「え、えーと、地元には私達の実家から普通に通える範囲にはなくて……どうしても寮があるか電車で片道何時間もかかるのを覚悟しなければならない感じなんです。なので他にも一応受けてはいたんですけど、それらがことごとく寮がいっぱいになっていてダメだったり使うはずだった電車の時刻が三月に改正されてしまったりで受けた学校は全滅みたいな感じになってしまいまして……」
「全滅……災難だったな」
「はい……そしてどうするか悩んでいた時に、母がこちらにある銀明ならと提案してくれたんです。銀明ならまだ受付けているはずだし近くには姉、つまり私の伯母の家もあるから通いやすいだろうって」
「なるほど……で、かーちゃんがそれを聞いて深く考えもせずに二つ返事で快諾しちまったと」
「みたいですね……同時に、ひぃちゃんも行けるなら同じ銀明にした方が良いんじゃないかと言う話も出て高校の近くに中学校もあるからと一緒に来たんです」
「確かにあの中学はほとんど同じ通学路使うくらいに近いからなぁ……しかしだ、ハルカさんや叔母さんはこの家に俺が居るって知らなかったのか?さすがにかーちゃんから話くらいはありそうなもんだと思うんだけど」
「そ、それは……」
「それは?」
「実はですね、私はその……女だと思っていたんです」
「女だと思ってたって……俺をか?」
「はい……」
「ま、まぁ最後に会ったのはもう三年も前になるから仕方ねぇか……年一であっち行く時はいつもかーちゃんの悪ふざけであんな格好してたわけだし」
と嫌な思い出が頭を過り思わず苦笑いした。
「それにお名前も、その……」
「あぁ、名前ね……あんな格好な上にナツキなんて名前だと、普通に女としか思えんわな。と言うか今思い出したけど、ハルカさんには昔確かなっちゃんとか呼ばれてたか?」
「なっちゃん!そうですね、そんな風に呼んでました……なっちゃん、ふふふ」
ハルカは昔を思い出したのか懐かしそうに微笑むと、そんな動作と一緒に彼女の大きなものも微かに揺れた。
(いやいや、どこ見てんだよ俺は……)
等と自分の男の性に呆れつつ、ふと掛け時計を見上げるのだった。