アリスト学園には、学園というだけあって生徒会が存在する。
生徒達の投票によって選ばれた生徒会長。そして生徒会長の呼びかけに応えた副会長、会計、書記、庶務の合計5名で構成されるのだが、今の生徒会には生徒会長と副会長の2人しか居ない。人望がないのではなく、それだけ生徒会長が優秀だという事だ。本来は5人で分けてやるような仕事をたった2人でやっているのだから。副会長は歴代と比べるとそれ並みであるという所も考慮すると、実質は生徒会長1人でやっているのだが。
そんな優秀すぎる生徒会長、【長者原スバル】は風紀委員会からの報告を見て、眉をひそめていた。
「江ノ島クラスタ……確か、転入生でしたっけ? 教師からの再三の要求を聞いているのにも関わらず、スマホの操作を止めない問題児。これはちょーっとばかり指導が必要ね」
「別に良いんじゃない?」と、彼女以外の唯一の生徒会メンバーである副会長、【杠ユズリ】は気楽にそう答えながら書類を片付けて行く。
「良くないわ! アリスト学園の生徒として、そんな不真面目な態度を続けさせていいと思ってるの?
確かに成績は良いわ、学業と運動のどちらの目から見てもね。だからと言って、いつまでもそんな事を続けさせてはいけないわ! これは決定事項よ!」
「本当に硬いなぁ、スバルは。その辺は臨機応変、適宜適応、順風満帆。
問題がなければなんでも良い、先生達も彼女の実力から最近はあまり怒鳴らくなったでしょう?」
ユズリはへらへらと笑っていたのだが、対するスバルはなにかを決断した顔だった。
「……いえ、止めてはいけないの。
生徒会長の長者原スバルの決断はぜったい、なんだから」
第5話《癒しの守護神! キュアアイギス!》
江ノ島クラスタの一日は変わらない。
いつものように学校に行き、いつものように学ぶ。その毎日に代わり映えはなく、その日も毎日と変わらない日の始まりであった。
「はい、没収よ」
校門前にて、スマホを取り上げられるまでは。
☆
「え、えっと、だ、だいじょうぶ? クラスタちゃん?」
「(ぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ)」
「ううっ、いつも以上に話しかけ辛いよ……」
教室で椅子に座ったまま、ただ茫然と机に寝転がる江ノ島クラスタ。
いつもはスマホを操作しながらもある程度話しかけた事に応えてくれるのだが、今日はそれもなく、ただ茫然としているので、逆に不気味であった。
「生徒会長もこんな事になるなら、服装チェックを止めて欲しかったですよ……」
クラスタがこうなってる原因、それは今日の朝に急遽行われた服装チェック。ほとんどの人はひっからずに済んだのだが、転校した日からずーーーーーっと、スマホ操作を止める事がなかったクラスタは、ものの見事にスマホを生徒会長に没収されてしまったのだ。
これでちょーっとばかり会話しやすくなると思っていたイリスだったが、どうやら逆効果だったみたい。それどころか、これじゃあ……
(クラスタちゃんは、笑顔の方が可愛いのっ!)
腕を前に構えて「よしっ!」と気合を入れるイリス。その際に彼女の立派なおっぱいが揺れたが、その辺はご愛嬌だ。それを他の生徒達が「おおっ……」とごくりと唾をのみ込んだ事も。
「――――クラスタちゃんっ!」
ガシッと、無理矢理手を掴んで上を見させるイリス。
クラスタはと言うと、まだ焦点が合わずにぼんやりとした瞳でイリスを見ていた。
「お昼休みに、一緒に生徒会室に取りにいこっ! ねっ、ミズホちゃんも一緒に手伝ってくれますよっ! ねっ!」
そう言いながら、ガシッと自分の胸元にクラスタを抱き寄せていた。感動的な光景の中、胸を押し付けられて息が出来ずに苦しそうなクラスタだった。
☆
昼休み。軽めに昼食を食べたイリスとクラスタの2人は、ミズホと合流して生徒会室に向かっていた。
「まったくっ……! これじゃあ、ただの木偶の棒やん!
学校にスマホを持ち込むんは確かにわるぅいことやけど、こんなになるんやったらやめたら良いのに。学習も、体育も、けっこー良い成績なんやろ?」
「そうですっ! それなのに生徒会長はその辺を分かってないんですよ!」
イリスとミズホの2人は、クラスタを必死に慰めようとしているがクラスタからして見ればどうでも良い事である。今のクラスタに必要なのは、早く生徒会長に謝ってスマホを返してもらう事。
それを目的としている今のクラスタには、ただ生徒会長にどうやって許して貰うかを考えていた。
(反省文でも書きましょうか? あるいは土下座?
まっ、どちらにせよスマホが帰って来るなら何でも良いですけどね)
端からクラスタに反省の弁はない、ただスマホが自分の手元に返って来るのならばなんでもするという気概しかなかった。
そんな事を考えていると、クラスタ達は生徒会室にやって来ていた。
扉を叩くと、1人の女の人が顔を出す。ショートカットに適度に日焼けした肌、少し大人びた印象と先輩らしさを与える彼女――――杠ユズリは、生徒会室にやって来た3人を見て「おっ! 来たなぁ〜」と待ち構えたように笑顔になる。
「スマホの件やろ? ごめんな、この学園の生徒会長は有言実行でしてね。
さっ、とりあえず彼女が来ない内に反省文書いたら返して――――」
「そうは……い、き、ま、せ、ん、わ」
ドンッ、扉を開けて現れたのは生徒会長の長者原スバル。優しげな大きめの緑色の瞳を思いっ切り吊り上げ、うなじの所で後ろ髪をきっちり切り揃えている。身長は174cmで、Iカップの胸が腕組みによってさらに強調されており、たゆんったゆんっと大きく揺れ動いていた。
スバルはだんっ、だんっと、そんな音が聞こえなさそうなくらいの勢いで怒気をまとって生徒会室に入って来る。
「ユズリぃぃぃぃ! そのスマホは今日一日、生徒会室にて預かる! それが今日の、生徒会の決定事項! なんですわっ!」
「いやいやぁ〜、スバルは少しばかり硬すぎるんだよ。順風満帆、波風立てず、おだやかな生活……生徒と生徒会の距離は着かず離れずの距離を保つべきだとねぇ〜」
「だっ、だから、それでは舐められるんですわっ! そう、だから決定事項として――――」
わいわいがやがやと、生徒会長のスバルと副会長のユズリが言い争う。
ミズホはそんな彼女達のどちらの味方をすればいいのか迷い、
「あれ? クラスタちゃんは?」
イリスはいつの間にかこの場から消えた、クラスタの行方を探っていた。
☆
皆が言い争っている内に自分のスマホを回収した江ノ島クラスタは、学園前の桜並木で大きな溜め息を吐いていた。
「まったく……スマホを取られるとは思っても見なかった、です。
これからは出来うる限り、そうならないようにしないといけない、ですね」
深々と反省しながらも、操作してなかった時間を取り戻す勢いで彼女はスマホを操作しまくっていた。
「……誰に迷惑をかけてるつもりはないのに、どうして取り上げらなければならない、です。
まったくもって理解出来ない、です」
「……ったく」と、そう言いながらクラスタはスマホを操作していた。
「まずはスタミナが有り余っているゲームの処理をします、です。
さてさて、どうしましょうか、です……」
イベントか、デイリーか。どちらを優先してやるか迷っていると――――
「居たっ! 逃がさない、それが決定事項!」
と、背後から「決定事項! 決定事項!」とうるさい女、生徒会長の長者原スバルが現れていた。ぜぇぜぇと、靴も履き替えずに現れた彼女を見て、クラスタは「マジかよ、です……」と引いていた。物凄い勢いで引いていた。
「こんな所まで追って来るだなんて、見上げ果てた根性、です」
「……なにを、言っても、無駄、よっ……。
私は決定事項を……守る……そんな……生徒会長……なのだから……」
生徒会長の長者原スバルの一番の魅力と言えば、それは約束を絶対破らないという所である。
政治家などと言えば約束事、いわゆる公約などを破るさまをしばしば見るが、長者原スバルは破らない。自分が決めた行為を自分自身で守る、それが生徒会長の長者原スバルの魅力なのである、ただの石頭と呼ばれても仕方がないのだけれども。
「学園は学ぶための場所! そんな場所でスマホばっかり操作してたらダメ!
だって、それこそが生徒会長の私が決めた決定事項なんだから!」
ふんっ、と彼女は言うのだが、クラスタは意味が解らなかった。だからスマホを操作しながらスバルに尋ねる。
「1つ尋ねます、です。あなたはどうしてそこまでルールにこだわる、です?」
クラスタからして見れば、スバルの決定事項が意味が解らない。
「スマホを学校でするな」と言うのは分からなくもないが、それでもいちいちつっかかる理由が分からないのだ。
「あなたが私にスマホを止めさせたいのは、学校のためですか? 学習のため?
それとも――――そう言う、自分がカッコいいと思ってるから、です?」
「……えっ?」
その質問に、一瞬スバルは止まってしまう。何故なら今までそんな事を一度たりとも考えた事がなかったからである。
(学校のため? いや、別に私は学校で求められてるからで決めてる訳じゃない。
だったら、学習のため? いや、彼女のせいで学習が大幅に遅れたという話は聞いてない。
……なら、彼女の言う通り、私は――――)
そう言って考え出した時だった。
「ふふっ! 今日はここから作戦開始だえるよ!
――――さぁ、どんどん電脳化しちゃえ〜えるよぉ!」
天使姿の三幹部の1人、サエスディが現れるまでは。
☆
「なにこれ?!」
スバルは辺りが変わってる事に、びっくりする。空間から急に現れた天使姿の女を中心に、世界がなんだろう……そう、ドットと化しているのだ。ゲームで見た事のあるようなブロック、それにスライム達がカクカクと動いていた。
「まるで、ゲームみたい……」
そう、現実がゲームに化している。
言葉にするとしたら、そう表現するのが一番分かりやすい状況だったのである。
「サエスディ……です、か。ゲームをしたい所ですが、流石に対処しなければいけない、です」
溜め息を吐きながらも、スマホを使ってプリキュアに変身しようとする。しかしその様子を見ていたスバルが、事情を知っている様子のクラスタに詰め寄る。
「ちょっとっ! あれはなんですかっ、知ってるのならば教えてくださいっ! これは決定事項!」
「決定事項って……今、そんな事を言ってる場合じゃない、です」
「決定事項! 決定事項! けってーい、じこぉぉぉぉぉぉぉう!」
決定事項とばかり言って、クラスタの身体を掴んで揺らすスバル。その様は宙に浮かんだまま、世界を電脳化しているサエスディの瞳にしっかりと映っていた。
「むむっ、クラスタちゃんが何故ここに居るえる? まっ、邪魔をされたら非常に面倒でえる」
サエスディがそう言うと共に、懐から取り出したのは拳銃……のおもちゃ。遠目で見ても分かるくらい、本物とは程遠い、子供向けに作られた玩具である。
「拳銃のおもちゃよっ! マチガウイルスの力を借りて、新たな姿に生まれ変われ!」
サエスディが拳銃をぽんっと投げるとそれは白い煙に包まれると、中から現れたのはタンポポ。黄色いタンポポの花をガンマンハットのように被り、緑色の身体から出てる2本の腕には白い拳銃が握られていた。
「完成えるっ! 拳銃とたんぽぽで、ヒキガネタンポポえるっ!
ヒキガネタンポポ、キュアワクチンを倒すえる!」
「マチ、ガウ……」
ヒキガネタンポポは両手に持つ拳銃を2人に向けると、躊躇なくその引き金を引いた。
「危ないっ!」
スバルは自分とクラスタに迫る白い弾丸を見て、逃げるようにクラスタを地面へと叩き付ける。ぐえっという声と共に、彼女の大きな胸が地面に勢い良く潰されたが、関係ないだろう。
「ちっ、外したえるか……。ヒキガネタンポポ、次弾発射するえるよ!」
「マチ、ガウ……」
カシャッと、ヒキガネタンポポはその銃口を2人に向けて発射する。2人が襲われると思った次の瞬間――――
「キュアライゼーション! オオカミっ!
愛を、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」
「キュアライゼーション! スプラッシュっ!
美しさを、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」
そう言って、2人の戦士が現れる。
キュアフレンズとキュアスパークルの2人である。キュアフレンズは動物らしい素早い動きで銃弾を弾き、キュアスパークルは泡の中に銃弾を包み込んだ。
「大丈夫、クラスタちゃん! 今、イリスがクラスタちゃんを助けるよ!」
「うちに任せときっ、クラスタちゃん! 柚子ミズホの底力、見せたるでぇ!」
……ものの見事に、変身前の正体をバラす2人。
クラスタはあちゃ〜と頭を抱え、スバルはさらに困惑していた。
「プリキュアが3人もえるっ!? だがしかーし、そんなプリキュアもこっちが勝つに決まってるえるよっ!
さぁ、ヒキガネタンポポ! やっちゃうえるぅ〜!」
「マチ、ガウ……」
カチャッ、と銃を向けるヒキガネタンポポ。それに対してキュアフレンズとキュアスパークルの2人は銃弾を防ぐために構えていたが――――
「「――――っ!?」」
ガタッと、キュアフレンズとキュアスパークルの2人がその場に倒れ伏す。2人も何故倒されたのかが分からず、倒れてしまい――――その後ろには、"2体のヒキガネタンポポの姿があった"。
「くふふぅ! タンポポは綿毛を飛ばして、仲間を増やす能力があるえるが、このヒキガネタンポにも同じ力があるえる! 綿毛の弾丸は、地面に着く事で発芽して新たなヒキガネタンポポとなるえる!
これこそ、ヒキガネタンポポじごくえるぅ〜!」
カシャッ、と拳銃を構える3体のヒキガネタンポポ。
倒された2人のプリキュア。
――――そして、立ち上がるクラスタ。
スマホを構えて、立ち上がる姿をスバルは「何故……?」と聞き返す。
「あんな怖そうなのに、どうしてあなたは立ち向かおうとするの?」
スバルにはそれが分からない。一瞬で自分の命なんか、風のように飛んでしまう状況。そんな状況では今のスバルのように怯え、泣く姿が一般的だ。
今、この状況で戦おうとする決意が、スバルには分からなかった。
だから聞いたのだ、答えが返って来なくても良い。ただ、知りたかったから。
「――――決まってますよ、です」
それに対して、クラスタはこう答えた。
「プリキュアとして戦う事、それがこの私にとっては――――"決定事項"だから、です」
☆
「キュアライゼーション! ワクチンっ!
救済を、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」
クラスタが叫ぶと共に、彼女の姿が真っ白な光に包まれる。
まず、彼女の銀色の髪が桃色の、鮮やかな色に変わると共に、背中の方まで長くさらーっと伸びる。服は真っ白なドレス、かと思いきやその上にピンク色のワンピースが着けられる。ワンピースに押し潰さられ、ただでさえ大きな彼女の胸がさらに大きく見える。
靴もカジュアルなピンクの動きやすそうなシューズに、両手には殺菌のためかピンク色の手袋がはめられる。
右手に持つ大きな注射器、そして背中の白い翼。
それはまるで、白衣の天使の言葉が相応しい姿である。
「世界の浄化の、救世主! キュアワクチン!
スーパープレイ、見せちゃうよっ!」
キュアワクチンは注射器を背中にしまうと、そのままヒキガネタンポポに向かって行く。それに対して狙われてないヒキガネタンポポは、拳銃をキュアワクチンに向かって放つ。それに対してキュアワクチンは対処するも、大ぶりなために交わしきれていない。
「キュアワクチンはワクチンタイプだから、我々には効果的える! けれども、仲間を増やす事が出来るヒキガネタンポポに勝てると思わない事えるねぇ〜。
さぁ、ヒキガネタンポポーズよっ! 止めだえるぅ!」
「マチ、ガウ……」「マッチ! ガウガウ!」「チマッ、ガウ……」
ヒキガネタンポポたちは銃口を向けており、引き金を引こうとしたその時――――
「――――待ちなさいッ!」
と、スバルが庇うように前に出る。それに対してサエスディは「おやおやぁ〜?」と笑っていた。
「たかが人間が前に出るとは、どうやら死にたいようえるねぇ〜。
けれどもサエスディは一般人には、ヒジョーに優しいえる。と言う訳で、気絶程度で勘弁してやる。ヒキガネタンポポ、やっちぇえる!」
「マチ、ガウ……」「マッチ! ガウガウ!」「チマッ、ガウ……」
拳銃の銃口がスバルの身体に向かうも、スバルはたじろぎもしなかった。
キュアワクチンは「逃げた方が良い、です。死なないにしても死ぬほど痛い、です」と言うも、スバルはそれに対して一歩も引かなかった。
「私は生徒会長。生徒が頑張ってるのなら、私も覚悟を決めます!
――――あなたを倒す、それがあたしにとっての決定事項です!」
力強く宣言すると共に、スバルの手には3人と同じ変身するためのスマホ。そして『アイギス』と書かれたカードが飛び出していた。
「プリキュアとして戦う、それが私の決定事項!」
絶対に達成する、そんな勢いの元、スバルはスマホにカードをかざす。
「キュアライゼーション! アイギスっ!
安らぎを、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」
まず、彼女の髪がきららかな艶のある緑色になり、鮮やかな色に変わると共に、足元まで長々と伸びるとそれはゆったりと膨れ上がっていた。緑色の薄い布の上に、胸当てだけの甲冑。腕と脚に緑色の手袋と靴。青い、スカートをはくと、そこに騎士団のマークが刻まれる。
両手に一瞬盾と扇が生まれると、それは緑色の光となって消えていく。
騎士団の甲冑と服装。一瞬だけ見えた盾。
それはまるで、あらゆるものを防ぐ騎士の言葉が相応しい姿である。
「安らぐ樹木の、救世主! キュアアイギス!
安心して、私が着いてるわ」
☆
「新たなプリキュアだ、える!? けれども無限に仲間を増やせるこちらの方が有利える!
ヒキガネタンポポーズ、銃弾発射えるぅ!」
「マチ、ガウ……」「マッチ! ガウガウ!」「チマッ、ガウ……」
いつの間にか10体に増えていたヒキガネタンポポ達はその銃口を長者原スバルの変身した姿、キュアアイギスに向けていた。そして全員が引き金を引くと共に、銃弾がキュアアイギスを貫こうと迫っていた。
「アイギス・シールド!」
しかし、銃弾が当たる前に全員を覆うように緑色のオーラのシールドが全員を銃弾から守っていた。
「くっ、防御するえるか!
だがしかし、プリキュア達にはこのヒキガネタンポポ達を一気に倒すだけの攻撃手段はないとみているえる! このままヒキガネタンポポを増やして、数量で追い込むえる!」
指示を出すと共に、半数のヒキガネタンポポがプリキュア達を倒すために銃弾を放っていた。その半数は弾丸で自分の仲間を増やしていた。
「……そう、です。私のワクチンなら倒せるかもしれませんが、あんなに数が居たら一気には倒せない、です。本当にどうやったら……良いでしょう、です」
「悩む、です」とキュアワクチンがそう言うと、キュアアイギスはぽんっと手を叩いていた。
叩くと共に、ガシッとキュアワクチンの背中の注射器を掴むキュアアイギス。キュアアイギスがパチンと指を鳴らすと、彼女の手に大きな緑色の盾が生まれていた。
そして「ていっ」と、大きな盾に注射器の中身をぶちまける。ぶちまけて、注射器の中身を被った盾をブーメランのように構える。
「キュアワクチンのワクチンならば、倒せる……。
それならば、盾にワクチンをかけてこうします! 決定!
プリキュア! アイギス・ブーメラン!」
盾を、まるでブーメランのように振り回すキュアアイギス。
クルクルと回転しながら大きな盾は、ヒキガネタンポポ達全員の茎を全部切り落としていた。そしてヒキガネタンポポ達はワクチンで浄化されて消えて行った。
「……盾を振り回すとか、どういう戦法だえる。
くっ、今度は勝って見せるえるよぉ! さらばだ、える!」
☆
ヒキガネタンポポを倒して、サエスディが去った後――――キュアアイギスこと長者原スバルは、江ノ島クラスタを初めとした3人に質問攻めをする。
質問攻めをして、大体の事情を理解するスバル。
「……分かりました。よしっ、長者原スバルは決定します!
ぜったい、プリキュアとしてあなた達を助けると」
「おー! 私も、頑張っちゃうよぉ〜! えいえい、おー!」
「ウチも、やったるでぇ!」
スバル、イリス、ミズホの3人は盛大に一致団結する。
一方、プリキュアに変身していた状態で注射器ごと盾にぶつけられたクラスタは、ただぽちぽちっと、スマホゲームをする鬼となっていた。
「……本当に面倒、です。
なんででしょう、です。戦力は増えて楽になっているはず、です。けれどもそれ以上に心労が増えている気がするのは何故でしょう、です」
はぁ〜、と溜め息を大きく吐いたクラスタ。
「けれども、嬉しい事、です。
早速、歓迎のための握手をば――――」
そう言って、クラスタが手を指し出すと――――
――――ガシッ、とその手を手錠がかかっていた。
「「「「えっ……?!」」」」
手錠をかけたのは、黒いライダースーツの女性。身長はクラスタよりも10cmほど高く、おっぱいはJカップと確かな質感と、大きさを持っていた。
全身を黒いライダースーツで覆い、腰には拳銃を入れるホルダーがあった。まさしく刑事、そう言うのが相応しい恰好であった。
「――――私は世界電脳防衛協会所属のハッカー、【諫早タマエ】。
電脳世界を守るハッカーである私は、世界統一会長の名により、あなたを――――江ノ島クラスタさんを拘束させて貰います」
こうして、江ノ島クラスタは逮捕されたのである。
【次回予告!】
「クラスタちゃんが逮捕されちゃったよぉ〜! どうしよぉ、生徒会長〜!」
「大丈夫です! きっと無事に釈放されます! これは決定事項です!」
「それに、その諫早タマエさんがプリキュアに変身しちゃったよぉ!」
「えぇっ!? それは未確認事項ですぅ!」
次回、サイバープリキュア!
「知性の、淑女! キュアスマート、誕生!」
「磁石よっ! マチガウイルスの力によって、新たな姿へと作り変われ!」
「……ウメタリア、まだ早いんだし」