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>わとそんプレゼンツ >弐拾萬ヒット御贈答の品 |
......................にへらっ。
.....................へらへらっ。
第三東京市市街の外れ、丘陵ふもとのマンション、コンフォート17の一室。
まだ早朝5時にもならない、太陽が山際から覗き始める時間帯。
鏡を前にして、先程からにやけしまう顔を抑えつつ座り込む少女が一人。
半開きのカーテンから入り込む朝日にその髪は金色に煌き、熾光に包まれたその身は天使を彷彿とさせる。
それはただ単に彼女の容姿が並外れている、ということだけではなくて、その表情に起因しているのだろう。
幸せ。
そう、彼女...惣流・アスカ・ラングレー... は今、幸せなのだ。
昨日の夜から待ちきれなくて.....
どきどきして、なかなか寝付けなくて。
結局ほとんど眠らないままに夜を過ごして....
朝日が昇ると同時に起き出してしまう位に。
とにかく幸せなのだ。
....二年、この日が来る事を信じて生きてきた。
そして今日、ようやくその願いが叶う。
待ち望んだ人、” 碇シンジ ” と再び会う事が出来る。
それを考えるだけで、アスカは緩む頬を抑えることが出来ないのだった。
サードインパクトによる大混乱の中で.....
昏迷する世界に生き残った人々に手渡されたのは、
「ゼーレによるある種の人類一掃計画と、それを阻止すべく奮闘したネルフ」
というフィルターをかけられた事実だった。
インパクトにより全滅したゼーレ、即ち”死人に口無し”。
日本ネルフにとって、インパクト直後の混乱時が、彼らの死活を分ける最大にして唯一のチャンスだった。
戦略級スーパーコンピューターであるMAGIオリジナルの能力によるものが多大だったとはいえ、世界に名だたる才能を占有するネルフ本部にとって、情報操作自体はそれほど困難ではない。
【何処よりも誰よりも早く発信源になる】という決定打が、なによりも重要だったのである。
そしてその発言力を強化したのは、事前より各国中枢へのパイプラインを敷いた冬月コウゾウ副司令や、MAGIの”生みの親”であり、主任技術者たる赤城リツコ博士の力、そしてなにより世界最大の戦力であるエヴァとチルドレンの存在による所が大きい。
当時目的を喪失し、抜け殻同然だった碇ゲンドウ総司令に代わり目覚しい成果をあげた結果、一連の情報戦を制することを成功させた。
しかし、とはいえゼーレから至近にあったチューリッヒ及び各国ネルフや、知らず荷担してしまった政府や戦自にしてみれば、発言権を削がれる上に戦犯扱いを受ける....と、憤懣やる形無しな状況である。
世界の情勢が決したとはいえ、彼らも当然反論を展開した。
曰く、「サードインパクトを画策した碇ゲンドウNERV総司令、引鉄となったサードチルドレン碇シンジ」。
全てを知る者がこの世にいたとしたら、失笑した事だろう。
そこにはある意味、”一欠けらの真実”が含まれていたから....
そして碇シンジはエヴァンゲリオン初号機パイロット”サードチルドレン”として、暗沌の世界における一筋の光、「救世の英雄」としての存在と、相反して世界を崩壊に導いた「破壊の権化」としての存在の狭間で、揺れ動く事を余儀なくされた。
アスカは回想する。
...そしてシンジはDCへと移送されていった。
事情聴取と言えば聞こえがいいけれど、要するに国際的な軍事裁判みたいな物...だろう。
情勢が日本ネルフ寄りに決したと言っても、ここで有罪が可決されたならば....
...二度と...会えなくなる....?
心の中は、その事に脅え、恐怖し。
なのにそれに染まっていく事を拒否してしまう。
そう認めてしまうことがとても怖くて...
自分の心が...何を望むのか...分からなくなった。
だから出てくる言葉は、次々と彼女の心を裏切った。
「ふんっ!あんたがいなくなってせいせいするわよっ!」
...違うっ!そうじゃないのっ!
「ホント、ウジウジしててバカで変態よね、あんたって!やっと鬱陶しいヤツから開放されると思うと嬉しくって涙が出るくらいよっ!」
ちがうのっ!こんなことが言いたいんじゃないのよっ!
「ママの所だろうがファーストの所だろうが、アメリカでも何処でも、勝手に行けばいいのよっ!あたしには関係ないわっ!」
チガウ....あたしは....
「あんたの顔なんて二度と見たくないわっ!さっさと消えなさいよっ!」
........あたしは....
けれどシンジはそんなあたしの言葉を黙って聞いていた...
そしてあたしの言葉が途切れると、たった一言。
....ハッとするほど悲しそうな瞳で。
二度と忘れられない苦しそうな表情で....
「アスカ...行ってきます。」
ただそれだけ。
思い返してみたら、あいつがあたしの目を見ながらはっきり何かを言ったのって、その時が初めてだった。
その言葉を聞いた瞬間、あたしの「心」と「身体」は”ぶれ”を弾き飛ばして一つになった。
シンジに駆け寄り、飛びついて首に腕を回すと、有無を言わせず唇を重ねる。
触れ合うだけだったけど、とにかくあたしとシンジの気持ちを込めてした初めてのKISS。
間が開いて、離れる二人。
「待ってるから....」
「...うん。」
あの後家に帰って来てから、あいつの部屋でずっと泣いてたのよね......
懐かしいくらい昔の事になってしまったあの日のことを、一つ一つ思い出す。
あれから二年。
シンジはいわゆる重要参考人だったから、電話、メールや手紙もやりとりできなかった。
あたしとシンジの間には、言葉を交わすことのできない距離があった。
この二年、あいつってばどうしてたのかなぁ....
あいも変らずグジグジとしてたのかしら?
それとも、ちょっとはマシになってるのかな?
二年も経ってるんだから身長だってそれなりに伸びてるわよね?
声変わりだってしてるだろうし...司令みたいなむさい声になったりしてないでしょうね?
酷い病気とか、怪我とかしていなかったかしら...?
まさかあたしの事なんかほっぽらかして、向こうで彼女とか作ってなかったでしょうね?
...まあ、最後のヤツは余計な心配だわね。
待ってるって言ったあたしに、あいつはちゃんと答えてくれたから。
その言葉は信じていいと思うから。
あいつの...シンジの言葉なら、全部信じられると思うから。
ふと時計を見るともう6時半。
...一時間半以上も思い出に耽けってたわけぇ?
こうしちゃいられないじゃないっ!!
「アスカ、行くわよっ!」
そして今日が動き出す。
「ほら、ミサトっ?ぼさぼさっとしてないでさっさと支度しなさいよっ!こんな大切な日まで遅刻する気じゃないでしょうね!?」
「そ〜んなに焦らなくても飛行機は逃げないわよぉ。あ、でもアスカにとってはそれどころじゃないのよねぇ?」
「な、なによぉ...。」
「だってようやく愛しのシンちゃんに会えるんだもの。じっとしてられないんでしょ?」
「フ、フンッ。どうだっていいでしょ、そんなことっ!と・に・か・くっ、早く支度しなさいってば!」
「ハイハイ。」
食器を洗いながら赤面するアスカの後ろで、もそもそとテーブルから動き始めるミサト。
碇ゲンドウ、シンジ親子を護衛する任務でDCに付追していった加持リョウジも、本日帰国する。
全てが終わった日、彼はミサトになにかしら言葉を残していったらしい。
その言葉を聞いた時、彼女が幸せそうに微笑みながら彼の胸で泣いていた所を見ると、それなりにそれなりしてくれたようである。
だから今日はミサトにとっても待ち望んだ人が帰ってくる日。
そうであるから.....彼女はいつも通りに振る舞うのだろう。
シンジやアスカに対して、彼女のかけがえのない弟と妹に対して、償いようのない負い目を抱えていると自分を責めるから。
自分の復讐のため、それを現実から目を背けて逃げ込む言い訳にして、子供たちを追いこみ、犠牲にし、それでいて彼らの心が傷ついている時に中途半端に気を掛けて、結局最後にはその心が砕けるのを目を塞いで逃げ出した...
子供達が何も言わないからこそ、そして今こうしてアスカと一緒に暮らしているからこそ。
自分の幸せだけを求めるのに引け目を感じてしまう。
後悔は取り返せない。
だから彼ら二人の幸せを応援してあげたい。
この真心だけは本物だと信じている。
そして....潤みそうになる瞳をこらえて彼女は切り替える。
さあ、いきましょうか。
「アスカぁ〜!こっちは支度終わったわよ〜!」
「ちょっと待ってぇ!今着替え終わるからぁ!」
あらあら、きっと気合が入ってるわね。大変よ、シンちゃん?
その気持ちが理解るから.....笑みが漏れる。
「お待たせっ!ねえ、どうかしら?」
「あら似合ってるじゃない。いいと思うわよ?」
「ふふん。まあ、あたしの美貌をもってすればどんな服を着ても完璧よね。三十路を超えたどっかの誰かさんとは大違い〜!」
「うっさいわねぇ...アスカにはこのお・と・なの魅力が解らないのかしら。まだまだねぇ。」
以前のように見せかけの会話ではなく、姉妹のように思い会う二人としての会話。
それを感じるからこそ、今、想い人を待つ二人として一緒に暮らせるのだ。
「さ、出かけるわよっ!」
今日のルノーは、いつも以上に軽やかに街を走り抜けた。
喧騒渦巻くエアポート。
人いきれのする一般客の待ち合いを離れて、そわそわしながら佇む二人。
「ねぇ、確か10時に着くって言ってたわよね?」
シンジ...シンジ...シンジ....
「そうなんだけど...おっかしいわねぇ...リツコったら時間を間違えたのかしら?」
「それはないんじゃない?ミサトが間違えるっていうんならまだしも。」
シンジ...シンジ...シンジ...
「あによ、失礼な。」
「それにしても遅すぎると思わない?もう11時になっちゃうわよ。...まさか、なにかあったんじゃ...」
シンジ...シンジ...シンジ...
「落ち着きなさいって、アスカ。なにかあったんだったら、連絡ぐらい入ってるわよ。」
「そう...そうよね。加持さんだって着いてるんだし。」
シンジ...シンジ...シンジ...
「そうよぉ。あのバカ、肝心な時に役に立たなかったんだから、こういう時くらいちゃんと護衛してくれなきゃ。」
「ふふふっ、まあそうかもし...きゃっ!」
と.....突然アスカの視界は誰かの手によって塞がれた。
それと同時にミサトの身体に、背後から見慣れた腕が回される。
そして、抱きしめられたこの感覚は.....!!
どんなに会えない日々が長くても、身体が覚えているこの安らぎ。
ともすれば眠りに降りてしまいそうなくらい落ち着く居心地の良さ。
...間違うはずもない。
「かっ、加持くん!?」
ち、ちょっと誰よって...えっ!?
加持さんって....っ!
じゃ、じゃあこの手はもしかしてっ?
硬直していた体が弾かれた様に動き出すと、塞ぐ手を払い除けてぐるんっと振り返る。
そこには、彼女がこの二年待ち望んだ彼が...
見上げるくらいに背が伸びた、けれど優しい面持ちはまったく以前のままの彼が...
来る日も来る日も、一日だって忘れる事なく想いつづけてきた彼が....
あの頃と変らない、彼女の大好きな微笑みを浮かべて立っていた。
「ただいま...アスカ...。」
ああ、終わった....
なんでこんなに時間がかかったんだろ? まあいいや、書きあがったし。(;;)
え〜と、言い訳をさせてもらいますと...
わとそんは国際法だのはこれっぽっちも理解りませんので悪しからず。
題名の「櫻久遠」というのは造語です。辞書調べても乗ってません。
本編の内容というよりも、下の Side Story のほうにリンクしたものです。
副題は...ほっときましょう。
ああっ、石を投げるのはやめてっ!(笑)
お怒りが納まらないって方はハンカチでも噛んで我慢しておくんなまし。(爆)
って、その物言いがいかんというに。>おいら (−−;
それではなしつぶさま。
駄作ではありますが、お祝いの気持ちだけは本物ですので。 (^-^;;
=============== Side Story ===============
「いいのか、碇?」
「.....彼らには彼らなりの時間が必要なのですよ、冬月先生。」
「ふむ....若さとは羨ましいものだな....」
抱擁を続ける二組のカップルを遠目に見やりながら、師弟のように並ぶオヤジが二人。
かつての威圧的な面影は何処にも無い。
ロマンスグレーの男は憑き物が落ちたように、少し老けが見え隠れし始めた冬月コウゾウ。
そして並び立つ長身の、サングラスと髭を取り去った碇ゲンドウ。
隠されていた意外に若々しい風貌は、何処と無くシンジにも受け継がれているのか。
穏やかな陽射しは彼らにも暖かく降り注ぐ。
「冬の次には春がやって来る......か。まあ、それも一つの生き方ではあるのだろうな。」
「そうですね....いずれユイの好きだった”サクラ”も....再び咲く様になるかもしれません.....」
....いつかその花吹雪の中を、息子と共に歩くのだろうか。
....その隣には孫を抱いた義娘がいるのだろうか。
....そしてすっかり子煩悩になった自分が、泣き簿黒のあの女性と共に....か。
そんな未来もまた一興...。
悠久の時の流れに浮かぶ...それは小さな物語。
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これでホントに終わり。
んでは。
わとそんさん二十万ヒット記念ありがとうございますm(_ _)m
大切なお時間を割いてまで書いていただいてなしつぶ感激であります(^^)
いきなり始まるアスカの「にへら」笑い,目がたれて笑っている様が見えてくるようです。
素晴らしい小説を書いて下さった作者にぜひ感想を!
感想は作者への感謝と次回作を生み出すエネルギーです。