異世界転生したんだけれども 魔族編

帝国城摂政 作
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 俺は死んだ。
 会社で20連勤した後、帰ろうとしてトラックの事故----で出来た、道路の凹みに足を引っかけて、頭から道路に倒れて死んだ。
 こう言っちゃあなんだが、死ぬならトラックで轢かれて死にたかった。
 なんだよ、トラック事故で出来た道路の凹みって。

 俺があまりの雑な死に方にガックリしていると、神様って奴が来た。
 どうやら俺のあまりの雑な死に方は、神様の予想外の出来事だったらしい。
 予想外の出来事で死んだ俺に、神様がチャンスをくれた。

 剣と魔法の、ファンタジー世界。
 異世界。
 そう、良くネット小説とかで流行っている、あの異世界転生をしてくれるらしい。

 俺は喜んだ。
 ネット小説は会社の帰りや休み時間の暇つぶしとして何度も何度も読んでいて、いつか自分も異世界に行ってみたいなと思っていたからだ。

 ただ、ちょっとだけ残念だったのは、貰えるチート能力を選べないって事くらいだろうか。
 俺が選んだ種族に対応したチート能力、ってことで貰えないって訳ではないみたいだけど。

 ……ともあれ、俺は異世界に転生することになったのであった。





 俺が選んだ種族は、魔法の申し子たる魔族。
 青い肌に高い魔力適正、サキュバスっ娘やドラゴン娘など色々な種族とお友達にもなれちゃう、異世界モノの定番のような種族である。
 やはりファンタジー好きとしては、魔法を使っていきたいという思いがあったからね。

 俺は、魔族を纏め上げる旗頭たる魔王に転生した。
 ----いや、正確に言えば魔王の息子なのだが、生まれた時点で先代の魔王である父が、俺にその座を譲ったので魔王であってるだろう。

 それというのも、俺が得たチート能力にあった。
 魔族である俺のチート能力、それは【魔力王】。

 先代の魔王は歴代でもトップクラスの魔力を誇ると言われている。
 なのだが、そんな先代の魔王の魔力を【1】とした場合、俺の魔力量は【1京】。
 しかも、未だに物凄い勢いで増えつつあるのだ。

 実に、嬉しい話である。
 ……だが、その想いは僅か数年で崩れ去ったのであった。



 俺を世話する彼女----Kカップのたゆんたゆんと揺れる胸を惜しみなく披露する彼女は、妖精族と呼ばれる魔族である。
 同じ魔族とは言えども、その大きさは通常の魔族たちの1/100のサイズ。
 花の上に乗るくらいの大きさと考えて欲しい。

 ちなみに、妖精族の100倍の大きさが、サキュバスやらデーモンと言ったごく普通の魔族。
 そのごく普通の魔族の100倍の大きさが、龍の血を受け継ぐドラゴン族。
 さらにその100倍の大きさが、魔王である俺が生まれた巨人族。

 ……で、そんな俺を世話する妖精族は、俺の100倍サイズ。

 そう、この世界は、めちゃくちゃデカくなっている。
 妖精族ですら俺の100倍サイズ、妹や姉などの俺の家族に至っては俺の1億倍、だ。

 こんなにも魔族が巨大になったのは、俺の【魔力王】のスキルが関係している。
 人間が肉と骨と水を基に身体を作っているように、魔族は魔力によって身体を構成している。
 魔力が多ければ多いほど、魔族としては優れていると言う訳であり、先代魔王である俺の父がすぐさま俺に魔王の座を明け渡した理由がそれに当たる。

 そして、俺の規格外の、膨大すぎる魔力は、俺ですら制御できずに魔族の住まう世界に漏れ出した。
 漏れ出した魔力は濃厚で、魔族達にも影響を与えた。
 魔力が身体の元となっている魔族達、その魔力が膨大になった結果、彼らの身体は巨大化した。

 魔力が膨大になっているのだから、魔力が身体の基となっている魔族の身体も巨大化するのは当然だ。
 普通、種族自体の身体が巨大化するぐらい膨大な魔力だなんて、あり得ないはずなんだけれども、それくらい俺のチート能力が強すぎると言う訳である。

 ちなみに、俺の身体が巨大化していないのは、俺を巨大化させるには魔力が少ないという事である。
 俺以外の全ての種族を、全ての魔族を100倍サイズにするだけの魔力でも、俺を巨大化するには少なすぎる、との事だそうだ。

 おかげで、俺は魔界で一番膨大な魔力を持つ魔王でありながら、妖精族の1/100サイズと言う小ささを持っている。

 魔族の者達は、魔王である俺に敬意を払っているのは分かるし、魔力差から俺を傷つけられる者がいないのも分かっている。
 ただ、家族と会話しても肌一色しか見えず、普通に魔族の大きな胸になんの気兼ねなしにちょこんとゴマ粒のように載せたり、矮小の魔族と呼ばれる妖精族にうっかり踏み潰されそうになるのは、流石に自身が惨めに感じる。

 それなので、俺はとある魔法を作り出した。
 名付けて、【永続巨大化魔法】。その名の通り、膨大な魔力によって俺の身体を永続的に巨大化させる魔法だ。
 まぁ、とは言ってもあまりに大きくし過ぎたら今度はそっちの方が困るから、とりあえず家族と同じ大きさ、1京倍を目標としている。

 そして、俺は【永続巨大化魔法】を用いて、俺の家族と同じ大きさに巨大化した。
 その日は、家族と一緒に食事が出来て、本当に嬉しかった。

 ----俺はその時は知らなかったが、【魔力王】は俺の身体に左右して魔力を生み出す。
 人間の身長が倍になれば、体重はその8倍と言った風に、俺の魔力量も【永続巨大化魔法】によって、膨大な物に膨れ上がっていた。


 次の日の朝、妖精族が俺の1000倍の大きさで来た時は、今後のサイズ差がどれだけの物になるのか本気で心配したものだ。
 そして、俺のスキルによって、魔族はさらにどんどん巨大化する道を遂げるのであった。