぁぁぁ!」

 何度も何度も、度々話しかけて来るイスカちゃんに対し、クラスタは溜め息を吐きながらスマホを閉じる。そしてイスカと向かい合うも、クラスタの顔は冴えないままだった。

「イスカさん、あなたには空気を読むという行為が出来ない、です? 私がこんなにも話したくないオーラを出してるです。……なのに、どうして話しかけて来る、ですか」

「わーーーーいっ! ようやく話しかけてくれたねぇぇぇぇ! イスカは、嬉しいよーーーーっ!
 えっとね、えっとねっ! 昨日見たテレビなんだけど、なんとねっ! なんとねっ! すっごぉーい、大きな栗がねっ! ハリネズミと共にねっ! それで、草薙さんがねっ!」

 物凄いの勢いで話を進めているが、イスカの話には脈絡がない。
 そしてクラスタはその事に対して淡々と頷いていた。話を聞くというよりかは、ただ単にうるさいから喋りたくないために頷いていると言った感じである。

「むぅーーーー! クラスタちゃん、もぉうちょっと話に乗り気になってよぉ!」

「へぇー(棒」

「それでねっ! 昨日のテレビなんだけどっ!」

「ほぉー(棒」

「……プリキュア(ぼそっ」

 ぼそっと呟いた、プリキュアという言葉に反応するクラスタ。その一瞬の隙を見逃さずに、イスカはクラスタからスマホを取り上げていた。

「ちょっ……dこsこfsどッ! わ、わたしのスマホをっ!」

「へっへ〜ん、だっ! ここまでおいでぇ、だっ!」

 「とりゃああああ!」と、スマホを持ったまま教室の……"窓"を開けて、そのまま出て行ってしまう。クラスタが慌てて追いかけようとするも、「はい、はーいっ!」と担任である八女先生が入って来るのを見て、ガクリと椅子へと座る。
 八女先生は教室に居ない香椎イスカの姿を見て、いつもの事かのように笑っていた。

「……もっと真剣に注意しましょうよ、です。担任なら、です」



 皆が授業をやる中では、体育館でも人の出入りは多少はある。そんな中、授業中はあまり込み合っていない学食――――そのうちで一番窓際で見えにくい席に1人の美少女が居た。
 ふんふーん♪と、上機嫌に揺れると彼女の長い前髪が揺れていた。同時におっぱいも大きく揺れ動いていたが、この場にそれを指摘できる者が居ない以上はあまり関係ないことだろう。
 そんな彼女、香椎イスカは「さぁ、吐けぇ!」とクラスタのスマホを、いやその中に居るナノピコを物凄い勢いで揺らしていた。

「やっ、やめてくださいなのぉ〜!」

「だったら吐いてよぉ〜! あなたの事とかぁ、それからクラスタちゃんの事とかぁ〜!」

「言えませんなのぉ〜! 姫様に怒られますなのぉ〜!」

 イスカが揺らして、ナノピコはそれでも言いたくないと強情に言い続けていたが、イスカがあまりにも激しく揺らすためにナノピコは「うぅ……」と吐きそうになって口を無理矢理押えていた。そして、するーりっとスマホの中から出てくる。
 ゆっくりとスマホから出て、空へと飛び立ったナノピコはそのまま「なにをするんですなのぁ〜!」といきなり文句を出していた。

「あんなに揺らされたら、どんな妖精メイドだって吐きそうになりますなのぉ! そんな事は、さーっさと止めて欲しいなのぉ!」

「ごっめんね〜! わたし、いつも言われちゃうんだ。空気が読めないって。なんでかなぁ〜?」

 う〜ん、とそう言いながらもしっかりと腕を組んで胸を強調する様を見て、天然ものの恐ろしさに驚愕するナノピコ。しかしそこはメイド、すぐさま冷静さを取り戻す。

「……で、香椎様は姫様のなにについて知りたいなの?」

「教えてくれるのっ!? 後、イスカで良いからねっ! もーっと、フレンドリーに行こうよ! えっと……」

「ナノピコです、なの……」

「そうそう、ナノピコちゃん! えっとね、なんで姫様と呼んでるのかとか、プリキュアとか……あと、好きな食べ物とか、得意な事とか、誕生日とか、その辺まとめてぜんぶっ!」

 「欲張りなの」と言うと、「親友を目指すならこのくらい当然だよっ!」と強気で応えるイスカ。それに対してナノピコは1つ1つ答えて行く。

 好きな食べ物は、カレー。時間がある時は自分で作るくらい好き。
 得意な事は、ゲーム。特にRPGでは攻略などを見ずに、最速クリアするほどの腕前を披露したこともあったらしい。
 誕生日は、7月15日。

 それらについては軽めに、それこそ自分の子供を自慢する母親のようにササッと話していた彼女だったが、「姫様と呼ぶ理由」と「プリキュアのこと」については口を閉ざす。それ以上は姫様から口止めされている、イスカが聞きだしたのはそこまでだった。

「あーあ、そっか。プリキュアとかすっごぉーく、気になるのにぃ!
 もぉぉぉぉぉぉっ!」

 ぷりぷりと、そんな擬音語が聞こえそうな感じで怒る彼女に、ふとナノピコが話しかける。

「……あなたは、」

「えっ〜!? な、なにっ!? なんでも聞いてね!
 好きな食べ物はハンバーグとエビフライ! 得意な事は……」



「姫様がこの世界の住人じゃないとしても、姫様と友達となってくれるか、なの?」


 そんな、突拍子もない問いかけ。
 そもそも問いかけているのが、スマホから出て来た妖精なのだから可笑しいと言えば、その時点で可笑しいのだが。


「ぜーんぜんっ! この世界の住人だとか、そうでないとか――――そんなこと、親友になるのに関係ないよねっ!」


 そう言ってあっけらかんと笑う彼女を見て、ナノピコは優しく微笑む。

「姫様に必要なのはやっぱり、あなたみたいな明るい人なの」

 ナノピコは優しげな顔でそう言い、彼女の豊かで豊満な胸の上に乗る。いきなりの事でびっくりするイスカだったが、その直後に言われた「姫様と、プリキュアのことについて教えるなの」という言葉で、身体が動かなくなっていた。




 この世界は、実は人間がまだ知らないだけで2つの世界が複雑に絡み合って出来ている。
 1つは今、イスカたちが普通に暮らす地球。ナノピコはこの世界の事を、《イチキュウ》と呼んでいる。
 もう1つが、ナノピコ達やあのウエスディと名乗る者達が暮らす地球。ナノピコ、そしてクラスタが本来居るべきこの世界の名前は――――《ゼロキュウ》と言うらしい。

「ゼロキュウ……?」

「はい、なのっ! ゼロキュウは……そうなのなぁ、あなた達で言う所のデジタル、つまりコンピューターの中にあるような電脳空間だと思って欲しいなのっ。実際、本当にそんな空間なの。
 人々は目の前に広がる電子パネルを使っておしゃべりしたり、電脳空間のデジタルウエーブを使って自由に動くホバーとかを使って自由自在に移動したりする……良く言えば、あなた達が思い浮かぶ未来世界とか言う奴なの」

 「勿論、私のような電子妖精も居るなのがっ!」と語るナノピコ。
 その言葉を受けて、イスカの頭の中でまだ見ぬクラスタの故郷を作り上げていく。

・電脳世界
・近未来で、夢のような世界
・妖精のようなファンタジーな存在も居る

「うーんっと、つまり、すっごぉーい世界って事だね!」

 ざっくりとした印象だが、ナノピコはそれで良いと割り切って話を続ける。

「そして、私は電脳妖精であり、《電脳王国》姫様御傍付きメイド長なの!
 クラスタ様は私が仕える、《電脳王国》の正式な血を受け継ぐ、お姫様なのっ!」

「わーいっ、つまりクラスタちゃんはお姫様なんだぁ〜!」

 あっさりと納得したが、ナノピコはもう諦めて割り切って話を続ける。

「《電脳王国》は幸せな国だったなの。姫様も、私も、国民も、みーんなが、幸せだったなの……が、そこに黒い影が落ちたなの。
 《ヌルリス》……あの時居たウエスディ、それから2人の幹部を中心とした組織は、マチガウイルスという電脳ウイルスを用いて、国盗りをしたなの。私達は為す術なく滅びるかと思いきや……姫様が、クラスタ様が《プリキュア》に賭けようと言い出したなの」

「ほうほう……そこでプリキュアに繋がる訳、ですなぁ〜」

「プリキュアは我が国に伝わる、古の存在。
 世界を救い、希望へと導く"5人組"の戦士……それがプリキュアなのっ! 姫様はその古代のデータを用いて、プリキュアに……」


 ガシッ、と鼻息荒くナノピコの全身を両手で掴んで迫るイリス。

「えっ!? プリキュアって、もしかして1人じゃないのっ!?」

「そ、そうなのっ……ってか、苦しいなの! 放してなのっ!」

 ごめんね、といって手を放すイリス。ナノピコは死ぬかと思ったと呟いて、咳を強めにした後に続ける。

「クラスタ姫が変身してる、キュアワクチン。
 実は本来はサポート、1人で戦えるようなスペックじゃないなの。キュアワクチンは皆の回復をしたりする方が本来は得意なのが、ウイルスに対してはある程度の上位性があるなのから前回の戦いは余裕そうに見えたなの。でも、やっぱり他のプリキュアと一緒の方が……」

 と、話を続けようとするナノピコを物凄い勢いで来た手が掴む。一瞬の出来事にイリスがきょとんとしていると、後ろからナノピコを叱る声が聞こえてくる。

「……なに、この世界の人をプリキュアに勧誘してる、です。それはタブーだとあれほど言ったのに懲りてない、です?」

「ひっ、姫様っ! で、でもやはり姫様の身体を心配するのはメイド長としては当然なのっ! ただでさえ姫様は……」

「うるさい、です。少しここで反省してなさい、です」

 と、クラスタはJカップという大きな胸へとナノピコを押し付けていた。ナノピコは「ちょっ/// 姫様のお胸の中は柔らかくてやばっ///」と言いながら豊満な谷間の中へと消えていく。
 そのままクラスタはささっと帰ろうとするが、クラスタの左腕をイリスの両手で掴んでいた。さっ、とクラスタはイリスの方を見て嫌そうな顔をして、逃げようとするもイリスの手は放れなかった。

「ちょっと、待ってよっ! クラスタちゃん、お姫様なんでしょ!? さっき、ナノピコちゃんから聞いたよ! すっごーいよね、お姫さまってね!」

「……ナノピコめ、です。本当にお節介な奴、です。
 確かに私は《電脳王国》とかいう国の姫、だったりするです。でもそれはあなたには関係ないこと、です。私はただ単に学校に通うとか、それくらいしか頭にない、です。
 友達との出逢いとか、交流とか、そう言うのは本当に関係ない、です。ですので、関わらなくて――――」

 そう言いながら、手を振りほどこうとするが、先程よりも余計に強めにイリスの手がしっかりと掴んでいた。


「そんなの、友達なんだから関係ないよっ!
 ――――それに、そんな悲しそうな顔で言っても、説得力がないよっ!」


 イリスの言葉に驚き、慌てて目元をぬぐうクラスタ。そんなクラスタの手には、確かに涙がついていた。

「そんな事、関係ないですっ! 友達とか、本当に良くて――――」


「おやおやぁ〜?  クラスタちゃんは、そんなに女々しい感じだったでえるぅ?」


 突如として現れたサエスディ。
 その姿を真剣な目で見つめる、クラスタ。

「また、出て来たっ!?」

 イスカは、サエスディを見て嫌な気配を感じていた。



「そうなのえるよぉ〜ね。《電脳王国》なんていう、あのくだらない王国の姫様なんかに価値なんてないに決まってるえるよぉ〜」

「……関係ない、です。またしても倒すだけ、です。
 さぁ、ここからは縛りプレイ解禁、ですっ!」

 力強く、クラスタが宣言して、スマホの電源をいれる。スマホにはカードスキャンの画面が映し出されており、クラスタはそこに持っていたカードをスキャンする。

「キュアライゼーション! ワクチンっ!
 救済を、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 クラスタが叫ぶと共に、彼女の姿が真っ白な光に包まれる。

 まず、彼女の銀色の髪が桃色の、鮮やかな色に変わると共に、背中の方まで長くさらーっと伸びる。服は真っ白なドレス、かと思いきやその上にピンク色のワンピースが着けられる。ワンピースに押し潰さられ、ただでさえ大きな彼女の胸がさらに大きく見える。
 靴もカジュアルなピンクの動きやすそうなシューズに、両手には殺菌のためかピンク色の手袋がはめられる。

 右手に持つ大きな注射器、そして背中の白い翼。
 それはまるで、白衣の天使の言葉が相応しい姿である。

「世界の浄化の、救世主! キュアワクチン!
 スーパープレイ、見せちゃうよっ!」

 江ノ島クラスタがキュアワクチンへと変身すると共に、サエスディが取り出したのは桐箪笥。3つの棚がある、桐箪笥であった。

「箪笥よっ! マチガウイルスの力を借りて、新たな姿に生まれ変われ!」

 箪笥が白い煙に包まれると、中から現れたのはゴリラ。巨大な箪笥の身体を持つ毛むくじゃらのゴリラは、大きな腕と脚で悠々と立つと、ゴリラのように2段箪笥の身体をドラミングしていた。

「完成えるっ! 箪笥とゴリラで、タンスゴリラえるっ!
 タンスゴリラ、キュアワクチンを倒すえる!」

「マッチ、ガウー!」

 サエスディの指示の下、タンスゴリラが上の棚の中をゴリラの毛むくじゃらの手で器用に探ると、その中からチャンピオングローブをその手にはめていた。そしてそのまま、キュアワクチンへと向かって来る。
 タンスゴリラの大ぶりなパンチに対して、キュアワクチンは懐へと回りこんで箪笥の身体にキュアワクチンのパンチが当たる。

「……っ! 硬っ!?」

 キュアワクチンの拳はタンスゴリラの身体にはびくともせず、驚いている間にタンスゴリラが再びパンチを放つ。大ぶりなパンチに速度に勝るキュアワクチンの方は避けていたが、

「甘いえるっ! タンスゴリラ、第2モードで攻撃するえるっ!」

「マッチガーウ!」

 タンスゴリラの下の棚が突如として開き、いきなり飛び出した箪笥の棚によってキュアワクチンが吹っ飛ばされてしまう。

「クラスタちゃん!」

「ぷぷぷっ……キュアワクチンも大した事ないえるなぁ〜。
 さて、あなたも速く逃げた方が良いえるよ?」

 サッと、イリスの後ろに現れたサエスディ。逃げた方が良いとは言っているが、それは親切心なんかではなく、ただ単に速く出て行けと言っているだけのようだ。

「我ら《ヌルリス》の最終目的は、世界征服ではなく、世界"侵略"える!
 電脳の世界は素晴らしい世界だと思わないえるか? この世界は自分の思い通りにならないことばかりえる。お腹は空くし、領土問題やら資源制限など色々と問題があるえるね? けれども、電脳世界ならばその辺りも自由自在にプログラミングによって変える事が出来るえる。そんな素晴らしい世界えるのに、クラスタ姫……いや、キュアワクチンがその世界を求めない理由が、我々には分からないえるよ? あなたもそう思わないえる?」

 イリスが返答に困っていると、棚の下敷きになっていたキュアワクチンが出てくる。

「……嘘ばかり言わないで欲しい、です。確かに電脳世界になれば今の世界より出来る事は増える、です。だけれどもそれと同時に、今よりも窮屈な、上位存在に支配される世界が来るだけ、です。
 なんでも出来る世界……ただしそれはあなた達にとって、という意味、でしょうです?」

 キュアワクチンの言葉に対して、サエスディは当たり前だと返事を返す。

「あなた達に与えるのは、"ある程度"の自由。この世に比べれば、遥かに自由な世界。
 その世界を与える我々が、あなた達以上の地位を手に入れるのは当然えるよぉ〜。
 ――――さてさて、キュアワクチンはタンスゴリラに任せるえる。後はイリスさん、あなたも早く帰るえるよぉ。これでもサエスディ、平和主義者で通っているえるので。そうだ、友達が欲しいとか言っていたえるし、友達でも居るえるか? いくらでも、複製して用意するえるよぉ?」

 少々下卑た顔を浮かべるサエスディ。それに対してイリスの顔が怒りに満ちて、サエスディの手を払いのけていた。

「……馬鹿にする、なっ! 友達は創るものじゃないっ!
 すっごぉーい友達は、なるもの、だよっ!」

 自分よりはるかに弱い一般人、イリスに手を払いのけられるということに怒りを覚えるサエスディ。

「お、怒ったえる! 平和主義がなんぼのもんじゃーえる!
 このサエスブレードで止めを――――」

 その時だった。
 イリスを中心に、白い光が包み込む。

「なっ、これはもしかして――――!」

 白い光の中心にいるイリス。
 その手にはいつの間にか、クラスタが持っていたようなスマホとカードを手にしていた。

「うんっ! すっごーいの、やっちゃうよ!」

 力強く、クラスタが宣言して、スマホの電源をいれる。スマホにはカードスキャンの画面が映し出されており、クラスタはそこに持っていたカードをスキャンする。

「キュアライゼーション! オオカミっ!
 愛を、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 イリスが叫ぶと共に、彼女の姿が真っ白な光に包まれる。

 まず、彼女の髪が動きやすいように整えられると、大きなIカップの谷間から1匹の白い獣が出てくる。それはネコだった。可愛らしいワンちゃんがイリスの周りを駆けまわり、それと同時に彼女の姿が変わって行く。
 赤を基調としたエプロン風の洋装に姿を変え、靴も動きやすそうな黒いシューズへと履き変わる。そしてワンちゃんはクルリとイリスの前で一回転すると、彼女の中へと消えていく。

 髪の上には犬耳、そして長い白の犬の尻尾。
 世に言う、アニマルコスプレはまさにこれだろう。

「人の愛の、救世主! キュアフレンズ!
 すごーい、力を、見せちゃうよっ!」

 決めポーズも決まり、白い光も収まる。



「……プリキュアっ! 2人目えるか!
 タンスゴリラ、先にこっちのプリキュアを倒すえる!」

 サエスディの指示の下、タンスゴリラが新しく変身したプリキュア、キュアフレンズの方へと向かって行く。タンスゴリラの、吹っ飛ばして空となった2段目の棚があった跡……そこにはたくさんの機関銃が並んでいた。

「マッチ、ガーウ!」

 タンスゴリラが咆哮をあげると共に、機関銃が火をあげる。機関銃の速さは先程の大ぶりのパンチとは比べ物にならないほどの高速技。
 しかし、その機関銃の銃撃よりも速く、キュアフレンズが移動する。

「なっ!? はっ、速いえるぅ!?」

「うわぁ! すっごーい!」

 キュアフレンズは自分で自分の速さにびっくりして、そのままタンスゴリラの空っぽの棚の中に入る。

「いっくよぉ〜! フレンズ・カーニバルぅ〜!」

 キュアフレンズが叫ぶと、彼女の胸から沢山の白い犬が現れる。現れた白い犬達はタンスゴリラの身体で大暴れして、タンスゴリラの身体を内部から破壊していく。
 内部から破壊されていく事で壊れて行くことで、タンスゴリラがぶっ壊れて行く。そしてある程度ぶっ壊した後、高速で離脱してタンスゴリラの前に立つ。

「止めだよっ! 私のフレンズ達ぃ!」

 パチンと鳴らすと共に、タンスゴリラを囲むようにしてキュアフレンズのおっぱいの谷間から沢山の白いワンちゃん達が現れる。そしてワンちゃんとキュアフレンズの身体を白い光が包み込み、それは繋がって円のように広がっていく。


「プリキュア! フレンズ・アマテラスぅー!」


 タンスゴリラを白い光が包み込み、その光に包まれることによってタンスゴリラが浄化されて、元の箪笥へとその姿が戻っていた。
 タンスゴリラがやられた事で、サエスディは忌々しそうに見つめていた。

「――――む、むぅ! こっ、今回はこれくらいにしといてやるえる!
 次は2人とも倒して、この世界をヌルリスの世界にして見せるえる! から、覚悟しとけえるよぉ!」

 そう言って、電脳となって帰って行くサエスディ。



 サエスディが帰ったのを見届けて、キュアフレンズはスキップしながら歩いていって、キュアワクチンへと手を差し伸べる。

「クラスタちゃん! これで、私もプリキュアだね!
 プリキュア仲間として、これからご指導お願いしまーすぅ!」

 ペコリと勢い良く、直角に綺麗なお辞儀と共に手を差し伸べるキュアフレンズ。
 ナノピコが「クラスタ様! ぷりきゅ仲間が増える事は非常に良い事なの!」と言っているが、キュアワクチン――――江ノ島クラスタからして見れば、プリキュアとなった彼女を放り出す事は出来なかった。

「……友達からなら良い、です、よ?」

「やったー! わぁ〜い!
 これからよろしくね、クラスタちゃん!」

 そう言ってキュアワクチンのJカップのおっぱいに飛び込む、キュアフレンズ。それを受け止めながら、犬耳と尻尾が豪快に揺れる様子を見て、本当に犬のようだと思っていた。

「――――それより、この姿の時ならキュアワクチンと呼んで欲しい、ですよ……」



 その日の放課後。
 皆が下校する中、特に目立った2人が桜並木を歩いていた。

 1人は、香椎イリス。友達になった事が嬉しいのか、Iカップという爆乳で逃がさぬとばかりにクラスタの腕をしっかりと挟んでいた。
 もう1人は、江ノ島クラスタ。イリスがプリキュアとなったために、友達という選択肢を取るしかなかったのだが、物凄い勢いでじゃれつくイリスに対して失敗したかと嘆いていた。
 仲良さそう(?)に歩く2人。



 その2人を1人の美少女が見つめている。
 手にしたスマホには、2人がプリキュアとなって戦っているシーンが映し出されていた。

「要チェクです」




【次回予告!】
「クラスタちゃん! クラスタちゃん! これで私達も正式にプリキュアとして一緒に戦おうね!」
「……苦渋の決断、ではあります、です」
「まったまた〜! あれっ、あの娘、こちらに向かって来てない?
 ――――って、えっ〜! プリキュアである事がばれたぁ〜!?」


次回、サイバープリキュア!
【輝く泡姫! キュアスパークル!】

「……また厄介そう、です」
「これからも一緒にがんばろぉ〜!」