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第6章 悪夢の部屋






確実にエレベーターの隙間から煙が上がり始めている。
三人の表情に緊張が走る。
程なくして所内に非常ベルの音がけたたましく鳴り響いた。


「あ・・アカン!寝かせた職員表にひきださな、丸こげなるで?!」


新一はすぐさま廊下に寝そべっていた所員の白衣を奪うとそれに身をつつむ。
ポケットからめがねを取り出し掛けるとmニット帽子を脱ぎ整った髪をくしゃくしゃにする。


「所員と警備員5人は俺が引き出しておく、平次と快斗は一番下から上に向かって、
花澄ちゃんを探せ証拠よりも人命優先。俺は所員を逃したら上から下へ行く。」

「力仕事やったら俺やるで?!」

「関西弁にその地黒の肌じゃ、所員じゃないのが直にバレるだろ。さっさと行け。」


その時エレベーターが上がってくる音が聞こえ、
平次と快斗はもう一つのエレベーターの中へ身を隠した。
中から研究服や警備服を着た十数人の男が飛び出し、
男の一人が新一の姿を認め、声をかけてくる。


「地下の施設に火が廻ってる直逃げろ!自爆装置も作動してるようだっ!」


そう叫ぶとそのまま我先にと飛び出していった。
丁度その時、管内の警報がさらに音を増し、機械音の放送がはいる。


『自爆装置作動開始 爆破まで30分』


快斗と平次はエレベーターに乗り込み、新一は所員の引きずり出しを始めた。
エレベーターが降りる中、二人は無言でマスクを取り出し被る。
地下の一番下までたどり着くと、快斗は天井に張り付き、平次は平然と立っていた。
ドアが開くとびっくりした所員が平次に詰め寄ろうとし、その瞬間快斗が上から麻酔を打ち込んだ。
所員をエレベーターに乗せ上に向かうようにボタンを押す。

エレベータの中はともかく、この部分はまだ煙で視界がふさがれるほどではない。
真っ直ぐな廊下奥に両開きの手術室のような扉があり、
廊下の脇にはドアがいくつも並んでいる。


「わかりやし〜作りやな、まぁ見張る方は楽やわな。」

「そんじゃ一番端まで突っ走るとするか。」


二人は手術室のようなドアを目指し、廊下を駆け抜けた。


「さっきエレベーターから出た一団が所員の殆どやったんやな。」


一番端まで駆け抜ける間、人影が見えなかった。
ドアを開け入ると広い部屋が中ほどで半分仕切られており、奥が明るく照らされている。
明るい方には手術台の端が見えていた。

快斗がまず手持ちのペンライトで手前の暗いあたりを調べている間、
平次は奥の明るい方へ入って行った。
手術台の上の光景を見た平次は、慌てて駆け寄り脈を取る。


「くそっ・・・このままほかして自分等逃げたんかいっ!」


怒りも露に叫ぶ声を聴いて快斗が手術台の方へと近寄る


「平次?!」

「アカン。見るな・・もう死んどる・・助けられへん。」


その言葉とともに出てきた平次は、拳を握り締め壁を殴った。


「絶対一人のこらず上げたるさかい、堪忍な。・・・いくぞ快斗ここやない。」


二人はそのままその部屋を後にした。
手術室をでて直脇の部屋は書類が散乱しており、何者かが漁ったのがわかる。


「もしかして・・・花澄ちゃん・・・?」

「さぁてな・・・。ちゅうか・・火元どこやねん。」

「どうもエアコンがある場所からじゃねー?通風孔から煙噴出してるしよ。」

「ああ・・・ちゅう事は、コントロールする機械がぎょうさんあるような場所からか?」

「かもしんねーなっ!・・・っとここでもなさそうだ。」


二人は廊下に並ぶ部屋を次々と探し、廊下の中央にある大きなドアを開けようとすると
エレベーターの音がし、新一が中から出てきた。


「居たか?!」

「いや、ここまできてまだ見つけへんねや。」


快斗がドアを開けると部屋の奥にあるドアから煙が噴出しているのが見える。


「・・・火元発見。」


三人は顔を見合わせその奥のドアへと近寄っていった。


「このドアあけると火が噴出す可能性あるで?」

「だな・・。まぁどうせ壊れるんだし・・。」


快斗はそう呟くとポケットから丸い玉を取り出し、二人に部屋からでるように指示する。


「おぃ・・まさか・・・。」


快斗がその玉をドアにぶつけると、ドアが粉々に吹っ飛び、炎が一瞬激しく巻き上がる。
落ち着いてから中に入り、ドアの残骸を越えて室内に入っていった。


「むちゃくちゃするな・・・。」

「どうせあと15分で全部壊れるんだからいーじゃん。」


広い部屋の中、炎に照らされ沢山の割れた筒状の水槽の跡が見える。
その中に意識無く倒れた裸体の男や女・・・そして子供。
全て同じような顔をした人達。
新一はすぐさま近い人の脈を取り、小さく首を横に振った。


「無駄ですよ・・・。彼等は生命維持装置なしでは肉体を維持できません。
皆・・・死んでいるでしょう・・・。」


状況にそぐわないほど静かな声が響く。
その声の主は若い男で白衣に身を包み、その顔立ちはまるで花澄を見るようだった。


「ここまで・・・きてくださったんですね。ごめんなさい・・。」


その男のすこし後ろに、花澄が立っている。
二人と三人の間には腰まである炎が道を塞いでいた。


「花澄ちゃんっここは危ないんだ逃げないと・・・。」

「わかっているでしょう・・・?自爆装置を作動させたのは・・わたしと兄さん。」

「話は後で聞くから・・・逃げようっ!」


快斗の言葉に、花澄は首を横に振った。


「皆と一緒に・・逝かないと・・・。わたしも同じだったの・・・。」

「花澄ちゃん・・・・・・。」

「この子だけでも・・普通に暮らしていけばいいと思っていたんですが、
この爆破計画を実行する時にここに戻ってくるなんて・・・ね。
人はこういうのを虫の知らせと言うのでしょうか・・。」


白衣を着た男が淡々と感情などないように話す。


「花澄は女性体の第一号・・・わたしは男性体の第二号・・・。
わたしはIQレベルが異常に高かったのでここで働かされていましたが、
他の仲間は見ての通りです・・・・。博士がこの子を連れ出して行ってから半月
花澄は脳の中に埋め込まれた偽りの記憶のままに生活していたそうですが・・・
此処にきて全て思い出したそうです。忘れているなら・・連れて行かせたんですが、
・・・わかっていて置いて逝くなどできません。」


男は一枚のCDを取り出し、快斗に向かって炎の上を投げてよこした。


「全てそこに記録されています・・ですが、わたしたちをそっと眠らせてください。
出来れば全てを忘れて握りつぶしてください・・・・。
あのドアを抜ければ緊急脱出用のエレベーターがあり、建物の裏手の崖に出口があるそうです。」


快斗達の右の壁のドアを指差す。
その時警報があと五分で爆発するのを告げた。


「もう行って下さい。これ以上いると爆発に巻き込まれます。」

「着てくれて・・・ありがとう。キッドさん・・・皆さん・・・。」

「駄目だっ!花澄ちゃんもあんたも一緒に逃るんだ。」

「キッドさん・・・・。」

「生きてるのにっ!二人とも生きているのに置いていけるわけないだろっ!」


男は黙って首を横に振った。


「私達は・・・生きてないの。存在しない・・・存在してはいけないの。」

「そんなわけないっ!今いるじゃないかこうして話しているのにっ!」


炎を超えて助けに行こうとする快斗を新一が引きとめ、


「すまんな。」


その声とともに平次が快斗の首筋に手刀を叩き込み気絶させると、快斗を背にのせる。


「その足元の瓶の中身を、飲まずに居て欲しかった・・・。」


新一はそう告げると平次と共に緊急脱出口に向かって走った。


ドアを抜け細い廊下を走りエレベーターに乗り込む。
地上に着いた音で快斗は目を覚まし、平次の頭を叩いた。


「どうして止めたんだよっ!」

「今、話してる場合か!走れっ!」


三人が崖をカモフラージュした脱出口から抜けて程なく
大音響とともに研究所が爆発した。


「・・・結局、誰も・・・・・。」


快斗は燃え上がる炎を見つめ呟いた。


「遅かったんだよ。もう・・あの二人は薬を飲んでいた。」


快斗の肩に手を置き、新一が呟く。


「助けて・・やりたかったんだ・・・・・。」


無情に燃え上がる炎を見つめ三人はただ黙っていた・・・・。









そして・・・・



三人はCDの存在や事件に関わっていた事を伏せ
事件はただ研究所のガス爆発と報道された。


新一と平次は事件関係者、諸悪の根源を次々と別件で上げていき、
無論その調査などには快斗も参加したのは言うまでもない。



一年後の夕暮れ時

三人は研究所の跡地を見下ろせる崖の上に立ち、
跡地に向かって花束を投げた。


「なぁ・・これでよかったんだよな・・・。」

「せやな・・・。公表されるのは望んでなかったやないか。」

「時には謎のままにした方がいいこともある・・。誰の科白だった?」


新一の言葉に快斗は苦笑を浮かべ、CDを取り出し空にほおリなげた。
それを新一と平次のエアガンが射抜く。
CDは粉々に砕け日が暮れていく中、キラキラと乱反射しながら
研究所の跡地へと降り注いていった。


「さぁて・・・そんじゃ帰るとするかっ!」


快斗の言葉に三人は、いつものように軽口を叩きあいながら車に乗り込んだ。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 FIN


ATOGAKI            西 夜乃

最後まで読んでくださってありがとうございました。
これを書き始めた当時、クローンについて少々新聞が賑わい
自分の考えていた話と重なるような世間の話題に
なんとなく、書くのを一時期ためらったりもしてました。

3人で事件にあたる姿を書いてみたくてはじめた作品です。

密会シリーズの流れをくんでいて
時をこえ、3人は同じ大学で勉強をする友人になっております。
お笑い路線がおおいウチのサイトの作品の中では
異色な作品になりました。

読んで気に入っていただけるとうれしいです。