電乳戦士サイバープリキュア 第9話「皆でオーディション! ドラマクイーンは誰だ?!」

帝国城摂政 作
Copyright 2018 by Teikokujosessyo All rights reserved.

「――――さぁ、立ちなさい」

 私の前に突如として現れたその人は、忌々しい声でそう言った。

 その人は最初は普通の姿でした。どこにでもいるような、白を基調とした半袖の、どこかの学園の制服を着た中学生くらいの少女。殺そうと思えば呆気なく死ぬくらい、そんな弱そうな奴。しかし、ポケットから出したスマホのようなモノにカードをかざすと、彼女の姿が白い光に包まれた。
 白い光が数秒光り続いたと思っていたら、彼女の姿が変わっていた。全身薄緑色のドレス、模様として0と1の2つの数字が無数に刻まれていた。頭にはくるくると回り続けている電脳の球体を帽子として被っていた。

 ――――そう、まるで救世主! 忌々しい、忌々しい!
 なんであんたがそんな目でこちらを見つめられる!? あんたが、あんたがもっと速く来ていれば、王国は穂ロボずにすんだ!
 あんたが、あんたがあいつらを倒していればこんな事にはならなかった!
 終わった後で、英雄面するな! その前に助けろ! あぁ、忌々しい忌々しい忌々しいっ!

 そんな彼女は私の心なんか知らずに、懐から1枚のカードを、先程変身する前に使っていたのと同じようなカードを、私の手へと差し出していた。

「きっと、ね。このカードが、あなたを導くわ。
 忘れないで、あなたは決して1人なんかじゃない。

 ―――私の名前は、キュアアップ。この絶望の世界を希望に導く、プリキュアよ」

 全てが闇に包まれた絶望の世界に現れた、白い光に包まれた希望の戦士。
 キュアアップと名乗った彼女は、私の世界を――――希望の世界へと変えた。

 ただし、それは偽りの平和。
 被害に遭った地域に対して支援したつもりで去っていく、偽善者の姿。

 私こと【江ノ島・・・】は、変異したコンピューターウイルス……通称、マチガウイルスによって滅ぼされた《電脳王国》を一夜にして復活させたプリキュアに憎しみを抱いた。

 これは、1人のプリキュアに憎しみを抱いた、少女の間違った物語。

第9話《皆でオーディション! ドラマクイーンは誰だ?!》

「――――と言う訳で、クラスタはん! 一緒にこのコンテストに出ぇへんか?」

 教室でゆっくりと休憩していたクラスタに、ばんっ、とミズホはクラスタの机にポスターを叩き付ける。ポスターは彼女の想いが滲み出た結果なのか、少々しわで歪んでいたが書かれている文字はしっかりと読む事が出来た。

「……《新ドラマ「潮風メモリアル」公開オーディション》? なんなの、です? これは?」

「うわぁぁぁぁっ! なんだかキラキラですぅぅぅぅ!」

 詳しい説明を見ようと思っていたら、イスカがそのポスターを手に取ってその場でくるくると回転していた。仕方がないので、ふふんっと胸を張って満足げなドヤ顔をしているミズホに声をかける。

「……これ、どういうコンテストなん、です?」

「冬ごろに放送予定のドラマ「潮風メモリアル」という、海の家で繰り広げられる女の子達同士の恋愛模様を描いたドラマがあるんや! ドラマの登場人物のうち、【門司アイコ】を決めるオーディションがこれって訳や!
 ――――これを、プリキュアの5人でオーディションを受けようや、という誘いや!」

 ……記念受験か、そういう意味なのだろうか?
 そんな風にクラスタは思うも、何故受けなければいけないのかが全く分からない。

「見て見て、クラスタちゃん! 海にも、夏の太陽にも負けない、元気すぎる夏のヒロイン! それが門司アイコ……だって」

『元気すぎるヒロインは、姫様と相性が悪そうなのっ!』
『そうですそうです』

 クラスタの持つスマホの中で、ナノピコ。そして電子妖精と化した諫早カナエがそう野次を飛ばしていた。うるさいなぁ、と思いながらもその辺はその通りなのでなにも言わずに黙るクラスタ。

「役柄に合ってる、合ってないんやないんや。どんな役だろうとも、やってみせるぅ気概がないといけんのや。それがプロ、っちゅうもんや!
 ……なっ、良いやろ? 良いやろ? 単なる記念みたいなもんや! 他の2人――――スバルとタマエの2人からは、オーケーを貰ってるんや!」

 そのまま、もたれかかるようにしてミズホはクラスタの机へともたれかかる。彼女の胸が、机と言う物体の上でムニュリと大きく潰れて、後ろで声が響く中でも関係なくミズホはクラスタへと懇願する。

「お願いやっ! 一生のお願いやっ!
 なっ、ええやろ? 皆との思い出を作りたいんや!」

「うんっ! 私も、皆との思い出は1つでもっ! 多くあった方が良いと思うよっ!」

 イスカまで一緒になって出ようと迫る中、クラスタは


「……考えときます、です」


 と、小さくつぶやく。結局、ミズホは約束を確約する事は出来なかったのだが、授業が始まるのでその場を後にせざるを得なかったのであった。



 週末、【オペラドーム】にはプリキュア達4人――――香椎イスカ、柚須ミズホ、長者原スバル、諫早タマエの4人の姿があった。しかし、その中には江ノ島クラスタの姿がなかった。

「やっぱり生徒会長としても来て欲しかったけど、クラスタちゃんは来ないみたいね」

「来そうな雰囲気が感じられないキャラに見えたので、この展開が普通っぽかったですが」

 スバルとタマエがさも当然といったように語ると、ミズホも「やっぱりあかんかぁ……」とおっぱいをむぎゅっと押し付けながら考え込む。

「やはりクラスタはんにはきっつーいお願いやったか? いや、そこまで強くは言ったつもりはあらんのやけどなぁ」

「だっ、大丈夫だよっ! きっと、クラスタちゃんは来るよっ! そうだよっ、そうに違いないよっ!」

 イスカはそう言って拳をぎゅっと握りしめてクラスタが来ると信じていた。
 "信じる"、そう他の皆と、それから自分に言い聞かせるように。ぴょんぴょんと、跳びあがると共に彼女のIカップの大きな胸がたゆんたゆんっと揺れ動いていた。

「でもなぁ……こればっかりは本人の意思もあるしなぁ。
 もうすぐオーディションなんやけど……仕方あらへんなぁ。さっさと準備してやらへんと――――」


「――――待たせたわね、ですっ!」


 クラスタのことを諦めて他の4人で受けようとした矢先、だった。4人の前に、クラスタが現れた。
 しかし、4人の前に現れたクラスタはいつもと違っていた。いや、姿格好はいつも通りではあるが、気迫や雰囲気がいつもと違っていた。

「クラスタちゃん? なんだか気合十分だねぇぇ!」

「えぇ、こうなりゃ自棄って奴、ですぅぅぅぅ! いっちょ、ビビッとやってやる、ですぅぅぅぅ!
 イッエェェェェイ!」

 今までとは違い、気合十分――――いや、気合十二分と言った様子のクラスタに対して、イスカ以外の皆は戸惑うばかりであった。特にその中でも一番驚いていたのは、このオーディションに誘ったミズホ自身であった。

(なっ、なんやっ?! いつもとは別人みたいやんけ……それに、なんや化粧もえらいあついなぁ。いつもはすっぴんなのに、今日はほんま見て分かるくらい分厚いなぁ。
 ……なんか、妖しいわなぁ? こりゃ、なんかあるでぇ)



 ――――ミズホの予想は、見事に的中した。

『おぉっ、すげぇ……』
『マジで初心者か、あいつ?』
『なんかこう、入り込んでる感じはあるなぁ……』

 門司アイコのオーディションは、けっこうな人数が応募していた。こう言う場合、先行順……が通例なのだが、監督の意向により何故か名簿順になっていた。他の皆は驚いていたが、ミズホはこういう現場を経験していたため、さほど驚いてはいなかった。

 何人か発表が進み、途中、諫早タマエが何故か「戦争で荒れ狂う戦闘狂軍人」という、元気いっぱいの意味をはき違えたのがあったが気にしない。
 そして、今は江ノ島クラスタの番だった。

 クラスタの演技は群を抜いていた。
 多分、今日見た中でもトップクラス……いや、10年に1人の逸材と言って良いレベルで。

 だけど――――

「いやはや、クラスタにあんな特技があったとは驚きだな。私など、軍人役しか出来ないのに」

 タマエも、他の皆も凄いと称賛する中、ミズホだけは冷静にクラスタの演技を見ていた。

(なんや、あれ。型どおり、いや、そのまんまをコピーして来たかのような奴やんけ)

 人間は、ロボットではない。血沸き肉躍る、間違いもするが感情溢れる人間。
 それ故に、演技をする際に、感情がこもった演技ができる。機械には出来ない、それが人間らしさ。ミズホはそう考えている。

 でも、クラスタの演技はロボット。こうすれば喜ばれる、ああすれば引き込まれる――――それを熟知して、なぞったかのような演技。
 素人の目はごまかせても、演技をかじった者としてはただの真似事にしか見えなかった。

(……クラスタはん、そんなんウチが憧れたクラスタはんじゃない)

 ――――プリキュアとして戦う、江ノ島クラスタ。
 悪態を吐きつつも、結局助けてくれるクラスタ。

 ちょっとばかり心を開いて欲しいが、それでも――――"存分に、人間らしかったクラスタ"。

 それが、ミズホが友人になったクラスタのはずなのだ。


「……ちょっと出て来るわ」


 ミズホはそう言って、頭を冷やそうと外へ出た。

「……。」

 その様子を、スバルはじーっと見ていた。



 人間らしくなって欲しい。
 人間っぽい演技をして欲しい。

「あかん、な。そんな事を求めたら、クラスタはんに悪いな」 

 言いたいのは事実だった、けれどもこのオーディションは自分が無理矢理誘ったもの。
 わがままも、お願いも、してはいけないと分かっている。

 頭では分かっていても、心がどうしてもそうして欲しいと叫んでいた。

「外に出たらなんや変わるかと思ったけど、ただ単に寒いだけやなぁ」


「だったら、生徒会長に相談してみては?」


 溜め息を吐いていたミズホに、スバルがそう言って近付く。

「どうしたの? この、生徒会長様に悩み事を打ち明けて見なさい。
 もう少し、私の番まで時間がある事だしね」

「スバル、はん……」

 うるる、と流しかけた涙を無理矢理押しとどめて、ミズホはスバルに悩みを打ち明ける。
 スバルも違和感、異変には気付いていたようで、ゆっくりと頷いていた。

「……なるほど、人間っぽい演技、ね」

「素人の演技指導なんか出来る立場やないんやで。それほど、上手って訳でもないし。
 けどな、魂なんや! 演技は心をこめて、魂で演じるんや!
 いつものような、人間臭いクラスタはんがウチは好きなんや。無理して、あんな感じにこられても、化粧臭いだけやしなぁ。どうしたもんかと悩んでるんや」

 「どないしたらエエやろ?」と、スバルに尋ねるミズホ。
 スバルはちょっと頭を悩ませると、なにか閃いた様子でミズホに向き合う。

「そうだ、見せるんですよ! ミズホちゃんが、クラスタちゃんにお手本を!」

「手本? どういう事や、それ?」

「演技は魂、心を込めると言っていたでしょ?
 それならミズホちゃんがクラスタちゃんを変えるだけの演技を、ミズホちゃんが見せるんです! この後の、演技で!」

(……人を、変えるだけの、演技)

 自分に出来るだろうか、そんな事が。

 ミズホの問いに、スバル生徒会長は優しい笑顔で頷くのであった。



 1人、また1人と出番が近付く。
 今のところ監督の一番ビビッと来ただろう人物はクラスタちゃん、でも決め兼ねているみたいだ。

(……なら、ウチの演技で監督の心を掴めれば、自然とクラスタちゃんもウチの演技を認めるかもしれん)

 でも、不安はあった。
 確かに、心も魂もクラスタの演技にはこもっていなかった。その分、技術やテクニック面に関しては申し分なかった。それに勝つ事は至難の業。

(ウチに出来るやろか、そないな事が)


「はい、次。柚須ミズホさん」


「はっ、はいっ!」


 名前を呼ばれ、勢い良く演技するため、席を立ち――――


「困りますえるぅ。こんな楽しそうな事を私抜きで楽しもうだなんて、趣味が悪いえるよぉ?」

 するぅー、と。そいつは、サエスディは現れていた。彼女は背中の翼を羽ばたかせると、そのまま、するり、と自分の着ている白のローブを"脱いだ"。

「なっ、なにしとんねんっ!?」

 幸いなことに女として大事な部分は、彼女の長い髪とうっすらとあるかどうか分からない透明のローブで隠しているが、サエスディの格好はヌードそのもの。痴女と言っても良いくらい、破廉恥なものだった。
 彼女の大きな胸も、魅惑的なお尻も、いつも言序のダイナミックさで現れていた。そのダイナミックさに、プリキュア達以外の皆は鼻血を出して満足そうな顔で倒れている。

「演技なんてのは、人の心を動かすものえる。
 だったら、破廉恥だろうが女体を見せれば男も、女も落ちるえるよ? それの何が悪いえる、見られても別に減るもんじゃないえるし――――」


「違うわっ! そんなの、演技やあらへんっ!」


 ミズホの主張にムカッと来たサエスディはその格好のまま、翼を器用に動かしてギリギリ見えないように移動して、大道具の工作箱からカッターナイフを抜き取った。

「カッターナイフよっ! マチガウイルスの力を借りて、新たな姿へと生まれ変われっ!」

 カードをカッターナイフに差し込み、クルクルと回転させながら宙に放り投げるサエスディ。投げられたカッターナイフは空中で白い煙を放ち、そして1匹の犬に変わる。
 歯はカッターの鋭い歯になっている、黒いドーベルマン。背中には大きなカッターを背負っており、尻尾がカッターの刃になっていた。

『アォォォォォォン!』

「完成える! カッターナイフと闘犬ドーベルマンで、闘犬ブレードだえるっ!
 さぁ、この会場をぶっつぶして、データ化するんだえるぅ!」

 サエスディの命令と共に、カッターナイフが変化して生まれた闘犬ブレードは背中のカッターナイフの矛先を自由自在に動かして、カッター刃を発射して会場を破壊していた。

「会場を破壊さすなんてさせる訳にはあかん! いくで、皆!」

「「「「おぅっ!」」」」

 ミズホの言葉と共に、プリキュア達全員がスマホとカードを構えていた。


「キュアライゼーション! ワクチンっ!
 救済を、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 クラスタが叫ぶと共に、彼女の姿が真っ白な光に包まれる。

 まず、彼女の銀色の髪が桃色の、鮮やかな色に変わると共に、背中の方まで長くさらーっと伸びる。服は真っ白なドレス、かと思いきやその上にピンク色のワンピースが着けられる。ワンピースに押し潰さられ、ただでさえ大きな彼女の胸がさらに大きく見える。
 靴もカジュアルなピンクの動きやすそうなシューズに、両手には殺菌のためかピンク色の手袋がはめられる。

 右手に持つ大きな注射器、そして背中の白い翼。
 それはまるで、白衣の天使の言葉が相応しい姿である。

「世界の浄化の、救世主! キュアワクチン!
 スーパープレイ、見せちゃうよっ!」


「うんっ! すっごーいの、やっちゃうよ!」

 力強く、クラスタが宣言して、スマホの電源をいれる。スマホにはカードスキャンの画面が映し出されており、クラスタはそこに持っていたカードをスキャンする。

「キュアライゼーション! オオカミっ!
 愛を、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 イスカが叫ぶと共に、彼女の姿が真っ白な光に包まれる。

 まず、彼女の髪が動きやすいように整えられると、大きなIカップの谷間から1匹の白い獣が出てくる。それはネコだった。可愛らしいワンちゃんがイスカの周りを駆けまわり、それと同時に彼女の姿が変わって行く。
 赤を基調としたエプロン風の洋装に姿を変え、靴も動きやすそうな黒いシューズへと履き変わる。そしてワンちゃんはクルリとイスカの前で一回転すると、彼女の中へと消えていく。

 髪の上には犬耳、そして長い白の犬の尻尾。
 世に言う、アニマルコスプレはまさにこれだろう。

「人の愛の、救世主! キュアフレンズ!
 すごーい、力を、見せちゃうよっ!」


「ウチも、やったるで!」

 勢い込むミズホは、スマホにカードをタッチする。

「キュアライゼーション! スプラッシュっ!
 美しさを、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 ミズホが叫ぶと共に、彼女の姿が真っ白な光に包まれる。

 彼女の前に大きくてオシャレな洋服箪笥が出て来て、ミズホが開けるとそこからリブ生地で作られた胸を強調する白いセーター、足のラインを強調する赤いスカートを手に取る。
 ミズホはセーターとスカートを手に取り、着替えを始める。セーターを着る際にKカップの、特大の大きさを誇るおっぱいが大きく揺れ動いていた。そしてそのおっぱいから高貴な魔法の杖が出て来て、それとは別に幻想的なランプが出てきていた。おっぱいから出る際に、少しだけ頬が赤くなって恥ずかしそうだった。

 頭に被る、魔女が被るような円錐型の帽子。
 帽子と髪にリボンがついた、オシャレな魔女の姿となっていた。

「輝く星の、救世主! キュアスパークル!
 私の美しさは、弾けるわよ!」


「プリキュアとして戦う、それが私の決定事項!」

 絶対に達成する、そんな勢いの元、スバルはスマホにカードをかざす。

「キュアライゼーション! アイギスっ!
 安らぎを、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 まず、彼女の髪がきららかな艶のある緑色になり、鮮やかな色に変わると共に、足元まで長々と伸びるとそれはゆったりと膨れ上がっていた。緑色の薄い布の上に、胸当てだけの甲冑。腕と脚に緑色の手袋と靴。青い、スカートをはくと、そこに騎士団のマークが刻まれる。
 両手に一瞬盾と扇が生まれると、それは緑色の光となって消えていく。

 騎士団の甲冑と服装。一瞬だけ見えた盾。
 それはまるで、あらゆるものを防ぐ騎士の言葉が相応しい姿である。

「安らぐ樹木の、救世主! キュアアイギス!
 安心して、私が着いてるわ」


「キュアライゼーション! カナエ!
 愛を、今ここに! レッツ・プリキュアチェンジ!」

 スマホから現れた、大量の液体。それは彼女の前と後ろから大きな棺のようにして立ち上がり、ガチャッと両側からタマエを挟んでいた。
 そして棺から水蒸気が立ち昇り、棺が開くとそこには青く、そして大きな銃を持ったプリキュアの姿があった。

 藍色の髪はツインテールになっており、右の髪には星が、そして左の髪にはボールの髪飾りを着けていた。青いワンピースの背中には巨大なブースターパックが取り付けられており、腕には大きな銃が取り付けられており、もう片方の手には大きなベルを手に持っていた。

「2人で知性高き最高峰の、救世主! キュアスマートVer.2!
 ――――今度こそ、正しい選択を為して見せる」


 5人のプリキュアが変身すると共に、サエスディはにやりと笑みをこぼす。

「くふふぅ、どんな輩だろうともこのサエスディの闘犬ブレードを倒す事は容易じゃないえるよ?
 闘犬ブレード、作戦開始といくえる!」

『アォォォォンッ! ガウガウッ、ガウッ!』

 サエスディの指示がすると、闘犬ブレードの背中のカッターが上を向く。そしてバンバンッ、と射出された刃達は空中にて銀色の犬達へと変貌を遂げていた。その刃から変身した銀色の犬達――――カッター犬達は全身が鋭く尖っており、プリキュア達に襲い掛かっていた。

「まったく、刃の犬なんて厄介っ! ですっ!」
「もうっ! このワンちゃん達は、厄介だよぉぉぉぉ!」

 キュアワクチンは注射器を振り回し、キュアフレンズは胸を揺らしながらワンコ達を出しながら逃げ惑っていた。

「――――刃が犬に? マチガウイルスは、面倒で仕方がないです」

 キュアスマートは宙を舞いながら銃弾で迎撃して行くが、闘犬ブレードの発射するカッター犬達はどんどんと増え続けて行く一方だった。

「……本体さえ、倒せればっ! ウチがなんとかしたる!」

 キュアスパークルがそう言い、泡を大量に作り出す。その泡はキュアスパークルの意思に従って隊列を組んで向かって行き、カッター犬達を包み込む。

『アォォォォン!』

 闘犬ブレードは背中のカッターナイフから長い刃を出し、泡を割ってカッター犬達を助け出していた。カッター犬達は泡に囚われないようにと、キュアスパークルに走って行く。

「――――スパークルっ!」

 そんなキュアスパークルを守るために、キュアアイギスが彼女の前に出て盾を作り出す。


「アイギスっ! へっ、平気かいな?」

 キュアスパークルが心配するのも無理はない。
 キュアアイギスが作り出す盾、それにぶつかっているカッター犬達によって少しずつ押されていたからである。このままどうにか状況をひっくり返す事が出来なければ、キュアアイギスの盾は破壊されてしまうだろう。

「あのカッター犬達を泡で包み込めれば、余裕やのに……あの本体の闘犬ブレードっちゅう犬のカッターは泡で包み込めへんし、どうすればええんやろう?」

「……生徒会長としても、どうすれば良いか迷うでしょう。
 けど――――あの女を、ぎゃふんっと言わせたいんでしょう?」

 スバルの視線の先には、高笑いをする半裸にしか見えないサエスディの姿があった。

「演技なんて、こんなものでえるよぉ〜。
 半裸に近い格好で肌を晒しまくって視線を引きつければ、後はテキトーに見ていて深いじゃない程度の演技さえしていれば良いとは、まったくもって楽な商売だえるよぉ。娯楽って、本当に良いものだえる!」

 その言葉に対して、ミズホは黙っていられなかった。
 それを見てスバルは納得すると、手を差し伸べる。

「……なら、生徒会長として提案するわ。
 今から、2人で協力しますよっ!」

「ええっ!」



 キュアスパークルは大きな泡を作り上げる。その上にキュアアイギスが手をかざすと、泡の周囲にさらに小さな膜が生まれる。

「「合体必殺技! アイギ・スパークルっ!」」

 大きな泡は先程までの泡の動きが止まって見えるかのように物凄い勢いで動くと、カッター犬達をその泡の中へと入れていく。

「何度やろうと同じ事だえるっ! 闘犬ブレード、泡を破ってカッター犬達を解放するえるよっ!」

『アォォォォォォンッ!』

 サエスディの指示を受け、先程と同じように背中のカッターで泡を破裂させようと飛びかかる。しかし、それは上手く行く事はなく、ぼよんっと跳ねるように泡はカッターを跳ね返す。そして本体の犬の身体を包み込み始めた。

「なっ!? さ、さっきの泡とどこが違うえるっ?!」

 そんなサエスディの質問に、キュアアイギスが得意げに答える。

「生徒会長の、このキュアアイギスの力は、《守りの力》!
 いつもの盾は空気を《守り》へと変身させていますが、今はキュアスパークルの泡に《守り》の力を付与しましたっ! そんなカッターナイフごときで割れると――――」


「娯楽は……演技はそないに簡単じゃないんやっ!
 お前のような半端モンの奴は、潰れてしまえっ!」

 丁寧に説明しようとしていたキュアアイギスが言い終わる前に、キュアスパークルが根性論任せに闘犬ブレード達が入った泡をサエスディの上へと移動させて、叩き付ける。

「……今だぁぁぁぁ! ワクチンちゃん、この前のすっごぉーい奴、お願いぃぃぃぃっ!」

「了解、ですっ! この時を待っていたっ、ですっ!
 "合体ワクチンウイルス注射器"、発動ですぅ!」

 キュアワクチンが注射器の中身を押し出すと共に、ドギツイ桃色の液体が5人のプリキュア全員を包み込む。包み込むと共に、5人の身体が桃色の液体にドロッと溶けて行く。
 桃色の液体に5人の身体が溶けると共に、それは溶け合って1つの巨大な人間に再構成して行く。

 桃色の液体が融合して生まれた人間は、10mはあろうかという巨大な女の姿をしていた。
 胸は5mはあろうかというばかりの、身体の大きさからしてもとても大きく、服なんてないにもかかわらず桃色の身体の彼女の身体はイヤらしいと言うよりも、神々しさを感じる美しさがあった。
 そして身体の各箇所には5人の特徴があった。右手には注射器が取り付けられており、胸の大きな谷間の中からは可愛らしい犬がこちらを見ており、髪は泡のようにシュワシュワと弾けていた。左手には盾、そして背中からは大量の銃が前を向いていた。

『完成っ! プリキュア・サイバー!』

 女神のような美しさを誇る彼女、それが5人のプリキュアの合体したプリキュア・サイバーという姿であった。


『いっくよぉ〜! フレンズ・ブレーカー!』

 プリキュア・サイバーの大きく揺れ動く谷間、それから出た大きな白い液体。
 胸から出ただけあって、それはまさしく母乳のようであった。その母乳には乳濁色の、沢山の動物達が混ざっており、混ざった動物達は闘犬ブレード達の泡ごと包み込み、そして大きな球体となって、弾ける。
 弾けると共に、闘犬ブレード達がそのまま消えていく。


「くぅっ! ただ半裸姿を晒しただけだったえるぅ。
 今日はもうっ、帰るえるっ!」


 サエスディが消えるのを確認し、合体を解いたキュアスパークルの顔は晴れ晴れとしていた。

「そうや……演技ってのは、そないな簡単な事やない。
 伝えるのには、今それだけで十分や」




 一方、キュアスマートは考え込んでいた。そう、偶然見えてしまったモノについて。

「"アレ"は……いったい……」




 結局、このオーディションではプリキュアの5人の中からは決まらなかった。
 ミズホの演技はクラスタ以上に評価されたが、その後に本命が出て来てあっさりと決まったからだ。なんだかがっかりするが、現実のオーディションも結局はそのようなものである。実力がある者は、フラグとかへし折って取るのだから。
 ――――だが、ミズホの気持ちは晴れ晴れとしていた。監督が次の仕事を優先してくれると言ったからだ。

「よっしゃあ、ウチはこれからも頑張るで!
 クラスタはん、見ときいや! ウチはもっと羽ばたくんやからな!」

「はいっ。分かった、です」

 クラスタがそう言うのを聞いて嬉しそうにするミズホ。ミズホの隣ではスバルが「良かったね」と肩を組んでおり、イスカも「わぁぁぁぁい!」と嬉しそうにしていた。


 ――――ただ1人、スマホを操作していたタマエの顔は晴れなかったが。

「【クラスタはナノピコさんと一緒に家でゲームしてますよ】か。
 なぁ、カナエ……じゃあ、このオーディション会場に来た"あの"クラスタは何者、だ?」


 その、偽クラスタは皆の前からいつの間にか姿を消していた。



【次回予告っ!】
「旅行に行きますよ、江ノ島クラスタ」
「唐突、ですね。諫早タマエ」
「目的地は日本最大級の湖、アクセス湖。プリキュアの皆で楽しみましょう」
「ちょっとっ、です?! なにその湖?!」

 次回、サイバープリキュア!
【旅行に行きタマエ! みんなが一緒でいイスカ?】

「わぁぁぁぁい! アクセス湖だぁぁぁぁぁぁ!」
「意味が分かりません、です……。
 テンションの上がりようが意味不明、です」