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罠
金曜日のお昼休み、第三新東京市立第壱中学校3年A組の教室。生徒たちは思い思いのグループを作ってお弁当を広げていた。アスカはヒカリといっしょに、シンジもトウジやケンスケと一緒にお弁当を広げている。
お弁当箱をあけたアスカがいつものようにシンジに突っかかっていっていた。
「ちょっとシンジ、ニンジン入れないでって言ったでしょ!」
今日はお弁当の中身が気に入らないらしい。教室の真中あたりの席から窓際のシンジのところに怒鳴りつける。いつものことなのでまわりのクラスメイトたちは気にもとめない。
「ごめん。でもニンジンは身体にいいんだから食べなきゃだめだよ」
「別にニンジン食べなくったって死にはしないわよ! 今度入れたら残すからね!」
「そんなことしたらもうお弁当作ってやらないからな!」
「なに!? 馬鹿シンジの癖にあたしに口答えしよっての!?」
アスカが立ち上がってシンジのほうに一歩踏み出した。
「う……」
シンジは身の危険を感じて逃げ腰になる。
「アスカ、止めなさいよ。せっかく作ってもらってるのに、今のはアスカが悪いわよ」
ヒカリがアスカの手を引っ張ってなだめた。アスカはシンジをひとにらみすると、「ふんっ!」と鼻を鳴らしてそっぽ向き、いすに腰掛けた。
「ねえアスカ、アスカってニンジンだめだったっけ?」
椅子に座ったアスカにヒカリが聞いた。前にご飯を御馳走したときは何も言わずに食べていたはずだ。
「別に嫌いじゃないわよ」
豚肉の野菜炒めを口に運びながらしれっと答えるアスカにヒカリは怪訝な顔をした。
「じゃあ何で碇君にあんなことを?」
「ちょっとね」
そういうとアスカは意味深な笑みを浮かべたのだった。
シンジはため息をひとつつくとお弁当を食べ始めた。
「相変わらずわがままな女やなぁ」
トウジがコロッケパンをかじりながらしみじみといった。
「なんか最近変なんだよね。前はニンジン嫌いじゃなかったのに急に入れるなって言い出したり」
「それはあれだよ、好きな人にわがままを聞いてもらいたいって乙女心」
ケンスケが訳知り顔で言う。
「そうかもしれんのぅ」
二人の言葉にシンジは赤くなった。
「二人ともやめてよ。アスカが僕のこと好きなわけないじゃないか」
トウジとケンスケは顔を見合わせると、ため息をついた。アスカがシンジに気があるであろう事は、この二人はおろかクラス中の人間が気づいている。
「ま、それはともかくだ、あの手の気の強い女をおとなしくさせる手があるんだが聞きたくないか?」
ケンスケが声を潜めていった。三人は頭を寄せ合う。
「どんな手?」
「ああいう女は一発ヤっちまうとおとなしくなるって言うぞ」
「やるって何を?」
「エッチに決まってるだろ」
「ええっ!」
シンジが驚いて大声をあげると、一瞬クラス中の視線が集まった。シンジが赤くなってアスカのほうを見ると、アスカもシンジのほうを見ていて目があった。アスカはぷいっと目をそらすとお弁当を食べるのを再開した。
「そんなことできるわけないだろ!」
シンジは再びケンスケたちと頭を寄せ合うと、ひそひそと話し始める。
「まあ聞け。正面からいってもシンジに勝ち目はない。そこでこの薬だ」
ケンスケはポケットから小ビンを取り出した。親指ほどの小さな透明のビンで、中に透明の液体が半分ほど入っていてコルクで栓をしてある。ケンスケはそれをシンジの前に置いた。
「なに、これ?」
「媚薬。これを飲んだ女はしたくてたまらなくなるんだそうだ」
「そ、そんなの使えないよ」
「わいも賛成できへんな。そんなん卑怯やないか」
「そんなにかたく考えるなよ。これはアスカの為でもあるんだ。このままだとあいつ一生シンジに誤解されたままだぜ?」
「うーん、そやなぁ。けどなぁ」
「誤解って何が?」
「ほらな?」
「ケンスケの言うとおりかも知れんのぅ。シンジ、ためしにつこうてみぃ」
「でも」
「使うかどうかはシンジに任せるからさ、とりあえず持ってくだけ持ってけよ」
「う、うん」
シンジは小ビンを自分のかばんにしまった。
「でも媚薬なんてどこから手に入れたの?」
「入手経路についてはノーコメント。ある人からもらったとだけ言っておくよ」
「ふーん。副作用とかは?」
「ないってさ。大丈夫、うまくいくって」
そういってケンスケはシンジの背中をたたいた。ケンスケの目はどこかシンジをうらやむような、それでいて哀れむような複雑な色を見せていたのだった。
次の日の朝。葛城家の主夫シンジはいつものようにおきると珍しく早起きしたミサトを送り出し、アスカのためにお風呂の準備をしていた。ミサトは松代に出張で、帰りは明日の夜との事だった。
お風呂の準備が終わると、アスカを起こしにいく。寝起きはいつも機嫌が悪いので、少し憂鬱だ。
「アスカ、朝だよ」
そういってシンジは部屋のカーテンを開けた。アスカがまぶしそうに目を覚ます。
「お風呂出来てるよ」
アスカは物憂げに伸びをすると、のろのろとベッドから這い出してきた。それを見届けるとシンジは朝食の準備に取り掛かる。
シンジがフレンチトーストの一枚目をフライパンに乗せると、バスルームからバスタオルを巻いただけのアスカが飛び出してきた。
「ちょっとシンジ、熱いじゃない!」
「え、あ、ごめん。いつもと同じ設定だと思ったんだけど」
シンジはちょっと怪訝な顔をする。お湯を入れる前に設定は確かめたはずだ。
「もう、ちゃんと確認してよね! やけどするじゃない!」
「ごめん」
アスカはぷりぷりしながらバスルームへと向かった。と洗面所にはいる直前でいつものようにバスタオルが落ちる。アスカはなぜかシンジのほうを向いてバスタオルを拾ったので、シンジはアスカのすべてを目にしてしまった。一瞬後に我に帰り目をそらす。
アスカはシンジに見られたことに気づかなかったようで、そのままバスルームへと消えた。しばらくするとお風呂から鼻歌が聞こえてくるのだった。
シンジはボーっと考え込みながらフレンチトーストを焼いていった。先ほど見たアスカの裸が頭から離れない。そして自分とアスカの分を焼き終えると、薬を使う決心を固めた。バスルームを伺いながらそっと部屋に薬を取りに行く。
今朝のメニューはフレンチトーストとジャーマンサラダ、それにオレンジジュース。シンジはアスカのオレンジジュースに薬を入れた。薬はすぐに溶け込んでわからなくなった。
朝食の準備がすべて整うと、アスカがお風呂から上がってきた。白い薄い生地のワンピースを着ていた。ブラジャーをしていないのか、乳首がはっきりと見て取れた。いつものことなのに、シンジは意識してしまってまともにアスカのことを見れない。
「あ」
アスカがオレンジジュースに手を伸ばすと、シンジは思わず声をあげていた。
「なによ?」
アスカがシンジを見るとシンジは目をそらした。
「べ、べつに」
「へんなやつ」
気にせずアスカはオレンジジュースを一気のみした。
「おかわり」
アスカは空になったグラスをシンジに差し出した。シンジは何かそわそわして気づかない。
「シンジ」
「あ、なに?」
「おかわり」
「あ、うん」
シンジはグラスを受け取ると立ち上がって冷蔵庫を開け、オレンジジュースを注いで戻ってきた。
「はい」
そのあと朝食は滞りなく二人の胃袋に納められ、アスカは自分の部屋に戻りシンジはリビングの掃除をはじめる。
掃除があらかた終わったころ、アスカが部屋から出てきた。頬が上気してなんとも色っぽい風情をかもし出している。
「ねえシンジ」
アスカは掃除機をかけているシンジを呼んだ。いつもと違った艶っぽい声だった。シンジはごくりと生唾を飲み込むと、掃除機を止めてアスカの方を向いた。
「な、なに?」
アスカはしばらく逡巡したかと思うと、おもむろにシンジの首に手を回して抱き寄せ、情熱的に口付けた。いきなりのことにシンジの目は見開かれるが、すぐに目を閉じてアスカに身を任せる。シンジの顔は耳まで真っ赤だった。
永遠とも思える口付けの後、アスカは抱きついたままシンジの耳元でささやいた。
「あんた、あたしのこと好き?」
シンジは少し迷ったが本当の事を口にした。
「よくわからないよ」
「じゃあ嫌い?」
「嫌い、じゃないと思う」
「ならいいわ。掃除が終わったらあたしの部屋に来て」
そういうとアスカは自分の部屋に戻っていった。取り残されたシンジはしばし呆然としていたが、すぐに我に帰り赤い顔をしたまま掃除機をかけるのだった。
掃除が終わるとシンジはアスカの部屋の前にきていた。少しの間迷った後で、生唾を飲み込むと意を決してふすまをノックした。
「入って」
シンジは言われるままアスカの部屋に入ると、目の前の光景に凍りついた。
アスカはベッドの横たわっていた。それも全裸で。左手は胸を隠し、右手は股間を隠していた。股間を隠す右手はどうやら濡れているようだった。アスカの白い肌は上気し、桜色に染まっていた。
「来て、シンジ。あたし、あんたが欲しい」
「ア、アスカ」
シンジの口の中はからからに乾いていた。うまくしゃべれない。
「そんなとこに突っ立ってないで、服を脱いでこっちに来て。あたしをこれ以上待たせないで」
潤んだ瞳でそういわれるとシンジはいてもたってもいられなくなって、大急ぎで服を脱ぐとアスカの上にかぶさった。
「ほ、ほんとにいいの?」
「はやくぅ」
鼻にかかった甘えるような口調にシンジの理性は吹き消されてしまった。本能の赴くままにアスカの濡れそぼった秘所に自分のものをあてがうと、一気に突き入れた。
「くっ、ああっ!」
アスカは一瞬痛そうに眉をしかめたが、すぐに歓喜の声をあげた。
シンジはその声にたきつけられて激しく腰を振り始めた。熱く濡れたそこはきつくシンジのものを締め付け、あまりに甘美な感覚はシンジを夢中にさせるのに十分だった。
シンジが突くたびにアスカは獣のように声をあげた。あまりに大きな声でシンジの耳は痛くなったが、そんなことを気にする余裕はなかった。
すぐにシンジは果てた。
「もっとぉ」
まだ達してないアスカは、甘えるような声で求めた。両足でシンジの腰をがっちりと押さえ、逃がさないようにしている。シンジのものは抜くまでもなくすぐに力を取り戻した。
再び激しく突くと、アスカが歓喜の声をあげ始める。シンジのものはアスカの破瓜の血で真っ赤になっていたが、アスカは痛みを感じていないようだった。
アスカの締め付けがふっとゆるくなったかと思うと、強烈に締め付けてきた。アスカはすでに声も出ないほど感じているようだった。段々と高まっていた緊張がふっと緩んだかと思うと、アスカはくくっ、くくっと痙攣するかのようにシンジのものを締め付け、射精を促した。それに応えるかのようにシンジも二度目の精を放った。
そのあと何度達したのか二人とも覚えていなかった。特にアスカは感じすぎて何度か意識が飛んでいた。アスカは意識が戻るたびにシンジを求め、シンジはそれに応えた。
何時間たったのだろうか、荒い息のシンジの下で意識を取り戻したアスカが口を開いた。
「重い」
シンジは息を整えながらアスカの上からどいた。始めてから一度も抜かれなかったシンジのものがずるりとアスカの中から抜ける。精液とアスカの愛液と血にまみれたそれは、まだ少し元気だった。
「ん」
少し感じたのか、抜けるときにアスカが少し声をあげた。
「あんたってば一度も抜かないんだから。何回いった?」
「……覚えてないよ」
「あたしも。あそこがじんじんしてる」
「僕も。痛くなかった?」
「ん、大丈夫」
二人はしばらく隣に横たわるお互いのぬくもりを楽しんだ。いつのまにか手がつながれていた。
「……責任とってもらうわよ」
黙りこむシンジ。アスカは体を起こし、シンジの顔を覗き込む。
「取ってくれるわよね?」
アスカはシンジの目を覗き込んだ。その瞳に不安をにじませながら。
「……アスカの方から誘ってきたんじゃないか」
シンジはアスカから視線をそらすことなく答えた。
「あんたが媚薬を盛ったからじゃない」
この一言でシンジの顔がこわばった。
「責任とってくれるわよね?」
「……わかったよ」
アスカはにっこり微笑むとシンジに軽く口付けた。
「今からあんたはあたしのものよ」
「うん」
「他の女と口きいちゃだめよ」
「それは」
「責任取るのよね?」
「……うん」
「浮気したら死刑だからね」
「うん」
アスカは再びシンジに口付けた。今度は舌を絡めるディープなキス。
キスを終えるとアスカは再びシンジの隣に横たわった。
「ところでさ」
「うん」
「相田に媚薬渡したの、あたしよ」
シンジはため息をついた。
「だろうと思った」
「いつ気が付いた?」
アスカがシンジのほうを向く。
「さっき。アスカが媚薬のこと知ってたから。ケンスケを使って僕を罠にかけたんだよね? どうしてこんなことしたの?」
「そんなの、あんたをあたしのものにするために決まってるじゃない」
シンジは長いため息をついた。
「アスカっていつも突然だよね」
「恋はインパクトが大切だからね」
「そうだね」
シンジはアスカのほうを向いて、アスカの瞳を見つめた。
「少なくとも僕は今回のことで君に恋したよ」
突然のせりふにアスカはきょとんとした。すぐに微笑んで人差し指でシンジの鼻を押す。
「なぁにかっこつけてんのよ」
「ごめん」
二人とも真っ赤になって笑いあう。
「今何時?」
アスカの質問にシンジは時計を探す。
「2時過ぎ」
「もうそんな時間? あたしおなかすいちゃった」
「ご飯にしようか。その前にシャワー浴びよう」
「一緒に浴びる?」
「アスカがよければ」
シンジは起き上がってベッドから降りると、アスカに手を伸ばした。アスカはシンジの手をつかんで起き上がろうとしたが、腰に力が入らなくて起き上がれなかった。
「だめ。起きれない。だっこして」
シンジはアスカの背中とひざの下に手を入れると持ち上げた。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
「シーツべたべただね。しみ、落ちるかな?」
「タオルかなんか下に敷いておくべきだったわね」
アスカをお風呂までつれてくると、シンジはアスカに聞いた。
「アスカ、座れそう?」
「ん〜、だめかも」
「冷たいけど、床に下ろしてもいい?」
「仕方ないわね」
シンジはいすを枕にしてアスカを床に横たえた。シャワーを出して温度を確かめ、アスカの足元から手でこすりながらお湯をかけていく。
「ちょっと、やだ!」
シンジがアスカの股を開かせると、アスカは恥ずかしがって股間を手で隠した。シンジはその手をそっとどかした。アスカは目をつぶって羞恥に耐えている。
ほとんど無毛のアスカの秘所は、激しい愛の交歓のために少し腫れていた。シンジがその割れ目を指で開くと、たまっていたピンク色の精液があふれ出てきた。
シンジはシャワーをアスカの秘所にかけた。少し感じるのか、アスカが身じろぎをする。シンジは周りにこびりついた血と愛液と精液を丁寧に手でこすり落としていく。秘所の周りをこすると、アスカは声が漏れそうになるのをこらえ、もどかしそうに腰を動かした。
アスカにシャワーを浴びせ終わると、シンジはお風呂の温度を見てみた。
「少しぬるいけど、入る?」
「うん」
シンジはアスカを抱き上げると、ゆっくりと湯船につけていった。
アスカが湯船に浸かっている間にシンジは自分もシャワーを浴びた。アスカはその様子をじっと見詰めていた。はじめてみる男のものに興味津々だった。
シャワーを浴び終えるとシンジはアスカのほうを向いた。アスカの目の前にまだ少し元気なシンジのものがきた。赤くなって思わず目をそらすアスカ。
「僕も一緒に入っていいかな?」
「い、いいわよ」
シンジはアスカの後ろをあけさせるとそこに身体を沈め、アスカを上に乗せると後ろからやさしく抱いた。
「……元気ね」
アスカはお尻にあたる硬いものに赤くなった。
「え?」
「ここで入れないでよ。お風呂って雑菌が多いんだから」
「あ、ごめん。それほどしたいわけじゃないんだけど、アスカの裸があまりにも魅力的だから、つい」
二人そろって赤くなる。しばらくおとなしく湯船に浸かる。
「あんたの身長、いつあたしを追い越したかわかる?」
しばらくシンジは考え込んだ。
「ごめん。わからない」
「春休みが終わったときよ。エヴァを降りてからずっとあんただけを見つめていたんだから。それなのにあんたったらぜんぜんあたしの気持ちに気づいてくれないし」
「ごめん」
シンジはそっとアスカの胸に触れ、優しく愛撫し始めた。
「ん、罰として、あん、指輪、もうだめだって!買ってもらうからね」
愛撫を続けながらシンジは聞いた。
「指輪って?」
「エンゲージリング、ん、ほどじゃなくていいから、あん、あんたがあたしのものになった、ん、約束のしるしとして、あん、欲しいの。もうやめてったら!」
愛撫をやめて胸をやさしく手のひらで包み込む。シンジはアスカの首筋に口付けた。
「要するにエンゲージリングが欲しいんだね」
「そのほうがいいけど」
「本当に僕でいいの?」
「今のところはね。もっといい男を見つけたら開放してあげるから安心なさい」
「そんなのやだな。アスカをずっと僕のものにしておきたい」
アスカはまた赤くなった。
「じゃあエンゲージリングにして。正式に婚約しましょ」
「うん」
シンジは今度はアスカの肩に口付けた。首筋と肩にキスマークが残っている。
「出ようか。立てる?」
「たぶん」
アスカはシンジの助けを借りてふらつきながらも何とか立ち上がり、風呂から上がった。シンジに身体を拭いてもらい、着替えを取りに自分の部屋へ。
二人がアスカの部屋に入ると、たちこめる男と女の匂いに気が付いた。赤くなって顔を見合わせる。シンジは匂いの元のシーツをベッドからはがすと、洗濯しに持って行った。
洗濯機を回すとシンジは自分の部屋に戻り、着替えを身につけた。いつもと同じTシャツと短パン。
昼食の支度を始めると、アスカが部屋から出てきた。朝とは違った白いワンピースで、まるでデートにでも行くようなめかしこみようだった。髪の毛もきっちりといつもの髪型にセットされていた。
「まだあんたのが入ってるみたいな感じする。なんか今になって痛くなってきた」
アスカのほうを見ると股関節が痛いのか、変な歩き方をしていた。
「大丈夫?」
「ん、痛み止め頂戴」
アスカは椅子に座るとため息をついた。シンジはアスカが生理の時にいつも飲む薬を取り出すとアスカの前に置き、ミネラルウォーターをグラスに注ぐとそれもおいた。
シンジが昼食の準備に戻ると、その背中にアスカが声をかけた。
「今日指輪買いに行こうと思ったけど、明日にする」
「今日行くつもりだったの?」
「思い立ったが吉日って言うじゃない」
「そりゃそうだけど」
料理が出来上がると手際よく盛り付け、机に並べた。今日のメニューはたらこスパゲッティ。隠し味は梅昆布茶だ。
昼食が終わるとネットで指輪のカタログを見た。なんだかんだいいながらも仲むつまじくすごしたようだ。その夜は二人ともシンジのベッドで寝たのだった。
明けて月曜日のお昼休み、第三新東京市立第壱中学校3年A組の教室。生徒たちは思い思いのグループを作ってお弁当を広げていた。アスカはヒカリといっしょに、シンジもトウジやケンスケと一緒にお弁当を広げている。
「あら、アスカその指輪……?」
ヒカリがアスカの左手薬指のダイヤの指輪に気づいた。
「あ、これ? いいでしょ、エンゲージリングよ」
アスカは指輪のはまった手を自慢げにかざす。
「エンゲージリングって、アスカ婚約したの!?」
ヒカリの驚きの声に教室は水を打ったように静まり返った。
「まあね」
「まあねって、もしかして碇君と!?」
「うん」
そのあと教室は大騒ぎになった。悲嘆にくれるアスカのファンの男子生徒や隠れシンジファンの女生徒、やっかみ交じりにシンジを小突き回す男子生徒たち、ゴシップ好きの女生徒たちはアスカを取り囲んで質問攻めにしながら、その左手薬指に輝くダイヤを羨望のまなざしで見つめていたりする。
二人の婚約のニュースはその日のうちに学校中に知れ渡り、一週間後には近隣の中学高校でそのニュースを知らぬものはなくなっていた。
徒党を組んでシンジを闇討ちしようという輩も多数いたが、ネルフ保安諜報部のおかげでシンジに危害が加わることはなかった。
何はともあれ、作戦がうまくいって幸せいっぱいのアスカだった。
おわり
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