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第五章 戦闘準備




平次は時間通りにオフロードの車に乗り戻って来た。
トランクには登山用のロープや小型無線機。
更に、動きやすい服や武器になりそうなものが入っていた。
快斗はそこに自分の荷物を載せ、後部座席に乗り込んだ。
新一は小型の携帯パソコンを持ち助手席に乗り込む。


「平次ー この車どうしたんだよ?」

「まだ見せたこと無かったかぁ?最近買ぉたんや♪」

「三人じゃぁバイクに乗り切れないから・・・だろ?」

「やかましい。ほな行くぞ。」


車を発進させ某県の山奥を目指し、高速を走らせる。
その車内で平次の居ない間に話し合った事を平次に伝える。
それが済んでしまうと、三人はまるでピクニックにでも出向くかのように、
軽口を叩き合い車内は明るい雰囲気に包まれていた。
道中快斗は後ろの席で自分の荷物と平次の持ってきた荷物に改造を加え
新一はナビ役を務めていた。


日も暮れかかった頃、目的の研究所の裏手にあたる切り立った高台の上についた。
車から降り、動きやすい服装に着替え始める。

タンクトップにサバイバルパンツ、更にニット帽子
サバイバルジャケットまで黒で統一されている。
平次の用意した服をみて新一がぼそりと呟いた。


「平次、・・・お前何考えてるんだ。」

「なんやとぉ?マトリックス風にそろえたんやぞなんか文句あるんかい。」

「い〜じゃん。いかにも潜入します風でさ〜。俺こういうの好きだぜ〜♪」

「マトリックスねぇ・・映画見すぎだって。」

「まぁそう言うなって。これだけポケットある方が便利だよ。」


快斗はそういいつつ新一の胸ポケットに銀色の玉を入れたり、
最後の仕上げをしている。


「えーっと・・今いれたこのポケットのは閃光弾ね。床にぶつけるだけでいいけど
サングラスするの忘れたら意味ねーから。それとこっちのポケットには催涙弾、
こっちに圧縮したマスク入ってるからそれちゃんとつけてから投げろよ。」

「・・・よくまぁこんなもの直に用意できるよな・・・。」

「普段からよく使うんでね〜。ストック作ってる。」

「自分、趣味で作ってるんとちゃうんかい?」

「だー!お前等はっ黙って説明聞けっ!」


二人は肩をすくめて『お〜恐っ』と笑っている。


「ったく・・・。えーっとこっちに平次ご自慢のエアガンの改造品入れておくから
強力にしてあるから当たり所悪くて殺しちゃったとかないようにな。」

「ま・・まてっまた改造したんかいっ!」

「相手は改造ガンどころか拳銃持ってるんだぜ?拳銃を叩き落せるくらいにはしとかないと
意味ねぇじゃん。 あ、拳銃狙うようにな。手に当てたら肉に玉食い込むかも〜。」

「かも〜〜じゃないちゅ〜〜ねんっ!!」

「ふ〜ん、その位強力なら反動もあるか?」


新一は試しに打ってみた。見事に木の葉が一枚だけ落ちてくる。


「あ、扱いやすいな。これなら拳銃狙えるな・・。」

「さすが新一射撃も巧いなぁ。」

「お・・俺かてできるぞ・・・。」

「持ち主が出来なきゃ笑ってやる。」


新一の言葉にむぅっと口を尖らせつつ平次がベルトをつけようとすると
快斗がその手をとめた。


「な・・なんやねん?」

「先にこっちを巻くんだよ。」


快斗の手には極細のワイヤーが握られている。


「はぁ・・なるほど。そういうもんなんか。」

「仕込める場所は少ないんだから、こういう長い物は腰に巻くのが一番。」


実際に平次の腰にワイヤーを巻いて、その上からベルトをカモフラージュにつける
更に平次の髪の毛の中に超小型発信機を取り付ける


「万が一ってこともあるからな、敵に掴っても助けに行けるように・・。
端末は平次の車の中に置いてあるから、御互いみることも可能だ。」


新一にもつけ、自分にもつける。
全員ニット帽子をかぶり準備が整うと、快斗をその場に残し
研究所の左側、キャンプ場との中間地点にまで車を走らせる。
逃げるための車ががけの上では困る。車を研究所からほど遠くなく、
しかし、車があってもおかしくない位置まで隠しに行くために。

キャンプ場と研究所は約4キロ離れている。公道を脇にそれた山道の途中に車を止め
そこから平次と新一は研究所まで、山の中を抜けるように歩く。
公道を使えば2キロだか、山の中を抜ければ一キロ程度。
快斗と分かれてから30分後には予定の位置、研究所を取り巻く壁の左側にきていた。

その間に快斗は崖の上からハングライダーで敷地内に潜入し、
平次達が壁を乗り越えるための下準備とできれば建物内への侵入口の確保
その二つを行う事になっていた。


「さぁて・・巧く行ったんやろか・・・。」


平次が壁の上を見上げると、快斗が壁の上に立ち、手を振っている。


「やっほ〜♪」

「快斗・・・カメラに写ってる。」


新一はうめきながら、壁の上の防犯カメラを指差す。


「大丈夫♪警備員さん眠くなっちゃったって〜。
それに何もない普通の状態の映像10分間撮って、
それがエンドレスでかかるようにカメラ全部に細工したし。」

「ほぉ・・警備員さん徹夜明けなんかぁ。」

「やだなーエアコンにクロロホルム流しただけだよ〜♪
もう換気されてるからマスクいらないぜ☆」

「ハハハ・・・・。」


平次と新一は無言で軽くジャンプをし、壁の上に手をかけると
一気に壁を乗り越えた。

三人はさくさくと、一応裏口に向かって庭を突っ切るように歩いていく。


「何や潜入ちゅ〜感じよぉせんやんけ・・・。」

「俺はもう潜入気分満喫しといたけどぉ?」

「そりゃそうだろうとも・・・。」


裏口を中にはいると警備員の幸せそうなイビキが聞こえる。
中に居た所員らしき人も皆、あるものは廊下に倒れるように、
あるものは机のつっぷしたまま寝ていた。


「う〜ん・・・やっぱ潜入ちゅう気が・・・。」

「これから味わえよ。つーかこの研究所上の建物は極普通の研究しかしてねー。」

「へぇ・・・・。見取り図には上しかなかったよな。」

「そう・・しかも下への入口が見当たらないんだよ。」

「隠し部屋探しやな・・俺達の十八番や。」

「・・・快斗、一階でカメラの死角になる位置はどこだ。」

「う〜んと・・・・・3箇所あったよ。こっち。」


一つ目は東北の隅にあたる壁で別段異常はみられなかった。
二箇所目、三箇所目と巡るがどこも別に異常がみられない。


「おかしいな・・・。カメラに出入りが写らないようにしてるはずなのに・・。」

「あん?なんで??」

「そりゃそうやろカメラの映像を確認されたら、隠し部屋でもなんでもないやんけ。」

「なるほどぉ・・・あっ!」

「うん??」

「エレベーターの中にカメラ無かったぞ!」

「それや。」


新一と平次はにやりと笑みを浮かべ、正面入口のエレベーターではなく
裏手にある搬入用のエレベーターの前に立った。

エレベーターの入口を開け、エレベーターと床のわずかな隙間に10円玉を落とし込む。
二つあるエレベーターのうち、一つはほどなくカツンと鈍い音がしたが、
もう一つのエレベーターはまるで音が聞こえなかった。


「相当深そぉやなぁ・・・。」

「そうだな・・だとすると・・・。」

「9割エアコンや思うで。」

「しかし・・・どこか・・・多分此処とは多少離れた場所にあるな。」

「せやな。」


二人の会話を黙って聞いていた快斗が不服そうに呟く。


「お前等ぁぁ・・。」

「なんやねん。自分意味わからん言わんやろ?」


快斗は少々むくれたように黙った。


(地下の空気を通風孔からじゃなくエアコン(酸素発生装置)で賄っていて
緊急脱出口がこことは別に建物と離れた場所にあるだろうって話してるのはわかるけど・・・
わかるけどっそんだけ『あ、うん』されたら・・・会話に入れねーだろっ。)


拗ねたように睨む快斗の頭を平次がかるく叩くように撫ぜた時に
新一が床の隙間を注視しつつ呟いた。


「なんか・・・きな臭くないか・・・?」









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