「ときめきトゥナイト」の魅力〜第1部


1.「ときめきトゥナイト(第1部)」の時代

「ときめきトゥナイト」は1982年7月号から連載が始まり、メディアミックスが最初から計画されていたらしく、1982年10月7日〜1983年9月22日までアニメが放映されました。

「ときめきトゥナイト」は、池野恋先生の中にあるいろいろな要素が一気に溢れ出た作品であると思います。

―――蘭世編の設定はどんな風に決められたのですか?
当時見た吸血鬼もののコメディ映画がとても面白くて、「あんな一見かっこいいけどユニークな吸血鬼というのを私も描いてみたいな」と思っていましたので、一番初めに決まったのは望里だったと思います。(略)

―――世界観設定について、苦労したことはなんですか?
こんなに長くなるとは思っていなかったので、(全編コメディ&ギャグで通し、俊に蘭世の想いがやっとこさ届いてなんとなくハッピーエンド、という予定でした)後からつじつまを合わせるのが大変でした。(略)
                          
集英社文庫<コミック版>2000年解説目録

いろいろな要素の中で私は、「ときめきトゥナイト」は++Review++でも取り上げた萩尾望都「ポーの一族」への池野先生なりのオマージュとしての部分に注目しています。

今まで読んだ中で最も印象的なまんが作品・・・ポーの一族
今まで読んだ中で最も印象的なまんが家・・・萩尾望都
                                    
『ぱふ』1985年2月号

昔から「不思議もの」「四次元もの」「怪奇もの」「ファンタジーもの」が好きでこれらがごっちゃになったような作品を描きたいと思っておりました・・・が、「怪奇もの」などはのめりこむとなんだかこわいし 「吸血鬼」ももっとシリアスに描いてみたかったのだけど ついギャグに走ってしまい作者もいつしかランゼが吸血鬼だということを忘れてしまっています・・・
                                    
『りぼん』1986年8月号

この2つから私が想像したことは、「ポーの一族」が好きだった池野先生は、自分なりの「ポーの一族」へのオマージュという意味もあって「ときめきトゥナイト」の連載を始めたのですが、いざ連載を始めてみると、描きたいことがたくさん出てきてイメージが膨らみ、ついには「吸血鬼」というキーワードからも作品が離れるほど「ときめきトゥナイト」は成長してしまったのではないでしょうか?

「ときめきトゥナイト」の連載が始まった1982年当時の『りぼん』は乙女ちっくブームが去り、乙女ちっくに影響を受けながらも新たな流れを持った池野恋、小椋冬美、高橋由佳利、萩岩睦美、本田恵子各先生などといった新人作家の台頭が始まりつつあったときです。1983、84年には、これらの作家が『りぼん』の中心となり、『りぼん』は“乙女ちっく”という時代を終えました。当時の『りぼん』は「幼年向け少女誌に戻った『りぼん』がそこに残った」(大塚英志「たそがれ時にみつけたもの」P125より)という批評をを受けることがしばしばありますが、それは人それぞれのとらえ方の違いだと思います。乙女ちっくの影響は『りぼん』から消えたわけではなく、以前として今でも『りぼん』に残っています。
1984年より『りぼん』を読み始めた私にとっては、1984年〜1986年までの『りぼん』に夢中になった時代は大切な宝物なのです。

2.キャラクター

「ときめきトゥナイト(第1部)」人物相関図

1986年8月号の「こちらマンガ情報」を参考に作成しました。ほんとはもっとキャラがいるんですが、省略しています。(第1部最終回の扉絵に出てきたキャラは、ロッキーとゾーンの部下以外は網羅しました)人物相関図を作ってみると、最終的には「ときめきトゥナイト」のキャラはみんな友達、仲間だということがわかります。悪い人は「ときめきトゥナイト」には出て来ないんです。

江藤蘭世・・・1968年7月27日生まれ(O型)

蘭世は“無償の愛”で真壁くんを愛しています。次々と起きるトラブルの度に、蘭世は真壁くんを愛するがゆえに強く、魅力的になっていったように思います。外見上の特徴は長いストレートのきれいな黒髪。単純なだけに非常に印象に残る外見です。黒髪のストレートのキャラといえば、亜美(一条ゆかり「デザイナー」)も印象的でしたが、1つの意志を通す力が強いキャラのイメージがあります。
ちなみに蘭世は、アロン・筒井くん・ダーク=カルロに一目ぼれされ、サンドにもかわいいといわれているので相当の美貌の持ち主だと言えます。

真壁俊・・・1968年4月13日生まれ(B型)

私くらいの年代にとって、「マンガの中の初めての王子様は真壁くんだった」という人は多いでしょう。その証拠に「少女マンガで恋のリハビリ」(『ダ・ヴィンチ』)の1500人にした「こんな男性と恋をしてみたかった」というキャラクターの投票で、20歳以上25歳未満(今ではこれよりも2歳は上)で真壁くんは1位になっています。選評には「クールで硬派、その隠れた優しさがたまらない。私の少女時代のときめきはずっと彼」「果敢に悪に立ち向かう姿にホレた。私も守ってほしかった」「無口で不器用だけど自分の目標に向かって頑張るところが大好きでした」とあります。私も彼の虜になった1人です。
真壁くんは最初、キザなセリフをいう不良として登場します。少女マンガの黄金のパターンである“普段はクールだけど、動物にはやさしい男の子”のエピソードなどがあったりしますが、最初は真壁くんのかっこよさよりも蘭世の「どうして人間の男の子を好きになっちゃいけないの?」の言葉に象徴される、蘭世の恋の成就に読者の気持ちは向いていました。しかし、サリ、筒井くんの登場ぐらいから真壁くんのキャラは明確に固まりだし、真壁くんのかっこよさが際立ってくるようになりました。

神谷曜子・・・1968年11月8日生まれ(B型)

曜子は蘭世の永遠のライバルです。ライバルといえば、内面描写がヒロインよりもどうしても少なくなってしまうので嫌われ役になりがちです。しかし、曜子は第2部に至っては蘭世以上になるみちゃんを支える役目を果たしてしまうほどでした。
真壁くんが魔界の王子様であることがわかった後は、曜子の存在は消えてもおかしくはありませんでした。物語の舞台の主流は魔界に移り、曜子は人間であり、それまでの曜子は嫌われ役以上ではなかったのですから。しかし、「ヨウコ犬」として曜子は生まれ変わります。ヨウコ犬のキャラクターは人気となり、ふろくにも欠かせないキャラになりました。ヨウコ犬がいたからこそ、聖ポーリア学園に入学したときの曜子の昔に戻ったライバルとしての姿が前とは比べ物にならないほど魅力的になったと思います。
ちなみに曜子も結構美人だと思われます。おまけに頭もいい。アロンと共に3枚目で、息抜きの役割をも見事に果たしました。彼女を嫌いな人は「ときめきトゥナイト」読者にはいないでしょう。

江藤望里(モーリ=エトゥール)・・・1683年3月3日生まれ(A型)

普段は吸血鬼としての能力もコウモリになるくらいしか発揮しませんし、売れない小説家で、一見駄目な父親なのですが、ふと見せる大黒柱としてのかっこよさがしっかりと描かれていて、非常にステキなキャラでした。
「ときめきトゥナイト」では家族というキーワードが大切な役割を果たしています。それは「おしえて菜花」でも共通しています。

江藤椎羅(シーラ=クレリー)・・・1799年生まれ6月26日生まれ(O型)

教育ママとしての怖い面が印象に残りますが、何かがあると家に残り、家を守るという古典的な主婦像を思い出されました。
個人的には、望里と椎羅の駆け落ちのエピソードを非常に読みたかったのですが、番外編になることがなくて非常に残念です。きっとステキな物語があったのでしょう。

江藤鈴世・・・1976年12月24日生まれ(A型)

第1部での鈴世は途中までは子供という印象しかなかったのですが、蘭世に別れを告げた真壁くんを問い詰めたシーンや蘭世を励ますシーンには彼の成長を感じさせられました。
第2部では、スポーツ万能・成績優秀・眉目秀麗、浮気はしない、姉思いという完璧なヒーローとなりますが、真壁くんとの一番大きな相違点は口にも出して愛を伝えてくれる点だと思います。

アロン=ルーク=ウォーレンサー・・・1968年4月13日生まれ(B型)

アロンを好きな人は少ないでしょう。最初の方の巻から登場しており、曜子以上に蘭世と俊に関わったわりには印象が薄かったのですが、2000年前の二人の王子のエピソードが明らかになった後、ちょっと救われたかなと感じられました。ヨウコ犬との無敵のコンビが好きです。

ダーク=カルロ・・・1955年11月27日(A型)

登場回数が少ないのに、主要キャラに入ってしまうほど存在感があったように思います。(蘭世と俊の子供の名前にまで影響を与えました)主要キャラの内で唯一作品中に命を落としたからかもしれません。もちろん、大王なども亡くなったのですが、蘭世の視点から見ると、カルロ存在は非常に大きくカルロ以上の喪失感を読者に与えることなかったのでしょう。
真壁くんがかっこいいシーンには、カルロが絡むことが多いように思います。真壁くんは口数が少ないのですが、カルロとはテレパシーで会話するために、口数が多くなるからかもしれません。真壁くんもカルロに対しては蘭世を好きな他のキャラとは違った態度で接していたと思います。

3.話の構成

「ときめきトゥナイト」は、第1部は16巻、第2部は17〜22巻、第3部23〜30巻までとなります。
1部だけで16巻(文庫では8巻)あります。初めての人がいきなり読むには負担を感じる巻数です。話の展開上、第1部も内側で分かれているので分けて読んで見るのがいいのではないでしょうか?
(○○編というネーミングは私が勝手に付けたものですので、実際にはありません)

1〜5巻・・・中学生編

ラブコメの印象が「ときめきトゥナイト」の中で最も強い部分です。コメディとシリアスな部分のバランスが心地よくテンポがよく非常に読みやすく、一瞬にして「ときめきトゥナイト」の虜になる人が多いはずです。作品を読んでいると、池野先生が新人作家から、『りぼん』の中心作家に成長していく過程までわかるように思います。

6〜7巻・・・双子の王子編

真壁くんが魔界の王子様だとわかった後の話のテンションの高さは読者を引き付けて離しません。私が「ときめきトゥナイト」を読みだしたのはこの時期なのですが、とにかく話の展開の早さに毎号ドキドキしていました。

8〜12巻前半・・・2千年前の伝説編

カルロの登場を期に真壁くんのかっこよさはグレードアップ。毎号、真壁くんにクラクラだったように記憶しています。(蘭世とのラブシーンがこの頃は非常に多いです)真壁くんに降りかかる運命は重いのですが、蘭世の励ましぶり、真壁くんが蘭世を守る姿に夢中になりました。

12巻後半〜15巻・・・5つの指輪編

久しぶりに人間界に舞台が移り、恋の障害として、「身分違い」「立場の違い」「ライバル」など、多くが蘭世の前に立ちふさがります。私は真壁くんが蘭世に別れを言ったときに「ときめきトゥナイト」が嫌いになりました。今から思えば、それほどまでに「ときめきトゥナイト」が好きだったのだと思います。

16巻・・・番外編

作品の番外編をまとめた巻です。番外編とは言っても本編に関わりあるくらいに重要なエピソードが多く、非常に面白いです。特に、「クリスマスの贈りもの」は、真壁くんの蘭世へのプロポーズがありますから、読むべきでしょう。

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