written by 怪作
このお話は、なしつぶさんの日記「なしつぶのたわごと」から着想を得た小咄です。そちらも読むとより面白みが‥‥増すのかなぁ。
その日シンジが彼女を見たのは、どしゃぶりの雨の中だった。
彼女‥綾波レイはどしゃぶりの雨の中を傘も差さずにふらふらと歩いていた。
「‥‥‥綾波?」
シンジはそのとき二馬鹿の二人と馬鹿な話をしていたのだが、彼女の歩いている方向を見やって、凍り付いた。
「綾波!!」
そして次の瞬間、レイのもとへと駆け出していった。
危ないところだった。
レイはふらふらと赤信号の横断歩道を渡ろうとするところだったのだ。
腕を強くつかんでシンジはレイを歩道へと引き戻した。
すれすれのところを大型車が通り、二人に罵声が浴びせ掛けられる。
しばらくシンジは緊張と運動から荒くなった息を弾ませていた。
「何があったんだよ、綾波‥‥」
「離して‥‥」
感情の篭らないレイの声、だがシンジにはその声に深い悲しみと諦めがにじみ出ているように思えた。
だから、普段の彼からは想像も出来ないような強い調子の声で言った。
「ダメだ、綾波の身に何があったか聞くまで離さない!」
シンジの強い意思を篭めた瞳がレイの紅い瞳を真正面から射抜く。
その瞳に負けたのか、レイはぽつりぽつりと話し始めた。
「ナッシュ博士が赤木博士と話しをしているところを聞いたの‥‥」
『遺伝子を組み替えた‥‥などはまるっきり新しい種なのではないだろうか?「私は恐いの」
たとえ姿形がにていてもそれは全く新しいもの。
今までまわりと解け合って進化し生きてきた‥‥と違って組み替え‥‥ものが突然自然界に入ったとしたらそれは‥‥』
「何でだよ!綾波は悪くないよ!悪いのは意地悪なことを言う博士たちのほうだよ!」
「ううん、違うわ。ナッシュ博士は私に優しいわ‥‥
でも‥‥
私には使徒の遺伝子が組み込まれている‥‥そのことが、優しくしていても害を為すことになるんじゃないかと博士は不安に思っているの」
「私は自分が完全な人間じゃないことを不安に思っていた‥‥」
「‥‥今は違うけど、赤木博士の冷たい研究室で育てられた私は、自分が人間として生きる意味はないと思ってきた」
「そんなことはないよ」
シンジは優しく、力強くレイを元気付ける。
「そう、‥‥碇君あなたがいてくれたから‥‥そして私のことを見てくれる人達に逢えたから‥
‥‥でもダメなの」
「なんでなんだよ、綾波‥」
「私のことを親切にしてくれる人‥‥私を見てくれる人でも、半分使徒である私の危険を見過ごせない‥‥
その人達は本当に私のことを案じてくれる‥でも私がいると、その人達の愛するものを危険に晒すことになってしまう‥
私を愛してくれる人の為に、私は消えるべきなの‥‥」
深い悲しみと諦めの滲んだレイの台詞を、シンジは大声でかき消した。
「ダメだよ!‥‥綾波は‥‥綾波だ。誰にも害を与えたりなんかしない。まして自分から消えるなんて言う必要は無いよ!」
そしてシンジは、レイを思いきり強く抱きしめた。
「!」
「‥僕がいつもついてる‥‥だから消えるなんて言わないで‥」
「碇君‥‥」
雨はいつのまにか止み、空に虹がかかっていた。
レイの頬を一筋の涙が伝った。
「感動的な光景だねぇ‥‥写真にとっとくか」
「センセもやるのぉ」
おわり
おまけ
「私は純粋に科学者として組み替え植物について思ったことを」
「そうだったの‥‥‥」
「綾波、ナッシュ博士は大丈夫だって言ってくれたよ。良かったね」
「まあ動物についても当てはまるといえば当てはまるが」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「あっ」
その後ナッシュ博士がどうなったかは誰もしらない(爆)
おまけ2
「シンジ、あんたレイにプロポーズしたって本当?」
「(殺される!)ち、違うよ」
「碇君は私に『いつもついている』って言ってくれたわ」
「ほほう」
「そそそそっそれは綾波が使徒で危ないかもしれないと誤解されてみたいだからってことで でもそれは本当に誤解で僕の言った意味はそうじゃなくて」
「要するに誤解だから無効なわけね、そうね?シンジ」
「は、はい」
「誤解でも、碇君が私にプロポーズしたことに変わりないわ」
「レイ、あんた使徒で有害だから消えなさい(怒)」
「あ、あアスカ‥」
ギロリ。
「なななんでもありません」
「赤毛猿の言うことなど気にしないわ‥猿は用済み‥‥」
ニヤリ。
「あ、あやなみ〜(;_;)」
その後シンジがどうなったかは誰も知らない(爆)
T.B.ナッシュ博士・・・逃亡。
なしつぶの感想は仮掲示板の方で
| 素晴らしい小説を書いて下さった作者にぜひ感想を!
感想は作者への感謝と次回作を生み出すエネルギーです。 |