「ああ・・・疲れました・・・」
人攫いから逃げ出した後、ザネフの教会では助け出された子供がシスター達に
連れられて保護を受けていた。手当てやら何やらでアルも教会で一夜を明かし、
朝餉の相伴に預かっていたのであった。
「災難でしたね。まさか昨日の今日で人攫いに捕まるなんて・・・」
「助かったのは良いんですけど、旦那様からの贈り物が壊れてしまったんですよね」
壁を掘り抜く為に全力で叩きつけた結果、あちこち凹みや歪みが出来てしまった
装飾品。もはや元通りに修復する事は叶わないだろう。
「それで、あの後は一体どうなったんですか?」
「無事に全員逮捕したとか。余罪も有るので女王軍の管轄で追及すると聞いています」
「良かった。これで一安心ですね」
メルファの言葉に胸を撫で下ろすアル。これで子供達は本当に安全だ。
「それにしても、街中に人攫いが居るとは思いもしませんでした」
町の隅々まで知り尽くしているアルだったが、まさか町の膝元に
苦しむ子供達や犯罪者が居るとは思っても居なかった。悲しみと
怒りを抱かずにはいられないのも無理は無かった。
「私も驚きました。最近は叛乱軍が組織だって争っているとも聞きます。
こんな時だからこそ助け合うべきなんでしょうけど・・・残念な事です」
人々の心が荒んでいるのだろうか、悪事の芽は尽きまじと言う事なのか。
メルファも着任早々の事件に心を痛めていた。
「旦那様にも心配を掛けちゃったし、自分で身を守れるようにした方が良いのかしら?」
昨日から書置きも残さずに戻らなかった上、衛兵に呼ばれて教会まで足を運んだ時に
見た妻の姿は泥まみれだったとなれば心配されるのも当然。こんな迷惑を掛けるのは
二度と御免だ。
「いたっ、あだだっ! うぅ・・・こうも筋肉痛が酷いと仕事どころじゃないわ」
全力疾走した脚も痛いが、それ以上に腕が酷い。指も強張って中々思い通りに
動いてはくれない。今日は臨時休業となりそうだ。料理も簡単な物しか――
「あ、そう言えば買った物が無いわね」
色々有って頭から抜け落ちていたが、昨日買ったばかりの食材等が無い。
眠っている間に人攫い達が没収したのだろう。体の節々が痛いけれど、
買わねば食べる物が無い。また市場に行かねばならないだろう。
「・・・今日は仕事を一休みして、ちょっとだけ贅沢しちゃおっかな」
人攫い逮捕の見返りで金一封と言う臨時収入もある。アルは一先ず
家へ帰るのであった。
@ @ @
「ん〜・・・・・・気持ち良い・・・」
もうもうと立ち上る白い湯気。鼻を擽る香油の芳しい香り。温められた石櫃から
じんわり放たれる熱気が部屋を満たしている。そんな公営サウナにてアルは身を
清めていたのであった。
温まったら水盤から冷水を一掬い。噴き出た汗や泥を流せば白い肌が現れる。
それを幾度も繰り返し、後はマッサージを受ければ気力も満ちると言う物。
砂埃一つ残さず洗い流した事を確認し、アルはマッサージを頼むのであった。
「すみませ〜ん。オイルマッサージで御願いします」
「へいへい、ただ今参りやす。どうぞ、横になって寛いで下せぇ」
木桶やら油の詰まった瓶やらを取り出しながら、按摩師の男が按摩台を指差した。
温められた大理石にタオルが敷かれており、腰掛けても心地良い熱を保っている。
「まずはオイルを塗りますんで、腕から失礼しやす」
木桶に並々と注がれたオイルへ小瓶の中身が振り撒かれる。すると、花の香りが
たちまち立ち込めた。それを掻き回して掬い上げ、薄く掌へ伸ばす事数回。人肌
程度の温もりがオイルにも伝わった。
「痛ければ遠慮せず言ってくんなせぇ」
慣れた手つきで濃厚なオイルが塗り込まれると、腕がポカポカ熱を持ち始める。
強張った筋は揉まれる度にゴリッと硬い感触を伝えるものの、次第に解されて
音はしなくなった。
「ふぁ〜あ・・・」
サウナで温まったのもあるが、昨日は中途半端な時間で眠らされて以来
起きっ放しなのである。緊張も抜けて睡魔が再び襲ってきたようだ。
つい気を抜くと噛み殺しきれない欠伸が出てしまう。
「次は足ですな。腿から失礼しやすよ」
全力疾走で張り詰めた太腿へオイルが垂らされ、万遍無く伸ばされる。コリコリと
筋張った両脚が、腰の下から順々に揉まれて行く。足裏まで辿り着けば広がる熱で
血の巡りが良くなっているのが体感できると言う物だ。
「そろそろ背中と参りやす。ちょいと横を向い貰いやしょ」
言われるがままにゴロリと横を向き、背中を晒すアル。その瞼は殆ど閉じ切っていた。
裸体を隠すタオルが捲れている事にすら気付いている様子は無い。
「こっちも大分凝っているようで・・・お疲れの様ですな」
首筋から順々に広がる温もりと甘い香り。適度に揺さ振られるのも相まって、
夢の世界へ迷い込むアルであった。
ふと、按摩師が手を止めた。胸元を隠すタオルが小さくなっている・・・否、
おっぱいが膨らんでタオルで隠しきれなくなっていた。血の巡りが良くなった
副次効果で、母乳の貯まる速さも増していたのだ。
「最後に前を失礼しやすよ」
そこからは只管おっぱいを撫でる粘っこい音だけが響いていた。ペタリと
肌を叩けば小山のような胸が震え、オイルを塗り込む度に肌は潤いを増す。
気が付くと、片方の乳房だけでワイン樽に匹敵するまで大きくなっていた。
そして付け根から乳首へ乳腺を解すと、搾り切れず淀んだ母乳が押し出され
どろりと濃い母乳が溢れ出す。最初は雫が漏れる程度だったものの、最後は
間欠泉さながらに途切れる事無く母乳を噴き上げる。そんな状態にも拘らず
排出が間に合わない母乳は、行き場を失い乳腺を中から押し広げていた。
「ふぅ・・・・・・手間ばかり掛かって敵わんな」
何せ、揉めば揉む程サイズが大きくなるのだ。美人の胸を好き放題揉める
役得が有るにしても、掛かる時間は一般人の比では無い。そして溢れ出た
淀んだ母乳は、水で薄めないと中々流れず排水溝が詰まりかねないのだ。
「いっそ塞いだ方が楽かもしれねぇか?」
一々水を流すのも大変だ。ならば乳首をタオルか何かで塞いでしまおうか。
少しばかり考え込み、首を振って益体も無い考えを振り払う按摩師だった。
@ @ @
「ん〜、さっぱりしたぁ〜・・・」
あれから早くも二時間が過ぎていた。丹念なマッサージが功を奏したのだろう。
酷い筋肉痛も大分和らいでいた。されど乳腺が開いた挙句、小葉までも刺激を
受けて母乳を増産し始めた事で彼女の双乳は二回り近く膨らんでいた。
ほんの少し前までは正面から見ても精々が臍まで隠れる程度の大きさだった。
しかし今や膝すら隠れる程。歩くだけで下乳が地面へ触れそうな程に弾む上、
衣服で隠せるような大きさでは無い。この大きさが夫への愛情の証とあらば
見られた所で文句は無いが、流石に少々重くて動きづらい。
「おお、無事な様じゃの」
買い物をするべく市場へ赴くと、聞き覚えのある声。
昨日のドワーフが露店にて片づけをしていた。
「えーと、ユーミルさんですよね? そちらも無事なようで何よりです」
「薬に頼らねば何も出来ん連中程度に後れは取らん。ところで、そんな
恰好をしとるのは何故じゃ? まさか追剥にやられたと言うまいな?」
怪訝な顔でユーミルは疑問をぶつけた。
今のアルはパンツ以外に身を包む物は無い状態である。そのパンツすら
レース部分が多く、秘所以外は肌が見える有様。露出の高い美闘士でも
ここまで極端な恰好はしないだろう。
「そうじゃないんですけど、着られる服が中々無いんですよね」
掻い摘んで事情を話すアル。一通り話し終えると、ユーミルは
目を輝かせてニヤリと口の端を歪めた。
「それなら丁度良い。借りを返すついでに悩みを解決出来る良い物を渡せそうじゃな」
ユーミルは片付けていた荷物から金色に輝くガントレットを差し出した。
「本来は美闘士用の代物じゃが、これなら普段使いも出来よう。試しに付けてみい」
ずいと差し出されたガントレットを言われるがままにアルは左腕に装着した。
「あら? 随分と体が軽くなったような?」
疲労で重かった足取りが妙に軽やかだ。母乳の重さで垂れていた双乳も
真っ直ぐに持ち上がっている。試しに歩いてみても上下に全く弾まない。
「筋力増強の魔力を込めたガントレットじゃ。これさえ有れば荷運びで腰を壊す事も、
ならず者に襲われようとも心配無用! 当然じゃが生半可な方法では皹も入らんぞ」
「まぁ凄い・・・でも、こんな高価な物を買うには手持ちが心許無いのですが・・・」
報奨金が有るとはいえ、この見るからに高そうな代物を買えるとは思えなかった。
「いや、代金はいらん。その代わりに一つ宣伝を引き受けてくれんかの」
腕を組みつつ真剣な眼差しを向けてくるユーミル。アルも自然と佇まいを直した。
気位が高いドワーフが無料で品物を渡すとは只事では無いからだ。
「最近は錬金術で安い鉄が多く出回るようになっての。鋼鉄山の武具が売れん様に
なってのぉ。無論、質では断然わしらの方が上じゃ。そのガントレットの様にな」
薄い胸を張り、自信たっぷりに言い切るユーミルであった。
「とは言え一度も使った事が無いとなれば、その価値を知る事も出来ん。かと言って
安くするにも限度はある。ならば実際に使った客の感想を広く伝えられれば良い。
そこで一つ手伝って貰いたいのじゃよ。お主はこの街の看板娘と聞いておるのでな」
ザネフの名物は何かと聞けば、必ず上がるのがアルの存在。なれば使わぬ手は無い。
「そのガントレットを付けたまま仕事をして、効果を宣伝して貰いたいんじゃ。
お主は楽に動けるようになって得をする。わしは売り上げが伸びて得をする。
この町に鋼鉄山の武具が出回れば、町の安全も守られるじゃろう。誰も損を
しない良き取引じゃろ? 此処は一つ、提案に乗ってくれると助かるんじゃが」
暫し考え込むアル。確かに便利な物だし、タダで貰えるのならば嬉しい。
また暴漢にでも襲われたとしても、これさえ有れば身を守るのにも苦労は
しないかもしれない。普段の仕事でも櫂を楽に漕げるのは間違い無しだ。
「では・・・宣伝の件、お引き受けします」
「そうかそうか! 期待させて貰おうかのぉ!」
上機嫌で呵呵大笑しながら、ユーミルは得意げにガッツポーズを取るのであった。