『密 会』





SEEN.3『IN 東京』


「やっと着いたでぇ・・・ふぅ。」

ヘルメットを取りながら平次はぼやくように言った。

その目前にそびえる赤い塔。
東都タワーを見上げた。

「さて。。。いよいよ御対面・・・。」

平次は何処か嬉しそうにバイクのキーを指先で廻しチャリチャリと音をさせながら
待ち合わせ場所、東都タワーの展望台に上がる直通エレベーターに乗った。



チンと可愛らしい音を立ててエレベーターが展望台に着いた。
平次は周りを見渡しながら降りると少しはなれた望遠鏡の所に学制服を着た男が立っていた。
望遠鏡を覗いてナニカをぶつぶつ言っている。

「・・・う〜〜ん。俺んち見えねぇなぁ・・・。」

平次は持ってたヘルメットを落としそうになった。
なぜなら、その人物こそ、平次の待ち合わせの相手だったのだ。

「ほぉ〜、自分の家はそっちの方ぉかいな・・・。」

平次が頬を引き攣らせながら言う。
快斗は驚きもせずに振り替えるとにぃっと笑った。

「Wellcome To Tokyo!!(ウェルカム トゥ トウキョウ)西の探偵さん♪」

大袈裟に両手を広げてみせる。その快斗の後ろに東京の街並みが広がっていた。

「ヒュ〜♪舞台装置満点やな。ごっつ歓迎されてる気ぃすんで?・・・せやけど・・・。」

「うん?せやけど??」

「な〜〜して制服なん?」

にっこりと笑ってはいるものの額に血管が浮き出ている。
しかし、快斗はそんな事は意にもかいさずにさも当たり前の返事を返した。

「そりゃ、学校から直でここに来たからにきまってんじゃん。」

「そぉいう意味ちゃう、俺に自分の自宅や学校バレたらアカン・・・とは思わへんのかいな?」

「なんで?」

心底無邪気に聞きかえされて毒気を抜かれた平次は、

「なんで・・・やろなぁ?」

と、溜め息交じりに返事を返したのだった。


その後、二人は展望台から降り、平次のバイクを置いてある駐車場に居た。

「ほんで?これからドコ案内してくれんねや?」

「そ〜〜だなぁ・・・平次ってさ、ゲームやる方?」

(・・・「平次」って下の名前呼捨てかい・・・。まぁ「西の探偵さん」って
  呼ばれ続けるよりはええんけどな。)

平次は深く考えるのはやめにして、そのまま会話をすすめる事にした。

「おぅ!ゲームにはちぃ〜とばかし煩いでぇ?」

「杯戸町にでっかいゲーセンが新しくできたんだよね。俺もまだ行った事ないんだけどさ♪」

「おっけ。ナビしろや。」

平次はヘルメットを一つ、快斗に向かってぽいっと投げた。

「・・・俺用にメット持ってきてくれたワケ?」

「バイクここにほかして移動するわけ行かんやないけ。」

何の気なしに答える平次に、今度は快斗が毒気を抜かれた。

「俺の不用心嘆くのもいいけど・・・お前も十分不用心だっての。」

「あ〜ん?ちゃっちゃとせな置いてくで?」

くすくす笑ってメットを付けようとしない、快斗の頭を軽く小突いた。

「『怪盗を後ろに乗っけて走ろう』なんて酔狂なヤツは、お前ぐらいだよ。」

メットを被ってる平次には聞えないような声で呟いた。


バイクでの移動中、平次は心底『電車で来るんやった・・・』と思った。
後ろで快斗がはしゃいで暴れるため、運転は困難を極めたのだ。

「平次!!もっととばせ〜〜〜!!」

「初めての道やぞ!そないとばせるかいなっ!!」

「あっ!て〜めっ!!タクシーなんかに抜かれてんじゃね〜よっ!!」

「やかましいっっ!黙ってナビせぇ!!」

「黙ったらナビできね〜〜じゃん?」

そんな怒声が、目的地につくまで風に流れ続けたのだ。


所変って、杯戸町のゲームセンターはすごい込み様だった。
新しいゲームセンターとあって、若者達が詰め掛けているのだ。

バイクを置く場所を探すのも一苦労で、二人はやっとゲームセンターの入り口に立った。

「へ〜〜。こりゃまた凄い込み様やなぁ・・・。」

「今日開店だからね。」

「・・・行った事ないはずやなぁ、そりゃ。」

「ま、まぁいいじゃん?たまたま平次が来る日が開店だったんだよ〜♪」


店内に入り、置いてあるゲームをざっと見回す。

ふと、平次の目の端にここに居るはずの無い人間が映った。

「くどぉっ!!」

平次は、その人物に向かって駈けて行った。
『東の名探偵工藤新一』、追いかけた事件の中で毒薬を飲まされて、
今は江戸川コナンとして、毛利探偵事務所の居候をしてるはずの
その人物が、何故か元の姿まま、新一の身体でソコにいたのだ。
名前を呼ばれて振り向いた新一は一瞬ぎょっとして平次を見た。

「くどぉ!自分なしてココに?あ、それよりもなんでその・・・もごあぐごぁ。」

新一は慌てて、大きな声で矢継ぎ早に質問をぶつけてくる平次の口を塞いだ。

「落ち着け・・・。それよりお前こそなんでココに居るんだよ・・・。」

微妙に迷惑そうな表情をうかべて、小声で質問を返しながら、口を塞いだ手を離した。

「あ・・それは・・その・・・え〜〜っと。」

つい、言葉に詰る。まさか怪盗の所に遊びにきましたとは言えなくて。
微妙な空気の流れる新一と平次の間を割るように、快斗が入ってきた。

「『俺と遊ぶためにっ』はるばる大阪から来てくれたんだよなぁ?平次ぃ??」

平次にほっておかれた快斗が、にっこりと笑いながらも恨めしそうな声で替りに答える。

「せ・・・せやねん。えっと・・・。」

また言葉に詰る平次をよそに、快斗は新一に向き直った。

「ど〜〜も、黒羽快斗です。平次君とはインターネットのメル友なんですよ。」

表情こそは和やかに、しかし『左手』を差し出して握手を求めた。

「・・・左手・・・。」

「あ、すいません俺左利きなもんでつい〜♪」

新一は無邪気に話す快斗に、心の中で苦笑しつつその手を取ると、
にっこりと営業用の笑みを浮べて握手をした。

「どうも、工藤新一です。」

「知ってますよ〜。有名人じゃないですか、よく新聞の一面に載ってて・・・
でも、最近乗りませんよね?具合でも悪くしてたんですかぁ?」

「極秘な捜査なんかもありましてね。」

と、新一は当たり障りのない返事をかえす。
一見和やかにみえるこの二人の会話を、生きた心地せずに聞いていた平次は、
やっと、会話に加わりはじめた。

「で・・・そのぉ・・・、くどぉはなしてココに?」

「まぁちょっとな・・・」

そう言いながら新一が顎をしゃくって違う方向に視線を向けた。
新一の眼が見てる方向を平次も追って見る。
そこには一人の若い男が呑気にゲームをしている姿があるだけだった。
しかし、新一の眼の鋭さをみて平次は瞬時に理解した。

「被疑者追ってるんか?どんな事件やねん。」

事件と気が付き眼をキラキラさせてる平次をみて、新一は溜め息をついた。

「ったく・・テメェは事件探知器みてぇな奴だよな〜。」

「よぉ言うで、自分かてそぉやんけ。」

そのセリフをニッコリ笑顔で聞き流し、平次の両肩に手を強く置く。

「まぁ、今回の事件は俺に任せておけって、友達と遊ぶために来たんだろ?」

「せやけど、くどぉぉ!!」

快斗は、食い下がろうとしている平次の肩に手を置いて、自分の方に平次の身体を引っ張った。

「・・・『今回は探偵業はおやすみする』・・・約束だったよなぁ?平次君。」

新一に負けず劣らずのニッコリスマイルを平次に向ける。

「ぐっ・・・いや・・・でも・・・。」

「『おやすみ』だよな?まっさか男に二言は無いよなぁ?」

微妙に言いよどんでる平次に、更に声を大きくして同意を求める。
平次は、仕方なしに小声で呟くように返事をした。

「そぉやな・・・・。」

「・・・まぁ、今度事件のあらましを電話ででも話してやっからさ?」

あんまり気落ちしてる平次を不憫に思い、新一はしょうがなしにこう提案した。

「ほな!今日の夜くどぉの家に泊りに行くさかい、その時にでも教えてぇな!」

「・・・泊りに来んの?」

「最初からそのつもりやってん。」

「・・・ったく、テメェはぁ・・・毎度毎度連絡無しにきやがって・・・。」

新一は苦虫を一ダースかみつぶしたような表情で、平次を睨み付けた。

「なんだよ平次!俺の家に泊るんじゃねぇのかよっ!」

「へ??」

平次は眼をまんまるくして快斗の顔を凝視した。
その時ちょうど、被疑者が動きを見せ、新一の表情がキュッと引き締まった。

「服部、来るんでも来ないんでも好きにしろ、でも電話は掛けてくんなよ。」

「あっ・・・ああ、せやなコール音はマズイわな。」

「終ったら一応そっちには連絡する。じゃ、服部またな。
えっと、黒羽も今度機会があったらゆっくりとな!(笑)」

新一は被疑者らしき人物を追いかけ、ゲームセンターから姿を消した。
快斗は新一の姿が見えなくなると、思いっきりふくれっつらで平次を睨み付けた。

「さっきのセリフ・・・どぉいう事なのかなぁ?平次ぃぃ?」

「・・・普通、怪盗が自分の隠れ家に、探偵を招待するとは思わないやろ・・・。」

「隠れ家ってなんだよ、隠れ家って! 俺の家は極ふつ〜〜の家だぞ!
ちゃんと黒羽って表札だって出してる。大体今日はお仕事抜きで遊んでるんだろ?」

「にしたってや、俺をそこまで信用してええんか?自分命取りになるで?」

少しキツ目の視線を快斗に向けじっと見る。
一瞬空気が止まったあと不意に快斗は爆笑し始めた。

「ぶっ、あはははは・・・・。」

「・・・・・何がおかしぃん?」

「凄んでみせたって無駄だよ。
平次は今知った情報で俺をどうこうなんてできないし、する気もね〜じゃん。
それどころか俺の心配までしてくれてる。この状況で何を警戒しろっての?」

「あ〜〜そぉかいっ!自分、あ〜いえばこ〜いうの典型やなっ!!
 ・・・大体なぁ自分が左利きやてぇ?今日初めて知ったで?」

「うん。俺も初めて知ったよ♪」

悪びれた様子もなく、快斗はにこにこと笑っている。

「自分、ええ根性してんで・・・ったく、めっちゃ食えない奴やな。」

「そりゃ〜どうもっ♪それは俺にとっては誉め言葉だね。」

「・・・・・・。」

平次が絶句すると快斗はしてやったりとばかりに「にぃ」っと笑ったのだった。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜NEXT SEEN.4『IN 東京〜U』


とりあえず東京での再会のシーンをお送りしました。

特に事件を起こす予定はありません♪(てか事件は書けないです)
事件というよりも・・・ハプニング(?)が付物の気はしますが

次回もお付き合い頂けると有りがたいです♪


西 夜乃