電乳戦士サイバープリキュア 第7話「放て、必殺の一撃! 新たなプリキュア、キュアスマート!」

帝国城摂政 作
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「そんな……プリキュアになれたのにっ!」

 ジシャクボクサーロボとのデビュー戦、キュアスマートこと諫早タマエの戦いは、残念ながら協会に認められなかった。
 当たり前だ、《ヌルリス》を倒せる切り札として切った者が、必殺技で相手に傷一つ追わせられなかったのだから。特効薬として秘密裏に用意していたのにもかかわらず、効果を選ぶ薬を誰が用いると言うのか。

「……なにが、いけなかったの?」

 ヌルリスの三幹部の1人、チュンドラ。そのチュンドラが持っていたハンカチは電脳でありながら実体がある、まさしくマチガウイルスの布版とも呼ぶべき物体であった。
 それを回収した協会は、先に戦っていたサイバープリキュアの4人のデータを解析、そこから導き出される最良のデータを構成してプリキュアとして変身できるように作った。
 変身は出来た、そこは問題ではない。問題なのはその実力。

 変身と言うプログラムが出来ている以上、プログラムに問題はない。だとすれば後は使用者の問題。

「――――これは、一度確かめなければいけないわね」

 どうすれば良いのか、それは先達者に聞くに限る。
 ――――そう、キュアワクチンこと江ノ島クラスタなら答えを知ってるに違いない。


第7話《放て、必殺の一撃! 新たなプリキュア、キュアスマート!》

「……いや、知らない、ですよ」

 アリスト学園の片隅でひっそりとゲームをしていたクラスタは、そう一刀両断する。彼女の後ろではイリスとミズホの2人がクラスタの銀髪を弄って遊んでいたが、反応する方が面倒だと諦めているようである。

「そっ、か。知らないか。
 本場の人間なら、もっと的確なアドバイスが得られると思っていたのだが」

 学園の来場者として入って来たタマエはそう言いながら、がっくりとうなだれていた。それと共にライダースーツでピシっとなっている彼女の胸がたゆんと揺れ動く。

「そもそも、プリキュアってなんなんですか? 生徒会長として聞きたい所なんですが」

 プリキュアのことについて話題に上がったので、それを好機と見てスバルがそう聞く。すると、「待ってましたなのぉ〜!」と、クラスタの携帯から現れたナノピコがそう言う。

「プリキュアとは、我が電脳王国に伝わる伝説の戦士なの!
 《世界が暗黒の使者に支配されし時、伝説の5人の戦乙女プリキュアが世界を救う。
 ある者はウイルスを一撃で撃退する力を持ち、ある者は仲間と共に敵を倒す力を持つ。ある者は相手を翻弄する術を知り、ある者は全てを守る鉄壁の盾となる。そして最後の、知恵と戦略を司る者が現れる時、暗黒の使者は恐怖で震えあがるだろう!》ということなのっ! てっきり軍人さんで、銃を使うからぴったりと思っていたなのが……」

 ナノピコの言う通りだとすると、今居るプリキュアは最後の1人を除いてこの伝承に当てはまっている。
 ウイルスを一撃で撃退する力を持つ、キュアワクチン。
 仲間と共に敵を倒す力持つ、キュアフレンズ。
 翻弄する術を知っている、キュアスパークル。
 全てを守る鉄壁の盾となる、キュアアイギス。
 ――――そして知恵と戦略を司る、キュアスマート。

 スマートには知恵などを意味する"賢い"という意味があり、間違っていないとナノピコは当初考えていたのだ。おっぱいも良い感じのバランスで、揃っていたし。

「うーん……やっぱり、皆と同じく、どっかぁーんって、出てないからかなぁ〜?」

 と、光に包まれてなるところを大胆に表現するイスカ。

「……それとも、なにかが間違っているとかかしら?」

 一方、ミズホはそもそものプリキュアの伝承そのものの解釈を疑ってかかる。

「うーん、悩ましいですね。生徒会長としても」
「本当に、どうすれば良いのか」


「「「「うーん」」」」


むにゅっ! むにゅむにゅむにゅむにゅっ!


「だぁー、もぅ! うっとぉしー、ですぅー!」

 と、自分の上で4人のおっぱいが押し潰される圧迫に耐えられなくなったクラスタが、大きな声で自己主張。彼女が立ち上がると彼女のおっぱいが急に上に上がり、4人のおっぱいが退く。

「……しばらく、1人にして欲しい、です!!」

 スマホを取られてゲームが出来なかった時間が長かったクラスタは、ぷんぷんっと怒りながら4人から逃げるように別の場所に向かったのだった。



「さて、ここなら静かに出来るでしょう、です」

 屋上。ここアリスト学園においては鍵がかけられて容易には入れない場所なのだが、人並み外れた身体能力を誇るクラスタは壁を昇って、屋上に辿り着いていた。ここならばあのプリキュア仲間も来ないだろうと思っていると……

「……ここにはあなたが居るんですか、です」

「しくしく、ぐすんぐすん」

 そこに居たのは、イリス達の取り調べを担当したコードネームNo1083のヒトヤミと名乗っていた者である。彼女のことをクラスタは知らなかったが、イリス達からの話で知っていた。それ以上に、あのキュアスマートが上手く出来なかった機能しなかったあの戦いの後に、ヒトヤミが会いに来たから。
 『色々と教えて欲しい、プリキュアについて。なんでもなんでも』と会いに来たのだが、そんな事をクラスタに聞かれても困る。がっかりしていたが、知らないものは知らないのだから。

「タマエ"お姉ちゃん"、がんばったがんばった。でもあの実力じゃダメ、って上の人に言われたの」

「お姉ちゃん、です……?」

「……うん、諫早タマエ。お姉ちゃんお姉ちゃん。
 けれども、世界電脳防衛協会に入る際に名前を返した返した」

 詳しく話を聞か(されて)、諫早タマエとヒトヤミとの関係がようやく事情が理解できた。と言うか、してしまった。
 タマエとヒトヤミはとある孤児院の出身なのだが、タマエが運動神経、ヒトヤミがハッカースキルに優れていたために世界電脳防衛協会にスカウトされた。その際に世界電脳防衛協会の謎の掟とやらで、元の名前が名乗るのを禁じられ、コードネームでの生活を義務付けられた。タマエはプリキュアとして戦うために名前を返上されていたが、ヒトヤミはまだコードネームでしか名乗れないのである。

 そのことを聞いたクラスタはと言うと――――

「……なんとも不可解で、不思議な、掟ですね」

 ――――と、電脳防衛協会の掟をディスっていた。
 名前を名乗れずにコードネームを作るのはその方が管理しやすいから、上の役目になる事で名前が使用出来るのは頑張ればそれだけの特典があるということで――――クラスタが思うに、その方が管理しやすいからである。

「まっ、私にとってはどうでも良い、です。ゲームさえできれば、私は他に何もいらない、です。
 そもそもプリキュアは私だけで良いから、です。私のキュアワクチンの力なら、よっぽどの敵ではない限りは倒せるから、です。
 ――――あんなのはプリキュアじゃない、です」

「プリキュア、じゃないじゃない?」

 クラスタの発言に困惑する、ヒトヤミ。
 失言したと思った時には既に遅く、キラキラした瞳で見て来る彼女に対して、クラスタは自分の想いを吐露する。

「あのタマエなる女にはプリキュアとして大切な、敵と戦う意思が間違ってる、です。
 タマエは電脳防衛協会の指導もあってか、【敵と戦うことによって、世界は救われる】と思ってる、です。確かにそれも大切ですが、プリキュアとして戦うにはもっと別の、戦いに賭ける意思が必要となってくる、です」

「賭けるいしいし?」

 うーん、と言葉の意味を必死に考えるヒトヤミ。
 クラスタは直接答えを教える事はせず、ただゲームに勤しんでいた。

 しばらくの間、静かな時間が過ぎて行ったが……そこに1人の人間が現れる。


「やっはろーでしー。
 ヒトヤミさんでし〜? ちょっとばかりアチキに付き合って貰うでし〜よ」


 いきなり現れたのは、メイド服を着た龍人の幹部ことチュンドラだった。
 クラスタがびっくりしていると、チュンドラはクラスタ以上に驚いているヒトヤミをガシッと掴んでいた。そう言って懐から籠を取り出して、パチンと指を鳴らす。鳴らすと共に籠は大きくなると共に、その中にヒトヤミを閉じ込める。

「……っ?! なっ、なになになに?!」

「あなたはこれから《ヌルリス》の作戦のための、生贄となってもらいましょうでし〜。
 ……うん。一応、これで頼まれた事は出来たし〜、ウメタリアもこれで文句ないはずでし〜」

 「ごきげんよう」、そう言ってチュンドラはヒトヤミと共に空を飛んで逃げて行く。

「……っ! まてっ、です! チュンドラ!」

 クラスタは慌てて、チュンドラを追って行く。
 慌てて追っているクラスタを、後ろからどうしたものかとイリス達が追いかけているとは思わずに。



「ほいっ、これでお役御免でし〜」

 ぽんっ、とチュンドラはヒトヤミの入った大きな籠を置くと、それを確認したウメタリアが大きく頷く。

「ふむっ! ご苦労様であ〜るな、チュンドラ!
 どうだ、これからプリキュアどもを始末するのを見て行かんかであ〜る! ……って、もういないであ〜るな」

 まったく張り合いのない奴であ〜る、とウメタリアはそう言う。檻の中のヒトヤミが居りの鉄格子に手を掴んで逃げようと、檻を揺らす。

「たっ、たすけてっ! たすけたすけてっ!」

「だまれ、であ〜る! 餌は餌らしく、黙っていろであ〜る!
 ふふっ、奴らが来たその時こそ、我がマチガウイルスが奴らを葬り去るであ〜る! あるあるあ〜るあ〜る!」


「……言われたから出て来てやった、です。ウメタリア」

 そう言って、現れたのは江ノ島クラスタ。クラスタは檻の中に捕まったヒトヤミを見て一瞬ホッとし、その後すぐにウメタリアを見ていた。

「ふふっ、クラスタが来たであ〜る!
 ……おやおや? 他のプリキュアも、プリキュア"未満"も居るようであ〜るな?」

 ウメタリアの言う通り、よくよく見るとクラスタの後ろにはプリキュア――――香椎イリス、柚子ミズホ、長者原スバルの3人。そして、プリキュア未満と言われてしまっている諫早タマエの姿があった。
 諫早タマエは檻の中に囚われてしまっているヒトヤミを見て、驚いた様子である。

「ひっ、ヒトヤミ?!」

「おっ、お姉ちゃん!」

 ヒトヤミとタマエはそう言い合っており、それを無視してウメタリアは檻に手を添える。

「ふふっ、来たな! プリキュアよっ! ここからがお前の墓場となるのであ〜る!
 この檻、実は磁石を中に入れてるのであ〜るよ? だから、こんな事が出来るのであ〜る!」

 ウメタリアは軍服に包まれた胸の谷間からカードを取り出すと、ヒトヤミが捕まっている檻にカードを突き刺した。


「磁石よっ! マチガウイルスの力によって、新たな姿へと作り変われ!」
「きゃあああああああ!」


 ヒトヤミが入っている檻が白い煙に包まれると共に、そこから現れたのは前に見たジシャクボクサーロボに良く似た姿であった。
 真ん中にはヒトヤミが捕まっている檻があり、檻には【S】という青い文字が刻まれている。そして青いボクサーグローブに、足は鋼鉄製。背中からは大きな青い翼が生えていた。そして檻の身体の上にあるコックピットの中にウメタリアが入っていた。

「見たか、であ〜る! 前回と同じと思うな、であ〜るよ!
 これこそ磁石とボクサーの2つを融合して生まれた新たな姿、その名もジシャクボクサーロボ02であ〜る!」

 ボクサーロボがガンガンッと、両方のグローブをぶつけ合っていた。青いボクサーロボを見て、クラスタはスマホを構える。

「……似たような姿、ではありますがなにか裏がありそう、です。
 だとしても、プリキュアとしては戦うしかない、です」

「イリスも、頑張っちゃうよ〜!」

「ウチも、頑張ったるわ!」

「生徒会長の、名に賭けて!」

 クラスタを初めとする4人がそう言うが、タマエは自分が持っているスマホを構えるだけで変身しようとはしなかった。



「キュアライゼーション! ワクチンっ!
 救済を、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 クラスタが叫ぶと共に、彼女の姿が真っ白な光に包まれる。

 まず、彼女の銀色の髪が桃色の、鮮やかな色に変わると共に、背中の方まで長くさらーっと伸びる。服は真っ白なドレス、かと思いきやその上にピンク色のワンピースが着けられる。ワンピースに押し潰さられ、ただでさえ大きな彼女の胸がさらに大きく見える。
 靴もカジュアルなピンクの動きやすそうなシューズに、両手には殺菌のためかピンク色の手袋がはめられる。

 右手に持つ大きな注射器、そして背中の白い翼。
 それはまるで、白衣の天使の言葉が相応しい姿である。

「世界の浄化の、救世主! キュアワクチン!
 スーパープレイ、見せちゃうよっ!」


「うんっ! すっごーいの、やっちゃうよ!」

 力強く、クラスタが宣言して、スマホの電源をいれる。スマホにはカードスキャンの画面が映し出されており、クラスタはそこに持っていたカードをスキャンする。

「キュアライゼーション! オオカミっ!
 愛を、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 イリスが叫ぶと共に、彼女の姿が真っ白な光に包まれる。

 まず、彼女の髪が動きやすいように整えられると、大きなIカップの谷間から1匹の白い獣が出てくる。それはネコだった。可愛らしいワンちゃんがイリスの周りを駆けまわり、それと同時に彼女の姿が変わって行く。
 赤を基調としたエプロン風の洋装に姿を変え、靴も動きやすそうな黒いシューズへと履き変わる。そしてワンちゃんはクルリとイリスの前で一回転すると、彼女の中へと消えていく。

 髪の上には犬耳、そして長い白の犬の尻尾。
 世に言う、アニマルコスプレはまさにこれだろう。

「人の愛の、救世主! キュアフレンズ!
 すごーい、力を、見せちゃうよっ!」


「ウチも、やったるで!」

 勢い込むミズホは、スマホにカードをタッチする。

「キュアライゼーション! スプラッシュっ!
 美しさを、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 ミズホが叫ぶと共に、彼女の姿が真っ白な光に包まれる。

 彼女の前に大きくてオシャレな洋服箪笥が出て来て、ミズホが開けるとそこからリブ生地で作られた胸を強調する白いセーター、足のラインを強調する赤いスカートを手に取る。
 ミズホはセーターとスカートを手に取り、着替えを始める。セーターを着る際にKカップの、特大の大きさを誇るおっぱいが大きく揺れ動いていた。そしてそのおっぱいから高貴な魔法の杖が出て来て、それとは別に幻想的なランプが出てきていた。おっぱいから出る際に、少しだけ頬が赤くなって恥ずかしそうだった。

 頭に被る、魔女が被るような円錐型の帽子。
 帽子と髪にリボンがついた、オシャレな魔女の姿となっていた。

「輝く星の、救世主! キュアスパークル!
 私の美しさは、弾けるわよ!」


「プリキュアとして戦う、それが私の決定事項!」

 絶対に達成する、そんな勢いの元、スバルはスマホにカードをかざす。

「キュアライゼーション! アイギスっ!
 安らぎを、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 まず、彼女の髪がきららかな艶のある緑色になり、鮮やかな色に変わると共に、足元まで長々と伸びるとそれはゆったりと膨れ上がっていた。緑色の薄い布の上に、胸当てだけの甲冑。腕と脚に緑色の手袋と靴。青い、スカートをはくと、そこに騎士団のマークが刻まれる。
 両手に一瞬盾と扇が生まれると、それは緑色の光となって消えていく。

 騎士団の甲冑と服装。一瞬だけ見えた盾。
 それはまるで、あらゆるものを防ぐ騎士の言葉が相応しい姿である。

「安らぐ樹木の、救世主! キュアアイギス!
 安心して、私が着いてるわ」


 プリキュア4人が変身すると共に、まずはキュアフレンズ、キュアスパークルの2人が青いボクサーロボの元へと向かって来ていた。

「引き寄せられる前に、いっちゃうよぉ〜!」

「いくでっ! いくでっ! いくでぇぇぇぇぇぇぇ!」

 2人がこの前の戦いの経験からか、すぐさま青いボクサーロボの懐へと迫って行く。

「ふふっ、確かにそれは強そうであ〜る! しっかし、このジシャクボクサーロボ02は、01の【引き寄せる】とは真逆っ! ――――せ〜のっ、ポチッとな!」

 ポチッとスイッチを押すと共に、青い【S】の文字が不気味に光り輝いていた。
 そして青いオーラがジシャクボクサーロボ02を覆い、キュアフレンズとキュアスパークルの身体が吹っ飛ばされていた。

「「くっ……!」」

「チュンドラの力を得て完成した、このジシャクボクサーロボ02! このロボットは相手を弾き飛ばし、 その上で相手を寄せ付けない、いわば戦わずのロボなりっ!
 吾輩達ことヌルリスの目的は、敵と戦う事で非ず! この世界を電脳空間に満たしっ、吾輩達の楽園とする事なりっ! 故にこうして引きはがして、勝ってやるぅ、であ〜る!」

 「さらに、これも追加であ〜る!」と、ボタンを押すと共に青いグローブがジシャクボクサーロボ02の身体から離れて向かって来る。グローブの先から青い火柱が立ち上り、プリキュア達に襲い掛かる。



「あぅ……! どうしよどうしよ」

 檻の中に囚われているヒトヤミは、自分の身体が電脳の身体へとバラバラになって行くのを感じる。
 肉の身体がデジタルな電脳の身体に変わっていくと言う感覚は、初めてである。しかし指先からドットの形になっていく事に恐怖を感じていた。

「苦戦してるみたいですね、プリキュアのみなさんみなさん」

 檻の外から見えるそこには、こちらに攻撃しようにも反発の能力によってこちらに近寄ることが出来ないみたいである。ジシャクロボ02……マチガウイルスの力によって、かのロボの足元から順々に電脳化して行っている。

「(――――このままだと、まずいまずいです)」

 プリキュアの皆さんもこちらをどうにかしようと思っているみたいではあるが、こちらに近付けないみたいである。近付こうとしてもブースターで飛びあがっているグローブの対処に手一杯みたいである。

「……お姉ちゃん」

 そんな中、ヒトヤミの視線は一応はプリキュアに変身したけれどもこちらに攻撃しようとしない、と言うか戦おうとしないキュアスマート……諫早タマエの姿を見ていた。

 ――――諫早タマエ。ヒトヤミの憧れの、お姉ちゃん。
 幼い頃から彼女の憧れであり、ヒーローであり、そして英雄であった。プリキュアの存在を知って、それに対処する者が選ばれる事となった時に一番最初に思い浮かべたのはやはりタマエお姉ちゃんの姿だった。
 そしてプリキュアとして変身した姿を見て、幼い頃から見ていたタマエお姉ちゃんの英雄の姿を思い浮かべていた。

 ――――けれどもそんな彼女はプリキュアとしては、大成しなかった。

 今はその時の失敗を思いだしてか、全然戦いに参加してないみたいである。

「(たたかってたたかって、タマエお姉ちゃん!
 あの時の私の憧れのように! どうすれば戦ってくれるんだろう?)」

 ヒトヤミにしてみれば、タマエは英雄。そんな彼女が何故、この前の高いで負けたのかと言われればそれは恐らく……あの、プリキュアに変身するカード。あれが弱かったから。
 気持ちの問題と言うのは、ヒトヤミも知っている。だがその気持ちも武器やアイテムの良さによって上下する事を良く知っている。

「でも、あれはマチガウイルスの力を分析した結果を、優秀なプログラマーによって作られたモノで――――」

 プログラミングの技術に関しては、ヒトヤミもそん色ない技能を持っていると思っている。
 だが、肝心のマチガウイルスの力と言うのがどこに――――んっ?!

 そこでヒトヤミは、自分の――――電脳化する手を見ていた。

「この手……もしかして……」



「なにしてるの、ヒトヤミ……」

 タマエは、キュアスマートはと言うと、檻の中に囚われているヒトヤミの姿を見ていた。

 妹の【諫早カナエ】、タマエは久方振りに彼女の名前を思い返していた。
 カナエは頭が良く、ハッキングスキルは本部の中でもずば抜けている。タマエの、自慢の妹。
 そんな自慢の妹が囚われているから助けたい気持ちはある、しかしキュアスマートの力ではウメタリアの硬いマチガウイルスには勝てはしない。

 だから、手が出せなかったのだが――――いや、それは言い訳である。
 彼女はこの前の失敗、必殺技でウメタリアのマチガウイルスを倒せなかった事を根強く思っていた。

 ――――また失敗したらどうしよう。それがタマエに強く、失敗と言う後悔の念で根深く残っていた。

 けれども、それでもカナエの姿が、檻の中で何か頑張っている姿をじっと見ていた。

「むむっ、人質の癖になにをしているであ〜る? お前の役目はもう終わり、大人しく電脳の一部になるが良いのであ〜るよ!」

『……電脳の一部になる事は諦めます諦めます。
 でも、それは"お姉ちゃん"のため、ですっ!』

 ――――カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタっ!
 物凄い勢いにて、カナエがキーボードと叩いて行く。キーボードを叩いて行くと共にカナエの電脳化した身体の周りをコードが駆け巡る。

「まっ、まさかこいつ、自分の電脳化する身体に"ハッキングを仕掛けている"のであ〜るか?!
 自分の身体を電脳化しているとはいえ、改ざんするハッキングだなんて頭がおかしいとしか思えないのであ〜るよっ!?」

『お姉ちゃんは、私のヒーローヒーロー!
 お姉ちゃんのために私は、お姉ちゃんを助けるアイテムとなるなるっ!』

 ――――カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタっ!
 物凄い勢いにて、カナエがキーボードと叩いて行く。キーボードを叩いて行くと共にカナエの電脳化した身体の周りをコードが駆け巡る。
 そして、カナエの周りをコードが覆って行き、カナエの身体が見えなくなる。見えなくなると共に彼女の身体が小さくなっていき、そしてカードとなったカナエは檻の隙間を抜けて、タマエの手に収まった。

「カナエ! あなた、どうしてそんな事を……いえ、分かったわ。
 ――――今から見せてあげる! この諫早タマエ、あなたのお姉ちゃんの雄姿を!」


「キュアライゼーション! カナエ!
 愛を、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 スマホから現れた、大量の液体。それは彼女の前と後ろから大きな棺のようにして立ち上がり、ガチャッと両側からタマエを挟んでいた。
 そして棺から水蒸気が立ち昇り、棺が開くとそこには青く、そして大きな銃を持ったプリキュアの姿があった。

 藍色の髪はツインテールになっており、右の髪には星が、そして左の髪にはボールの髪飾りを着けていた。青いワンピースの背中には巨大なブースターパックが取り付けられており、腕には大きな銃が取り付けられており、もう片方の手には大きなベルを手に持っていた。

「2人で知性高き最高峰の、救世主! キュアスマートVer.2!
 ――――今度こそ、正しい選択を為して見せる」


「へんっ、服装が変わったとはいえ、この硬いマチガウイルスの身体を貫く事はできぬのであ〜る!
 それに、引き離す力がある限り、吾輩にダメージを与える事は叶わず、であ〜る!」

 そう言って、さらに強い青い引きはがしのオーラを強める。それに対してキュアスマートは、その手に持っている大きな銃をジシャクボクサーロボの檻に向けていた。

「私と、カナエの2人の力を今、見せる! 2人の夢よっ、相手を倒す夢を叶えたまえ!
 ――――プリキュア! ドリーミング・エンド!」

 そして、大きな銃から放たれたのは、強力なバズーカ。
 それは大きな光となって、引き離すオーラを貫き、ジシャクボクサーロボの檻の身体を貫いていた。

 大きな爆発と共に、檻の身体が燃え上がって破裂する。
 破裂すると共に、爆発の中からウメタリアの乗ったコックピットが飛びあがる。

「くっ! こんな事でこのジシャクボクサーロボの奥の手、磁力を用いた飛行形態を見せる事になるとはな!
 だが、このコックピットは空中を舞う! これなら、流石のお前らでも――――」

「……カナエの力を得た今なら、いけるっ!」

 そう言うが速いか、キュアスマートの背中のジェットパックが火を噴く。
 大きな胸が風圧によって揺れ、キュアスマートは空高く飛びあがる。

「――――プリキュア! ドリーミング・エンド!」

 空中を飛んだまま、キュアスマートの銃はウメタリアを貫いていた。


「……あっ、あり得ん! こんなのぜったい、ありえんのであ〜る!」


 ウメタリアはそのまま消え、世界は元に戻る。



「こっ、これで良い!
 マチガウイルスの力は、マチガウイルスが消えると元に戻る! それならカナエだって元に!」

 しかし、『カナエ』と書かれたカードは一稿に戻らない。

「なっ、何故っ!?」

「……そいつは自分を改編したからでしょう、です」

 と、カードを元に戻したがっているキュアスマートに、キュアワクチンが声をかける。

「そいつは自身をプログラミングしていました、です。その際にウイルスの変異性が変わり、元の素体を倒しても治らないと推測される、です。
 まぁ、他の可能性としてはまだマチガウイルスを倒せてないという所でしょうか、です」

「そっ、そんなっ!
 カナエ! 私は、お前ともっと話したかった! 姉妹として、姉として、もっとお前とっ!」

 泣き叫ぶキュアスマート。
 ただその光景を「これがあなたの望んでいた形か、です?」とキュアワクチンは冷たく言い放っていた。


「こっ、これは?! もしや、これって……」

 そんな中、ジシャクボクサーロボ02の残骸を調査していたイリスはそこでとあるモノを見つけた。
 檻の内側、そこにあった見覚えのあるマスクを。


【次回予告っ!】
「カナエ……お前が居ないと、私はつまらんよ……」
「だから、プログラミングしてましたし。もう戻れない、です」
「そんなっ……! こんなペラペラになって……!」
「みんなぁー! みてみてっ! もしかしたらヒトヤミちゃん元に戻せるかもかも!」

 次回、サイバープリキュア!
【カナエを救いタマエ! 必殺のフレンズ・ブレーカー!】

「ク ラ ス タ さ ん っ!」
「……私が何でも正解を言える訳じゃない、ですよ」