**** “りぼんっこ”像 ****

  『りぼん』読者は、昔は“りぼにすと”、現在は、“りぼんっこ”と言われています。私は、『りぼん』を1984年から読み続け、『りぼん』以外のマンガ雑誌を定期講読した経験はなく、『なかよし』、『ちゃお』は触れたことすらないという生っ粋のりぼんっこです。
  少女はどの雑誌を読んでいるかにより、「りぼん派」、「なかよし派」などと言われますが、『りぼん』読者にはどのような特徴があるのでしょうか?ここでは、『りぼん』
(集英社マンガ読者)と、『なかよし』(講談社マンガ読者)とを比較することで“りぼんっこ”像を明らかにしていきたいと思います。

  『りぼん』の読者層は、「小学生:53.7%、中学生:31.2%、その他:15.1%」(「2000年度版 雑誌新聞かたろぐ」)、「小学生以上(中心は小3〜中3」(『プ〜タオ』2000年冬の号)となっています。読者の約85%は中3までに『りぼん』を読むのをやめているということと、15.1%もの読者が、高校生以上になっても『りぼん』を読みつづけていることを表しています。
 
『なかよし』の読者層は、「小学生:65%、中学生:35%」(「2000年度版 雑誌新聞かたろぐ」)であり、小中学生で、読者が100%になることなどありえないので、一概に正しいデータではないと思うのですが、『りぼん』のようにその他の数字は大きくはないでしょう。また、『ちゃお』の読者層は、「小中学生。小学校中高学年が中心」(『プ〜タオ』2000年冬の号)であり、『りぼん』よりも低いことが想像されます。
  15.1%の数字より、『りぼん』は他の児童向け少女マンガ雑誌と比較すると、読者歴が長い人がいることがわかります。このような読者がいるのは、『りぼん』にも原因があると思いますが、それ以上に集英社の少女マンガの体質に原因があると思います。

  はじめに、「70年代のマンガ」(P176)の中の集英社と講談社の読者像について書かれている部分を引用します。

  講談社コースに流れた流れた少女たちは、もっともマンガにのめり込む度合いが低く、マンガの卒業は早い。(中略)人気作家は擁してはいるものの、濃密なマンガ空間が形成されていないため、行動範囲が広がっていく中学生頃から、どんどんマンガ離れを起こす。物語が希薄な分、現実の刺激が強くなればなるほど、マンガがさして面白いものではなくなる。彼女たちにしてみれば、「マンガの中でどんなにかっこよくたって、現実(私)には何もしてくれないじゃない」ということなのだ。(中略)
  マンガへののめり込み度がより濃い『週刊マーガレット』を選択した少女たちは、その後少女マンガの王道ともいえる集英社少女マンガ帝国の住人になる。その後、『別冊マーガレット』、『ぶ〜け』、『コーラス』や、『YOUNG YOU』といったレディース誌に移行してもなお彼女たちは“夢のような恋愛”という甘い夢をマンガに求める。

正確には、これは70年代の『週刊マーガレット』、『週刊少女フレンド』の読者の比較の文章ですが、近年の『りぼん』と『なかよし』に置き換えることも可能ではないかと思います。
『なかよし』のマンガのキーワードは、「夢と冒険」
(「少女マンガゆめ王国」P120より)ですが、『りぼん』は「愛・夢・笑い」です。
『なかよし』の入江祥雄編集長は、インタビューで「女の子だって、恋だけに興味を持っているわけではないはず」「マンガの特性は、日常より非日常を描いた方が生かされるのでは」という考えであると言われています。『なかよし』が「セーラームーン」で勢いづいていたたとき、『りぼん』では「ちびまる子ちゃん」「姫ちゃんのリボン」で勢いづいていました。「ちびまる子ちゃん」は作者の昔の日常を描いたエッセイマンガ
(今は違う要素もありますが)であり、「姫ちゃんのリボン」は変身ものでありながら、ヒロインはあくまでも世界のためではなく、自分のために魔法を使っている作品です。空想ファンタジーものに夢中になるのは、オタクをのぞいては子供であることが多いです。人気作品が終わってしまえば、魔法から解け、マンガを読まなくなってしまう可能性があると思います。

  次に「少女マンガの愛のゆくえ」(P102)の中の『りぼん』と『なかよし』の読者像について書かれている部分を引用します。

  「りぼん」という、乙女チック漫画雑誌を読んで育った少女たちが、長じて「結婚よりも総合職でキャリア組」という道を選ぶことが多かった。対して、夢いっぱいでドラマチックな漫画の雑誌「なかよし」を読んで育った少女たちは、「短大から腰掛け就職」という道を選んだ。(中略)
  あえて、仮説を言わせてもらえば、少女漫画とは虚構である。読者である少女たちにとって「こんなことあったらいいなぁ」と、思わせると同時に、「どうせ、こんなことはあり得ないのよ」と刷り込む役割を果たしている。その結果。
「なかよし」の読者は、遠い外国の学園を舞台に繰り広げられる恋物語を「これは楽しいが虚構の世界だ」と刷り込まれて大人になった。それと同様に、「りぼん」の読者は「片思いの先輩を見つめていれば両想いになれるなんて、ありえない」と思ってしまったまま……!?

これは70年代中盤の乙女ちっくマンガ全盛の頃の『りぼん』読者について書かれている文章です。上の文章どうように時代は違いますが、恋愛もの中心の『りぼん』と、ファンタジーもの中心の『なかよし』であてはまる部分があると思います。

  「たそがれ時にみつけたもの」(P176〜180)の中から70年代中盤に『りぼん』読者の今について書かれている部分を引用します。

  職業だが、専業主婦は1割強である。既婚未婚含めて8割が仕事を持っている。これはサンプルとなったのが、『本の雑誌』というミニコミ誌であり、同誌の読者に見られる偏差と見なすことができるかもしれないが、そういった部分を差し引いても元『りぼん』少女たちは圧倒的に働く女性たちである。(中略)
  30前後に多いキャリアでともすればややフェミニズム寄りの結婚しない女たちと『りぼん』的なるものは一見相反するように見えて共存する。彼女たちの世代は陸奥A子らの乙女チック派の作品とともに一方で「社会派」であった団塊世代の少女まんが家の洗礼も同時に受けている。(中略)<乙女チック>は声高らかに何かを主張しないが、相反するかに見えるフェミニズム的な女性たちの動きと不思議と折り合いをつけて共棲していく傾向にある。(中略)
  「かわいげのない女」を時代の流れの中で演じざるを得なくなったのが元『りぼん』少女たちだといってもいいかもしれない。

現在の“りぼんっこ”の将来が、乙女チックの当時とまったく同じであるということはないでしょう。しかし、当時ほどは顕著に特徴はでないとしても、やはり『りぼん』読者はかわいいものを好き自分を封印し、「かわいげな女を演じている人が多いのではないでしょうか?少なくとも、集英社のヤングレディースマンガ(特に『YOUNG YOU』)は働く女性にスポットを当てた作品が多いように思います。働きながらも、ついついマンガを読み続けている、そんな女性がたくさんいることが想像されます。

  少女マンガ誌読者集団におけるConservative Named rateの測定(注1)の中から、『りぼん』と『なかよし』の読者像を比較した部分を引用します。

  • 学業達成水準の高い高校では“子”の付く名前の比率が高い傾向にあり、そうでない高校では低い傾向にある。
  • 『りぼん』の読者は、『なかよし』よりも“子”の付く名前の比率が高い傾向にある。

以上のような結論から、『りぼん』の読者は『なかよし』の読者よりも学業達成水準の高い学校に通っている割合が高く、キャリアで、ともすればややフェミニズム寄りの読者が比較的多くいることが推定できます。

  • 女子中高生向け雑誌においては購入駆動型雑誌の読者では“子”の付く名前の比率が高い傾向にあり、告白駆動型雑誌の読者では低い傾向にある。
  • 『なかよし』の読者は“子”の付く名前の比率が低く、受信者が所持しておらずかつ身体に装着不能な情報についての受容性は“子”の付かない個体においてより高い。

以上のような結論は、『りぼん』の読者の保守的な性質も説明できます。
マンガ雑誌なので「購入駆動型雑誌」と「告白駆動型雑誌」に明確に分けることができませんが、『なかよし』をはじめとする講談社マンガ雑誌にある読者の実体験に基づくマンガ作品の性質や、ファンタジーを好む性質は、『りぼん』にはないものです。

  最後に、『CREA』1992年9月号・特集「THE少女マンガ!!」の「30歳、それは“りぼん”vs“なかよし”で始まった!〜少女マンガと共に生きた女の軌跡」というチャートの部分を引用します。

「大都市に生まれる&比較的勉強ができる」=『りぼん』
「地方都市に生まれる&成績は中くらい」=『なかよし』

1996年秋に首都圏の3〜12才の男女800人を対象にビデオリサーチ社が行った調査によると、10〜12才女子の購読雑誌は、1位『りぼん』が58.3%で圧倒的な強さを見せていると書かれてありました。(1997年1月11日、朝日新聞夕刊)地域毎に分けて調査している学校読者調査(注2)では、1996年の小学生女子の購読雑誌は、1位『りぼん』51.3%であり、対象した人数に差はありますが、「首都圏=大都市に生まれている」といえると思います。

  漫画家のフリートークの中には、「マンガを読むことをやめられない」という主旨の手紙が読者から多くよせられることに触れられています。女性は、少女である自分をどこかに封印し、卒業することで、大人になります。でも、封印しているだけで消えてしまったわけではありません。

“りぼんっこ”の中には、『りぼん』を読んでいる自分に疑問をもったり、元“りぼんっこ”の中には、夢中になったときの『りぼん』について懐かしく思い出すときあるのではないでしょうか?そんな、“りぼんっこ”に「Love Dream Smile」を訪れてほしいと思います。
積極的に『りぼん』に向かい合える期間は短いです。データと自分の経験からの推測では、4、5年(小3〜中2くらい)だと思います。しかし、『りぼん』はちょっと距離を置きながら関われる雑誌だと思います。私は、たとえデータ上には表れなくても、そのように『りぼん』に関わっている人も“りぼんっこ”であると考えています。

(注1)
金原克範さんによる論文です。(HP:
theUNPLUGGED LIFEより引用)
『少女マンガ誌読者集団におけるConservative Named rateの測定』(第66回日本社会学会大会)は、『個体名と情報受容性』(第15回数理社会学会)、『個体名と言語の流れ』(第41回関東社会学会)に続く第3報です。

(注2)
1954年より小学生(4年生以上)・中学生・高校生を対象に行っている読者調査で、全国学校図書館協議会と毎日新聞社が共同で行っています。調査は毎年、6月に全国一斉に実施されます。小・中学生は、全国を大、中、小都市、郡部に分け、地域毎に在籍する児童、生徒数に応じて学校を抽出し、高校生は、全日制過程をいくつかの学科に分類してそれぞれの生徒数に応じて学校数を決定しています。調査校では、各学年1クラスを選び、集団質問紙法で行っています。対象は、各年とも、小学生約4000人、中学生約4000人、高校生約4500人程度です。


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