「これ以上は追えんな」
火薬の燃え滓を払い落しながら呟くアル。地に付かんばかりの大きさだった双乳は今や腰を
隠すだけで精一杯だ。底無しとも思えた母乳も自ら搾り出さねば乳首に出てこない有様。
体の動きも疲労で鈍くなっている。無理をするには厳しいだろう。
昼食も取らずに町中を駆け回り、消火と人命救助を済ませて賊を追撃したのだ、魔力も神聖力も
相応に消耗して当然だ。事件の黒幕を捕まえられなかったのは残念だが、やれる事は可能な限り
やったのだ。最悪の事態は避けられたと前向きに考えた方が良いだろう。
「さて、そろそろ戻らんと心配をかけ……ん?」
引き上げ時と判断し、空へ舞い上がると股間が妙に涼しい。いつのまにやら
下着が無くなっていた。先程の戦闘で吹き飛んだのかもしれない。
「むぅ……このままではいかんな」
胸は夫への愛の証として見せつけても良いだろうが、秘所は流石に隠しておきたい。
とりあえず鎧の形を変え、フォールズ部分を無くす代わりに胸の谷間から股間までを
隠すエプロン風に整えて幻影を被せる。これで最低限見られる格好にはなった。
「ああ、早く帰りたいものだ。もう我慢できん……」
戦闘による高揚が鎮まると、抑えていた不安と飢えが身を蝕み始めた。略奪に夫が巻き込まれていないだろうか?
心の奥底で必死にこらえていた寂しさが魔性の本能と結び付いて強烈な獣欲として浮かび上がる。
今すぐにでも無事を確かめたい。愛する夫の温もりを感じたい。そんな愛欲が沸き立つ一方で
誰の手にも渡らないようにしたい、子を成し家族の頂点に立ちたいと願う支配欲が混ざる。
神聖力を宿した母乳を使い過ぎ、同時に魔の力を引き出した事で精神性も魔へ傾いていた。
故に本能的な衝動が強く表に出ているのだ。
「ふふ……今から会いに行くぞ♪」
アルの秘所は既に愛液が洪水の如く溢れかえっている。
これを鎮めるべく本能がままに夫を貪らんと家に赴くのであった。
@ @ @
「うぅ……ん?」
瞼を貫いて差し込む陽光に目が覚める。気が付けば奥まった路地に横たわっていたマリア……もとい、レイナであった。
「いけない! また寝てた!?」
慌てて飛び起き、周囲を見渡す。既に砲撃は止んでおり、人々が荒れ果てた家の片付けに勤しんでいる。
日の傾きを見る限り結構な時間が過ぎた様だ。既に空が暗くなり始めているとなると、日没は近い。
「くっ、またリリアナを逃がした様ね」
悔しさに歯噛みをするも時既に遅し。それよりも今は身を隠さねばなるまい。お尋ね者として
似顔絵まで貼りだされている以上、長居は危険だ。どこか人目に付きにくい場所は無いか――
「――あら?」
ふと視界に妙な物が映る。空に浮かぶ何か。手をかざして日除けにしながら目を凝らすと、
それは見た事のある悪鬼であった。あれはアルドラが使役する使い魔だった筈だ。咄嗟に
身構えるが、襲ってくる気配は無い。それどころかレイナから離れ始めた。
「あ、待ちなさい!」
魔物が町中に居ると知られれば騒ぎとなる。何よりアルドラが魔物を使役している可能性が有るならば
放置できない。かつて彼女が身に宿していた悪鬼は滅んでいる以上、冥界の力は使えない筈なのだ
にも関わらず未だ使い魔が居るとなると、新たに悪鬼と契約したのかもしれない。
その予想が当たっていたとしたら、何よりも恐ろしいのが精神への悪影響だ。かつてのアルドラは
身に宿した悪鬼の影響で狂気に侵されていた。白紙の手紙を読み上げ、誇大妄想に取り付かれ
侵略を仕掛ける等の常軌を逸した行動から側近から死を望まれていた程だ。今も同じ状態なら
街の人々に危険が及びかねない。レイナは悪鬼の後を追い始めた。
「それにしても、こんな所で見かけるなんて思わなかったわ」
アルドラは女王の座を譲ってからは生き別れた妹を探しに旅だったと聞いている。
変わり果てた胸の大きさも含めて彼女に何が有ったのやら。考え事をする内に
悪鬼の動きが止まる。その視線の先には一軒の家が在った。
「ここは……?」
何の変哲も無さそうな一軒家。表札を見るとアルドラの名前と見知らぬ名前。だが、姓が同じと言う事は――
「まさか、結婚してるの!?」
二人の名前だけとなれば、妹とやらは見つかっていないのだろう。もしくは妹を探すのを諦めたか?
レイナは驚きを隠せなかった。
「くくっ、もう辛抱堪らぬか?」
上から人の声。見上げれば屋上に人の姿。その背には蝙蝠に良く似た翼が生えている。
どうやらアルドラ本人で間違いなさそうだ。レイナは素早く庭の植え込みに身を隠した。
「それは余も同じだ。見よ。子種欲しさに濡れているのが分かるか? 乳も疼いて母乳が溢れておる」
愛液の滴る股を見せつけ、アルドラは対面する男――恐らくは夫だろう――を誘っている。
妖艶な笑みを浮かべて挑発する姿は堂に入ったものだ。鼻腔をくすぐる甘い香りは同性でも
魅了されかねない程に蠱惑的だった。
「遠慮は無用。思うが侭に快楽を楽しめ。如何な形であろうと、余に向ける愛は全て受け止めてみせよう」
脚を上げ、たわわに歪む超乳から母乳が噴き出す。真紅の衣装に絡みつく白、そして夕日を浴びて
茜色に輝く汗が宝石の如き美しさを醸し出した。
耳を蕩けさせる囁きは容易く脳裏に刻まれ、虜にするだろう。何気ない仕草ですら典雅と感じさせる
天性の気品、ぴっちりと体を覆う衣装も肉感的な体型を強調するのに一役買っている。そして絹にも
勝る肌のきめ細やかさは、下手をすれば高級娼婦すら上回る美貌と言えよう。
「んっ……こんなに固くしおって♪ よほど楽しみにしていたのか?これは念入りに搾り取らねば♪」
粘ついた水音が断続的に嬌声で掻き消され、窓辺へ腰掛けたアルドラの体が前後している。
「良いぞ♪ 奥まで捻じ込んで子種を注いでしまえ♪ 一滴たりとも残してはならんからな♪」
打ち付ける音は徐々に感覚が狭まる。そして突然の静寂。同時にアルドラが身を震わせた。
「イッたようだな♪ 何も言わなくとも良く分かるぞ。熱い子種が胎の中に満ちているのが
分かるからな。だが、この程度では物足りん。まだまだ精を付けて頑張って貰わねばならんな」
アルドラは己の母乳を吸い出し、接吻を交わして男に飲ませた。
「ふふ、効果は覿面だな。司祭曰く、天使達の持つ聖乳と似た力を宿しているそうだが、これ程までに
滋養が有るなら毎日飲んで貰わねばなるまい。たっぷり精を付けて昼も夜も頑張って貰うとしようか」
アルドラの体が僅かに浮かび上がる。浮遊しているのではなく、股座を貫く逸物に押し上げられているのだ。
「ん? 安心しろ。苦痛は感じぬ。むしろ、如何に余を欲しているか知れて嬉しい位だぞ♪
では……今度は此方から搾り取ってやろう。孕むまで何度もイかせてやるから覚悟しておけ♪」
嗜虐的な笑みを浮かべて男を胸の谷間へと引きずり込むと、アルドラは自ら腰を振り始めた。
「早くイかねば息が詰まってしまうぞ? そら、とびきり濃厚な子種を出してしまえ!」
規格外なボリュームの双乳は男の頭を完全に包み込んでいる。それ故か男の声は今レイナの隠れている位置からでは
くぐもって聞き取りにくい。それでも雰囲気から無理を強いられている訳ではないと察せられる。アルドラの両手も
両脚も男の体を絡め取っている訳ではない。むしろ、抱きしめられている状態だ。
「そうだっ! 奥にっ、全部よこせっ!」
段々とアルドラの口数が減り、代わりに動きが激しくなる。
それに合わせて双乳も無秩序に揺れて母乳を撒き散らした。
「うあっ……イ、くぅぅっ!!」
搾り出すような呻き声。そしてアルドラ達の動きが止まった。
小刻みに震える体が暗に絶頂を迎えたと示している。数秒後、
重なり合った二人は静かに離れた。
「ハァ……ハッ、まさか、こんなに出せるとは思わなかったぞ。貴様の子種が胎から溢れているのが分かるであろう?」
アルドラは息を整えながらも嬉しそうに脚を広げた。秘所から水飴にも劣らぬ粘り気の精液が糸を引いて垂れ落ちる。
惜しげも無く曝け出された超乳からは母乳も滴り、屋上には白濁の水溜まりが作られた。
「さてと。このまま続きと洒落込みたいが、まずは夕餉の支度をせんとな。
その後は湯浴みを済ませて……くくっ、今から続きが待ち遠しくて堪らんな」
抱き付きながら愛おしそうに口付けを交わすと、アルドラ達は家の中へと
引っ込んで行く。飛んでいた悪鬼も静かに後を追って消えていった。
「……少なくとも周りに迷惑を掛けそうには無いわね」
植え込みから抜け出してレイナは呟く。昼間は雰囲気こそ違っていたが、人助けに奔走していた。
そして今は往年のアルドラに近い気配であったが、見ている此方が目を背けたくなる程の熱愛を
振りまいていた。あの様子なら狂気に侵されている可能性は低いだろう。
夫らしき男性は弄ばれている様子だったが、嫌がっている素振りは見えなかった。だとすれば
あれが二人の日常なのだろう。実際に情事が済んだ後は二人で仲良く家の中へ戻っていた。
事の経緯は不明だが、幸せな家庭を築いているなら部外者が口を挟む訳には行かない。
レイナは少し寂しそうな顔で庭から立ち去った。
「あ〜あ、私もあんな素敵な奥様になりたいわ」
レイナは顔に張り付いた仮面を忌々しそうに触れながら溜息を吐いた。
クイーンズブレイドが儀式として成立する原型となった英雄の女性が身を以って示した生き方、
つまり闘い続けながら結婚した女性と言うのは美闘士達にとって理想の在り方なのだ。女王の
玉座こそ失ったものの、アルドラは家庭と言う別の玉座に君臨する事となった。かつては命を
賭けて闘った相手ではあるが、同じ美闘士として幸せを掴んだ事には素直に祝福したいものだ。
「さてと、私も行かなくちゃ」
ひょんな偶然から知り合いと出くわす事になったが、本来の目的とは関係無いのだ。不要な深入りは
避けた方が良いだろう。指名手配の自分に関わったとあらぬ疑いを掛けられて迷惑をかける訳にも
行かない。宵闇に紛れ、レイナは姿を消したのであった。