----妹がブラジャーを買いたいらしい。
まだ小学校1年生の妹は誰がどう見てもぺったんこで、ブラジャーなんか必要ないと思うのだが、友達が使っているので買いたいんだそうだ。
1人で行って来たら良いんじゃないかと思うのだが、お目当てのブラジャーはとてもお高い物なんだそうだ。
小学1年生の妹が1人で買うには、かなり高額な代物なんだそうだ。
しかしながら、母は用があるみたいなので、中学生の兄の出番ということなのだそうだ。
日曜日、俺は妹と共にブラジャーの専門店にやって来た。
てっきり、いつも母さんと一緒に行くデパートとかに買いに行くのかと思っていたんだけれども、妹が案内してくれたのはブラジャーの専門店だった。
店の看板には【Re:Girl→Lady】と書かれていた。
店の中に入ると、たくさんの大人っぽいブラジャーが並んでおり、どう見ても妹に合うような大きさのブラジャーはなさそうだった。
多分ながら、妹の友達が使ってるようなサイズもないだろう。
なにせ、最低サイズがEカップ……そんなの、クラスメイトでもいないくらいのサイズ帯だったからだ。
本当に目的地がここなのかどうか、確認したかったのだが、妹は無視してとことこと店の奥へ行ってしまう。
まるで、最初から目的地がどこか分かっているみたいだった。
ちゃんとしていると感心したいところだったが、その期待はすぐに裏切られた。
「すいません、私に合うブラジャーってありますか?」
「えっと……ないですね」
「ふぇっ?!」
妹はめちゃくちゃ意外そうな顔をして泣きそうにしているが、泣きたいのはこちらである。
なにせ、貴重な日曜日という休みを潰されただけでなく、妹が買いたいと言ってたブラジャーも、買えそうにないんだから。
----馬鹿らしい。
もう帰ろうと思っていると、1枚の布を見つけた。
伸縮性の高そうな奴で、恐らくブラジャーの一種の、"さらし"と呼ばれる奴だろう。
大きな胸を押さえつけて、小さくするためのやつだ。
「(しっかし、安いな。これ)」
その"さらし"は、良い布を使っているらしく、普通に買えば1万円以上はするような生地だとネットに書いてある。
しかしながら、半額以下の2千円代で売っているみたいで、かなりお買い得だろう。
「(まぁ、これを買っておくか)」
妹はなにがなんでも買いたいらしく、もし買わなければ絶対に帰りそうになかった。
「じゃあ、店員さん。これで」
妹はまだ納得できてないみたいだが、とりあえずさらしを買って帰ったんだし、もう良いだろう。
☆ ☆ ☆
次の日、妹が泣きながら部屋へと入ってきた。
なんでもあのさらしを付けられたらしい。
あれ、けっこう大きいのに良く付けられたなと感心していたのだが、じゃあなんで泣くんだ?という話になる。
なんでも、さらしを付けてからというもの、身体が痛いんだそうだ。
自分1人で無理やり付けた時はそうではなかったのに、今は1人じゃ取り外せなくなってるので、助けを求めに来たという事らしい。
我が妹ながら、なんてバカなことをしているんだか……。
仕方がないので、子供じみた変な絵が描かれたシャツを脱がせると、真正面に件のさらしが見える。
どうも妹は相当な無茶をやったらしく、さらしが妹の身体にぐるぐると巻き付いていた。
とりあえず、まずは腕から、と思って、腕のさらしを取り始めた。
そしてさらしを取ると、変な事に気付いた。
「(あれ、アイツの腕、こんなに長かったっけ?)」
妹は小学生らしい平均的な体格で、少なくとも中学生で、背の高めの俺と同じくらいの長さはなかったはずなのだ。
「ねぇ、お兄ちゃん? まだ?」
妹は普通にしているが、こちらは動揺が隠せなかった。
なにせ、さらしを解いたら、妹の腕が長くなってたんだから。
「(まさか……)」
その後も、妹の身体に巻き付けてあったさらしを取っていく。
1つ取ると、むくっと。
もう1つ取ると、むくむくっと。
明らかにさらしを取る前と、妹の身体の大きさが噛み合わない。
「もう、やっと取れたよ」
妹は何事もなく、ようやく解放されて安堵の表情を浮かべていたが、そんな妹の姿を俺は困惑の表情で見ていた。
身長、4m越え。
胸のサイズは軽く2mを越え、腕どころか足も兄である俺の身長を大きく超えていた。
全体的に肉がついたムチムチなボディラインからは、小学生とは思えない、大人の色気を醸し出していた。
「お兄ちゃん……あたし……どうなって……」
妹が困惑の表情でこちらを見る中、俺はもう1つのことでも困惑していた。
----背丈矯正さらし・小学生用(Sサイズ)
さらしに書いてあった、その文言によって。