童話作家・安房直子
  太刀掛秀子先生の代表作「まりの きみの声が」の中に、童話作家・安房直子さんの作品「きつねの窓」(講談社文庫・「南の島の魔法の話」収録)に関連したエピソードがあります。
文庫版「まりのきみの声が」のあとがきの中では、先生は特に安房直子さんには触れられてはいませんでしたが、如何に先生が童話好きの少女であったのかが伝わってきます。
太刀掛先生は、童話にかなり影響を与えられていると思われます。そこで、安房直子さんの短編童話の収録された本を読んでみました。

<きつねの窓のあらすじ>
白狐を追いかけていた猟師は、桔梗の原に迷い込む。その白狐が化けた染物屋に入り、お客として白狐の話を聞く。桔梗の花の汁で染めた指で作る窓に、もう2度と会えない人や懐かしい風景が見えることを知る。猟師は鉄砲を代金代わりに、自分の指を染めてもらう。しかし、家に帰ってきた猟師は習慣で手を洗ってしまい、そのふしぎな窓の光景を二度と見る事はできなくなった。

 「きつねの窓」は失われた遠い日の思い出を幻想の世界で描いています。なくしたものは2度と手に入らない寂しさを感じます。最初の頃の、悪知恵を働かせている漁師の雰囲気と、窓を欲しがり、孤独で、2度と会えない少女との思い出を窓の中に見る漁師の雰囲気は対照的で印象に残りました。

 「まりの きみの声が」では、「きつねの窓」のストーリーの最後の部分には一切触れられていません。「きつねの窓」のストーリーの中の、鉄砲を手放してまで手に入れた窓をすぐになくしてしまう皮肉と、失ったものは2度と戻らないという重要な部分が抜けているのです。
しかし触れられていなくても、きつねの窓をのぞきこむ瞳に善美はまりのの抱えているかなしみに気がつきます。

きみの心に いつも消えないかなしみのあることも (前編・P179)

おんなじ瞳・・・・をしているよ
前にいつか“きのねの窓”をのぞきこんでいたのと同じ― (後編・P22)

登場人物(漁師・白狐)同様、両親を亡くしているまりのにとって、2度と戻らないと思っていても、窓に魅かれてしまったのだと思います。

 安房直子さんの短編童話集を2冊読みました。全部は読んでいないのではっきりとした太刀掛先生との共通点はわかりませんが、キャラの持つ暗い影の部分があるように思います。その部分が、キャラに深みを与えているように感じます。

 「まりの きみの声が」を読む度に、まりのが指の窓を通して見ていたのは何だったのだろうかと考えます。やはり、“亡くなった両親”だったのでしょうか?それとも別のものだったのでしょうか?


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