従姉妹との日々

時雨鴇音 作
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「実は移動中に色々あって余り食べられなくて……夕飯もまだなんです」

俺の質問に申し訳なさそうにハルカがそう応えた。

「いや、それならそれで何か作るから良いよ」

「えっ?で、でも……」

「別に気にしなくて良いって、どうせ俺も夕飯の途中だったし」

そう言いながらダイニングのテーブルに置いてある食べかけの夕飯を見つつ立ち上がる。

「そんじゃまぁ何もねぇけどゆっくりしててくれ。口に合うかどうかはわかんねぇけど簡単なもんなら……ん?」

そのままキッチンに向かって歩き出そうとした所で背後に気配を感じて振り返ると。

「……手伝う」

ヒサギが慎重差のせいで微妙に上目遣いでそう言ってきた。

「いや、俺一人で充分だから」

「手伝う」

「お前はゆっくりして」

「手伝う」

「あー……わかったよ、頼む」

「……うん」

そんなヒサギの申し出にやや強引に押し切られる形で手伝いを了承すると。

「じゃ、じゃあ私も……」

「……お姉ちゃんは座ってて」

「えっ、でも……」

「座ってて」

「う、うん、わかった……」

そんなやり取りをしながら俺の後についてくるヒサギと、そんなやり取りで目に見えてしょぼーんとしたハルカを見ながらとりあえず冷蔵庫の中を確認する。

「うーん……やっぱ野菜炒めくらいしかできそうにねぇな」

「……うん」

後ろから冷蔵庫の中を一緒に覗いたヒサギも同意し、俺はそんなヒサギに小声で話しかけた。

「……なぁ」

「……何?」

「あれ、良いのか?」

「……あれ?」

「いや、落ち込んでるみたいだけど」

「……お姉ちゃんが料理すると色々大変だから」

「色々大変って?」

「……よっぽど広いキッチンじゃないと料理中の移動が大変なのと、手元が見えにくいからすごく危ない」

「あっ、あー……なるほど」

小声で返されてハルカがここに立った姿を頭に浮かべ納得する。

「……中1くらいまではお母さんの料理の手伝いしてたから料理自体はできるけど、今はさせないようにしてる」

「そりゃあ……あれじゃ危な過ぎるわな」

「……うん」

そんな感じで話しながら俺達は料理に取りかかった。