日常にあるあらゆるものが
もしも巨大な女の子だったら・・・
あの建物が、あの乗り物が、あの自然が・・・
日本一高い山、富士山。
その山の清掃をするのが俺の仕事である。
初めの頃は山に登っていくだけで疲労してしまい、清掃どころではなかった俺だが
山登りによって体力も付き、今では立派な清掃員としていつも仕事をこなしている。
「じゃあ、今日は頂上辺りの掃除をするから」
「……そうね。登りに来る人が増えたのはうれしい事なんだけど、それでポイ捨てさせるゴミまで増えちゃって……ホント、困ってたところなのよ」
今、目の前に見えるもの。それは富士山。
だが俺の眼前には、どう見ても仰向けの姿勢になって
胸の二つの膨らみを露出させている、スタイルの良い美少女の姿しか見えない。
だが、これこそが日本が誇る富士山そのものの姿なのだ。
巨大な少女のおっぱいにしか見えないが、これこそが間違いなく富士山と呼ばれる大山なのである。
いかがわしい考えを、頭の中から振り払った俺は早速、目の前にいる超巨大な少女の方へと歩みを進めていく。
そして専用の器具を使って、仰向けになっている少女の腰の部分を登っていき
何とか俺は無事に、富士山の麓へと辿り着く事ができた。
「……よし、じゃあ今から登っていくからな。途中で動いたり、体を揺らしたりしないでくれよ?」
「分かってるわよ、それぐらい……私だってもう、何度もやってもらってるんだから」
少女に一声かけた俺は、すぐさま清掃作業に取り掛かる。
足元を何度も踏みしめて転ばないように確認しながら、肌色の山をドンドン歩いていく。
ふと上を見上げると、雲よりも更に高いところまで続いている肌色の広大な山道が見える。
むにゅんむにゅん、と柔らかい地面なので一見すると跳ねるように楽して登れそうに見えるが
実際にはその逆であり、むしろ肉感的な地面に足がうずまってしまわないようにしつつ歩かないといけないので
その疲労感は、通常の地面よりもずっと上だ。
しかも時折、まるで噴火でも起きたような激しい揺れが山全体におきるため
この山を登っていくのは本当に大変である。
「おいおい、体を揺らすなってさっき言っただろ?」
「だって……あんたが何度も何度も、強く地面を踏みしめるもんだから、少し感じてきちゃって、その……」
「でも普段は別に、体を揺らすこともなく平然としてるじゃないか。何で俺が登る時だけ、こんなにも体を揺らしてくるんだよ?」
「し、知らないわよ、私だってぇ! でも何か、あんたが登ると敏感すぎるくらいに感じちゃうのよ……とにかくよく分からないけど」
顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうにそう弁解する少女。
そんな彼女の発言を聞いた俺は、ため息をつきながらさらに上を目指して登っていく。
頂上近くまで来た頃には、揺れは更に激しさを増していき
もはや歩いているというよりは、両手両足で這って登っているという状態になっていた。
そんな状態で地面に、力強く体を押し付けるようにして密着し続けていたためか
揺れは更に大きく、何度も起こるようになっていた。
「いい加減にしろよっ! これじゃ登るどころじゃないぞ!」
「でっ、でもぉ……自分でも、もうどうしようもないのよぉ……」
かなり色っぽい声を出しながら、少女の体と共に富士山は揺れ続ける。
「どうしようもないって……何とか、どうにかしろよぉっ!」
「ああぁぁぁ……そんな力強く捕まれたらもうっ……!」
そんな大変な状の中、何とか山を登り切った俺は
頂上付近にあった多くのごみを回収し始める。
途中、ゴミを回収しようとして乳首付近に触れてしまった時は本当に大変だった。
まるで天変地異でも起きたような、とてつもない揺れが山全体を襲い
俺は危うく、そのままどこかへ吹き飛ばされるところだったのである。
しかも、その後に再び乳首付近に目をやると
明らかに先ほどよりも、乳首が巨大化しているのがよく分かった。
高層ビルが、超高層ビルになったぐらいの変化は間違いなくあったはずだろう。
しかも揺れも継続的に、びくんびくくん、と何度も起きていたため
あの時は本当に大変であった。
だがそんな清掃を何とか終えた俺は、すぐに下山の準備に取り掛かる。
「ふうぅ……相変わらず、今回も大変だったな。無事に怪我もせずに生きていられるのが、いつも不思議なくらいだ」
「ありがとうね、本当にいつも。こんな私のために頑張ってくれて……本当に感謝してるわ」
「なに、良いって別に。気にするなよ。これが俺の仕事なんだし、それに……」
「それに?」
「……好きだからこそ、この仕事をやってるんだからさ」
俺がそう呟くと、踏みしめていた地面が少しだけ、ほんのりと赤みを帯びたような気がした。
それに気づかないふりをしつつ、俺は先ほどまで延々と登ってきた山を下りていく。
だが実は、俺の仕事はこれで終わりではない。
驚くべき事に、富士山はなんと双子山なのである。
おっぱいが二つあるように、富士山もまた同じサイズの山が二つ、連なるようにして並んでいるのだ。
しかし俺は、そんな状況下でも明るい顔をして山を下りていく。
俺は彼女を心から愛している。
だからどんなに大変な作業だとしても、彼女のためならば決して苦にはならないのだ。