晴れ時々キッド???












「『今日の天気・・・キッドが空から降ってくるでしょう・・・』、

とは、お天気姉ちゃん言うてへんかったんやけどなぁ・・・。」


目の前に降って来た、いや正しくは墜落して来たキッドを眺めて呑気に言う。


「・・・ははは・・・さずがの気象庁も・・・・ここまで局地的な・・・事は・・・予想できないさ。」


一方、キッドは墜落のショックをまともに受けて、酷い怪我をしたらしく息も絶え絶えだった。
それを気力で支えてるのは、西の名探偵服部平次の前に落ちたという最悪な状態の所為。


「でも、この辺突風が来るんは予想してたんとちゃうんか?」

「平気だと・・・・踏んだん・・・だけど・・・な。」

「・・・自分怪我見せてみぃや。」


平次が伸ばした手を叩いて払う。


「冗談・・・。捕まる気は・・・無いぜ?」

「あほ。捕まえる気があるんやったら、こんな呑気に話する間に

さっきからこの辺走っとるパト拾うに決まってるやろ?」

「・・・何・・・考えてんだ?」

「まぁ、いろいろやな。とにかくここはまずいやろ?」


平次はあたりを見回した。


「・・・冗談じゃ・・・ねぇよ・・・・。」

「あん?」

「てめぇの・・・・助け・・・なんざ・・・いらね・・・・・・・。」


キッドは何とか意識を保とうとしていたが、目の前がかすんでいった。


「どっかの意地っ張り探偵とそっくりやな・・・。まぁ俺かてほかしといてもええんやけど、

怪我人みたらほっとけん性質なんや。」

「・・・・・・・・。」

「・・・気ぃ失ったんか・・・。世話の焼ける話やなぁ・・・。」


平次はキッドの目立つマントと上着を取って、自分のセーターを着せた。
そして、シルクハットと上着をまとめてマントでつつんだ。


「このモノクルは・・・どないしょうかなぁ・・・目立つしなぁ・・・。」


平次はひょいとモノクルを外した。
そしてその素顔に息をのんだ。


「・・・双子??」


一瞬そう思ってしまうほど、そっくりだったのだ。
工藤新一・・・東の名探偵と。




平次は自分の部屋にキッドを連れ込んだ。

そして、キッドの服を脱がして、この場で出来る限りの傷の手当てをした。
幸い骨には異常はなさそうだったが、なにぶんレントゲンがあるわけではないので、
確かな事は言えない。
平次は自分のベットを占領している稀代の怪盗を眺めていた。


(ようみると、他人やてわかるんやけどなぁ、パッと見やったらわからへんぞ。)



「・・・うっうん・・・・・。」


キッドが目を覚ますと見知らぬ場所だった。


「・・・やっと、お目覚めかいな。」


その声にハッとして、相手を見た。


「・・・どういう事だ?」


身体を起こそうとして、痛みに表情が歪む。
それでもなんとか起き上がった。
その時やっと自分が裸だと気がついた。


「・・・・・・・・・・。」

「手当てしただけやぞ?女やあるましい脱がしたどうのって騒ぐなや?」

「俺の服はどこだ?」

「捨てた。・・・っちゅうのは冗談やけど、あのカッコでこの辺うろちょろされたら困るんや。」

「はぁ?」

「ここなぁ、俺ん家やねん。」


平次がニッコリと笑う。
キッドは冷や汗が流れるのを感じた。


「お前の・・・って事は、大阪府警本部長の自宅っつー事か?」

「せや。俺扶養家族やもん。いやぁオヤジに見つかったら俺勘当モンやなぁ。」


たいした事じゃなさそうに笑って平次は言う。
反対にキッドは青くなっていた。


「はははは・・・シャレんなんねぇよ、ソレ。」

「まぁ大丈夫やてお前運がええわ、今日俺一人やねん。オヤジは本部に詰めっきりやし、

オカンは今ごろ温泉や、町内会のあつまりでなぁ。」

「お前何考えてんだよ!!」


あまりに呑気な対応にキッドはいらいらと問い詰めた。


「・・・一辺自分と話してみたいて思うてたんや。それと、お前こないだ工藤に変装して

助けてやったんやろ?まぁその礼も含めてっちゅうとこやな。」

「何で工藤新一の礼をアンタがするのさ。」


素顔を見られた今、わざわざ『怪盗キッド』の仮面を被る必要もなく
普段の快斗になってしまっていた。


「せやなぁ・・・たまたま自分が降って来たんが俺の前やったからやろ。後は、

工藤新一そっくりのその面に用事あるかも知らんから、恩売っとこかて。」

「・・・また、ばれそうになったら変装してこいってか?」

「まぁ、暇やったら頼むわ。俺つい工藤って呼んでまうからなぁ、

怪しまれたら俺の所為かてあるんやろし。」


平次は自分のタンスから適当な服を出してキッドに渡した。


「返さんでええよ。自分東京なんやろ?」

「・・・・・・・。」

「JRの往復切符、見つけてもうぉた。まぁそんくらい判ったからって自分捕まえられるて思わんし、

なにより窃盗は現行犯逮捕が基本や。もっと言えば俺は殺しが専門や。

・・・・・・まぁ謎はなんでも好きやけどな。」


キッドは受け取った服に着替えた。


「・・・それに発信機しかけてたらどないする?」


平次はニヤリと笑う。
キッドはくすくすと笑った。


「そんな卑怯な事する男なわけ?」

「そう言われるとやっぱり外さなアカンわな。まぁ付けてるんやったらの話やけど。」

「ついてないのは確認ずみだ。」

「お〜お。信用ないんやなぁ俺。」


平次はわざと大袈裟に泣きまねをしてみせた。


「・・・泣きまねしてんじゃねぇよ。ここでカンタンに信じるようじゃ、怪盗家業は勤まらないんだよ。」


パチンと決まる見事なウィンク。平次は肩をすくめて苦笑する。


「・・・なぁ、自分なんだって怪盗なんぞやっとるんや?まともに盗んだモンないやんか。

大抵返却するか、捨てるか・・・愉快犯なんか?」

「それはご想像に任せるさ、いろいろと事情があるモンでね。しかも人に話せる事じゃない。」

「ふ〜ん。つまり愉快犯とちゃうんやな・・・。

まぁなんや知らんけど一生棒に振るような事になるなや?」


平次はポンポンとキッドの頭を優しく叩いた。


「・・・お前なぁどっかのちびっこ探偵と同じ扱い方するなよ。」

「うん?あ、ああ・・・スマン、スマン。つい似てるモンやから・・・。」

「似てるからってのも失礼だと思わねぇ?」

「・・・口のへらん奴っちゃ。・・・ところで、自分どないする?」

「何が?」

「俺、自分の面見てまったわけやし、なんぞ口封じでもせんでええの?」


キッドはきょとんと平次を見た。確かにその通りなのだが、
まさか相手からそれを指摘れるとは思ってもみなかった。


「・・・・・・さぁてね。実は俺もそれをどうしようかと思案中なんだよ。

大人しく口封じさせてくれそうにもないしなぁ?」

「まぁ、見たんは不可抗力やから、俺は喋る気ぃあらへん。って言っても自分にしてみれば、

不安材料やろし・・・。取り敢えず、俺は暫く死ぬのはイヤやなぁ。」


キッドは、普段殺しばっかり扱っているせいか、物騒この上ない事を言う平次に呆れていた。


「オイオイ(汗)俺は殺しはやらねぇって。何があろうとな。」

「ふ〜ん。ほな、どないする気してんねや?」

「そうだなぁ。ま、一番手っ取り早いのは、俺もアンタの弱みを握るって事だろうけど・・・。

・・・・・・・アンタ弱みなさそうだなぁ。」

「スマンなぁ、俺自分でも弱みなんぞわからへんねや。」

「・・・あっそ。」


平次は大きく伸びをしてあくびをした。


「俺なぁ・・・昨日徹夜やねん。実は今めちゃ眠いんや。俺寝るから自分好きな時に帰ってもええし、

なんやったら泊っていってもかまへんで。・・・ほな。」

「ちょっとまて!!お前ほんと何考えてんだよ!!俺は怪盗なんだぜ??

怪盗ほったらかして寝るって何者?!」

「せやかて・・・俺めちゃ眠いし・・・。俺の家にはお前が弄り回したいような宝石あらへん。」


その平次のいい様にドキっとする。


「・・・宝石専門って誰が言った?」

「・・・なんやよう知らんけど、自分基本的に宝石専門なんとちゃうんか?こないだの

事件の整理ついでに自分の過去の獲物とその後について調べてみたら、・・・そうなんかなぁって。」

「『・・・そうなんかなぁって』・・・って、お前等ホント恐ぇなぁ・・・。」

「さんきゅ。ほな、そーゆう事で・・・。」

「ってコラ待て!!」


ここで、ほっとかれたらたまらないとキッドは平次を引き止めた。


「・・・自分怪盗紳士ちゃうんかぁ?なんやさっきから態度めちゃ悪い・・・。」

「誰が人の神経に障るマネしてんだっつーの!!」

「・・・う〜ん。やっぱ、俺かいな?」

「おめぇ以外に誰が居るっつーんだ!!馬鹿!!」

「ばか・・・って。お前なぁ関西人にそれ言うたらアカンって。まぁ俺は工藤で散々馴らされてるから、

もう、怒る気ぃせんけどなぁ?普通はドツかれてんで?」


平次は苦笑しながら、キッドの頭をくしゃくしゃと撫でた。


「・・・だから・・・ちびっこと同じ扱いやめろっつてんだろ・・・。」


キッドは、むぅっとふくれている。平次はその反応が可笑しくて笑った。


「何、笑ってるワケ?」

「・・・イ・・イヤすまん。・・・あ、ちびっこで思い付いた。

工藤が元の姿に戻るまでは、俺、絶対喋られへんわ、自分の素顔について。」

「え?」

「ここまで姿が酷似してたら、へたしたら工藤に疑いがかかってまうやんか。

俺は工藤がちっこくなってまってるんを知ってるから、疑わへん。けど、他のなんも知らん奴

やったら、どない思うか判らへんやろ?今、『工藤新一』は行方不明や。キッドが工藤やて

誤解される可能性が高すぎるて、思わん?」

「はぁ、なるほど・・・・。・・・うん?・・・なんでお前工藤にそんなに気を使うんだぁ?」

「あれ?知らんのか?自分下調べたらへんぞ。」

「って・・・オイオイ。(汗)まさか・・・。」

「?何考えてんねや?あんなぁ俺は『探偵工藤新一』に惚れてるんや。」

「やっぱり・・・・。そっかぁ・・・いや、そういう関係だとは・・・さすがに・・・。」


平次はやっとキッドが何を考えているか気づいて慌てて否定した。


「ちゃうって!!!勝手にそっちにすな!!『探偵』としてのアイツのファンやて言うてんねや!!」

「へ?お前だって探偵じゃねぇの?」

「せやねんけど・・・俺なぁ、アイツってめちゃ凄い奴やて思う。探偵としての技量も器も

ごっつ凄い。それに、俺が今の工藤と同じ状態になったら・・・工藤みたいにはでけへん。」

「・・・・・・・。」

「まぁ・・・とにかく、や。俺は工藤が元に戻るまでは何も喋らん。

期間限定ですまんが、少しは安心でけるやろ?」

「・・・お前、変な奴。」

「余計なお世話や。」

「手当て・・・さんきゅ。」

「たいした事はしてへん。ちゃんと病院行けやな。」

「この借りは必ず返す。」

「ああ、頼むわ。ほな、俺寝るでぇ。自分もう少し休んどけや。」


平次はベットの下からキッドの衣装を取り出した。そして、適当な紙袋にそれをしまって渡す。
自分が寝ている間に、消えようとするだろう怪盗への配慮のつもりで。
キッドはそれを受け取って苦笑した。


「ほな。次に現場で会うたら・・・敵やぞ?」


平次はふっと笑ってその部屋を出て居間に向かった。


「・・・ただの高校生として逢ったんだったら、友達になれた・・・かもな。」


それは言ってもしかたのない事。判っててもつい言葉がでる。
お互いただの高校生じゃないから、こんなに気が合うように感じるのかもしれない。
現場で西と東の名探偵が絡んで来た時の緊張感が好きだ。
極限まではりつめた緊張が快感に変る。
へたな薬より始末が悪い程ハマる。


「愉快犯っつーのもあながち外れじゃないかもな?」


キッドはそう呟いてくすくすと笑いながら、荷物を持った。





部屋を出て居間を見ると平次がソファの上で寝ていた。


「ホントに寝るかぁ、フツー・・・。俺帰るぞ〜。お見送りぐらいしろっての。」


平次の頭を軽く叩く。


「・・・やかましい・・・・。勝手に帰れや・・・ふぁあぁぁ・・・。」


半分寝ぼけ声で、平次が答えた。そしてまた寝入りそうになっている。


「自分で連れ込んどいてそういう事言うワケ?起きろよ〜〜。」


キッドはにやにや笑いながら平次の身体をゆさぶった。


「・・・・・寝かせぇ言うてるやんけ!!!このボケ!!」


平次はやっと上半身を起こした。


「フン。だったら拾わなきゃいいだろっ!!」

「・・・自分めちゃ性格悪い・・・。」


溜め息交じりに「工藤とはってるな・・・。」と呟いた。


「俺、帰るから寝るならベットの方がいいんじゃねぇの?それじゃな!」


キッドが出て行こうとする、平次は諦めて立ち上がりその後についていった。


「・・・何?」

「お見送り。」

「ぶっ!真に受けんなよ。いいからベットに行って寝ろ。」

「お前こそええからとっとと帰れ。ったく・・・こない面倒な奴やて知ってたら拾わんかったぞ。」

「ちびっこよりはマシだろ?」

「ええ勝負なんとちゃうかぁ?」

「ええぇぇぇ!!俺、あんなにいい性格してねぇぞぉ?」


キッドは靴を履きながら文句を言った。


「そういうあたりが『いい性格』やっちゅうんじゃ。ほな、お気をつけて。」

「わざわざ、お見送りまでど〜もっ!!」

「どう、いたしまして。ほな、さいなら。」

「なぁ、探偵さん。いいモンやるよ。」

「あん?」

「ワン・ツー・スリー!!!」


ポンっと音がして、一瞬光が瞬いた。
平次が伏せた眼を開けると、もうそこにキッドは居なかった。
後にはカードが一枚。


「これが・・・ええモン?」


平次が拾ってそのカードを見ると、どうやら暗号で書かれているらしい。


「・・・俺をそないに寝かしたないんかい・・・アイツ・・・。」


暗号を見るととにかく解きたくなる自分の性格が恨めしい。
平次は居間に戻って暗号の解読を始めた。そして・・・・。



「・・・めちゃシャレにならんわ・・・コレ。」


と、平次は怪盗を拾った事をちょっと後悔した。
そこに書かれていたのは、メールアドレスだったのだ。
怪盗に連絡のつく探偵服部平次は溜め息をつきながら、
カードの処分方法を考えるのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜おわり。

あとがき

これは怪盗キッド様のサイトに捧げた小説です。
(もしかしたらそっちで見てる人いるかも。)

怪盗に連絡がつく探偵と言うのもなかなかデンジャラスな関係だよね〜。
工藤さんにこのカードみつかった日には服部さんったらどうなちゃうんでしょ〜♪
いやぁ、考えるだに恐ろしいわはははははは。←笑い事じゃ済まないちゅうねん!!!by平次

これは白塗り平次の前の話で、キッドに連絡がつかなくって諦めて白く塗ったと・・・。
そんな想像つきです。(爆笑)<そこまで白塗りに納得してないの私・・・。
更に、この話があってミニ会話の『変装とはなんぞや?』で、
平次が『快斗に連絡がつかなかったから白く塗った』と文句をいう
くだりまであると言う・・・。(大爆笑)

いやぁ、私ドリーマー過ぎかなぁ。ヤバ。


しかも・・・ただいま第二部作成中??
乞うご期待!!←誰もしないって!<自分ツッコミ(爆笑)