milk story

ttn 作
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生物の進化には様々な説がある。
その中でも興味深いとされているのが島嶼化(とうしょか)である。
それは外敵が全く存在しない閉鎖的な環境において
生物は縮小化する傾向にある、という説である。

そして、地球は最近まで宇宙人との交流が無かった為
その説が見事に当てはまり地球の生物は比較的小さな部類になったのであった。

「あれ・・・?じゃあレイさんのようなヨクト星人は・・・」

温泉へ行く道を歩きながら優弥は、さっき本屋で買った本を読んでいた。
宇宙には自分の知らないことばかり。
最近そう痛感した優弥は、自主的に宇宙の他の種族について勉強をしていた。
そして一つの矛盾点にたどり着いたのであった・・・。



「実はよく分かってはいないらしい」
「えぇっ!?自分達の星の事なのにっ!?」

レイに直接聞いてみた優弥であったが、返ってきた答えはあっけないものであった。

ヨクト星人といえば宇宙でもかなり有名な戦闘種族。
当然、昔から他の多くの外惑星からの攻撃の中で戦い抜いてきている。
だが島嶼化という説から見ると、それだけ戦いの歴史を歩んできたのならば
肉体は戦いの為に、より大きく、より頑強になるべきなのである。
だが実際のヨクト星人は、宇宙でもトップレベルの小ささである。

「面白い話を聞かせてやろうか・・・優弥?」
「面白い話・・・ですか?」
「ああ。もしかしたらお前の矛盾を解消してくれるかもしれん」
「本当ですかっ!?ぜひ聞きますっっ!!聞かせて下さいっっっ!!!」
「分かった、話そう・・・。これは風の噂で聞いた大昔の話なんだが・・・」



ドッゴオオオォォォォォォォ・・・・・・・!!!!!

ある星に突如、何か巨大な物体が空から降ってきたという。
その星に住む人々のほとんどがその落下場所に集まってきた。
見るとそこにあるのは大きなボール形の物体。凄まじい大きさである。
ボールの隣にそびえる、星で一番の大山が小さく見えてしまうほどだった。

数分後、ボールが突然開いた。そして中から何かが出てきた。それは・・・。

女。とてつもない巨人だった。
ボールの中に体を丸め込んで窮屈になりながら入っていたため
中から出て、真っ直ぐ背を伸ばした彼女はもはや他に比べるものの無い巨人であった。

彼女はその星を見渡した。
川が枯れている。土地が痩せている。なんて荒れ果てた星なのだ・・・と。
星を見渡し、何かを考え込んだ後、彼女はある行動に出た。

広い大空を覆いつくす二つののおっぱい。目の前いっぱいに広がる乳首。
それを揉むのは、彼女の手。おっぱいが形を変えながら揉まれる光景を
星に住む全ての人々が目撃したはずである。そして・・・時は来た。

枯れた大地に降り注ぐ、数十年ぶりの雨・・・ではない。
それは白い色をしていた。まるでミルクのような・・・。

ミルクのような雨が星全体を覆いつくす。
枯れた大地は潤い、人々に活力が戻り始めていく。
星に住む全ての人々は彼女を見た。天より白き恵みをもたらした彼女を。

人々は彼女を・・・女神、そう呼び敬うのであった・・・。



女神の大いなる恵みを受け繁栄を始める星。だが素晴らしき時は、長くは続かなかった。

星の人々は進化の末、その人数を爆発的に増加させた。
さらに他の惑星との交流を重ねていく事で、どんどん体をも巨大化させていく。
女神の肉眼では確認できないほどに小さかった星の人々も、今では米粒ほどに見える。
女神が大きすぎるのであって、今、星の人々も充分に巨人だったのだ。

だがそれが自らの首を絞めることとなった。
一人一人が巨人となっても、星は大きくはならない。
肉体の巨大化や行き過ぎた繁栄が、自分達の住む土地を失わせていたのである。
このままでは故郷の星が失われ、人々は全滅する運命にある。
こんな目に会うならば、小人のままでいればどんなに良かった事か・・・。



この状態を見かね、女神は言った。
ならば今からこの星の全てを流そう、この母乳の力で。
そしてこの母乳を口にすれば、貴方達が望む体の大きさとなるであろう。

人々は受け入れた。また一からやり直そうと。
今度は星を苦しめず、共に共生して行こうと・・・。

そして全ては白き大雨により流され、とても小さな人々だけが星に残った。



「何だか不思議な話ですね・・・」
「信憑性は全く無いがな。だが大昔の教訓を今に受け、俺達は小さなままなのかもしれん」
「でも今、ヨクト星人って戦闘種族なんですよね・・・?」
「ああ。もしかしたら・・・このまま星を苦しめていけばまた女神が現れるかもな」
「レイさん・・・」
「全ては太古の話、今の俺達に真偽を確かめる方法など無い・・・」

とにかく今を、精一杯頑張るしかない。そんな事を感じていた優弥であった・・・。